ウクライナ最新情報 第10報
ウクライナ最新情報 第10報
<記事原文 寺島先生推薦英文>
Ukraine Update #10
ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
2022年4月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年4月18日
ウクライナに関する有益な情報は、西側メディアからは得られない。ロシア軍はニュース発表を必要とせずに活動しているため、ほとんど情報が提供されない。
先週、国防総省のジョン・カービー報道官は、「もちろん彼ら(ウクライナ)は、これに勝つことができる。その証拠は、まさに皆さんが毎日目にしている成果の中にあります」と述べた。カービーはCNNから情報を仕入れているのだろう。ウクライナ人が勝った戦いなど知らない。ウクライナ軍が包囲され閉じ込められ、補給を断たれていないことを私は知らない。ウクライナ軍やアゾフ民兵が行っている攻撃行動はない。ウクライナ軍のインフラや指揮統制システムは破壊されている。西側諸国が兵器を提供する場合、スロバキアから送られたS-300防空システムのように到着時に破壊される。
クレムリンは新しい司令官を任命した。西側メディアは、この司令官交代を、ロシア軍を膠着状態から抜け出すためであると紹介している。
膠着状態ではないので、主にウクライナ軍のインフラ破壊に限定してきたロシアの重火器の使用制限に反対したため、指揮官が交代させられたのかもしれない。クレムリンの戦略にのっとれば、包囲された地域を街頭での戦闘で切り崩さなければならないために、ロシア軍に死傷者が出ることになる。重火器で相手部隊を排除できるのに、自分の部隊をこんな風に運用する方法を好まない指揮官がほとんどだろう。
ロシアがウクライナに侵攻したのではないことを理解する必要がある。ロシア軍はウクライナの東部と南部でのみ活動している。この部隊の活動目的は、包囲され追い詰められた大規模なウクライナ軍が、8年遅れてロシアが最近承認したドンバスの2つのロシア共和国を征服するのを阻止することである。ロシア軍に与えられたもう一つの任務は、ドンバス・ロシア人に残虐行為を働いたネオナチ・アゾフ民兵を駆逐することである。戦闘は主にロシア人が住むドンバス地域で行われており、クレムリンは住民を殺すのではなく、救出したいと考えているため、このプロセスはゆっくりと進んでいる。
クレムリンが犯した過ちは、8年前とその後の8年間である。ソチオリンピックに集中していたクレムリンは、ワシントンのウクライナ政府転覆作戦に介入して阻止しなかった。クレムリンは、ドンバスがクリミアのようにロシアに再編入されることを訴えてきたことに応じず、ドンバスの危機を阻止する先手を打つことができなかった。クレムリンは愚かにも、ウクライナのドンバスへの攻撃を止めるためのミンスク協定の履行を西側との交渉に頼ったために、8年にわたるドンバスへのアゾフ攻撃とドンバス領土の侵食を許し、その間にワシントンがウクライナ軍の装備と訓練を施したのである。つまり、クレムリンは、2008年にワシントンが組織したグルジアによる南オセチアへの攻撃から何も学んでいなかったのである。
ロシアは、窮地に陥ったウクライナ軍を破壊することなく紛争を終わらせたいと考えており、そのために、何も合意する権限のないワシントンの傀儡ゼレンスキーと交渉を続けているのである。勝者が交渉を進めるのは普通ではないので、クレムリンの交渉好きはロシア軍を弱く見せ、それが西側諸国の紛争継続を後押ししている。
私は、ロシアが介入を限定的なものにしたのは失敗だったと考えている。とはいえ、ロシアが選んだ限定的な方法で目的を達成できないのであれば、より大規模な攻撃を行うという選択肢は残されている。
ロシアの最大の問題は、政府がサタンに対して「いい子ぶりっ子」であろうとすることだと思う。クレムリンが欧米企業の国有化計画を撤回したのは、ロシアが欧米と違って私有財産を尊重していることを示したいからだろう。また、ドイツがロシアに対して敵対的な行動をとっているにもかかわらず、クレムリンはドイツにエネルギーを供給している。これは、ロシアが西側と異なり、契約上の義務を遵守していることを証明するためである。このような愚かさが、ロシアを敗北させるのだ。西側は、「ロシアがいかに信頼できるかご覧なさい」などと言わない。その代わりに、「ロシアがいかに愚かであるかご覧なさい」と言うのだ。ウクライナやスロバキア、フィンランド、スウェーデンで、ロシアを挫折させるためにあらゆる手を尽くし、国境にさらに軍隊と基地を置いているのだが、ロシアは自分たちを攻撃するためのエネルギーを彼らに売っているのだ。
