新しい世界金融体制に向けて--- セルゲイ・グラジエフ
新しい世界金融体制に向けて--- セルゲイ・グラジエフ
<記事原文 寺島先生推薦>
Towards A New Global Financial System: Sergey Glazyev
ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)著
グローバルリサーチ、2022年4月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月5日
***

デジタル通貨に支えられた世界の新しい通貨体制は、新しい複数の外国貨幣と通貨バスケットに裏打ちされることになる。そしてそれは、西側の負債とIMFが誘発した緊縮財政から南半球を解放するものである。
通貨バスケット・・・固定相場制の一つで、複数の貿易相手国の為替相場を一定水準に固定する制度。 一般的に貿易量などによって複数の通貨レートの比重を決め、加重平均して自国通貨のレートを算出する。 特定の通貨が急激に変動しても、複数の通貨で構成されているため影響が緩和され、為替相場が安定しやすい。
セルゲイ・グラジエフは、現在の地政学的・地理経済的嵐の渦中にいる人物である。彼は世界で最も影響力のある経済学者の一人で、ロシア科学アカデミーの会員であり、2012年から2019年までクレムリンの大統領顧問だった。そして過去3年間、ユーラシア経済連合(EAEU)の統合とマクロ経済担当の大臣としてモスクワの超戦略資産構成を指揮している。
グラジエフの最近の知的生産について言えば、エッセイ『制裁と主権』や、ロシアのビジネス誌のインタビューで新しい地政学的観点についての幅広い議論を展開するなど、変革的なものばかりである。
最近のもう一つのエッセーで、グラジエフがザポロジェでどのように育ったのかを書いている。「私はザポロジェで育ちましたが、そこは現在激しい戦闘が行われている場所の近くです。ウクライナのナチスは、私の小さな祖国には存在しなかったのです。今行われている戦争はそのネオナチを滅ぼすための戦争です。私は、ウクライナの学校で学び、ウクライナの文学と言語をよく知っています。ウクライナ語は、科学的な観点から言えば、ロシア語の方言です。ウクライナの文化にロシア恐怖症のようなものは見当たりません。ザポロジェで17年間生活していましたが、バンデリスト[訳注:ナチに協力したステパン・バンデラを崇拝する人々]には一度も会ったことがありませんでした。」
グラジエフは、忙しいスケジュールの合間を縫って、今後、特に「南半球」に焦点を当てた対話を続けていくために、最初の一連の質問に丁寧に答えてくれた。これは、「オペレーションZ[訳注:ロシアのウクライナ侵攻作戦]」開始以来、初めての海外メディアとの対談だ。ロシア語を英語に翻訳してくれたアレクセイ・スボティン(Alexey Subottin)さん、ありがとうございました。
*
The Cradle[訳注:ニュースサイト]: あなたは今、経済地政学的発展が革新的に進行している最前線におられます。 EAEU(ユーラシア経済連合)と中国の連合による、米ドルを介さない新しい通貨・金融体制の設計が進んでおり、その草案の完成も間近にせまっています。この体制は、ブレトン・ウッズ体制の第3弾とは呼ぶべきものではなく、これまでの「ワシントン主導のもとでの常識」に代わるものであり、「南半球」の要求に応えるものだと思いますが、その特徴についてお聞かせください。
ブレトン・ウッズ体制・・・1944年に定められた、アメリカ合衆国ドルを基軸とした固定為替相場制のこと。その後1971年に変動為替に移行した。
グラジエフ:ロシア恐怖症による興奮状態の中で、米国の支配者層は、ロシアに対するハイブリッド戦争[訳注:正規の戦闘だけではなく、サイバー攻撃や情報戦などの非戦闘行為を伴う戦争のこと]で最後の切り札を使いました。欧米の中央銀行が保有するロシアの外貨準備を「凍結」して、米国、EU、英国の金融当局がドル、ユーロ、ポンドの基軸通貨としての地位を傷つけたのです。この措置は、ドルを基軸とする世界経済秩序の解体を急激に加速させました。
外貨準備・・各国の通貨当局の管理下にある、直ちに利用可能な対外資産のこと
10年以上前、アスタナ経済フォーラムの仲間と私は、参加国の通貨を指標とした新たな統合取引通貨に基づく新たな世界経済体制への移行を提案しました。その後、私たちは、約20の交易商品を追加して、基礎となる通貨バスケットを拡大することを提案しました。このように拡大された通貨バスケットに基づく通貨単位は、数学的にモデル化された演算により、高い弾力性と安定性が実証されました。
現在、米国はその覇権を維持するために戦っていますが、かつて英国が2つの世界大戦を引き起こしたものの、植民地経済体制の陳腐化によって帝国と世界の中心的地位を維持できなかったのと同様に、失敗することが運命づけられているのです。奴隷労働に基づく英国の植民地経済体制は、米国とソ連の構造的により効率的な経済体制に追い抜かれました。米国もソ連も、垂直統合型[訳注:生産者と消費者が分かれておらず一体となっていること]の体制で人的資本を管理することに長けており、世界をそれぞれの勢力圏に分割していたのです。ソ連邦の崩壊後、新しい世界経済秩序への移行が始まりました。そして現在、この以降は、米国の世界支配の基盤であったドル依存の世界経済体制の崩壊が目前に迫っているという結論に達しようとしています。
中華人民共和国とインドで生まれた新しい一点収束型経済体制は、中央集権的な戦略立案と市場経済、国家による貨幣的・物理的な社会基盤の管理と起業家精神の両方の利点を組み合わせた、次の必然的な発展段階と言えるでしょう。この新しい経済体制は、アングロサクソンやヨーロッパの代替案よりも実質的に強力な方法であり、共通の幸福を高めるという目標を中心に社会の様々な階層を団結させました。これが、ワシントンが始めた世界規模でのハイブリッド戦争で勝つことができない主な理由です。これはまた、現在のドル中心の世界金融体制が、新しい世界経済秩序に参加する国々の合意に基づく新しい体制によって取って代わられる主な理由でもあります。
