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米国はウクライナをドローン兵器の実験場にしようとしている。そんな行為をロシアが許すわけがない。

<記事原文 寺島先生推薦>
The US is trying to use Ukraine as a test lab for its drones, a move Russia is unlikely to forget
The possible provision of armed MQ-1C Grey Eagle drones is a cynical ploy to test them against Russians

 米国はウクライナをドローン兵器の実験場にしようとしている。そんな行為をロシアが許すわけがない。 
 MQ-1Cグレー・イーグルというドローン戦闘機をウクライナに売却する裏には、ロシアを実験台に軍事実験を行おうという狡猾な策略がある可能性がある。

原典:RT
   2022年6月12日
著者:スコット・リッター(Scott Ritter)

Scott Ritter is a former US Marine Corps intelligence officer and author of 'Disarmament in the Time of Perestroika: Arms Control and the End of the Soviet Union.' He served in the Soviet Union as an inspector implementing the INF Treaty, in General Schwarzkopf’s staff during the Gulf War, and from 1991-1998 as a UN weapons inspector.

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
   2022年7月2日


 ロイター通信の報道によると、米国政府はドローン戦闘機MQ-1Cグレー・イーグルを4機売却することを考慮しているとのことだ。このドローン戦闘機は、米国の空対地ミサイルのヘルファイア・ミサイルを発射でき、ドンバス地域での特殊作戦に従事しているロシア軍に対して使用できるものだ。

 この話が本当だとしたら、このドローン戦闘機売却については国務省と国会の両方からの特別承認が必要となる。というのも、米国の法律において、ドローン戦闘機については、米国の最重要同盟諸国以外への売却に制限がかけられているからだ。もし承認されれば、ウクライナでこの戦闘機を操縦する人々は短期講習を受けることになるが、それには数週間を要する(MQ-1Cの操縦に関する講習は通常数ヶ月かかる)。つまり、ドローン戦闘機MQ-1Cグレー・イーグルがウクライナ上空を飛んでいる姿が見られるのは、最速で今年7月のいつかになるだろうということだ。

  ドローン戦闘機MQ-1Cグレー・イーグルは、戦術無人戦闘機RQ/MQ-5ハンター (UAV)機の後継機にあたるもので、この開発には米国の陸軍と海軍が協同して取り組んできた。この開発計画は1989年に開始されたのだが、完成に漕ぎ着けたのは9/11攻撃の数年後だった。つまりハンターUAVは、例えば対ソ連戦争を勝ち抜けるような高い緊張状態にあった国際関係に適応して作られた武器系統ではなく、テロとの戦い(GWOT)期という国際関係がより温和な緊張関係にあった時代に適応したものだった。

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 ハンターUAV機がどう運用されてきたかの歴史は、この背景を反映したものになっている。2002年の試用期間中のハンター機の使用目的は、ロシアの装甲戦闘車両を破壊する能力を持つBAT(ブリリアント対戦車)子弾を搭載するためだった。しかしこのハンターUAV機が戦闘地域に配置されるようになった2005年には、この無人航空機の使用目的はイランの反乱者たちに対するレーザー誘導爆弾を搭載する目的に変わっていた。攻撃方法の特性が進化したのだ。具体的には持ち物や行動の自由が認められていない箇所に存在する動く標的に対する攻撃から、戦場上空を飛び交いながら、敵に邪魔されることなく、静止した状態の敵にめがけて正確に狙いを定める攻撃に進化したのだ。

 GWOT期の戦争に対応できるかという要求から見れば、ハンターUAV機はすぐに時代遅れになり、早くも2002年には、米軍は複数の爆発物が搭載できる代替機種を模索し始めていた。つまり、攻撃や、即席爆発装置(IEDs)の探知や、戦場の被害状況の見極めだけではなく、偵察や、標的獲得や、指揮統制や、通信中継や、通信傍受(SIGINT)や、電子戦(EW)、つまり全ての戦闘行為にも対応できる代替機種のことだ。

 ハンター機の後継機種の製作が急がれた主原因は、敵の脅威がない中で無数の指令の実現が可能な状況での戦闘行為が求められている状況だったからだ。競争を勝ち抜いたMQ-1C機が選ばれ、2009年までには米軍にMQ-1C機が届けられ始めた。2010年までには、イラクやアフガニスタンの戦場でMQ-1C機が見られるようになったが、よく搭載されていた武器はレーザー誘導型のヘルファイア・ミサイルだった(グレー・イーグル(MQ-1C機の愛称)は空対空攻撃に対応したスティンガー・ミサイルや、レーザー誘導型GBU-44バイパー爆弾を搭載することも可能なのだが)。

