怪しげな主張:NATOは、ロシアが化学兵器でマリウポリの人々を攻撃したと非難している。
怪しげな主張:NATOは、ロシアが化学兵器でマリウポリの人々を攻撃したと非難している。
<記事原文 寺島先生推薦>
Dubious Allegations: NATO Accuses Russia of Attacking the People of Mariupol With Chemical Weapons
ナウマン・サディク (Nauman Sadiq)著
グローバルリサーチ、2022年4月13日
<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年4月19日

ロシア軍がウクライナ東部のドネツク州第2の都市マリウポリを解放し、露・ウクライナ戦争で大きな戦略的勝利を収めようとしている。しかし一方で、リズ・トラス英外相は、敵対国の化学兵器攻撃を非難するというNATOの心理作戦の脚本の中で最も古い手口にのっとり、月曜日(4月11日)にこんなツイートをしている。
「ロシア軍がマリウポリの人々への攻撃で化学兵器を使用した可能性があるとの報告がある。私たちは同僚とともに、詳細を確認するために緊急に取り組んでいる。このような兵器の使用は、この紛争を無情にもエスカレートさせるものであり、我々はプーチンとその政権の責任を追及する。」
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、月曜日(4月11日)の夜、NATOひいき筋による根拠のない主張を愚かにも鸚鵡返しして、ロシアがマリウポリ攻撃のために東部ドンバス地方に軍隊を集結させる中、化学兵器を使用する可能性があると主張した。
ウクライナのハンナ・マリャル(Hanna Malyar )国防副大臣は、ロシアがマリウポリを包囲している間に化学兵器を使用したかもしれないという「未確認の情報」を政府が調査していると述べた。マリャル氏はテレビで「白リン弾ではないかとの説もある」と述べた。
キエフが任命した東部ドネツク州の自称知事パブロ・キリレンコ(Pavlo Kyrylenko)氏は、マリウポリでの化学兵器使用の可能性に関する事件報告を見たが、確認はできなかったと述べた。
「昨夜12時頃、無人機が未知の爆発物を投下し、マリウポリ金属工場とその周辺にいた3人が体調を崩したことは知っている」、と彼は記者団に語った。彼らは病院に運ばれ、命に別条はないと付け加えた。
ロシアはマリウポリでの化学兵器の使用を明確に否定したが、いずれにせよ、1997年の化学兵器禁止条約(CWC)では、白リンの使用は禁止されていない。実際、アメリカ自身、2017年にシリアのラッカで行われた「イスラム国」に対する作戦で、白リン弾をふんだんに使用している。白リンは主に、紛争地域の夜空を照らし、反政府勢力が夜間に正規軍に対して採用するヒットエンドラン(一撃離脱)戦法を防ぐために使用されている。
しかし、ロシア軍による化学兵器の使用という怪しげな主張が、ウクライナ治安部隊と諸外国の支援者たちによって提起された本当の理由は、マリウポリの戦いが決定的な局面を迎えたからである。CIAの訓練を受けたウクライナのネオナチ民兵がアゾフスタルの工業地帯に立てこもり、重火器を置いていくのと引き換えに安全な回廊を得て戦闘地域から脱出することを考えている。
ロシア軍がアゾフスタルを奪取すれば、ロシア支配地域間の東西間の要であるマリウポリを完全に掌握することになり、ウクライナの治安部隊と同盟国の超民族主義民兵に対する戦略的大勝利を宣言することになる。
リズ・トラス英外相の片割れであるアメリカの相方、トニー・ブリンケン国務長官は、40年以上の政治キャリアで「眠れるジョー(・バイデン」」が犯した失言の数よりも、1年間の外交キャリアで犯した失言の数の方が多いのだから、リズ・トラス英外相もニュース通ではないことは明らかだ。
そうでなければ、ロシア軍がマリウポリで化学薬剤を使ったかもしれないというばかげた主張をする前に、4月7日に発表されたNBCの爆弾スクープを思い出すに違いないだろう。その報道の筆者によると、アメリカのスパイ機関が、意図的かつ選択的に主要報道機関に機密情報をリークし、ウクライナでの1カ月にわたる軍事攻勢中にロシアに対する偽情報キャンペーンを行っていたとのことだった。その米国のスパイ機関は、その機密情報が信頼できないことを知っていた上でのことだったという。
