紛争はいよいよ「大詰め」か---英米指導者間の不協和を報じる西側メディア
<記事原文 寺島先生推薦>
The West’s ‘Endgame’ Might Be Nearer Than We Think in Ukraine. Tick Tock — Strategic Culture (strategic-culture.org)
(ウクライナで欧米が「大詰め」になるのは意外と近いかもしれない。)
マーティン・ジェイ(Martin Jay)
2022年6月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年6月23日
ジョー・バイデンは、ゼレンスキーに敵意を示す準備が整ったようです。すでに彼にプーチンとの和平を呼びかけているイギリス人たちと同じように。
ゼレンスキーとワシントンの間の関係は特別なものであったというよりは、実際のところは便宜上行動を共にしていただけでした。しかし、ジョー・バイデンは、すでにプーチンとの和平をゼレンスキーに呼びかけているイギリス人たちと同様に、彼に敵意を示す準備ができているようです。
よく聞かれる質問のひとつに、ウクライナのゼレンスキー大統領をどう見ているかというのがあります。私はいつも、素晴らしい学位を持ち巧みな言葉遣いができる人物であるにもかかわらず彼の役割は常に西側にとって「役に立つバカ」である、と答えています。根拠のない私の考えですが、おそらくアメリカは、ポロシェンコが成果をあげられなかった場合に備えて代わりの候補者を用意しておきたかったのだろうということです。ポロシェンコは2014年にアメリカの干渉によって少し助けてもらって大統領に就任していました。ゼレンスキーはポロシェンコのような大衆迎合型指導者の欠点を補うメディア関係者として、完璧な資格を持っていたのです。ジョー・バイデンの手先はウクライナ人は彼に憧れるだろうと(正しく)推測していました。ゼレンスキーはすべての条件を満たしていたのです。
しかし、自国民と西側諸国の両方から歓迎されていた彼の人気は失墜したのでしょうか。
ワシントン・ポスト紙とその従順な姉妹紙であるイギリスのガーディアン紙を見れば、ゼレンスキー氏が疎まれるのは時間の問題だと考えるのが自然でしょう。バイデンとジョンソンは自国の経済が破綻した責任は彼にあると指弾しています。アメリカ人はインフレと、5ドルをはるかに超えるガソリン価格と折り合いをつけなければなりません。イギリス人も同じようにこの冬のエネルギー価格高騰の危機に直面しています。ですのでこの先両国においては、バイデンやジョンソンの失政から国民の目をそらせようという動きがさらに活発化するでしょう。中間選挙に向けてジョー・バイデンはもう何週間も、プーチンに経済破綻の責任を押しつけようとしています。この中間選挙において民主党が打撃を受ければ、2024年の自身の滑稽な再選に向け、最後のわずかの信頼も奪われそうになっています。うまくいっていないのです。アメリカ国民はそれを受け入れていないので、彼は新しいスケープゴート(身代わりになるもの)を見つけなければならないのです。しかも迅速に。
そこでバイデンは、頼みさえすれば、忠実に偽ニュースを作ってくれるワシントン・ポストのお仲間に目をつけました。この驚くべき記事の内容をどう説明すればいいのでしょうか。ウクライナの大統領はプーチンの侵攻が起こると「警告」されたが「聞く耳を持たなかった」、記録的な400億ドルもの税金をウクライナに送ったが、何の効果もなかった、という中身なのです。バイデンは今、米国民が自分から離反しようとしていることに気づいているのでしょうか。この記事のタイミングとその内容は興味深いと思います。バイデンとゼレンスキーとの良好な関係はもう終わったと見ていいのでしょうか。
ガーディアン紙も似たような記事を書いていますが、以下のような注目に値する記述があります。英国の指導者ボリス・ジョンソンが立てた計画はすべて的外れであり、今日になってもロンドンはウクライナにおいていかなる真の戦略も持っていないというものです。ジョンソンに対するこのバイデンの指弾は痛烈です。記事本編の付け足しのような扱いだったとはいえ、このような辛辣な批判から、ホワイトハウスの現在の考え方を垣間見ることができます。この数週間に大西洋の両側で行われた多くの報道が変化してきたことは、西側の新しいアプローチを示唆しています。彼らはこの紛争とプーチンとの長期的関係をどう見直すべきかを考えているのです。
これは転換点なのでしょうか。
この二つの記事にある左派の提案やヒントをどの程度重視するかにもよりますが、私たちは英米の見解の変化を目撃していると考えることができるでしょう。両国の政治家たちは、疲弊した有権者に対して生活費の上昇をいつまで正当化できるかという点で、もう限界に達しているのです。
ガーディアン紙の記事の中で、西側諸国はプーチンが中国の手に落ちるのを防ぐために、ロシアとどのように平和を築くかを考えた方がよいという指摘がありますが、それは的を射ています。保守党の機関誌であるデイリー・テレグラフ紙ではなく、ガーディアン紙の記事であるということは、バイデンが妥協点、つまりアメリカの直面している苦境を切り抜ける方法を考えていることを示しています。間近に迫ったサウジアラビア訪問(かつて「殺人者」と叱った皇太子に石油増産を事実上懇願する予定)でよい結果が出そうにない状況にあるのです。いま残されている問題は、西側が最終的にこの紛争を「打ち切る」ときはいつか、つまり、西側諸国がゼレンスキーへの支持をやめ、気まぐれなウクライナ大統領との関係を険悪にするのをいつにしたらいいのか、ということだけなのです。いや、そのときはすでに来ているのでしょうか。