 グレー・イーグル機はイラク反乱軍や、アフガニスタンのタリバンや、ISISのテロリストたちに対して有効だったことが米国内部の認識だったが、それと同時に、グレー・イーグル機は米軍が「全領域行動作戦」と呼んでいる戦争には役に立たないという認識も広がっていた。この「全領域行動作戦」とは、米国と同等の戦力をもつロシアのような敵国と争う「将来の戦争」を想定したものだ。GWOT期の対反乱軍作戦として非常に有効に通用することが証明された視線計測センサーは、その将来の戦争では役立たないのだ。敵が見えるということは、敵に見られているということだからだ。そうなれば殺されてしまうからだ。

 グレー・イーグル機を現在の戦場でも十分使用できるようにするには、新型センサーの搭載が必要となる。そのセンサーがあれば、スタンドオフ状態(敵の対空ミサイルの射程外から攻撃できる状態にあること)にある標的を特定でき、軍による長距離正確射撃(LRPF)ができる状況を作り出すことが可能となるからだ。米軍の提案によれば、新型のグレー・イーグル機は、統合防空体制(IADS)が完全に取られている地域でも効力を発揮でき、80Km先の統合防空体制の監視から逃れるような飛行方法が取れる能力が必須であるとしている。そして、いわゆる空中発射効果(ALE)体系センサー機能付き小型ドローン機である新型グレー・イーグル機を敵領内に送り込み、次の攻撃に向けて、標的を検出特定し、その位置情報を特定できるようにしたいとのことだ。

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 しかし今の米軍ではそのようなことは不可能だ。となると米国がウクライナに供給しようとしているグレー・イーグル機は、ロシア対ウクライナ戦争のような現在の戦場での戦いに対応し、乗り切れるとは考えにくいということだ。このMQ-1C機は、ウクライナで最もよく使用されているドローン機であるトルコ製のバイラクタルTB2機の2倍の大きさがある。このTB2機はリビアやシリアやアルメニアのナゴルノ・カラバフでは功を奏し、今回のロシアによる特殊作戦の初期にも、ロシア軍に対して効果を発揮していた。しかしロシア側は防空体制の補強を成し遂げ、結果この紛争の前にウクライナに供給されていた36機のTB2のうち35機を、さらに戦争開始後にウクライナに届けられた12機のほとんどを打ち落とした。MQ-1C機が同じような運命を辿る可能性は非常に高い。

 しかしもちろんこれは米国の想定内のことだ。それは、ウクライナに送られる予定のグレー・イーグル機がたった4機であることや、グレー・イーグル機が戦場で打ち落とされなかったとしてもこの紛争を左右する大きな要因にはならないことからわかることだ。グレー・イーグル機をウクライナ国内のロシア軍に対して配置した米国の思惑が、ロシアの統合防空体制(IADS)を打ち破る戦術の開発を実際の戦闘の場で確かめる実験だということであれば、MQ-1C4機を犠牲にしても、米国は研究や開発資金の支出を何億ドルも節約できることになるのだ。

 ウクライナは対ロシア戦争で敗北しつつある。いくら米国や西側諸国がウクライナに武器を供給したとしても、この状況を変えることにはならないだろう。米国はそのことをわかっている。だからこそ問わざるを得ないことは、こんなにも限られた数のMQ-1C機を、こんな戦局でウクライナに供給することに何の意味があるのか、ということだ。その問いに対する唯一の納得できる答えは、米国はロシアの特殊作戦を実際の戦場での実験場所に利用しようとしていると考えることしかない。その意味で、「実験用ラット」にされているのはロシアやウクライナの兵士たちだ。こんな狡猾な実験を実行するなんてとんでもないことだ。ウクライナ国民はこのことを忘れるべきではない。いずれNATOが引き起こしたこの紛争の帳尻あわせをしなければいけなくなる時が来るのだから。さらにロシアもこのことを決して忘れてはいけないし、許すべきではない。この先、米国との交渉が前進する時が必ず来るのだから。



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