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NATO-ロシア代理戦争: アメリカ衰退の兆候。 スコット・リッターとマイケル・ハドソンの対談

<記事原文 寺島先生推薦>
NATO-Russia Proxy War: Revealing Signs of a Fading America: Scott Ritter, Michael Hudson
Conversations with Scott Ritter and Michael Hudson

Global Research 2022年3月26日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年4月22日
***


 「ジョー・バイデンは昨年6月、ウラジーミル・プーチンの目を見据えて、ウクライナに対して行動を起こすなら大規模な制裁を加えると脅した。今まで見たこともないような制裁だ!...彼には側近と「これに対してどう準備しようか?」と話し合う時間は何カ月もあった。米国とその同盟国は何もしていない。そのことはロシアを驚かせた。何もしていない!ロシアはあらゆることを想定していた! そして、彼らはそれに対する対応策もあった。」
―スコット・リッター(今週のインタービューから)
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 ブラックロック社は10兆ドルの資産を運用する企業であり、投資家たちは会長兼CEOであるラリー・フィンク(Larry Fink) の見解や意見に注目する傾向がある。そのラリー・フィンクが最近出した株主への手紙の中で、次のようなことを述べている:

 「ロシアのウクライナ侵攻は、私たちが過去30年間に経験したグローバリゼーションに終止符を打った... ロシアのウクライナ侵攻とその後の世界経済からの切り離しは、世界中の企業や政府に、いろいろな依存関係の再評価とこれまでやってきた製造・組立工程の再検討を促すだろう。そのことはCovidをきっかけにすでに多くの人が開始していたことだ。」 [1]

 言い換えれば、ここ数週間の光景とそれに対するNATOの対応は、アメリカが何年にもわたって次々と国々を侵略し、荒廃させてきたが、その侵略をはるかに超える影響を及ぼしている。グローバリゼーションは死んだ。大規模な分断が起こっている!

 実際、ロシアを痛めつけるために実施された制裁措置は、アメリカ人、カナダ人、そしてヨーロッパ社会にも打撃を与えている。それは私たちがガソリンスタンドに車を寄せたり、あるいは食品価格が高騰するのを見たりするときにわかる。[2][3]

 一方、金曜日(3月25日)、バイデン大統領は、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長を傍らに立たせ、EUがウラジーミル・プーチンの石油・ガス供給に、依存度を下げる合意を発表した。次はバイデンの言葉:

 「私たちは、多様で、弾力性のある、クリーンなエネルギーの未来のためのインフラを構築しているが、その間に、ヨーロッパの家庭がこの冬と次の冬を確実に乗り切れるようにしなければならないだろう。」[4]

 つまり、ウクライナにとっての利害は、文字通り、この東欧の国(ウクライナ)にいる軍隊の弾丸、爆弾、そして勇気とはまったくかけ離れたところにある。NATOはその利害をまだ戦場に持ち込まないだろう(持ち込まないでほしい)が、ロシアに対して突きつけた他の多くの財政措置は、実際の戦争と同じくらい壊滅的な結果をもたらす可能性がある。

 サウジアラビアは石油の一部を中国の通貨である人民元で購入できるようにするための協議を進めており、アメリカの国力を維持するための基軸の一部であるアメリカドルの支配が危うくなっている。また、ロシアを含む5カ国が、ウクライナへの軍事侵攻を直ちに停止させるという国連総会の投票結果をはねつけた。棄権した35カ国は、欧米が紛争を引き起こしたとの疑念から棄権したケースが多い。だから、ロシアは正確には "孤立 "していない。[5]

 最初の30分で、米軍情報将校で戦略家のスコット・リッター(Scott Ritter)を再び迎える。①ウクライナにおけるロシアの長期に亘る作戦(彼の基準では長くない)、②NATOが提供できない援助を求めるゼレンスキー大統領の役割、そして③ロシアよりも米国とヨーロッパをはるかに傷つける制裁戦争、の3点について彼の評価が述べられる。