ロシアがウクライナ戦争で化学兵器を使用する準備をしているというアメリカの情報機関の分析は、以前企業メディアで広く報道されていた。 それが、ウクライナの政治家とそのNATOの後援者によって再び利用されたのだ。そのような根拠のない主張がマスコミにリークされたのは、ロシアがウクライナの悪事を確証するような主張をしたことへの対抗措置だった。ロシアの主張によれば、ウクライナはワシントンと協力して、多くの生物研究所で活発な生物兵器プログラムを進めているというものだった。そしてロシア軍はウクライナ侵攻の初期にそのような生物研究所を発見したとのことだった。
***
参考記事
予言的観測: ランド・コーポレーションズ(RAND Corp.)の報告書。ロシアを「不安定化させ、弱体化させる」ために、推奨される 「挑発的行動」
NBCの記事にはこう記されている。
「それは、注目を集める主張であり、世界中の見出しを飾った。米国当局者は、ロシアがウクライナで化学薬剤を使用する準備をしている兆候があると述べた。ジョー・バイデン大統領も後にそれを公言した。しかし、3人の米国当局者が今週NBCニュースに語ったところによれば、ロシアがウクライナに化学兵器を持ち込んだという証拠はないとのことである。彼らは、米国が情報を公開したのは、ロシアが禁止されている軍需品を使用するのを阻止するためである、と述べた。」
「複数の米政府高官は、情報の正確性が高くない場合でも、米国が情報を武器として使っていたことを認めている。今回の化学兵器の件のように信頼性の低い情報を抑止力のために使うこともあるとのことだ。ある当局者が言うように、米国はただ『プーチンの出方を伺おうとしていた』のである。」
他の明らかになった事実の中で、NBCの記事は、ロシアが中国に軍事的支援を求めた可能性があるという告発は確たる証拠を欠いていると、ヨーロッパの当局者と2人のアメリカ当局者が報道機関の特派員に語ったと指摘した。
「米国当局者は、中国がロシアに武器を提供することを検討している兆候はないと語った。バイデン政権は中国にそうしないように警告するためにその報道を出した、と彼らは述べた。欧州当局者は、この情報公開を『中国からの軍事支援を阻止するための公開ゲーム』と表現した。」
このように、中国とロシアが経済的救済をひどく必要としているときに、中国とロシアの間の互恵的な絆が強まる可能性に機先を制して、米国は、中国がロシアに軍事品販売を約束したことを先回りして非難したのである。ロシアが世界有数の武器輸出国であり、中国にそのような要求さえしていないにもかかわらず。
ジェイク・サリバン米国家安全保障顧問は3月15日、ローマで中国側の楊潔篪(ようけつち)と7時間にわたる激しい会談を行い、西側の対ロシア制裁を逃れることは「重大な結果」となると中国に警告した。経済制裁という棍棒を振り回しただけでなく、トランプ政権が始め、バイデン政権が2月末のロシアのウクライナ侵攻まで続けてきた対中貿易戦争を終結させるというニンジンもひけらかしたにちがいない。
軍事力に関しては、通常兵器だけでなく核兵器も含めた膨大な兵器を持つロシアは、多かれ少なかれ米国の軍事力に匹敵する。しかし、経済戦争に関しては、もっと巧妙で陰湿な戦略が必要だ。その対策については、90年代にソ連が崩壊し、60年代に東欧、中南米、アジア、アフリカの多くの社会主義国にまたがるかつて隆盛を誇った共産圏が解体された後で、ロシアは答えを持っていないように見える。
現在のグローバルな新植民地主義秩序は、第二次世界大戦後の1945年にブレトンウッズ協定に調印して以来、米国とその西ヨーロッパの子分たちによって導かれている。歴史的には、世界貿易と経済政策を独占する欧米にあえて挑戦する国家、特に社会主義政策を志向する国家は、国際的に孤立させられ、その国家経済は長期間にわたって破綻させられてきた。
