中国対策として米豪は太平洋諸島諸国への働きかけを強めているが、今更うまくいくはずがない
<記事原文 寺島先生推薦>
The US wants to use China's neighbors against it – will the plan succeed?
Western powers have never treated the island countries seriously – but now they want a foothold against Beijing
(米国は中国の近隣諸国を利用したがっているが、その計画は上手くいくのだろうか?
西側諸国がこれらの島国諸国と真剣に向き合ってきたことはこれまで全くなかったのに、今になって中国への足掛かりに利用したがっている)
筆者:ティマー・フォメンコ(Timur Fomenko)。政治専門家
出典:RT
2022年7月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年8月10日

米国のカマラ・ハリス(Kamala Harris)上院議員 © Getty Images / Ethan Miller
先週(7月第4週)、米国のカマラ・ハリス副大統領は「太平洋諸島フォーラム」に動画で挨拶を伝えた。このフォーラムは南太平洋に位置する群島諸国家からなる多国間の協議会で、通例「ポリネシア」や「メラネシア」という括りに所属するとされる諸国が構成員だ。この挨拶の中で、ハリス副大統領は米国が島嶼(とうしょ)諸国との協力関係を強めることを誓約し、「悪役たち」には注意を払うよう警告し、さらにはトンガとサモアに米国大使館を再設置することを約束した。しかしこの件こそこれまで米国がこの地域のことを真剣に捉えてこなかった一例と言える。今になってやっと米国政府は中国に対する足掛かりとしてこの地域の重要性に気づいたのだ。 注目すべきは、島国であるキリバスはこのフォーラムに出席しなかったことだ。このことについては、後に中国政府が非難の対象となった。 というのはその中国が、フォーラムに参加していた同じ諸国の会合を中国主催で開催したからだ。
訳注:2022年、キリバスは中国が主催する中国・太平洋島嶼国外相会議に出席する一方、 オーストラリアなどが参加する太平洋諸島フォーラムからの脱退を表明(ウイキペディア)
まだよく分かっておられない方々のために付け加えると、影響力や政治的支配力を争う超大国同士の真剣な戦いが、南太平洋を戦場に開始されたということだ。そして中国が侵略者や拡大主義者であると悪く言われている一方で、米国と豪州はこの地域を自分たちの戦力的「裏庭」と表向きは捉えている。 第二次世界大戦の勝利により太平洋を軍事支配することに成功した米国政府や豪州政府は、これらの島嶼諸国は自分たちの覇権力を前提とすれば、何の縛りもなしに支配出来ると理解している。 米国の外交政策の狙いが中国を阻止することだということは公表されており、今や中国は米国にとって地政学上最大の敵になっている。米国は太平洋上の「第一」及び「第二」列島線において中国と軍事的均衡を取ろうとしている。米国がこの地域での優先性を失ってしまえば、アジア全体に対して力を誇示できる能力も失ってしまうことになる。
訳注:第一列島線及び第二列島線については以下の地図を参照
https://images.app.goo.gl/oYGybh2sNYp98Vb67

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今年初旬、中国が米国と豪州を驚愕させたのは、中国が太平洋地域で電撃的な外交政策をとったことだった。具体的には中国はソロモン諸島と画期的な安全保障条約を結び、他の諸国とも多くの同意を結んだことだった。 それ以来の米豪政府の反応は、大手メディアを通じて躍起になって警鐘を鳴らし、中国がこれらの島嶼諸国に軍事基地や海軍基地の設置を目論んでいるとがなりたてる、というものだった。この動きに引っ張られる形で、すぐに警告的な物言いがソロモン諸島に対して公式に投げかけられた。それ以降、米豪は島嶼諸国に対して攻撃的な外交姿勢を押し出し、さらなる反中国を明確に示す多国間同盟が組織された。それが「ブルー・パシフィックにおけるパートナー」だ。 この同盟には英国と日本も参加している。
しかし米豪によるこれらの努力の効果はそう見込めないだろう。その一番の理由は、米豪が好むか否かに関わらず、これらの島嶼諸国はある特定の勢力から政治的支配を受けることを望んでいないことだ。これらの諸国は、長期間特定の勢力の「裏庭」に甘んじても得にはならないことを分かっているからだ。これまで長年ずっと、自分たちの国々の利益についてまともに受け止めてくれなかった国々であれば尚更だ。2つ目の理由は、米国や米国の同盟諸国が、これらの国々が中国に対して持っている感情を変化させる術を全く有していないことだ。それは、中国はこれらの国々に対して非常に有益な発展をとげるための友好国になると表明しており、これらの諸国に発展への大きな機会を提供しているからだ。中国がソロモン諸島との安全保障条約をまとめあげた際、中国は、ソロモン諸島からの中国への輸出品の98%に関税をかけないことも発表した。中国市場は世界最大市場であり、ソロモン諸島の人口は68万6878を超える程度(この人口は中国国内の小都市よりも少ない)なのだから、このような取り決めは中国にとっては全く苦にならない措置だ。