 後半30分は、偉大な経済思想家であるマイケル・ハドソン教授をお招きしている。①ロシアを戦争へと挑発する真の戦略について説明をいただき、②加速する米国通貨の下落、そして③複数の国家がアメリカから分離してきているという動きが、どんな役割をこれから果たすのかについて解説をしていただく。

 スコット・リッター・・・米国海兵隊情報将校。1991年から1998年まで国連のチーフ兵器査察官を務めた。現在、Huffington Post、consortiumnews、the American Conservativeでコメンテーターやコラムニストとして活躍中。

 マイケル・ハドソン・・・長期経済動向研究所(ISLET)代表、ウォール・ストリート紙の金融アナリスト、ミズーリ大学(カンザス市)経済学部特別研究教授。著書に『J is for Junk Economics』(2017年)、『Killing the Host』(2015年)、そして1968年の古典『Super-Imperialism:The Economic Strategy of American Empire』がある。彼のウェブサイトはmichael-hudson.com

1部
 グローバルリサーチ(以下GR):ハドソンさん、またお話をしていただくということで、たいへん光栄です。ようこそ!

 マイケル・ハドソン(以下MH):お招きただきありがとうございます。

 GR: 現在、NATOは、SWIFTシステムからの排除を含むロシアへの制裁を求める米国の呼びかけに、足並みをそろえて追随しています。制裁で打撃を受け、傷ついているのはNATOのほうです。バイデン大統領が言うところの「地獄からの制裁」です。効果があるようにはみえません。しかし、この制裁はブーメランとなり、EUやアメリカには食料、肥料、石油、ガスなどの価格高騰で大きな打撃を与えています。EUもアメリカもロシアの侵略を挑発しているようです。バイデンは、言ってみれば力づくで、その動きを作ったのです。今回のことは「ロシアのウクライナ侵攻」があったから、の動きではありません。つまり、それはEUとアメリカがこの間ずっと仕組んできたことなのです。それにしても、ロシアを挑発してウクライナと制裁戦争をさせるという戦略的な目標は果たして何だったのでしょうか? EUとアメリカはロシアが慈悲を乞うことを見越しているのか、それともそれ以上のことが起こっているのでしょうか?

 MH: 事態はあなたがおっしゃることとまったく反対だと思います。戦争はロシアに対してではありません。戦争はウクライナに対してではありません。この戦争はヨーロッパとドイツに対するものです。制裁の目的は、ヨーロッパや他の同盟国がロシアや中国との貿易や投資を増やすのを防ぐことです。なぜなら、アメリカは、世界の成長の中心がアメリカにはないことがわかったのです。アメリカは脱工業化しています1980年代以降の新自由主義的な政策に従った結果、アメリカ経済は空洞化してしまいました。富を生み出す力を失ったアメリカが、一体どうやって繁栄を維持できるのでしょう。

 国内で繁栄を創り出せなければ、海外から手に入れるしかありません。そして、1年前に始まったバイデン大統領とアメリカのネオコンによる試みは、ノルドストリーム2を妨害することでした。それを機能しなくさせ、ロシアとのエネルギー貿易やその他の貿易をすべて妨害することを目指しました。そうすれば米国は天然ガスそのものを独占できるようになるのです。過去100年間、米国が世界経済を支配してきた主な道具の1つは、石油産業によるものでした。世界のエネルギー貿易を支配すること。エネルギーはGDP、生産性、そしてすべての国(を支配する)鍵であるので、エネルギー貿易が米国の支配を素通りして他の国々とやれるという考えは、米国に他の国々を排除する力がなくなったのではないか、ということに通じます。