しかし、今回ばかりは、ロシアを国際的に孤立させようとする執拗な努力の中で、バイデン政権は、1945年のブレトンウッズ協定調印後に世界に課せられた新植民地経済秩序全体を崩壊させる可能性が高い。戦争で荒廃したヨーロッパ諸国は、自国通貨を金準備を背景とした米ドルに対する固定為替相場にするというワシントンからの命令を渋々受け入れた。この固定為替相場はその後70年代に放棄されたが、世界の金融システムにおけるドル覇権を許容することになった。
ウクライナの悪名高いアゾフ大隊は、外国の白人至上主義組織とつながったネオナチの義勇兵準軍事部隊として広く知られているが、当初は超民族主義のウクライナ愛国団と、ネオナチの社会国民会議(SNA)グループから2014年5月に義勇兵グループとして結成されたものであった。
大隊としてそのグループは、ウクライナ東部のドンバス地方で、親ロシア派の分離主義者と最前線で戦い、ロシアが支援する分離主義者から戦略港湾都市マリウポリを奪還して、頭角を現した。そして2014年11月12日にウクライナ国家警備隊に正式に統合され、当時のペトロ・ポロシェンコ大統領から高い評価を受けた。2014年の授賞式でポロシェンコ大統領は、「彼らは我々の最高の戦士だ」と賞賛した。
2015年6月、カナダとアメリカの両国は、ネオナチとのつながりを理由に、アゾフ連隊への支援や訓練を行わないことを発表した。しかし翌年、米国は国防総省の圧力で禁止を解除し、CIAは対ロシア消耗戦のため、ウクライナ東部の超民族主義民兵を育成する秘密計画を開始した。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は4月3日、CNNのダナ・バッシュとのインタビューで、「NATOの同盟国は何年も何年もウクライナを支援してきた」と述べ、軍事支援は「侵攻以来この数週間で強化された」と付け加えた。この高官は、「米国だけでなく、英国やカナダ、その他いくつかのNATOの同盟国は、何年もウクライナ軍を訓練してきた 」と明らかにした。
ストルテンベルグの推定では、「何万人ものウクライナ軍」がそのような訓練を受け、現在「最前線でロシア軍の侵攻と戦っている」のだそうだ。事務総長はさらに、「ウクライナ軍は以前よりはるかに大きく、はるかに優れた装備、はるかに優れた訓練、はるかに優れた指導力を持つようになった」と、ブリュッセルに本拠を置く同盟であるNATOを評価した。
ウクライナで反ロシアの反乱軍を育成することを目的とした長年のCIAプログラムに加え、カナダ国防省はロシアのウクライナ侵攻の2日後の2月26日に、カナダ軍が「約3万3000人のウクライナ軍と治安要員に戦術と上級軍事技能を幅広く訓練した」ことを明らかにした。一方、イギリスは、「オービタル(軌道)作戦」を通じて、22,000人のウクライナ人戦闘員を訓練したと、情報通のNATO事務総長が指摘した。
爆弾的なスクープとして、ザック・ドーフマンは3月16日付のYahoo Newsでこう報じている。
「元関係者によれば、ウクライナを拠点とした訓練プログラムの一環として、CIAの準軍人たちは、ウクライナの民兵に狙撃技術、米国が供給したジャベリン対戦車ミサイルなどの操作方法、ロシアがウクライナ軍の位置を特定するために使っていたデジタル追跡を回避する方法、秘密の通信手段の使い方、戦場で見つからずにいる一方で、ロシアと反乱軍の位置を引き出す方法などのスキルを教えたとのことである。」
「CIAの準軍人たちがウクライナ東部に初めて入ったのは、2014年にロシアが初めて侵攻した後のことだったが、そのときの彼らの任務は2つだった。1番目の任務は、ドンバス地方でウクライナ軍に対して激しい戦争を繰り広げているロシア軍とその分離主義者の同盟軍と戦うウクライナの特殊作戦要員の訓練に、CIAがどうすれば最も協力できるかを判断することだった。しかし元政府関係者によれば、2番目の任務は、ウクライナ人自身の気概を試すことであったという。」
大部分を徴兵者が占めるウクライナ軍や同盟関係にある東ウクライナ内のネオナチ民兵隊に対するCIAによる秘密訓練や、ポーランドに隣接する西部の「ヤヴォリブ戦闘訓練センター」(3月13日に30発の巡航ミサイルの弾丸により少なくとも35人の過激派が死亡した)でのウクライナ治安部隊の訓練のためのアメリカの特殊部隊プログラムの他に、ドーフマン記者は1月に発表して別の記事で、アメリカ南部の非公開の施設で、CIAはウクライナの特殊部隊訓練の秘密計画も運営しているとも書いている。