おそらくクレムリンは、EUによる欧州からのロシア・エネルギー追放の試みは、欧州各国から強い反発を受けて、NATOの解体で終わることに賭けているのだろうが、ロシア自身がエネルギーの輸出を止めることでNATOとEUを解体できるのだ。どうやらこの「賢明な」措置は、ロシア中央銀行総裁がクレムリンに「ロシアには欧米からの輸出収益がなければならない」と進言して阻止しているため、ロシアの反制裁行動が事実上阻止され、対ロ制裁の成功に寄与しているようである。行動を起こせない政府は、軍事的優位の恩恵を失いかねない。
一方、ストルテンベルグNATO事務総長は、意味のないNATOの脅しを発し続けている。イギリスの新聞はこう報じている。
「NATOは、ウクライナ侵攻後の将来のロシアの侵略に対抗するため、国境に常設の全面的な軍事力を配備する計画を策定している」と、NATO事務総長が明らかにした。 https://www.telegraph.co.uk/news/2022/04/09/exclusive-full-scale-nato-military-force-defend-borders/
この記事によると、「本格的な軍事力」は「バルト海から黒海まで、東側一帯の8つの多国籍NATO戦闘団」で構成されている。https://www.zerohedge.com/geopolitical/nato-plans-massive-military-buildup-russias-border-citing-major-reset
ストルテンベルグの考えによれば、一戦闘団は1000~1500人の兵士で構成されるということだ。つまり、バルト海から黒海までの数千マイルをたった1万~1万2000人の兵士を散在させて、ロシアの侵略を阻止しようというのだ。こんな「NATO版バベルの塔」で十分だと考えているわけだ。ストルテンベルグはどんな世界に住んでいるつもりなのだろうか?
ロシアはポーランド、ルーマニア、バルト海、フィンランド、スウェーデンに侵攻する必要はないし、その意図もない。これらの国のミサイル基地は、遠く離れたところから精密兵器で排除することができる。ロシアがウクライナに軍を派遣したのは、ドンバスをアゾフの攻撃と占領から解放し、10万人のウクライナ軍によるドンバスへの侵攻を防ぐためである。
8年前にロシアが賢明な行動をとっていれば、今回の介入は必要なかっただろう。今後、クレムリンがどのような新たな過ちを犯し、さらなる介入を必要とするのか、気になるところである。
See also: https://gilbertdoctorow.com/2022/04/09/read-all-about-it-final-days-of-the-battle-for-mariupol/
<記事原文 寺島先生推薦英文>
Ukraine Update #10
ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
2022年4月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年4月18日
ウクライナに関する有益な情報は、西側メディアからは得られない。ロシア軍はニュース発表を必要とせずに活動しているため、ほとんど情報が提供されない。
先週、国防総省のジョン・カービー報道官は、「もちろん彼ら(ウクライナ)は、これに勝つことができる。その証拠は、まさに皆さんが毎日目にしている成果の中にあります」と述べた。カービーはCNNから情報を仕入れているのだろう。ウクライナ人が勝った戦いなど知らない。ウクライナ軍が包囲され閉じ込められ、補給を断たれていないことを私は知らない。ウクライナ軍やアゾフ民兵が行っている攻撃行動はない。ウクライナ軍のインフラや指揮統制システムは破壊されている。西側諸国が兵器を提供する場合、スロバキアから送られたS-300防空システムのように到着時に破壊される。
クレムリンは新しい司令官を任命した。西側メディアは、この司令官交代を、ロシア軍を膠着状態から抜け出すためであると紹介している。
膠着状態ではないので、主にウクライナ軍のインフラ破壊に限定してきたロシアの重火器の使用制限に反対したため、指揮官が交代させられたのかもしれない。クレムリンの戦略にのっとれば、包囲された地域を街頭での戦闘で切り崩さなければならないために、ロシア軍に死傷者が出ることになる。重火器で相手部隊を排除できるのに、自分の部隊をこんな風に運用する方法を好まない指揮官がほとんどだろう。
ロシアがウクライナに侵攻したのではないことを理解する必要がある。ロシア軍はウクライナの東部と南部でのみ活動している。この部隊の活動目的は、包囲され追い詰められた大規模なウクライナ軍が、8年遅れてロシアが最近承認したドンバスの2つのロシア共和国を征服するのを阻止することである。ロシア軍に与えられたもう一つの任務は、ドンバス・ロシア人に残虐行為を働いたネオナチ・アゾフ民兵を駆逐することである。戦闘は主にロシア人が住むドンバス地域で行われており、クレムリンは住民を殺すのではなく、救出したいと考えているため、このプロセスはゆっくりと進んでいる。