 だから、ウクライナでの戦争を挑発し、それに対するアメリカの対応を煽ることで、アメリカは、「ロシアはこんなひどいことをしています。アメリカは自衛しているだけです」と言うことができるようになったわけです。アメリカに対して自国を守ることは宣戦布告になります。なぜなら、それはドル化されたシステムから脱却することを意味するからです。そのため、他の国々が自立できる可能性があると考えることは、アメリカが各国の政策に口を出すこと、そしてアメリカが頂点を極めるためにドル外交による支配能力への挑戦と、アメリカでは見なされたのです。

 もちろんアメリカが恐れているのは、環境保護運動が炭素燃料である石油やガスを減速させることで地球温暖化を止める方向に動くことです。ですから、ヨーロッパでこの危機を作り出すことで、アメリカは大いに...地球温暖化を加速することを外交政策の基本にしているのです。石炭と石油を未来の燃料として加速させる。今日、ポーランドでバイデン大統領は、ロシアの石油に代わるものとしてポーランドの石炭を約束していますね。そしてアメリカの石炭。だからバイデン大統領は石炭産業ロビー出身のマンチン(Manchin)上院議員を環境・エネルギー庁の長官にしたのです

 つまり、あなたが見ているものは、世界の危機を作り出すことで、別にアメリカは自国を危うくし墓穴を掘っているわけではありません。それこそアメリカの思惑通りです。アメリカは世界危機になると、エネルギー価格が大幅に上昇し、アメリカの国際収支に利益をもたらすことに気づいています。エネルギー輸出国としてだけでなく、世界の石油貿易を支配する石油会社が、ロシアをそこから排除すれば、農作物の価格は大幅に上昇し、農産物輸出国である米国に利益をもたらします。特に、ウクライナとロシアの小麦輸出を阻止すれば、債務の期限が迫っている第三世界の国々に債務危機をもたらすことになるでしょう。そして、アメリカはこの債務危機を利用して、第三国に民営化を続けさせ、アメリカ人のバイヤーたちに公有地を売り渡すよう強制する、あるいは強制しようとすることができるのです。先祖伝来の資産を売却すれば借金も返せるし、値上がりした石油や輸入食物の代金も払えることになるというわけです。

 アメリカの戦略は、世界の危機がまさに偶然起こったものとして私たちに伝えられる状況を作り出すことなのです。この人たちは新聞をちゃんと読んでいるので、自分たちのやっていることの結果としてこれが起こったとわかっている、そのことに疑問の余地はありません。彼らがやっていることは十分に考えた上でのことです。彼らが馬鹿ではありません。彼らは頭がいいし、善良とは言えませんが、馬鹿ではありません。

 GR:話は大分込み入ってきています。が、私としては次のことを指摘したいと思います。あなたの記事のひとつです。今アメリカで支配的と思われる3つの領域、経済領域についてお話されていましたね。石油とガス、軍産複合体、そしてFIRE(金融、産業、不動産)です。そして、その3つの分野はすべて、現在の状況から恩恵を受けていると思います。これははっきりわかると思います。レイセオン(Raytheon)やロッキード・マーチン(Lockheed Martin)の価値、相場が上がっているのは......。

 MH:そうですね、銀行についてはよくわかりません。銀行の利益はどこに行き着いたのでしょう?銀行は13世紀以来、貿易金融でその資金の大半を稼いできました。債権ですが、石油の輸入業者であれば、信用状を発行してもらい、引き渡しがあったときに銀行が支払いを約束します。貿易金融は巨大な銀行活動です。そして現在、米国の銀行は、ロシア、中国、そしておそらく一帯一路構想の国々に関わる限り、この貿易金融から締め出されています。ですから、銀行がどのように利益を得ているのか、なかなか見えてきません。特に、第三世界の国々、グローバル・サウス諸国が、「われわれは債権保有者に支払うためだけに経済を犠牲にし、緊縮財政を強いるつもりはない。債権は不良債権だ、こんな債権は醜悪だ、われわれは債務の支払いを拒否します。私たちは債権にお金を払いません」と言えば、なおさらです。

