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西側メディアの論調に変化---ロシア進撃、天に唾することになった経済制裁の中で

<記事原文 寺島先生推薦>

As sanctions fail to work and Russia's advance continues, Western media changes its tune on Ukraine
Western media outlets, once cheerleaders for Kiev, are increasingly warning sanctions are are redundant and Ukraine needs to make peace

(制裁が効かず、ロシアの進撃が続く中、欧米メディアはウクライナに対して態度を変える。
かつてはキエフを応援していた欧米メディアも、制裁は無意味であり、ウクライナは平和を築く必要があると警告するようになっている。)

筆者:ネボイサ・マリッチ(Nebojsa Malic)



2022年6月2日

出典:RT

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年6月15日



スベロドネツクの町の地方行政局に掲げられたロシアとドネツク人民共和国(DPR)の旗 © Sputnik / Sergey Averin

 西側諸国は、ウクライナ紛争はキエフにとってうまくいっていると―観察可能なあらゆる現実に反して―主張し続けているが、主要メディアは経済面での状況にますます不安を感じている。米国とその同盟国が課した禁輸措置が、当初の目的どおりロシア経済を潰しているのではなく、むしろ自分たちの経済を破壊していることを認める観察者がますます増えてきているのだ。

 一方、主要な出版物の中には最前線の実情について報道するものも出始めており、初期のようにヴォロディミル・ゼレンスキー事務所が喧伝する「キエフの亡霊*」や「蛇の島13人**」といった神話を無批判に引用することはなくなってきている。西側諸国はキエフ政府を無条件に支援するのをやめ、交渉による和平を推進すべきだという示唆も、漠然とではあるが出てきている。

*1人のウクライナ空軍パイロットが複数のロシア軍機を撃墜したとする話
**ロシア海軍が、黒海の小さな島(蛇島)にいるウクライナ国境警備隊に向かって「武器を捨てて降伏するよう提案する。さもなければ爆撃する」と呼びかけたところ、「地獄に落ちろ!」と返答。全員死亡したという話である。この13人の守備隊にウクライナ政府は英雄の称号を与えたが、彼らは生きていた。


 ガーディアン紙の経済担当編集者ラリー・エリオットは、木曜日(6月2日)に「ロシアは経済戦争に勝利している。西側がロシアに対して経済戦争を仕掛けてから3ヶ月が経つが、計画通りには進んでいない。それどころか、事態は実に悪くなっている」と書いている。

 同紙のエリオットは実際に、最近アメリカがウクライナにロケット弾発射機を送ることを発表したのは、制裁が効いていない証拠だと主張している。「エネルギー禁止やロシア資産の差し押さえがこれまで出来なかったこと、つまりプーチン(ロシア大統領)に軍隊を撤退させることを、アメリカからの近代的軍事技術で達成することが期待されている」。



関連記事:クレムリン、現在の対米関係を説明(2021年6月)

 同紙コラムニスト、サイモン・ジェンキンスも5月30日の評論で、禁輸措置はロシアを撤退させることに失敗したと述べ、EUは「ウクライナの戦争努力を助けることに専念」し、制裁は「自滅的で無意味で残酷」なので撤回すべきだと主張している。

 ジェンキンス氏が指摘するように、制裁は実際に石油や穀物といったロシアの輸出品を値上げしている。そのため、モスクワは貧しくなるどころか豊かになり、一方でヨーロッパでは燃料不足、アフリカでは食料不足に陥っているのだ。

 ただ、ジェンキンズ氏は西側諸国の兵器の有効性に関しては間違っていることに注目してほしい。というのも、ロシアとドンバスの軍隊が、ポパスナヤからリマンまで、この1ヶ月の間に次々と勝利を収めているからだ。5月26日付のワシントン・ポスト紙も、ウクライナのある部隊がセベロドネツク付近で兵力の半分以上を失い、後方に退却したことを衝撃的なほどありのまま報じている。ちなみに、その指揮官は、この記事の取材後、国家反逆罪で逮捕されている。

 この現実は、テレグラフ紙の国防担当編集者であるコン・コフリン氏でさえ無視できなかった。彼は毎週のようにロシアの敗北を予言することで、ある種のミーム*になっている。その彼ですら今、モスクワが「衝撃的な勝利」を収めるかもしれないと語っている。ただ、それはキエフにはさらに多くの武器が必要だという彼の主張のためではあるのだが。