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この状況からさらに以下のような状況が生まれる。中国は直接に太平洋島嶼諸国の利益を各国の経済状況の好転という観点から訴えかけ、生活基盤の整備や輸出市場の提供を行っている。いっぽう米豪や他の同盟諸国はそんなことはしていない。実のところ、米国や豪州などの国々がこれらの島嶼諸国を再度取り込もうとしている唯一の目的は、中国への対抗のためだけであり、 自分たちの目論見の実現のためだけだ。それをよく表している言葉が、ハリス副大統領が使った「悪役たち」という言葉なのだ。しかし太平洋島嶼諸国が中国を悪役とみていると思われる証拠はほとんどない。中国政府が誓約しているのは、これらの国々の主権を尊重することであり、この立場こそが、ソロモン諸島との安全保障条約が、 米豪にとっては無念の極みであろうが、ソロモン諸島にとっては利のある同意になった理由だ。 というのもソロモン諸島は中国とのこの合意が、これまで豪州やコモンウェルス諸国への依存から脱することの出来る好機と見ているからだ。 メディアは「太平洋で強硬な姿勢を見せている」という逆の姿を描いているが、中国はこれらの国々から歓迎されているし、さらに明らかなことは、米豪側こそ、これらの島嶼諸国にどちらにつくか無理やり選ばせておきながら、自分たちの外交努力をなぜ彼らが無視しているのかを不審に思っているのだ。
結論だが、太平洋島嶼諸国が求めているのは力の均衡であって、特定の覇権への従属ではないということだ。何とも皮肉な話だが、米国や米国の友好諸国は、ウクライナのような同盟諸国や友好諸国には、自国の主権をもとにした自決権を認めているのに、中国との友好をあえて選んだソロモン諸島のような小さな島国にはそんな権利はないと考えているように思える。 しかし実のところ、これらの島嶼諸国が分かっているのは、自国の発展の強化が可能になるのは、多国間での友好関係を築くことだという事実だ。豪州の裏庭国家として甘んじて自身の存在を受け入れることではない。というのも豪州には、中国が差し出してくれる規模の経済発展の機会を与えてくれる力はないからだ。
The US wants to use China's neighbors against it – will the plan succeed?
Western powers have never treated the island countries seriously – but now they want a foothold against Beijing
(米国は中国の近隣諸国を利用したがっているが、その計画は上手くいくのだろうか?
西側諸国がこれらの島国諸国と真剣に向き合ってきたことはこれまで全くなかったのに、今になって中国への足掛かりに利用したがっている)
筆者:ティマー・フォメンコ(Timur Fomenko)。政治専門家
出典:RT
2022年7月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年8月10日

米国のカマラ・ハリス(Kamala Harris)上院議員 © Getty Images / Ethan Miller
先週(7月第4週)、米国のカマラ・ハリス副大統領は「太平洋諸島フォーラム」に動画で挨拶を伝えた。このフォーラムは南太平洋に位置する群島諸国家からなる多国間の協議会で、通例「ポリネシア」や「メラネシア」という括りに所属するとされる諸国が構成員だ。この挨拶の中で、ハリス副大統領は米国が島嶼(とうしょ)諸国との協力関係を強めることを誓約し、「悪役たち」には注意を払うよう警告し、さらにはトンガとサモアに米国大使館を再設置することを約束した。しかしこの件こそこれまで米国がこの地域のことを真剣に捉えてこなかった一例と言える。今になってやっと米国政府は中国に対する足掛かりとしてこの地域の重要性に気づいたのだ。 注目すべきは、島国であるキリバスはこのフォーラムに出席しなかったことだ。このことについては、後に中国政府が非難の対象となった。 というのはその中国が、フォーラムに参加していた同じ諸国の会合を中国主催で開催したからだ。
訳注:2022年、キリバスは中国が主催する中国・太平洋島嶼国外相会議に出席する一方、 オーストラリアなどが参加する太平洋諸島フォーラムからの脱退を表明(ウイキペディア)