移行の最初の段階では、これらの国々は自国通貨と二国間通貨交換に裏打ちされた決済機能を使用することに依存します。この時点では、価格形成はまだほとんどがドル建ての様々な取引所での価格によって行われています。ロシアが海外に所有しているドル、ユーロ、ポンド、円の外貨準備高が「凍結」されたのですから、これらのドルやユーロやポンドや円立ての外貨準備高を蓄積し続ける国はなくなるでしょう。その代わりに諸国は自国通貨と金を使用するようになるでしょう。
移行の第2段階には、ドルを参考にしない新しい価格形成機能が含まれます。国内通貨での価格形成にはかなりの間接費が伴いますが、ドル、ポンド、ユーロ、円などの「裏付けのない」危険な通貨での価格設定よりも魅力的です。唯一残っている世界通貨候補である人民元は、その兌換性の欠如と中国の資本市場への外部からの進入の制限のために、その地位を占めることはありません。さらに価格基準としての金の使用は、支払いのために不便なので制約されます。
新経済秩序移行の最終段階である第3段階は、透明性、公平性、信頼度、効率性の原則に基づく国際合意による新しいデジタル決済通貨の創設になります。この段階では、私たちが開発した通貨単位のモデルがその役割を果たすと期待しています。このような通貨は、BRICS諸国の通貨準備高を貯蔵して発行することができ、関心を持つすべての国が参加することができます。通貨バスケット方式における各通貨の比重は、各国のGDP(購買力平価などに基づいた値)、国際貿易シェア、参加国の人口や領土の広さなどに比例させることができます。
購買力平価・・・ある国の通貨建ての資金の購買力が、他の国でも等しい水準となるように、為替レートが決定されるという考え方。あるモノが日本で120円、米国で1ドルである場合、1ドル120円であれば、120円(1ドル)は日本でも米国でも、それを1単位として購買する力を持っており、購買力平価が成立していることになる。
さらに、バスケット方式には、金などの貴金属、主要な工業用金属、炭化水素、穀物、砂糖、水などの天然資源など、取引所で取引される主要な商品の価格指数を含めることも可能でしょう。この通貨の裏付けと弾力性を高めるために、やがては関連する国際資源備蓄を設けることができます。この新しい通貨は、国境を越えた支払いにのみ使用され、あらかじめ定められた計算式に基づいて参加国に発行される予定です。参加国がバスケット方式ではなく自国通貨を使用するのは、自国の投資や産業に必要な資金調達のための信用創造と、政府系ファンドに使用する資金のためです。そして資本収支の国境を越えた流れは、引き続き各国の通貨規制によって管理されます。
信用創造・・・銀行が貸し出しを繰り返すことによって、銀行全体として、最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨をつくりだすこと
The Cradle: マイケル・ハドソンは以下のような具体的な問いを立てています。それは、「この新しい体制によって、南半球の国々がドル建て債務を停止することが可能になり、(外国為替における)支払い能力がこの新しい体制に基づくことになった場合、これらの融資が原材料と紐付けされたり、あるいは中国の場合のように、社会資本への投資による有形株式所有と紐付けされる際は、対外債務は非ドル建てでおこなうことが可能になるのか?」というものです。
グラジエフ:新しい世界経済秩序への移行は、ドル、ユーロ、ポンド、円での債務の履行を組織的に拒否することを伴うでしょう。この点では、イラク、イラン、ベネズエラ、アフガニスタン、ロシアの外貨準備を数兆ドル単位で奪った通貨発行諸国の例と変わりないでしょう。アメリカ、イギリス、EU、日本は義務を果たすことを拒否し、自国通貨で保有する他国の富を没収したのだから、ほかの国々は返済や融資の義務を負わなければいけなくなることはないでしょう。
いずれにせよ、新しい経済体制への参加は、古い経済体制における義務によって制約されることはないでしょう。南半球の国々は、ドル、ユーロ、ポンド、円での累積債務に関係なく、新体制に完全に参加することができます。仮にこれらの通貨での債務が不履行に陥ったとしても、新金融体制での信用度には全く関係がありません。また、鉱物などの採掘産業が国有化されても、同様に混乱は生じません。さらに、これらの国が新経済体制の裏付けとして天然資源の一部を留保すれば、新通貨単位の通貨バスケットにおけるそれぞれの国の比重が高まり、その国の通貨準備高と信用力が高まります。また、貿易相手国との二国間通貨スワップ協定により、共同投資や貿易金融のための十分な資金を確保することができます。
The Cradle:先生は最新のエッセイ『ロシア勝利の経済学』の中で、「技術における新しい観点の形成と新しい世界経済秩序の制度形成を加速する」ことを呼びかけておられます。その中で、特に「EAEU加盟国の自国通貨による決済体制」の構築と、「EAEU、SCO、BRICSにおける独立した国際決済体制の開発と実施」を提案していますが、これは米国が支配するSWIFT体制に対する重大な依存を排除できるのではないでしょうか?EAEUと中国が共同で、SCO加盟国、他のBRICS加盟国、ASEAN加盟国、西アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々に新体制を「売り込む」ことは可能なのでしょうか?そして、その結果、「西側」と「それ以外」という二極化した地政学的経済が生まれるのでしょうか?