「この構想に詳しい5人の元情報・国家安全保障当局者によると、CIAはウクライナのエリート特殊作戦部隊やその他の諜報員のために、米国で秘密の集中訓練計画を監督しているとのことだ。2015年に始まったこの計画は、それらの関係者の何人かによると、米国南部の非公開の施設を拠点としている。」
「CIAの『現場支部』(現在は『現場部門』として正式に知られているが)で働く準軍人達によって運営されている秘密計画は、2014年のロシアのクリミア侵攻と併合後にオバマ政権によって設立され、トランプ政権下で拡大したが、バイデン政権はそれをさらに増強している。」
2015年までに、この拡大した反ロシアの取り組みの一環として、CIA現場部門の準軍人も、ウクライナの治安部隊とそこに同盟するネオナチ民兵に助言し支援するために、「ウクライナ東部の前線への移動を開始」している。米国を拠点とする数週間のCIAの計画には、「銃器、偽装技術、陸上での移動方法の案内、避難場所や移動などの戦術、情報、その他の分野での訓練」が含まれていた。
この計画に詳しいある人物は、もっと露骨にこう言った。「米国は反乱軍を訓練している」と元CIA職員は言い、この計画はウクライナ人に「ロシア人を殺す方法」を教えていると付け加えた。
数十年前から、CIAは米国と同盟関係にあるキエフを強化し、ロシアの影響力を弱めようと、ウクライナの情報部隊に限られた訓練を提供していたが、協力が活発化したのは、2014年に親ロシアのウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィッチを倒すマイダン・クーデターが起こって、それに続いてロシアがクリミアを併合した後だった、と元CIA幹部はドーフマン記者に打ち明けた。
*
ナウマン サディク(Nauman Sadiq)は イスラマバードを拠点とする地政学・国家安全保障アナリストで、アフパクと中東地域における地政学的問題やハイブリッド戦争に焦点を当てる。専門分野は、新植民地主義、軍産複合体、石油帝国主義など。グローバルリサーチに熱心に調査した調査報告書を定期的に寄稿している。
この記事の出典はGlobal Researchです。
著作権 © ナウマン サディク, グローバルリサーチ, 2022
<記事原文 寺島先生推薦>
Dubious Allegations: NATO Accuses Russia of Attacking the People of Mariupol With Chemical Weapons
ナウマン・サディク (Nauman Sadiq)著
グローバルリサーチ、2022年4月13日
<翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年4月19日

ロシア軍がウクライナ東部のドネツク州第2の都市マリウポリを解放し、露・ウクライナ戦争で大きな戦略的勝利を収めようとしている。しかし一方で、リズ・トラス英外相は、敵対国の化学兵器攻撃を非難するというNATOの心理作戦の脚本の中で最も古い手口にのっとり、月曜日(4月11日)にこんなツイートをしている。
「ロシア軍がマリウポリの人々への攻撃で化学兵器を使用した可能性があるとの報告がある。私たちは同僚とともに、詳細を確認するために緊急に取り組んでいる。このような兵器の使用は、この紛争を無情にもエスカレートさせるものであり、我々はプーチンとその政権の責任を追及する。」
Reports that Russian forces may have used chemical agents in an attack on the people of Mariupol. We are working urgently with partners to verify details.
— Liz Truss (@trussliz) April 11, 2022
Any use of such weapons would be a callous escalation in this conflict and we will hold Putin and his regime to account.