クレムリンが犯した過ちは、8年前とその後の8年間である。ソチオリンピックに集中していたクレムリンは、ワシントンのウクライナ政府転覆作戦に介入して阻止しなかった。クレムリンは、ドンバスがクリミアのようにロシアに再編入されることを訴えてきたことに応じず、ドンバスの危機を阻止する先手を打つことができなかった。クレムリンは愚かにも、ウクライナのドンバスへの攻撃を止めるためのミンスク協定の履行を西側との交渉に頼ったために、8年にわたるドンバスへのアゾフ攻撃とドンバス領土の侵食を許し、その間にワシントンがウクライナ軍の装備と訓練を施したのである。つまり、クレムリンは、2008年にワシントンが組織したグルジアによる南オセチアへの攻撃から何も学んでいなかったのである。
ロシアは、窮地に陥ったウクライナ軍を破壊することなく紛争を終わらせたいと考えており、そのために、何も合意する権限のないワシントンの傀儡ゼレンスキーと交渉を続けているのである。勝者が交渉を進めるのは普通ではないので、クレムリンの交渉好きはロシア軍を弱く見せ、それが西側諸国の紛争継続を後押ししている。
私は、ロシアが介入を限定的なものにしたのは失敗だったと考えている。とはいえ、ロシアが選んだ限定的な方法で目的を達成できないのであれば、より大規模な攻撃を行うという選択肢は残されている。
ロシアの最大の問題は、政府がサタンに対して「いい子ぶりっ子」であろうとすることだと思う。クレムリンが欧米企業の国有化計画を撤回したのは、ロシアが欧米と違って私有財産を尊重していることを示したいからだろう。また、ドイツがロシアに対して敵対的な行動をとっているにもかかわらず、クレムリンはドイツにエネルギーを供給している。これは、ロシアが西側と異なり、契約上の義務を遵守していることを証明するためである。このような愚かさが、ロシアを敗北させるのだ。西側は、「ロシアがいかに信頼できるかご覧なさい」などと言わない。その代わりに、「ロシアがいかに愚かであるかご覧なさい」と言うのだ。ウクライナやスロバキア、フィンランド、スウェーデンで、ロシアを挫折させるためにあらゆる手を尽くし、国境にさらに軍隊と基地を置いているのだが、ロシアは自分たちを攻撃するためのエネルギーを彼らに売っているのだ。
おそらくクレムリンは、EUによる欧州からのロシア・エネルギー追放の試みは、欧州各国から強い反発を受けて、NATOの解体で終わることに賭けているのだろうが、ロシア自身がエネルギーの輸出を止めることでNATOとEUを解体できるのだ。どうやらこの「賢明な」措置は、ロシア中央銀行総裁がクレムリンに「ロシアには欧米からの輸出収益がなければならない」と進言して阻止しているため、ロシアの反制裁行動が事実上阻止され、対ロ制裁の成功に寄与しているようである。行動を起こせない政府は、軍事的優位の恩恵を失いかねない。
一方、ストルテンベルグNATO事務総長は、意味のないNATOの脅しを発し続けている。イギリスの新聞はこう報じている。
「NATOは、ウクライナ侵攻後の将来のロシアの侵略に対抗するため、国境に常設の全面的な軍事力を配備する計画を策定している」と、NATO事務総長が明らかにした。 https://www.telegraph.co.uk/news/2022/04/09/exclusive-full-scale-nato-military-force-defend-borders/
この記事によると、「本格的な軍事力」は「バルト海から黒海まで、東側一帯の8つの多国籍NATO戦闘団」で構成されている。https://www.zerohedge.com/geopolitical/nato-plans-massive-military-buildup-russias-border-citing-major-reset
ストルテンベルグの考えによれば、一戦闘団は1000~1500人の兵士で構成されるということだ。つまり、バルト海から黒海までの数千マイルをたった1万~1万2000人の兵士を散在させて、ロシアの侵略を阻止しようというのだ。こんな「NATO版バベルの塔」で十分だと考えているわけだ。ストルテンベルグはどんな世界に住んでいるつもりなのだろうか?
ロシアはポーランド、ルーマニア、バルト海、フィンランド、スウェーデンに侵攻する必要はないし、その意図もない。これらの国のミサイル基地は、遠く離れたところから精密兵器で排除することができる。ロシアがウクライナに軍を派遣したのは、ドンバスをアゾフの攻撃と占領から解放し、10万人のウクライナ軍によるドンバスへの侵攻を防ぐためである。
8年前にロシアが賢明な行動をとっていれば、今回の介入は必要なかっただろう。今後、クレムリンがどのような新たな過ちを犯し、さらなる介入を必要とするのか、気になるところである。
See also: https://gilbertdoctorow.com/2022/04/09/read-all-about-it-final-days-of-the-battle-for-mariupol/
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