グラジエフ:確かにその通りです。残念なことに、ロシアの通貨当局は、外貨準備を西側に奪われた後も、依然としてワシントンの枠組みに属し、ドル建て体制の仕組みに則っています。一方、最近の制裁措置は、他の非ドル圏諸国の間で広範な自省を促しました。西側の「影響力のある代理人」は依然としてほとんどの国の中央銀行を支配し、IMFが定めた自殺行為のような政策を適用することを強要しています。しかし、現時点では、こうした政策は明らかに非西洋諸国の国益に反しているため、非西洋諸国の当局は金融安全保障について正当な懸念を募らせています。
新しい世界経済秩序の形成において、間違いなく中国とロシアが中心的な役割を果たす可能性があると指摘されています。しかし残念ながら、現在のロシア中央銀行(CBR)の指導者は、ワシントン規範の知的袋小路に閉じこもり、新しい世界経済・金融の枠組みを構築する際に創設の一役を担うことができません。それと同時に、ロシア中央銀行は、既に現実を直視し、SWIFT に依存しない銀行間通信体系のための国家体制を構築し、外国の銀行にも開放しなければなりませんでした。主要参加国との間では、すでに通貨スワップ協定が設定されています。EAEU加盟国間の取引のほとんどはすでに自国通貨建てであり、国内貿易に占める自国通貨の割合は急速に高まっています。
中国、イラン、トルコとの貿易でも、同様の移行が進んでいます。インドも同様に自国通貨建て決済に切り替える用意があることを示唆しています。自国通貨による決済のための決済機能を開発するために多くの努力が払われています。これと並行して、銀行を通さない決済をデジタルで行う開発の取り組みも進んでいます。この決済では、金やその他の上場投資信託取引所商品、すなわち「安定コインという名の暗号通貨」が結び付けられることになります。
銀行系統に課された最近の米国と欧州の制裁措置により、こうした取り組みが急増しています。新しい金融体制に取り組んでいる国々は、新しい貿易通貨の枠組みと準備の完了を発表するだけで、そこから新しい世界金融秩序の形成過程がさらに加速されることになります。それを実現するためには、SCO(上海協力機構)やBRICSの定例会議で発表するのが最善策でしょう。私たちはそれに取り組んでいます。
The Cradle: これは、西側諸国の独立系専門家たちによる議論において、絶対的に重要な問題でした。ロシア中央銀行は、ロシアの金生産者に対し、ロシア政府や中央銀行が支払うよりも高い価格を得るために、ロンドン市場で金を売るように助言していたのでしょうか?米ドルに代わる新たな通貨が、主に金をもとにしたものでなければならないことを、全く予期していなかったのでしょうか?今回のことをどう評価しますか?短期的、中期的にロシア経済にどれだけの損害を与えたのでしょうか?
グラツィエフ: IMFの勧告に沿って実施されたロシア連邦準備銀行の金融政策は、ロシア経済にとって壊滅的な打撃となりました。外貨準備高約4,000億ドルの「凍結」と、オリガルヒ(財閥)が経済から吸い上げた1兆ドル超の国外の西側への流出という複合的な災害が起こりました。この背景となったのもCBRの壊滅的な政策のせいでした。その政策とは、外国為替レートの急騰により 過度に高い実質金利という、同様に悲惨なロシア連邦準備制度の政策を背景にして発生したものです。その結果、約20兆ルーブルの投資不足と約50兆ルーブルの生産不足が発生したと推定されます。
ワシントンの勧告に従って、CBRは過去2年間、金の購入を停止し、国内の金採掘業者に事実上、生産量の全額(結果的に500トンの金)を輸出させました。最近になって、この過ちとその弊害は非常に明白になっています。現在、中央銀行は金の購入を再開しており、過去10年間のように国際的な投機家の利益のために「インフレ目標」を設定するのではなく、国民経済の利益のために健全な政策を継続することを望んでいます。
The Cradle: ロシアの外貨準備の凍結について、FRB(米国連邦準備制度)だけでなくECB(欧州中央銀行)も相談を受けていない。ニューヨークやフランクフルトでは、もし相談があれば反対しただろうと言われています。個人的に凍結を予想していましたか?また、ロシアの指導者はそれを予期していたのでしょうか?