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、月曜日(4月11日)の夜、NATOひいき筋による根拠のない主張を愚かにも鸚鵡返しして、ロシアがマリウポリ攻撃のために東部ドンバス地方に軍隊を集結させる中、化学兵器を使用する可能性があると主張した。
ウクライナのハンナ・マリャル(Hanna Malyar )国防副大臣は、ロシアがマリウポリを包囲している間に化学兵器を使用したかもしれないという「未確認の情報」を政府が調査していると述べた。マリャル氏はテレビで「白リン弾ではないかとの説もある」と述べた。
キエフが任命した東部ドネツク州の自称知事パブロ・キリレンコ(Pavlo Kyrylenko)氏は、マリウポリでの化学兵器使用の可能性に関する事件報告を見たが、確認はできなかったと述べた。
「昨夜12時頃、無人機が未知の爆発物を投下し、マリウポリ金属工場とその周辺にいた3人が体調を崩したことは知っている」、と彼は記者団に語った。彼らは病院に運ばれ、命に別条はないと付け加えた。
ロシアはマリウポリでの化学兵器の使用を明確に否定したが、いずれにせよ、1997年の化学兵器禁止条約(CWC)では、白リンの使用は禁止されていない。実際、アメリカ自身、2017年にシリアのラッカで行われた「イスラム国」に対する作戦で、白リン弾をふんだんに使用している。白リンは主に、紛争地域の夜空を照らし、反政府勢力が夜間に正規軍に対して採用するヒットエンドラン(一撃離脱)戦法を防ぐために使用されている。
しかし、ロシア軍による化学兵器の使用という怪しげな主張が、ウクライナ治安部隊と諸外国の支援者たちによって提起された本当の理由は、マリウポリの戦いが決定的な局面を迎えたからである。CIAの訓練を受けたウクライナのネオナチ民兵がアゾフスタルの工業地帯に立てこもり、重火器を置いていくのと引き換えに安全な回廊を得て戦闘地域から脱出することを考えている。
ロシア軍がアゾフスタルを奪取すれば、ロシア支配地域間の東西間の要であるマリウポリを完全に掌握することになり、ウクライナの治安部隊と同盟国の超民族主義民兵に対する戦略的大勝利を宣言することになる。
リズ・トラス英外相の片割れであるアメリカの相方、トニー・ブリンケン国務長官は、40年以上の政治キャリアで「眠れるジョー(・バイデン」」が犯した失言の数よりも、1年間の外交キャリアで犯した失言の数の方が多いのだから、リズ・トラス英外相もニュース通ではないことは明らかだ。
そうでなければ、ロシア軍がマリウポリで化学薬剤を使ったかもしれないというばかげた主張をする前に、4月7日に発表されたNBCの爆弾スクープを思い出すに違いないだろう。その報道の筆者によると、アメリカのスパイ機関が、意図的かつ選択的に主要報道機関に機密情報をリークし、ウクライナでの1カ月にわたる軍事攻勢中にロシアに対する偽情報キャンペーンを行っていたとのことだった。その米国のスパイ機関は、その機密情報が信頼できないことを知っていた上でのことだったという。
ロシアがウクライナ戦争で化学兵器を使用する準備をしているというアメリカの情報機関の分析は、以前企業メディアで広く報道されていた。 それが、ウクライナの政治家とそのNATOの後援者によって再び利用されたのだ。そのような根拠のない主張がマスコミにリークされたのは、ロシアがウクライナの悪事を確証するような主張をしたことへの対抗措置だった。ロシアの主張によれば、ウクライナはワシントンと協力して、多くの生物研究所で活発な生物兵器プログラムを進めているというものだった。そしてロシア軍はウクライナ侵攻の初期にそのような生物研究所を発見したとのことだった。
***
参考記事
予言的観測: ランド・コーポレーションズ(RAND Corp.)の報告書。ロシアを「不安定化させ、弱体化させる」ために、推奨される 「挑発的行動」
NBCの記事にはこう記されている。
「それは、注目を集める主張であり、世界中の見出しを飾った。米国当局者は、ロシアがウクライナで化学薬剤を使用する準備をしている兆候があると述べた。ジョー・バイデン大統領も後にそれを公言した。しかし、3人の米国当局者が今週NBCニュースに語ったところによれば、ロシアがウクライナに化学兵器を持ち込んだという証拠はないとのことである。彼らは、米国が情報を公開したのは、ロシアが禁止されている軍需品を使用するのを阻止するためである、と述べた。」
「複数の米政府高官は、情報の正確性が高くない場合でも、米国が情報を武器として使っていたことを認めている。今回の化学兵器の件のように信頼性の低い情報を抑止力のために使うこともあるとのことだ。ある当局者が言うように、米国はただ『プーチンの出方を伺おうとしていた』のである。」