 これでは銀行も投資家も浮かばれません。それで、銀行は・・・ すべてにおいて、テンポが一拍遅れているように見えます。今回の戦争は経済的なものというよりも、新自由主義的な、ネオコンの間にあるロシアやドイツに対する理屈抜きの憎しみであるように思われます。これは理解されていませんが、経済的なものではありません。たとえば中国にまで範囲が広がる時、ほとんど人種的な憎悪とも言えるものが動いています。そしてアメリカですが、無政府状態になると何が起こるかわかりません。金融戦争が起きれば、世界は2つの経済圏に分断され、軍事戦争と同じような状態になります。無政府状態では、何が起こるかわからないのです。ブラッド・バッグ(訳注:「無頭釘の詰まった袋」。「扱いが厄介」くらいの意味か?)です。アメリカは、必要であれば、賄賂や武力や暗殺によって、自分たちのやり方を通すのに十分な力を持っていると思っています。それを求める上院議員もいます。しかしそうすれば、アメリカが敵だと宣言する人間全員が、ひたすらおとなしくなるとも思えません。

 GR:最近、サウジアラビアが原油の価格を人民元建てにすると発表しましたね。つまり、石油を買う際、ドルにライバルができたということでしょう。

 MH:中国との石油貿易。他の国はドル建て貿易をしようとしません。なぜなら、米国は、その国の資産がドル建てであれば何でも奪い取ることができるからです。チリがアジェンデの下で銅の貿易を支配しようとしたときのように、ある国が自立的なことをすれば、米国はその国の資金を奪うことができます。ベネズエラが国民中心政策で土地改革を行おうと考えたとき、アメリカはベネズエラの通貨を押さえただけです。それから、イングランド銀行はベネズエラの金(gold)を差し押さえました。アメリカは、アフガニスタンの外貨準備をあっさり差し押さえ、それからロシアの外貨準備を差し押さえました。

 突然、各国はアメリカの銀行を使うのを恐れ、ドルに関連するものを使うのを恐れ、何であれ、アメリカが手に入れることができるものを持つのを恐れています。それが、今のアメリカの政策だからです。これが、他の国々を遠ざける原因になっています。アメリカの同盟国でさえも、怯えているに違いありません。ドイツは、ニューヨーク連邦準備銀行から、飛行機で金塊を送り返すよう求めているのです。

 GR:そうですね、ドミノ効果のようなものが起きているのでしょうか。つまり、アメリカドルは、すでにいくらか困難な状況にありましたが、これから先、本当にそれが加速していくのははっきりしています。そして、あなたがおっしゃった他のグローバル・サウス諸国などでは、アメリカドルを捨てて他の通貨にするつもりなのでしょうか?

 MH:危機は政治的なものです。別の通貨には及びません。プーチン大統領は演説で、この戦争はウクライナに関するものではないと言っています。この戦争は国際秩序を再構築するためのものです。そして、その意味するところは、IMF(国際通貨基金)に代わるものを探すということです。世界銀行に代わる機関です。世界法廷に代わる機関です。そして、例えば米国ルールに基礎を置いた国連ルールに基礎を置く秩序に代わるものを探すということです。しかし、米国がこのグループのメンバーである限り、それは不可能です。

 つまり、新しい国際機関のグループになるわけですが、アメリカは自身が拒否権を持たないいかなる組織にも参加することはないでしょう。つまり、平行線の過程をたどることになるのです。ヨーロッパと北米では新自由主義的な金融化、つまり負債による資金調達の道であり、そして中国と一帯一路構想、つまり上海協力機構ブロックでは産業資本主義が社会主義に進化する道であります。

-休憩-

2部
 GR:ウクライナの解決は、ある意味、短期的な取引だと思いますが、長期的には、NATOや米国の影響力からヨーロッパを遠ざけようとする揺さぶりになると思います