*人から人へと伝えられる情報



©Telegram/screenshot

 西側諸国がロシアを打ち負かすことに失敗したことは、モスクワに必ずしも好意的でないエコノミスト誌を見ても明らかだ。同紙は1カ月前、ロシア経済が最初の制裁ショックから立ち直ったことをしぶしぶ認めている。一方、エネルギー不足、生活費の高騰、記録的なインフレに対処しなければならないのは、西側諸国である。粉ミルクが店頭になく、ガソリンが買えないのはロシア人ではなくアメリカ人の方なのだ。

 欧米の制裁政策に対する「不満の春」が、大西洋のヨーロッパ側だけに留まらないのは、そのためかもしれない。火曜日(5月31日)、ニューヨークタイムズ紙はクリストファー・コールドウェルの論説を掲載し、バイデン政権がキエフにどんどん武器を送ることで「交渉の道を閉ざし、戦争を激化させるように働いている」と批判している。

 コールドウェル氏は、「米国は、同盟国を武装させることと戦闘に参加することは同じではないという虚構を維持しようとしている」と書き、この区別は情報化時代において「ますます不自然に」なってきていると指摘した。その1日後、アメリカのサイバー司令部のトップは、ウクライナのためにロシアに対する攻撃的な作戦を実行したことを認めた。



関連記事:米サイバー長官、ウクライナでの対ロシア攻撃を認める。

 コールドウェル氏は、アメリカは「ウクライナ人に、エスカレートする戦争に勝てると信じる理由を与えてしまった」と書いている。実際、ダボス会議でヘンリー・キッシンジャーが紛争の早期解決を主張しようとすると、彼はゼレンスキーの事務所から罵倒され、すぐにウクライナ国家の敵に指定された。

 (戦闘から抜け出すための)出口ランプをもっと早く提供せよという声が、ごくわずかだが、以前からあった。しかし、キエフを応援するメディアの喧噪の中で、その声は掻き消されてしまっていた。5月18日、いつもはタカ派的な外交問題評議会のチャールズ・クプチャン氏は、『アトランティック』誌上でウクライナに、いわば「Wを取る(勝ちを逃がさない)」よう助言している。

 「ロシアはすでに決定的な戦略的敗北を喫している」と彼は書いている。「NATOにとってもウクライナにとっても、戦いを強要して相応のリスクを冒すよりも、この成功をポケットに入れることのほうが戦略的に賢明である。NATOは、ウクライナ政府に流血を止める方法を早急に助言する必要がある、とクプチャン氏は付け加えた。

 そのまさに翌日、ニューヨークタイムズの社説は、ウクライナのロシアに対する決定的な勝利は「現実的な目標ではない」とし、ジョー・バイデン米大統領はゼレンスキーに、米国ができることには限界があることを伝えるべきだと、クプチャン氏の主張に同意した。

 「ウクライナ政府の決断は、その手段とウクライナがあとどれだけの破壊に耐えられるかかという現実的な評価に基づいていることが肝要だ」と彼らは書いている。



関連記事:ウクライナの交渉担当者、ロシアとの取引に否定的

 しかし、ホワイトハウスとキエフの両方からの公式声明から判断すると、クプチャン氏とNYTが助言した会話は実行されなかった。その代わりに、アメリカはウクライナに白紙委任状を送り続けているのだ。

 第一次世界大戦との類似性と言えば、国防総省に助言を与えるシンクタンクであるランド研究所の上級政治分析官が、火曜日(5月31日)のフォーリン・アフェアーズ誌で次のようなことを述べている。サミュエル・チャラップ氏によれば、中立国ベルギーが隣りの国々よって作られたことは、ほぼ1世紀にわたって他国の利益となり、イギリスはそれを維持するために1914年にドイツと戦うことを厭わなかったという。3月下旬のイスタンブールでの会談で提案された中立の取り決めは、同じものをウクライナにも提供することができる、ということである。

 キエフのウクラニンスカ・プラウダ紙によれば、英国のボリス・ジョンソン首相が4月に個人的に介入し、ウクライナ人に「あなた方がモスクワと取引したいと言っても、西側の集団はそれを認めない」と伝え、その協議を中断させたということだが、それはあまりにも残念である。


筆者Nebojsa Malicはセルビア系アメリカ人のジャーナリスト、ブロガー、翻訳家で、2000年から2015年までAntiwar.comに定期コラムを執筆し、現在はRTの編集委員である。
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