他の明らかになった事実の中で、NBCの記事は、ロシアが中国に軍事的支援を求めた可能性があるという告発は確たる証拠を欠いていると、ヨーロッパの当局者と2人のアメリカ当局者が報道機関の特派員に語ったと指摘した。
「米国当局者は、中国がロシアに武器を提供することを検討している兆候はないと語った。バイデン政権は中国にそうしないように警告するためにその報道を出した、と彼らは述べた。欧州当局者は、この情報公開を『中国からの軍事支援を阻止するための公開ゲーム』と表現した。」
このように、中国とロシアが経済的救済をひどく必要としているときに、中国とロシアの間の互恵的な絆が強まる可能性に機先を制して、米国は、中国がロシアに軍事品販売を約束したことを先回りして非難したのである。ロシアが世界有数の武器輸出国であり、中国にそのような要求さえしていないにもかかわらず。
ジェイク・サリバン米国家安全保障顧問は3月15日、ローマで中国側の楊潔篪(ようけつち)と7時間にわたる激しい会談を行い、西側の対ロシア制裁を逃れることは「重大な結果」となると中国に警告した。経済制裁という棍棒を振り回しただけでなく、トランプ政権が始め、バイデン政権が2月末のロシアのウクライナ侵攻まで続けてきた対中貿易戦争を終結させるというニンジンもひけらかしたにちがいない。
軍事力に関しては、通常兵器だけでなく核兵器も含めた膨大な兵器を持つロシアは、多かれ少なかれ米国の軍事力に匹敵する。しかし、経済戦争に関しては、もっと巧妙で陰湿な戦略が必要だ。その対策については、90年代にソ連が崩壊し、60年代に東欧、中南米、アジア、アフリカの多くの社会主義国にまたがるかつて隆盛を誇った共産圏が解体された後で、ロシアは答えを持っていないように見える。
現在のグローバルな新植民地主義秩序は、第二次世界大戦後の1945年にブレトンウッズ協定に調印して以来、米国とその西ヨーロッパの子分たちによって導かれている。歴史的には、世界貿易と経済政策を独占する欧米にあえて挑戦する国家、特に社会主義政策を志向する国家は、国際的に孤立させられ、その国家経済は長期間にわたって破綻させられてきた。
しかし、今回ばかりは、ロシアを国際的に孤立させようとする執拗な努力の中で、バイデン政権は、1945年のブレトンウッズ協定調印後に世界に課せられた新植民地経済秩序全体を崩壊させる可能性が高い。戦争で荒廃したヨーロッパ諸国は、自国通貨を金準備を背景とした米ドルに対する固定為替相場にするというワシントンからの命令を渋々受け入れた。この固定為替相場はその後70年代に放棄されたが、世界の金融システムにおけるドル覇権を許容することになった。
ウクライナの悪名高いアゾフ大隊は、外国の白人至上主義組織とつながったネオナチの義勇兵準軍事部隊として広く知られているが、当初は超民族主義のウクライナ愛国団と、ネオナチの社会国民会議(SNA)グループから2014年5月に義勇兵グループとして結成されたものであった。
大隊としてそのグループは、ウクライナ東部のドンバス地方で、親ロシア派の分離主義者と最前線で戦い、ロシアが支援する分離主義者から戦略港湾都市マリウポリを奪還して、頭角を現した。そして2014年11月12日にウクライナ国家警備隊に正式に統合され、当時のペトロ・ポロシェンコ大統領から高い評価を受けた。2014年の授賞式でポロシェンコ大統領は、「彼らは我々の最高の戦士だ」と賞賛した。
2015年6月、カナダとアメリカの両国は、ネオナチとのつながりを理由に、アゾフ連隊への支援や訓練を行わないことを発表した。しかし翌年、米国は国防総省の圧力で禁止を解除し、CIAは対ロシア消耗戦のため、ウクライナ東部の超民族主義民兵を育成する秘密計画を開始した。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は4月3日、CNNのダナ・バッシュとのインタビューで、「NATOの同盟国は何年も何年もウクライナを支援してきた」と述べ、軍事支援は「侵攻以来この数週間で強化された」と付け加えた。この高官は、「米国だけでなく、英国やカナダ、その他いくつかのNATOの同盟国は、何年もウクライナ軍を訓練してきた 」と明らかにした。
ストルテンベルグの推定では、「何万人ものウクライナ軍」がそのような訓練を受け、現在「最前線でロシア軍の侵攻と戦っている」のだそうだ。事務総長はさらに、「ウクライナ軍は以前よりはるかに大きく、はるかに優れた装備、はるかに優れた訓練、はるかに優れた指導力を持つようになった」と、ブリュッセルに本拠を置く同盟であるNATOを評価した。