グラジエフ: すでに紹介した私の著書『最後の世界大戦』は、2015年の時点で出版されていますが、いずれそうなる可能性が非常に高いと論じていました。このハイブリッド戦争では、経済戦争と情報戦・認知戦が重要な戦場となります。この両戦線において、米国とNATO諸国は圧倒的な優位に立っており、いずれこれを全面的に活用するだろうと、私は何の疑いも持ってはいませんでした。
私は長い間、外貨準備のドル、ユーロ、ポンド、円を、ロシアで豊富に産出される金で置き換えることを主張してきました。しかし、多くの国の中央銀行や格付け会社、主要な出版社で重要な役割を担っている欧米の影響力のある代理人たちは、残念ながら私の考えを封じることに成功しました。例えば、FRBとECBの高官が、反ロシア金融制裁の策定に関与していたことは間違いないでしょう。これらの制裁は一貫して激しさを増しており、EUにおける官僚的な意思決定の難しさはよく知られていますが、ほとんど即座に実行されているのです。
The Cradle: ロシア中央銀行の総裁にエリヴィラ・ナビウリナ氏が再登板しました。これまでの彼女の行動と比較して、何が違うのでしょうか?また、それぞれの政策の進め方に関わる主な指針は何でしょうか。
グラジエフ:私たちの政策の進め方の違いは、非常に単純です。彼女の政策は、IMFの勧告とワシントンの視点からの考え方を正統に実行したものであり、私の勧告は、科学的手法と過去100年にわたる先進国での経験則に基づくものです。
The Cradle: ロシアと中国の戦略的パートナーシップは、プーチン大統領と習近平国家主席自身が常に再確認しているように、ますます鉄壁のものとなっているように思われます。しかし、西側諸国だけでなく、ロシアの一部の政界でも、この戦略的パートナーシップに反対する声があがっています。この極めて微妙な歴史的岐路において、中国はロシアのいつも変わらぬ味方として、どの程度信頼できるのでしょうか。
グラジエフ: ロシアと中国の戦略的パートナーシップの基盤は、常識と共通の利益、そして数百年にわたる協力の経験です。米国の支配者層、世界における覇権的地位を守るために、中国を主要な経済的競争相手、ロシアを主要な対抗勢力として、世界規模でのハイブリッド戦争を開始しました。当初、米国の地政学的な試みは、ロシアと中国の間の対立を作り出すことを目的としていました。西側の影響力を持つ代理人が、我々のメディアで外国人嫌いの考えを増幅させ、自国通貨での支払いに移行しようとする試みを妨害していたのです。中国側では、西側の影響力のある代理人が、米国の利益の要求に沿うように政府を動かしていました。
しかし、ロシアと中国の主権的利益は、論理的には、ワシントンから発せられる共通の脅威に対処するために、戦略的パートナーシップと協力関係を深めることにつながりました。米国の対中関税戦争と対露金融制裁戦争は、こうした懸念を立証し、両国が直面している明確な現在の危機を明らかにしました。生存と抵抗という共通の利益が中国とロシアを結び付けており、両国は経済的に大きく共生しています。両者は互いに競争上の優位性を補完し合い、高めています。このような共通の利益は、長期にわたって持続するでしょう。
中国政府と中国国民は、日本の占領からの解放と、戦後の中国の工業化においてソ連が果たした役割を非常によく覚えています。両国は戦略的パートナーシップのための強力な歴史的基盤を有しており、共通の利益のために緊密に協力する運命にあります。一帯一路とユーラシア経済連合の結合によって強化されるロシアと中国の戦略的パートナーシップは、プーチン大統領の計画である大ユーラシアパートナーシップの基礎となり、新しい世界経済秩序の核となることを期待しています。
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この記事は、The Cradleに掲載されたものです。
ペペ・エスコバル ブラジル生まれ。アジア・タイムズ紙特派員兼編集長、モスクワのコンソーシアム・ニュース誌およびストラテジック・カルチャー誌のコラムニスト。1980年代半ばからロンドン、パリ、ミラノ、ロサンゼルス、シンガポール、バンコクに在住し、海外特派員として活動。パキスタン、アフガニスタン、中央アジアから中国、イラン、イラク、中東まで幅広く取材している。著書に『Globalistan - How the Globalized World is Dissolving into Liquid War』『Red Zone Blues: A Snapshot of Baghdad during the Surge』がある。イタリアの「The Empire and The Crescent」と「Tutto in Vendita」の寄稿編集者でもある。最近の2冊は『Empire of Chaos』と『2030』である。また、パリを拠点とするEuropean Academy of Geopoliticsのメンバーでもある。パリとバンコクを行き来する生活を送っている。
グローバル・リサーチ誌に定期的に寄稿している。
<記事原文 寺島先生推薦>
Towards A New Global Financial System: Sergey Glazyev
ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)著
グローバルリサーチ、2022年4月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年5月5日