まだよく分かっておられない方々のために付け加えると、影響力や政治的支配力を争う超大国同士の真剣な戦いが、南太平洋を戦場に開始されたということだ。そして中国が侵略者や拡大主義者であると悪く言われている一方で、米国と豪州はこの地域を自分たちの戦力的「裏庭」と表向きは捉えている。 第二次世界大戦の勝利により太平洋を軍事支配することに成功した米国政府や豪州政府は、これらの島嶼諸国は自分たちの覇権力を前提とすれば、何の縛りもなしに支配出来ると理解している。 米国の外交政策の狙いが中国を阻止することだということは公表されており、今や中国は米国にとって地政学上最大の敵になっている。米国は太平洋上の「第一」及び「第二」列島線において中国と軍事的均衡を取ろうとしている。米国がこの地域での優先性を失ってしまえば、アジア全体に対して力を誇示できる能力も失ってしまうことになる。
訳注:第一列島線及び第二列島線については以下の地図を参照
https://images.app.goo.gl/oYGybh2sNYp98Vb67

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今年初旬、中国が米国と豪州を驚愕させたのは、中国が太平洋地域で電撃的な外交政策をとったことだった。具体的には中国はソロモン諸島と画期的な安全保障条約を結び、他の諸国とも多くの同意を結んだことだった。 それ以来の米豪政府の反応は、大手メディアを通じて躍起になって警鐘を鳴らし、中国がこれらの島嶼諸国に軍事基地や海軍基地の設置を目論んでいるとがなりたてる、というものだった。この動きに引っ張られる形で、すぐに警告的な物言いがソロモン諸島に対して公式に投げかけられた。それ以降、米豪は島嶼諸国に対して攻撃的な外交姿勢を押し出し、さらなる反中国を明確に示す多国間同盟が組織された。それが「ブルー・パシフィックにおけるパートナー」だ。 この同盟には英国と日本も参加している。
しかし米豪によるこれらの努力の効果はそう見込めないだろう。その一番の理由は、米豪が好むか否かに関わらず、これらの島嶼諸国はある特定の勢力から政治的支配を受けることを望んでいないことだ。これらの諸国は、長期間特定の勢力の「裏庭」に甘んじても得にはならないことを分かっているからだ。これまで長年ずっと、自分たちの国々の利益についてまともに受け止めてくれなかった国々であれば尚更だ。2つ目の理由は、米国や米国の同盟諸国が、これらの国々が中国に対して持っている感情を変化させる術を全く有していないことだ。それは、中国はこれらの国々に対して非常に有益な発展をとげるための友好国になると表明しており、これらの諸国に発展への大きな機会を提供しているからだ。中国がソロモン諸島との安全保障条約をまとめあげた際、中国は、ソロモン諸島からの中国への輸出品の98%に関税をかけないことも発表した。中国市場は世界最大市場であり、ソロモン諸島の人口は68万6878を超える程度(この人口は中国国内の小都市よりも少ない)なのだから、このような取り決めは中国にとっては全く苦にならない措置だ。
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この状況からさらに以下のような状況が生まれる。中国は直接に太平洋島嶼諸国の利益を各国の経済状況の好転という観点から訴えかけ、生活基盤の整備や輸出市場の提供を行っている。いっぽう米豪や他の同盟諸国はそんなことはしていない。実のところ、米国や豪州などの国々がこれらの島嶼諸国を再度取り込もうとしている唯一の目的は、中国への対抗のためだけであり、 自分たちの目論見の実現のためだけだ。それをよく表している言葉が、ハリス副大統領が使った「悪役たち」という言葉なのだ。しかし太平洋島嶼諸国が中国を悪役とみていると思われる証拠はほとんどない。中国政府が誓約しているのは、これらの国々の主権を尊重することであり、この立場こそが、ソロモン諸島との安全保障条約が、 米豪にとっては無念の極みであろうが、ソロモン諸島にとっては利のある同意になった理由だ。 というのもソロモン諸島は中国とのこの合意が、これまで豪州やコモンウェルス諸国への依存から脱することの出来る好機と見ているからだ。 メディアは「太平洋で強硬な姿勢を見せている」という逆の姿を描いているが、中国はこれらの国々から歓迎されているし、さらに明らかなことは、米豪側こそ、これらの島嶼諸国にどちらにつくか無理やり選ばせておきながら、自分たちの外交努力をなぜ彼らが無視しているのかを不審に思っているのだ。
結論だが、太平洋島嶼諸国が求めているのは力の均衡であって、特定の覇権への従属ではないということだ。何とも皮肉な話だが、米国や米国の友好諸国は、ウクライナのような同盟諸国や友好諸国には、自国の主権をもとにした自決権を認めているのに、中国との友好をあえて選んだソロモン諸島のような小さな島国にはそんな権利はないと考えているように思える。 しかし実のところ、これらの島嶼諸国が分かっているのは、自国の発展の強化が可能になるのは、多国間での友好関係を築くことだという事実だ。豪州の裏庭国家として甘んじて自身の存在を受け入れることではない。というのも豪州には、中国が差し出してくれる規模の経済発展の機会を与えてくれる力はないからだ。
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