 MH:アメリカはヨーロッパの政治家を徹底的に支配しています。ヨーロッパでNATOとアメリカに反対しているのは右翼だけです。民族主義者たちです。左翼は完全にアメリカを支持していますし、全米民主化基金やその他のアメリカの機関がヨーロッパ中の左翼政党を統制して以来、ずっとそうです。こういった組織は欧州左翼、ドイツやその他のヨーロッパの社会民主党、イギリスの労働党などを「トニー・ブレア」化してしまいました。これらは労働党でも社会党でもなく、基本的に親アメリカの新自由主義政党です。

 GR:ロシアは鉱物資源が非常に豊富で、石油やガスも豊富なことを私は知っています。ロシアとウクライナは、世界の穀倉地帯の一部を形成しています。リチウムやパラジウムなどの重要な鉱物を支配しているため、その計画の一環としてウクライナと取引しています。その結果、先ほど申し上げたように、食料を含む世界中に多くの影響を与え、おそらくかなり早い時期に食料不足になり始めるでしょう。

 MH:それは意図的なもので、予想されていたことだと理解してください。ガスがない状態で、すでにドイツの肥料会社は事業が立ち行かなくなっています。肥料はガスから作られるので、ロシアのガスが手に入らなければ、肥料も作れませんし、肥料がなければ、作物は以前のように広く行き渡らず、豊富でもなくなります。つまり、これらすべてを考慮すれば、とても明白なことですが、彼らはこうなることを知っていたと見なすしかないのです。食糧輸入国にアメリカが有利になるように課すコストの締め付けで、アメリカが利益を得ることを期待しているのです。

 GR:アメリカが何をもって反撃に出るのか、ということを私はちょっと知りたいのですが。つまり、彼らにはドルの威信があっていろいろでっち上げることができました。しかし同時に、例えばロシア政府、ロシア中央銀行の金(gold)や預金を使ったり、没収するなどして、支配力を持っています。このような努力は将来、それは彼らが現在持っているぐらいのものなのでしょうか?つまり、実際の軍事については後で話すとして、アメリカがロシアに反撃するために持っているその種の手段について話していただけませんか?

 MH:そうですね、過去75年間使われてきた明らかな手段は贈収賄です。特にヨーロッパの政治家を賄賂で操ることはいとも簡単です。ほとんどの国がそうですが、ただ金を払えばいいのです、政治キャンペーンを支援し、親米派の政治家を巨額の資金で支援することで内政干渉することを隠そうともしません。第二次世界大戦後、英米はギリシャに進駐し、反ナチス派をすべて射殺し始めました。彼らは大部分が社会主義者でした。英米はギリシャの王政を復活させたかったのです。イタリアのグラディオ作戦があります。チリからラテンアメリカ全域に及ぶ標的型暗殺とその余波があります。つまり金がだめなら、殺せということです。

 それから、いろいろな軍事力があります。そして、アメリカが使おうとした主な手段は、制裁です。もし制裁でロシアの原油を手に入れられない、あるいは、ロシアからのガスや食料に融資できなければ、アメリカはすぐ食料供給を停止します。重要な原材料を止め、経済の工程を中断させます。なぜなら、ほとんどすべての種類の経済活動には、必要とされる要素がたくさんあり、種類もたくさんあるからです。

 アメリカは弱点を探していました。そしてその弱点を突こうとしています 破壊工作は確かに、ウクライナでご覧のように使われているもう一つの手段です。問題は、この弱点を突く試みが、他の国々には、確かに苦痛を強いることになります。短期的には、です。