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デジタル通貨に支えられた世界の新しい通貨体制は、新しい複数の外国貨幣と通貨バスケットに裏打ちされることになる。そしてそれは、西側の負債とIMFが誘発した緊縮財政から南半球を解放するものである。
通貨バスケット・・・固定相場制の一つで、複数の貿易相手国の為替相場を一定水準に固定する制度。 一般的に貿易量などによって複数の通貨レートの比重を決め、加重平均して自国通貨のレートを算出する。 特定の通貨が急激に変動しても、複数の通貨で構成されているため影響が緩和され、為替相場が安定しやすい。
セルゲイ・グラジエフは、現在の地政学的・地理経済的嵐の渦中にいる人物である。彼は世界で最も影響力のある経済学者の一人で、ロシア科学アカデミーの会員であり、2012年から2019年までクレムリンの大統領顧問だった。そして過去3年間、ユーラシア経済連合(EAEU)の統合とマクロ経済担当の大臣としてモスクワの超戦略資産構成を指揮している。
グラジエフの最近の知的生産について言えば、エッセイ『制裁と主権』や、ロシアのビジネス誌のインタビューで新しい地政学的観点についての幅広い議論を展開するなど、変革的なものばかりである。
最近のもう一つのエッセーで、グラジエフがザポロジェでどのように育ったのかを書いている。「私はザポロジェで育ちましたが、そこは現在激しい戦闘が行われている場所の近くです。ウクライナのナチスは、私の小さな祖国には存在しなかったのです。今行われている戦争はそのネオナチを滅ぼすための戦争です。私は、ウクライナの学校で学び、ウクライナの文学と言語をよく知っています。ウクライナ語は、科学的な観点から言えば、ロシア語の方言です。ウクライナの文化にロシア恐怖症のようなものは見当たりません。ザポロジェで17年間生活していましたが、バンデリスト[訳注:ナチに協力したステパン・バンデラを崇拝する人々]には一度も会ったことがありませんでした。」
グラジエフは、忙しいスケジュールの合間を縫って、今後、特に「南半球」に焦点を当てた対話を続けていくために、最初の一連の質問に丁寧に答えてくれた。これは、「オペレーションZ[訳注:ロシアのウクライナ侵攻作戦]」開始以来、初めての海外メディアとの対談だ。ロシア語を英語に翻訳してくれたアレクセイ・スボティン(Alexey Subottin)さん、ありがとうございました。
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The Cradle[訳注:ニュースサイト]: あなたは今、経済地政学的発展が革新的に進行している最前線におられます。 EAEU(ユーラシア経済連合)と中国の連合による、米ドルを介さない新しい通貨・金融体制の設計が進んでおり、その草案の完成も間近にせまっています。この体制は、ブレトン・ウッズ体制の第3弾とは呼ぶべきものではなく、これまでの「ワシントン主導のもとでの常識」に代わるものであり、「南半球」の要求に応えるものだと思いますが、その特徴についてお聞かせください。
ブレトン・ウッズ体制・・・1944年に定められた、アメリカ合衆国ドルを基軸とした固定為替相場制のこと。その後1971年に変動為替に移行した。
グラジエフ:ロシア恐怖症による興奮状態の中で、米国の支配者層は、ロシアに対するハイブリッド戦争[訳注:正規の戦闘だけではなく、サイバー攻撃や情報戦などの非戦闘行為を伴う戦争のこと]で最後の切り札を使いました。欧米の中央銀行が保有するロシアの外貨準備を「凍結」して、米国、EU、英国の金融当局がドル、ユーロ、ポンドの基軸通貨としての地位を傷つけたのです。この措置は、ドルを基軸とする世界経済秩序の解体を急激に加速させました。
外貨準備・・各国の通貨当局の管理下にある、直ちに利用可能な対外資産のこと
10年以上前、アスタナ経済フォーラムの仲間と私は、参加国の通貨を指標とした新たな統合取引通貨に基づく新たな世界経済体制への移行を提案しました。その後、私たちは、約20の交易商品を追加して、基礎となる通貨バスケットを拡大することを提案しました。このように拡大された通貨バスケットに基づく通貨単位は、数学的にモデル化された演算により、高い弾力性と安定性が実証されました。
現在、米国はその覇権を維持するために戦っていますが、かつて英国が2つの世界大戦を引き起こしたものの、植民地経済体制の陳腐化によって帝国と世界の中心的地位を維持できなかったのと同様に、失敗することが運命づけられているのです。奴隷労働に基づく英国の植民地経済体制は、米国とソ連の構造的により効率的な経済体制に追い抜かれました。米国もソ連も、垂直統合型[訳注:生産者と消費者が分かれておらず一体となっていること]の体制で人的資本を管理することに長けており、世界をそれぞれの勢力圏に分割していたのです。ソ連邦の崩壊後、新しい世界経済秩序への移行が始まりました。そして現在、この以降は、米国の世界支配の基盤であったドル依存の世界経済体制の崩壊が目前に迫っているという結論に達しようとしています。
中華人民共和国とインドで生まれた新しい一点収束型経済体制は、中央集権的な戦略立案と市場経済、国家による貨幣的・物理的な社会基盤の管理と起業家精神の両方の利点を組み合わせた、次の必然的な発展段階と言えるでしょう。この新しい経済体制は、アングロサクソンやヨーロッパの代替案よりも実質的に強力な方法であり、共通の幸福を高めるという目標を中心に社会の様々な階層を団結させました。これが、ワシントンが始めた世界規模でのハイブリッド戦争で勝つことができない主な理由です。これはまた、現在のドル中心の世界金融体制が、新しい世界経済秩序に参加する国々の合意に基づく新しい体制によって取って代わられる主な理由でもあります。
