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モロッコの穀物価格はすでに3倍---食糧不足で大混乱と新たな難民流入が起きる可能性


<記事原文 寺島先生推薦>
The So-Called ‘War of Attrition’ Is Stacked Up in Russia’s Favour. And Kissinger Knows It — Strategic Culture (strategic-culture.org)
(いわゆる「消耗戦」はロシアに有利なように積み重ねられている。そしてキッシンジャーはそれを知っている。)

筆者:マーティン・ジェイ(Martin Jay)

出典:Strategic Culture Foundation

2022年6月5日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年6月21日


差し迫った小麦不足は、中東・北アフリカ諸国(MENA)を反乱に導き、NATO加盟国自身からもブリュッセル*に対する新たなレベルの怒りと反乱が起きるかもしれない。
*(訳註:NATO本部)

 対戦車兵器や弾丸のことは忘れよう。差し迫った小麦不足は、中東・北アフリカ諸国を反乱に導き、NATO加盟国自身からもブリュッセル*に対する新たなレベルの怒りと反乱が起きるかもしれないのだ。

 米国では重要な中間選挙が近づき、バイデンの外交政策への取り組みが弱くなる可能性があるので、EUもまもなく独自の戦略(とくにウクライナに関して)を短期的に検討することになるであろう。これは将来を見据えた多くの要因のためである。ただ、頭が混乱しかつ情報不足になっているジャーナリストたちはまだそこまで考えてはいない。

 EUにとって現実的な問題となっているこれらの要因のうち、最も重要なものは、先ごろ開催された世界経済フォーラムで、論客である元国務長官ヘンリー・キッシンジャーが示唆したものだ。この老政治家の発言はウクライナの代表団を困らせた。彼が、ウクライナでの戦争が世界中でもっと重大な影響を及ぼし始める前に、和平交渉を成立させるために同国の一部をロシアに譲り渡すことを検討してはどうかと言ったからである。

 キッシンジャーは「大混乱」という用語を用いたが、これは中東・北アフリカ諸国の人々が飢餓のために反乱を起こし、MENA地域で政治的な問題が発生することを外交的に示唆する言葉である。多くのMENA諸国は、貧しい地域社会を支援する目的で、パンを生産するために小麦を輸入し、しばしば補助金をつけることで低価格で供給していた。

 これらの国の多くが、ウクライナやロシアの小麦が届かなくなった場合にどう対処するかは不明である。筆者が住むモロッコなどでは、すでに穀物の価格が3倍になっており、そもそも農家が購入することすら困難になっている。国内で収穫された小麦の価格(の買い取り価格)を政府が3倍にするつもりがないなら(財政的に考えるとありえない)、(小麦を栽培する)農家が(儲からない)小麦(の種)を買う意味はほとんどない。

 モロッコの場合、パンを政策的に安い値段のままで維持したいのであれば、赤字分を政府が負担しなければならない。このコストは誰かに転嫁しなければならない。おそらく、EUに助けを求めることになるだろう。そして、ブリュッセルがラバト*の家計を助けることはありえるだろう。しかし、EUはもっと大きな危機に直面することになるかもしれない。というのは、新たな貧困にみまわれた人々がより良い生活を求めて大量の移民となってEUに流入してくることになるからだ。  
*訳註:モロッコの首都 

 キッシンジャーがほのめかしているのは、いわゆる「消耗戦」はウクライナにとっても西側にとってもうまくいかないということである。

 ロシアが西側領域から退出することは避けられず、安全保障と貿易の両面で西側にとって好ましいことではないが、それが元に戻るのは難しいだろう。もしウクライナ戦争によって西側の財源が枯渇し、中東・北アフリカ地域からの新たな移民の流入がEUにもたらされ続けるならば、この状況を元に戻すことは事実上不可能に近いだろう。

 西側メディアの「専門家」の多くは、消費者にわかりやすい全体の枠組みで事実を提示することで読者をだまそうとするが、実際には、その枠組みは、彼ら(ジャーナリスト)自身がおそらく把握するのに苦労している現場の事実とは無関係なのである。

 実際、「消耗戦」という言葉が実態とは無関係で飛び交っている(通常、このような戦争は両当事者が停滞している場合であるが、ウクライナではまったくそれはあてはまらない)。

 第二に、ここ数週間、ロシアに占領されたウクライナの「20%」という言及をよく目にするようになった。この数字は、間違いなくゼレンスキーが提示したもので、ロンドンの防衛担当記者や編集者が何度も何度も基準点として使ってきたものである。

 しかし、軍事専門家は、ウクライナを支持する英国の専門家でさえ、この数字は無関係だと断じている。では、なぜ煙幕を張るのか。

 いくつかの要因があるが、紛争という歴史的大事件を取材する今日のジャーナリストは、20年前のジャーナリストと同じ資質を持っているわけではない、ということが大きい。知性や教育のレベルが違うし、ジャーナリズムの基準も明らかに違う。防衛特派員と呼ばれる人たちは、多くの場合、論説委員になっている。彼らは報道するというよりも論評する。

 報道されず、社説のネタにもならないのは、西側諸国にはウクライナ戦争をこれ以上続ける余裕はない、という考えだ。EU自身がロシアの石油を禁止するというNATO独自の指令(モスクワに経済的影響を与える唯一の実質的制裁)を支持することすらできないのなら、西側のだれが、EUがこの戦いにおいて何らかの役割を果たしておりそれらは真剣に受けとめられている、と思うだろうか。

 ブリュッセル(NATO本部)は、ゼレンスキーに「最後の一人まで戦え」と言わんばかりに煽り続けているが、キッシンジャーの言うことが正しければ、NATO加盟国は自分の身に降りかかる災難を支援することはできないだろう。

 EU諸国は、アラブ諸国からの難民の再流入による負担に、政治的にも財政的にも対処できない。シリアのときもそうだった。とりわけ、新型コロナの後は、市民が好感を持つ要素はもはや存在せず、それは政治的エリートに向けられた怒りと絶望に取って代わられている。難民流入を受け入れるというのはもう選択肢にはなりえないのである。

 もし、そのような流入が起これば、その影響は直ちに巨大なものとなるだろう。多くの加盟国が、EUへの支持という名目とはいえ、だんだん薄れていってはいるが、いまなお抱き続けてきた信頼感は、たちまちに指弾に変わり、国際的な演技者としてのEUはその翼を切り落とされなければならなくなるだろう。

 中東・北アフリカ諸国の指導者たちも、小麦禁止令に神経を尖らせ、「第二のアラブの春」が来るのではと懸念しているに違いない。もしある国でとつぜんに転落が始まったら——例えば、全小麦消費量の60%をウクライナから輸入しているエジプトなどで——他の国に連鎖反応が起きるかもしれない。これは2010年のチュニジアの反乱が通例 「アラブの春」 と呼ばれるものの引き金となったのとまったく同じだ。

 いまや、欧州委員会の数十億ユーロ規模の宣伝部門は、間違いなく、非難の矛先を他に向けるための報道発表や大げさな演説をすでに準備していることだろう。
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