 長期的に見れば、主要な圧力要因は自給自足でまかなわなければならないでしょう。自分たちの食べ物は自分たちで作らなければなりません。小麦を輸入するのではありません。輸出用のプランテーション作物栽培から脱却して、自国の穀物を手に入れ、家族規模の農業に戻して、すべてを行う必要があります。武器も自国で生産しなければなりませんし、燃料も自国で調達しなければなりません。太陽エネルギーや再生可能エネルギーを使って、アメリカ支配の石油やガス、石炭の取引から独立することも必要です。つまり、長期的、あるいは中期的に見ても、こういった努力の効果は、他の国々を自給自足させ、独立させることにもつながります。 
 これから、多くの妨害や飢餓さえも、そしてたくさんの財産移転や混乱が起こるでしょう。しかし、長期的には、アメリカは、相互に連結した単一のグローバル化秩序という構想を破壊することになるでしょう。ヨーロッパと北米を他の地域全体から切り離したためです。

 GR:ロシアのオリガルヒが制裁に直面していますが、彼らは制裁をやめてアメリカと関わりを持てるようにしたいのか、それともプーチンのように「自分たちでやろう」と考えているのでしょうか。

 MH:かつてオリガルヒは、非常に西側志向でした。ロシアの石油やガス、ニッケル、不動産などを自分たちの手中に収めたとき、どうやってそれを売却したか、ということです。ロシアにはお金がなかったのです。1991年以降のショック療法で、お金はすべて壊滅状態でした。西側に株式を売却することでしか、現金化できなかったのです。ホドルコフスキー(Khodorkovsky)がユコス(Yukos)をスタンダード・オイル・グループに売却しようとしたのも、そういうことだったのでしょう。そして今、アメリカは彼らのヨット、イギリスの不動産、スポーツチーム、西側で保有している資産を簡単に奪えると分かっているので、彼らは唯一の安全策は、西側で保有しているものは何でも奪えるアメリカベースの経済圏ではなく、ロシアとその同盟国の経済圏で保有することだと気付いているのです。

 そう、今日、あるいは昨日、チュバイス*(Chubais)は永久にロシアを離れ、西側へ行った。そして、オリガルヒに選択させているわけです。ロシアに留まり、ロシアの生産手段を用いて富を築くか、ロシアを去り、金を持って逃げ出し、自分が盗んだものの一部を自分の手元に置くことを西側が許してくれることを願うか。
チュバイス*・・・アナトリー・ボリソヴィチ・チュバイスは、ロシア連邦の政治家、企業家。元ロシアナノテクノロジー社社長。ベラルーシ人。ボリス・エリツィン政権にて大統領府長官、第一副首相兼財務大臣を歴任。(ウィキペディア)

 GR:ロシアや中国に対する制裁を支持しない国は、インド、カザフスタン、タジキスタン、クルディスタン、つまり中央アジア地域の国々はすべて支持していません。そしてそれは、「一帯一路」構想に恩恵を与えているように思いますが。

 MH:そう思いますよね。大きな疑問符がつくのはインドです。非常に大きな国ですから。そして、インドはすでにロシアとの多くの金融貿易金融の仲介役となるよう位置づけられています。また、インドは親米的である傾向があります。モディ首相は過去に政治的に非常に親米的でした。しかし、インドの潜在的な国益を考えるならば、その経済的利益は、インドが存在する地域、つまりアメリカではなく、ユーラシア大陸との関係です。

 国防総省や国務省を大きく悩ませているのは、どうやってインドをアメリカの手中に収めようかということでしょう。これが今後数年間の大きな危機が展開する領域となります。

 GR:すみませんが、できれば眼鏡をかけていただき、将来を見据えるなどということをしていただけたら、と思います。今から2、3年後でしょうか。今の支配的な傾向を考えると、これはどうなるのでしょう?両陣営の成長に差が出るということでしょうか?それとも核戦争後の燃えかすになっているのか?どうお考えですか?