移行の最初の段階では、これらの国々は自国通貨と二国間通貨交換に裏打ちされた決済機能を使用することに依存します。この時点では、価格形成はまだほとんどがドル建ての様々な取引所での価格によって行われています。ロシアが海外に所有しているドル、ユーロ、ポンド、円の外貨準備高が「凍結」されたのですから、これらのドルやユーロやポンドや円立ての外貨準備高を蓄積し続ける国はなくなるでしょう。その代わりに諸国は自国通貨と金を使用するようになるでしょう。
移行の第2段階には、ドルを参考にしない新しい価格形成機能が含まれます。国内通貨での価格形成にはかなりの間接費が伴いますが、ドル、ポンド、ユーロ、円などの「裏付けのない」危険な通貨での価格設定よりも魅力的です。唯一残っている世界通貨候補である人民元は、その兌換性の欠如と中国の資本市場への外部からの進入の制限のために、その地位を占めることはありません。さらに価格基準としての金の使用は、支払いのために不便なので制約されます。
新経済秩序移行の最終段階である第3段階は、透明性、公平性、信頼度、効率性の原則に基づく国際合意による新しいデジタル決済通貨の創設になります。この段階では、私たちが開発した通貨単位のモデルがその役割を果たすと期待しています。このような通貨は、BRICS諸国の通貨準備高を貯蔵して発行することができ、関心を持つすべての国が参加することができます。通貨バスケット方式における各通貨の比重は、各国のGDP(購買力平価などに基づいた値)、国際貿易シェア、参加国の人口や領土の広さなどに比例させることができます。
購買力平価・・・ある国の通貨建ての資金の購買力が、他の国でも等しい水準となるように、為替レートが決定されるという考え方。あるモノが日本で120円、米国で1ドルである場合、1ドル120円であれば、120円(1ドル)は日本でも米国でも、それを1単位として購買する力を持っており、購買力平価が成立していることになる。
さらに、バスケット方式には、金などの貴金属、主要な工業用金属、炭化水素、穀物、砂糖、水などの天然資源など、取引所で取引される主要な商品の価格指数を含めることも可能でしょう。この通貨の裏付けと弾力性を高めるために、やがては関連する国際資源備蓄を設けることができます。この新しい通貨は、国境を越えた支払いにのみ使用され、あらかじめ定められた計算式に基づいて参加国に発行される予定です。参加国がバスケット方式ではなく自国通貨を使用するのは、自国の投資や産業に必要な資金調達のための信用創造と、政府系ファンドに使用する資金のためです。そして資本収支の国境を越えた流れは、引き続き各国の通貨規制によって管理されます。
信用創造・・・銀行が貸し出しを繰り返すことによって、銀行全体として、最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨をつくりだすこと
The Cradle: マイケル・ハドソンは以下のような具体的な問いを立てています。それは、「この新しい体制によって、南半球の国々がドル建て債務を停止することが可能になり、(外国為替における)支払い能力がこの新しい体制に基づくことになった場合、これらの融資が原材料と紐付けされたり、あるいは中国の場合のように、社会資本への投資による有形株式所有と紐付けされる際は、対外債務は非ドル建てでおこなうことが可能になるのか?」というものです。
グラジエフ:新しい世界経済秩序への移行は、ドル、ユーロ、ポンド、円での債務の履行を組織的に拒否することを伴うでしょう。この点では、イラク、イラン、ベネズエラ、アフガニスタン、ロシアの外貨準備を数兆ドル単位で奪った通貨発行諸国の例と変わりないでしょう。アメリカ、イギリス、EU、日本は義務を果たすことを拒否し、自国通貨で保有する他国の富を没収したのだから、ほかの国々は返済や融資の義務を負わなければいけなくなることはないでしょう。
いずれにせよ、新しい経済体制への参加は、古い経済体制における義務によって制約されることはないでしょう。南半球の国々は、ドル、ユーロ、ポンド、円での累積債務に関係なく、新体制に完全に参加することができます。仮にこれらの通貨での債務が不履行に陥ったとしても、新金融体制での信用度には全く関係がありません。また、鉱物などの採掘産業が国有化されても、同様に混乱は生じません。さらに、これらの国が新経済体制の裏付けとして天然資源の一部を留保すれば、新通貨単位の通貨バスケットにおけるそれぞれの国の比重が高まり、その国の通貨準備高と信用力が高まります。また、貿易相手国との二国間通貨スワップ協定により、共同投資や貿易金融のための十分な資金を確保することができます。
The Cradle:先生は最新のエッセイ『ロシア勝利の経済学』の中で、「技術における新しい観点の形成と新しい世界経済秩序の制度形成を加速する」ことを呼びかけておられます。その中で、特に「EAEU加盟国の自国通貨による決済体制」の構築と、「EAEU、SCO、BRICSにおける独立した国際決済体制の開発と実施」を提案していますが、これは米国が支配するSWIFT体制に対する重大な依存を排除できるのではないでしょうか?EAEUと中国が共同で、SCO加盟国、他のBRICS加盟国、ASEAN加盟国、西アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々に新体制を「売り込む」ことは可能なのでしょうか?そして、その結果、「西側」と「それ以外」という二極化した地政学的経済が生まれるのでしょうか?