ウクライナで反ロシアの反乱軍を育成することを目的とした長年のCIAプログラムに加え、カナダ国防省はロシアのウクライナ侵攻の2日後の2月26日に、カナダ軍が「約3万3000人のウクライナ軍と治安要員に戦術と上級軍事技能を幅広く訓練した」ことを明らかにした。一方、イギリスは、「オービタル(軌道)作戦」を通じて、22,000人のウクライナ人戦闘員を訓練したと、情報通のNATO事務総長が指摘した。
爆弾的なスクープとして、ザック・ドーフマンは3月16日付のYahoo Newsでこう報じている。
「元関係者によれば、ウクライナを拠点とした訓練プログラムの一環として、CIAの準軍人たちは、ウクライナの民兵に狙撃技術、米国が供給したジャベリン対戦車ミサイルなどの操作方法、ロシアがウクライナ軍の位置を特定するために使っていたデジタル追跡を回避する方法、秘密の通信手段の使い方、戦場で見つからずにいる一方で、ロシアと反乱軍の位置を引き出す方法などのスキルを教えたとのことである。」
「CIAの準軍人たちがウクライナ東部に初めて入ったのは、2014年にロシアが初めて侵攻した後のことだったが、そのときの彼らの任務は2つだった。1番目の任務は、ドンバス地方でウクライナ軍に対して激しい戦争を繰り広げているロシア軍とその分離主義者の同盟軍と戦うウクライナの特殊作戦要員の訓練に、CIAがどうすれば最も協力できるかを判断することだった。しかし元政府関係者によれば、2番目の任務は、ウクライナ人自身の気概を試すことであったという。」
大部分を徴兵者が占めるウクライナ軍や同盟関係にある東ウクライナ内のネオナチ民兵隊に対するCIAによる秘密訓練や、ポーランドに隣接する西部の「ヤヴォリブ戦闘訓練センター」(3月13日に30発の巡航ミサイルの弾丸により少なくとも35人の過激派が死亡した)でのウクライナ治安部隊の訓練のためのアメリカの特殊部隊プログラムの他に、ドーフマン記者は1月に発表して別の記事で、アメリカ南部の非公開の施設で、CIAはウクライナの特殊部隊訓練の秘密計画も運営しているとも書いている。
「この構想に詳しい5人の元情報・国家安全保障当局者によると、CIAはウクライナのエリート特殊作戦部隊やその他の諜報員のために、米国で秘密の集中訓練計画を監督しているとのことだ。2015年に始まったこの計画は、それらの関係者の何人かによると、米国南部の非公開の施設を拠点としている。」
「CIAの『現場支部』(現在は『現場部門』として正式に知られているが)で働く準軍人達によって運営されている秘密計画は、2014年のロシアのクリミア侵攻と併合後にオバマ政権によって設立され、トランプ政権下で拡大したが、バイデン政権はそれをさらに増強している。」
2015年までに、この拡大した反ロシアの取り組みの一環として、CIA現場部門の準軍人も、ウクライナの治安部隊とそこに同盟するネオナチ民兵に助言し支援するために、「ウクライナ東部の前線への移動を開始」している。米国を拠点とする数週間のCIAの計画には、「銃器、偽装技術、陸上での移動方法の案内、避難場所や移動などの戦術、情報、その他の分野での訓練」が含まれていた。
この計画に詳しいある人物は、もっと露骨にこう言った。「米国は反乱軍を訓練している」と元CIA職員は言い、この計画はウクライナ人に「ロシア人を殺す方法」を教えていると付け加えた。
数十年前から、CIAは米国と同盟関係にあるキエフを強化し、ロシアの影響力を弱めようと、ウクライナの情報部隊に限られた訓練を提供していたが、協力が活発化したのは、2014年に親ロシアのウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィッチを倒すマイダン・クーデターが起こって、それに続いてロシアがクリミアを併合した後だった、と元CIA幹部はドーフマン記者に打ち明けた。
*
ナウマン サディク(Nauman Sadiq)は イスラマバードを拠点とする地政学・国家安全保障アナリストで、アフパクと中東地域における地政学的問題やハイブリッド戦争に焦点を当てる。専門分野は、新植民地主義、軍産複合体、石油帝国主義など。グローバルリサーチに熱心に調査した調査報告書を定期的に寄稿している。
この記事の出典はGlobal Researchです。
著作権 © ナウマン サディク, グローバルリサーチ, 2022
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