 MH: 核戦争はないと思います。しかし、ワシントンの狂ったネオコンとキリスト教原理主義者、ポンペオのように世界を吹き飛ばせばイエスがやってくると考えている人たちを考えると、ないとも言えません。つまり、この人たちは文字通り狂っているのです。

 私は50年前、ハドソン研究所で国家安全保障の専門家たちと働いていましたが、人間の脳がこれほどまでに歪んでいて、宗教上の理由から世界の大部分を吹き飛ばしたいと思っているなんて信じられませんでした。宗教的な理由、民族的な理由、個人的な心理的な理由で、世界の大部分を吹き飛ばしたいと思っているのです。このような人たちが、いつのまにかアメリカの政策決定者の地位に上り詰め、世界だけでなく、もちろんアメリカ経済も脅かしているのです。

 しかし、原子戦争はまず起こらないと思います。アメリカは、新自由主義が豊かになれる方法だと他の国に信じ込ませようとするのではないでしょうか。そしてもちろん、そんなことはありません。

 新自由主義は人々を貧困化させます。新自由主義は主に金融による労働に対する階級闘争であり 産業に対する階級闘争です。政府に対する階級闘争です。金融階級が社会全体に対して、負債をテコに企業、国、家庭、個人を支配しようとしているのです。そして問題は、彼らが本当に、金持ちになる方法は借金をすることだと人々を説得できるかどうかです。それとも、他の国々は、これ袋小路だと言うでしょうか。ローマが債権者有利の借金法を西洋文明に遺したときから、この路地は袋小路化しています。この法律は、文明が始まった近東の法律とは全く異なっています。

 GR:最後に、私はカナダに住んでいるのですが、アメリカ経済が沈んでいるときに脱ドルについて聞いたり、一般の個人にとってどうなるかを聞いたりすると、カナダは何とかその軌道から逃れられるのか、それとも私たちは手首に巻かれた手枷のようなものなのか。アメリカが行くところに私たちも行くのか、と考えてしまうのです。

 MH:カナダは完全に銀行部門に支配されています。私は1978年に政府のシンクタンクに『カナダと新貨幣秩序』という記事を書き、カナダがいかに依存的であるかを詳しく説明しました。非常に借金まみれで、金融に支配されており、政府はまったく腐敗しています。新自由主義政党、その中のリベラル政党はかなり腐敗していますし、他の政党もほとんどそうです。彼らは、カナダを支配できるようにするための腐敗や経済ヤクザ主義を守ってくれるものとして、アメリカを見ているのです。

 GR:さて、マイケル・ハドソンさん、そろそろ時間です。私たちの生存、この戦争をどう生き延びるか、その結果はどうなるかについて、非常に広範で、興味深い議論をありがとうございました。グローバル・リサーチの私の番組にお出でいただけましたことを心から感謝いたします。

 MH:こちらこそありがとうございました。


Notes:
1. https://www.blackrock.com/corporate/investor-relations/larry-fink-chairmans-letter
2. Polansek and Ana Mano(March 23, 2022), “As sanctions bite Russia, fertilizer shortage imperils world food supply,” Reuters; https://www.reuters.com/business/sanctions-bite-russia-fertilizer-shortage-imperils-world-food-supply-2022-03-23/
3. Dan Eberhart (March 23, 2022), “As sanctions bite Russia, fertilizer shortage imperils world food supply“, Reuters; https://www.forbes.com/sites/daneberhart/2022/03/23/expanded-sanctions-on-russian-oil-will-cause-economic-pain-for-everyone/?sh=300dec32bcb0
4. Emily Rauhala, Tyler Pager, Ashley Parker (March 25, 2022), “Biden, E.U. announce plan to reduce Europe’s reliance on Russian energy,” The Washington Post; https://www.msn.com/en-us/news/world/biden-eu-announce-plan-to-reduce-europe-s-reliance-on-russian-energy/ar-AAVtSsS?ocid=BingNewsSearch
5. Tom O’Connor (March 2, 2022), “The 4 Nations Who Back Russia’s War in Ukraine, and 35 Who Won’t Condemn It,”Newsweek; https://www.newsweek.com/4-nations-who-back-russias-war-ukraine-35-who-wont-condemn-it-1684250

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