グラジエフ:確かにその通りです。残念なことに、ロシアの通貨当局は、外貨準備を西側に奪われた後も、依然としてワシントンの枠組みに属し、ドル建て体制の仕組みに則っています。一方、最近の制裁措置は、他の非ドル圏諸国の間で広範な自省を促しました。西側の「影響力のある代理人」は依然としてほとんどの国の中央銀行を支配し、IMFが定めた自殺行為のような政策を適用することを強要しています。しかし、現時点では、こうした政策は明らかに非西洋諸国の国益に反しているため、非西洋諸国の当局は金融安全保障について正当な懸念を募らせています。
新しい世界経済秩序の形成において、間違いなく中国とロシアが中心的な役割を果たす可能性があると指摘されています。しかし残念ながら、現在のロシア中央銀行(CBR)の指導者は、ワシントン規範の知的袋小路に閉じこもり、新しい世界経済・金融の枠組みを構築する際に創設の一役を担うことができません。それと同時に、ロシア中央銀行は、既に現実を直視し、SWIFT に依存しない銀行間通信体系のための国家体制を構築し、外国の銀行にも開放しなければなりませんでした。主要参加国との間では、すでに通貨スワップ協定が設定されています。EAEU加盟国間の取引のほとんどはすでに自国通貨建てであり、国内貿易に占める自国通貨の割合は急速に高まっています。
中国、イラン、トルコとの貿易でも、同様の移行が進んでいます。インドも同様に自国通貨建て決済に切り替える用意があることを示唆しています。自国通貨による決済のための決済機能を開発するために多くの努力が払われています。これと並行して、銀行を通さない決済をデジタルで行う開発の取り組みも進んでいます。この決済では、金やその他の上場投資信託取引所商品、すなわち「安定コインという名の暗号通貨」が結び付けられることになります。
銀行系統に課された最近の米国と欧州の制裁措置により、こうした取り組みが急増しています。新しい金融体制に取り組んでいる国々は、新しい貿易通貨の枠組みと準備の完了を発表するだけで、そこから新しい世界金融秩序の形成過程がさらに加速されることになります。それを実現するためには、SCO(上海協力機構)やBRICSの定例会議で発表するのが最善策でしょう。私たちはそれに取り組んでいます。
The Cradle: これは、西側諸国の独立系専門家たちによる議論において、絶対的に重要な問題でした。ロシア中央銀行は、ロシアの金生産者に対し、ロシア政府や中央銀行が支払うよりも高い価格を得るために、ロンドン市場で金を売るように助言していたのでしょうか?米ドルに代わる新たな通貨が、主に金をもとにしたものでなければならないことを、全く予期していなかったのでしょうか?今回のことをどう評価しますか?短期的、中期的にロシア経済にどれだけの損害を与えたのでしょうか?
グラツィエフ: IMFの勧告に沿って実施されたロシア連邦準備銀行の金融政策は、ロシア経済にとって壊滅的な打撃となりました。外貨準備高約4,000億ドルの「凍結」と、オリガルヒ(財閥)が経済から吸い上げた1兆ドル超の国外の西側への流出という複合的な災害が起こりました。この背景となったのもCBRの壊滅的な政策のせいでした。その政策とは、外国為替レートの急騰により 過度に高い実質金利という、同様に悲惨なロシア連邦準備制度の政策を背景にして発生したものです。その結果、約20兆ルーブルの投資不足と約50兆ルーブルの生産不足が発生したと推定されます。
ワシントンの勧告に従って、CBRは過去2年間、金の購入を停止し、国内の金採掘業者に事実上、生産量の全額(結果的に500トンの金)を輸出させました。最近になって、この過ちとその弊害は非常に明白になっています。現在、中央銀行は金の購入を再開しており、過去10年間のように国際的な投機家の利益のために「インフレ目標」を設定するのではなく、国民経済の利益のために健全な政策を継続することを望んでいます。
The Cradle: ロシアの外貨準備の凍結について、FRB(米国連邦準備制度)だけでなくECB(欧州中央銀行)も相談を受けていない。ニューヨークやフランクフルトでは、もし相談があれば反対しただろうと言われています。個人的に凍結を予想していましたか?また、ロシアの指導者はそれを予期していたのでしょうか?