The West’s ‘Endgame’ Might Be Nearer Than We Think in Ukraine. Tick Tock — Strategic Culture (strategic-culture.org)
(ウクライナで欧米が「大詰め」になるのは意外と近いかもしれない。)
マーティン・ジェイ(Martin Jay)
2022年6月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年6月23日
ジョー・バイデンは、ゼレンスキーに敵意を示す準備が整ったようです。すでに彼にプーチンとの和平を呼びかけているイギリス人たちと同じように。
ゼレンスキーとワシントンの間の関係は特別なものであったというよりは、実際のところは便宜上行動を共にしていただけでした。しかし、ジョー・バイデンは、すでにプーチンとの和平をゼレンスキーに呼びかけているイギリス人たちと同様に、彼に敵意を示す準備ができているようです。
よく聞かれる質問のひとつに、ウクライナのゼレンスキー大統領をどう見ているかというのがあります。私はいつも、素晴らしい学位を持ち巧みな言葉遣いができる人物であるにもかかわらず彼の役割は常に西側にとって「役に立つバカ」である、と答えています。根拠のない私の考えですが、おそらくアメリカは、ポロシェンコが成果をあげられなかった場合に備えて代わりの候補者を用意しておきたかったのだろうということです。ポロシェンコは2014年にアメリカの干渉によって少し助けてもらって大統領に就任していました。ゼレンスキーはポロシェンコのような大衆迎合型指導者の欠点を補うメディア関係者として、完璧な資格を持っていたのです。ジョー・バイデンの手先はウクライナ人は彼に憧れるだろうと(正しく)推測していました。ゼレンスキーはすべての条件を満たしていたのです。
しかし、自国民と西側諸国の両方から歓迎されていた彼の人気は失墜したのでしょうか。
ワシントン・ポスト紙とその従順な姉妹紙であるイギリスのガーディアン紙を見れば、ゼレンスキー氏が疎まれるのは時間の問題だと考えるのが自然でしょう。バイデンとジョンソンは自国の経済が破綻した責任は彼にあると指弾しています。アメリカ人はインフレと、5ドルをはるかに超えるガソリン価格と折り合いをつけなければなりません。イギリス人も同じようにこの冬のエネルギー価格高騰の危機に直面しています。ですのでこの先両国においては、バイデンやジョンソンの失政から国民の目をそらせようという動きがさらに活発化するでしょう。中間選挙に向けてジョー・バイデンはもう何週間も、プーチンに経済破綻の責任を押しつけようとしています。この中間選挙において民主党が打撃を受ければ、2024年の自身の滑稽な再選に向け、最後のわずかの信頼も奪われそうになっています。うまくいっていないのです。アメリカ国民はそれを受け入れていないので、彼は新しいスケープゴート(身代わりになるもの)を見つけなければならないのです。しかも迅速に。
そこでバイデンは、頼みさえすれば、忠実に偽ニュースを作ってくれるワシントン・ポストのお仲間に目をつけました。この驚くべき記事の内容をどう説明すればいいのでしょうか。ウクライナの大統領はプーチンの侵攻が起こると「警告」されたが「聞く耳を持たなかった」、記録的な400億ドルもの税金をウクライナに送ったが、何の効果もなかった、という中身なのです。バイデンは今、米国民が自分から離反しようとしていることに気づいているのでしょうか。この記事のタイミングとその内容は興味深いと思います。バイデンとゼレンスキーとの良好な関係はもう終わったと見ていいのでしょうか。
ガーディアン紙も似たような記事を書いていますが、以下のような注目に値する記述があります。英国の指導者ボリス・ジョンソンが立てた計画はすべて的外れであり、今日になってもロンドンはウクライナにおいていかなる真の戦略も持っていないというものです。ジョンソンに対するこのバイデンの指弾は痛烈です。記事本編の付け足しのような扱いだったとはいえ、このような辛辣な批判から、ホワイトハウスの現在の考え方を垣間見ることができます。この数週間に大西洋の両側で行われた多くの報道が変化してきたことは、西側の新しいアプローチを示唆しています。彼らはこの紛争とプーチンとの長期的関係をどう見直すべきかを考えているのです。
これは転換点なのでしょうか。
この二つの記事にある左派の提案やヒントをどの程度重視するかにもよりますが、私たちは英米の見解の変化を目撃していると考えることができるでしょう。両国の政治家たちは、疲弊した有権者に対して生活費の上昇をいつまで正当化できるかという点で、もう限界に達しているのです。
ガーディアン紙の記事の中で、西側諸国はプーチンが中国の手に落ちるのを防ぐために、ロシアとどのように平和を築くかを考えた方がよいという指摘がありますが、それは的を射ています。保守党の機関誌であるデイリー・テレグラフ紙ではなく、ガーディアン紙の記事であるということは、バイデンが妥協点、つまりアメリカの直面している苦境を切り抜ける方法を考えていることを示しています。間近に迫ったサウジアラビア訪問(かつて「殺人者」と叱った皇太子に石油増産を事実上懇願する予定)でよい結果が出そうにない状況にあるのです。いま残されている問題は、西側が最終的にこの紛争を「打ち切る」ときはいつか、つまり、西側諸国がゼレンスキーへの支持をやめ、気まぐれなウクライナ大統領との関係を険悪にするのをいつにしたらいいのか、ということだけなのです。いや、そのときはすでに来ているのでしょうか。
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