グラジエフ: すでに紹介した私の著書『最後の世界大戦』は、2015年の時点で出版されていますが、いずれそうなる可能性が非常に高いと論じていました。このハイブリッド戦争では、経済戦争と情報戦・認知戦が重要な戦場となります。この両戦線において、米国とNATO諸国は圧倒的な優位に立っており、いずれこれを全面的に活用するだろうと、私は何の疑いも持ってはいませんでした。
私は長い間、外貨準備のドル、ユーロ、ポンド、円を、ロシアで豊富に産出される金で置き換えることを主張してきました。しかし、多くの国の中央銀行や格付け会社、主要な出版社で重要な役割を担っている欧米の影響力のある代理人たちは、残念ながら私の考えを封じることに成功しました。例えば、FRBとECBの高官が、反ロシア金融制裁の策定に関与していたことは間違いないでしょう。これらの制裁は一貫して激しさを増しており、EUにおける官僚的な意思決定の難しさはよく知られていますが、ほとんど即座に実行されているのです。
The Cradle: ロシア中央銀行の総裁にエリヴィラ・ナビウリナ氏が再登板しました。これまでの彼女の行動と比較して、何が違うのでしょうか?また、それぞれの政策の進め方に関わる主な指針は何でしょうか。
グラジエフ:私たちの政策の進め方の違いは、非常に単純です。彼女の政策は、IMFの勧告とワシントンの視点からの考え方を正統に実行したものであり、私の勧告は、科学的手法と過去100年にわたる先進国での経験則に基づくものです。
The Cradle: ロシアと中国の戦略的パートナーシップは、プーチン大統領と習近平国家主席自身が常に再確認しているように、ますます鉄壁のものとなっているように思われます。しかし、西側諸国だけでなく、ロシアの一部の政界でも、この戦略的パートナーシップに反対する声があがっています。この極めて微妙な歴史的岐路において、中国はロシアのいつも変わらぬ味方として、どの程度信頼できるのでしょうか。
グラジエフ: ロシアと中国の戦略的パートナーシップの基盤は、常識と共通の利益、そして数百年にわたる協力の経験です。米国の支配者層、世界における覇権的地位を守るために、中国を主要な経済的競争相手、ロシアを主要な対抗勢力として、世界規模でのハイブリッド戦争を開始しました。当初、米国の地政学的な試みは、ロシアと中国の間の対立を作り出すことを目的としていました。西側の影響力を持つ代理人が、我々のメディアで外国人嫌いの考えを増幅させ、自国通貨での支払いに移行しようとする試みを妨害していたのです。中国側では、西側の影響力のある代理人が、米国の利益の要求に沿うように政府を動かしていました。
しかし、ロシアと中国の主権的利益は、論理的には、ワシントンから発せられる共通の脅威に対処するために、戦略的パートナーシップと協力関係を深めることにつながりました。米国の対中関税戦争と対露金融制裁戦争は、こうした懸念を立証し、両国が直面している明確な現在の危機を明らかにしました。生存と抵抗という共通の利益が中国とロシアを結び付けており、両国は経済的に大きく共生しています。両者は互いに競争上の優位性を補完し合い、高めています。このような共通の利益は、長期にわたって持続するでしょう。
中国政府と中国国民は、日本の占領からの解放と、戦後の中国の工業化においてソ連が果たした役割を非常によく覚えています。両国は戦略的パートナーシップのための強力な歴史的基盤を有しており、共通の利益のために緊密に協力する運命にあります。一帯一路とユーラシア経済連合の結合によって強化されるロシアと中国の戦略的パートナーシップは、プーチン大統領の計画である大ユーラシアパートナーシップの基礎となり、新しい世界経済秩序の核となることを期待しています。
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この記事は、The Cradleに掲載されたものです。
ペペ・エスコバル ブラジル生まれ。アジア・タイムズ紙特派員兼編集長、モスクワのコンソーシアム・ニュース誌およびストラテジック・カルチャー誌のコラムニスト。1980年代半ばからロンドン、パリ、ミラノ、ロサンゼルス、シンガポール、バンコクに在住し、海外特派員として活動。パキスタン、アフガニスタン、中央アジアから中国、イラン、イラク、中東まで幅広く取材している。著書に『Globalistan - How the Globalized World is Dissolving into Liquid War』『Red Zone Blues: A Snapshot of Baghdad during the Surge』がある。イタリアの「The Empire and The Crescent」と「Tutto in Vendita」の寄稿編集者でもある。最近の2冊は『Empire of Chaos』と『2030』である。また、パリを拠点とするEuropean Academy of Geopoliticsのメンバーでもある。パリとバンコクを行き来する生活を送っている。
グローバル・リサーチ誌に定期的に寄稿している。
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