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インドはロシアや西側との関係からウクライナ危機をどうとらえているか?


インドはロシアや西側との関係からウクライナ危機をどうとらえているか?

<記事原文 寺島先生推薦>

How India perceives the Ukrainian crisis and

it means for its relations with Russia and the West


ロシアのウクライナ侵攻により、東洋のロシアの同盟諸国はロシアとの関係を再考している。

RT 2022年3月23日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年3月31日


 
 ロシアによるウクライナへの軍事作戦、いやもっと広く言えばロシアと西側諸国との衝突はあったが、印露両国の関係は劇的には変わらないとかなりの政治専門家たちは見ているだろう。

 両国には長年かけて築き上げられてきた特別な関係がある。両国が防衛や安全保障上で重要な地域に取り囲まれていることもあり、政治的分野においても経済的分野においても関係を強めてきた。そんな両国であるので、東欧で起こった戦争行為により影響を受けるとは考えにくい。しかしながら、細かいところに落とし穴があるのはよくあることだ。

誰一人も取り残さない

 
「もうすでにお気づきの方も多いと思いますが、ロシアとウクライナ間の緊張状態が高まり、2022年2月24日に武力衝突が起こりました。この衝突に至った経緯には根深いものがあり様々な要因が絡んでいます。具体的には安全保障体制、政治、各国間の政治体制などです。そのことに加えて以前に同意できていた相互理解をどう受け止めるかという課題もあります。注目しておくべきことは、戦争が起こったウクライナで2万人以上のインド国民が危険な状況に置かれているという事実です。我が国はこの件に関する国連安全保障理事会の会議に出席していましたが、喫緊の課題は我が国の国民を守り、彼らに害が及ばないことを保証することです」とインドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル(Subrahmanyam Jaishankal)外相はインドのラージヤ・サバ―(上院議会)で2022年3月15日に発言した。

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 Pakistan, like India, won't bow to Western pressure – PM Khan

 
 この発言からわかることは、今回のウクライナ紛争により、地政学的均衡や議論においてインドがロシアに対してとってきた立場は変わらず、懸念されているのはウクライナ国内にいるインド国民を安全に国外退去させることだということだ。ウクライナにいるインド国民の大部分はキエフやハルキウやスームィで医学を学んでいる人々であり、インド政府が一番心配しているのは、この人々のことのようだ。

 ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相が率いるインド政権は、「ガンガー作戦」という作戦を立ち上げた。この作戦の目的は、ウクライナのインド国民を帰国させることだ。この作戦には「政府が一丸となって」取り組むこととされており、外務省も関連するすべての国の大使館や民間航空省や防衛省や国家災害管理局やインド空軍や民間の航空諸会社と協力して取り組むことになる。特筆すべきは、ウクライナで活動中のロシア政府高官や軍がインド政府と常に連絡を取り合い、インドの学生や社会人たちを人道回路経由で救出することに成功していることだ。

 残念なことに、ハルキウ医科大学の4回生であったナヴィーン・シェカラパ・ギャナガウダル(Naveen Shekarappa Gyanagaudar)さんが亡くなってしまった。そのことに関しては慎重な調査が求められており、ロシア政府は即座にその調査を行うことを約束している。しかし、「ガンガー作戦」は成功裏に成し遂げられたことで、印露の密接な関係がこのような厳しい状況においても保たれていることの実例となり、緊急事態の解決には相互理解が大事である教訓となっている。

政治的な主張の正しさを経済が証明する

 インドの指導者や、一般市民の人々がこの戦争の人道支援的側面に焦点を当てている中ではあるが、より実用的な考え方にも焦点が当たっている。これらの考え方はインドが国際社会でどのような地位を占めるかの問題に関わるものだ。(国連安全保障理事会や国連総会の会議も含めて)。さらには西側諸国がロシアに課そうとしている無数の制裁措置や、その制裁措置により予測がつきにくくなっている将来の印露間の協力関係がどう変わっていくかなどについても熟考が求められている。

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 India looks to boost non-dollar trade with Russia

 インドがこのような状況においても長年構築されてきた印露関係に終止符を打つと考えている人はロシアにはほとんどいない。実際そうはならなかった。ロシアの行為を非難する国連安全保障理事会の決議においても、国連総会の決議においても、インド政府は首尾一貫した態度を維持していた。インドは西側が出した決議に対しては棄権の立場を示した。この決議の目的は、ウクライナに対してロシアが「侵略行為」を行ったという強い表現を使用することを決めることだった。

 このようにインドは従来の戦略をとり続けると決め、インドが「全方向同盟主義(かつての非同盟主義をもじった言い方だが)」の立場を取ることを鮮明にした。「全方向同盟主義」の考え方は、世界的に見て力をつけてきたインドがすべての国々と実りある協力体制の構築を粘り強く目指していくというものだ。そして論争の種となるような問題を前面に出すことは避けようという方向性だ。この国連で示した態度により、インドはこれまで取ってきた伝統的な独自主義を改めて証明することになり、おかしな主張していた政治専門家たちに釘をさすことになったはずだ。これらの専門家たちはこれまでインドが重視してきた立場というものを誤解していて、インドは印露の両国関係を犠牲にして西側とのつながりを強めるために賛成に回ると考えていたのだ。

 経済協力の方がややこしい問題のようだ。というのも経済問題は、国際市場が相互に関係しあっていることに起因する多数の構造的な制限にとらわれているからだ。このような環境の中でうまくやっていくには、確固たる一貫性のある努力が不可欠となり、次々と生まれてくる課題に対応していかなければならない。

 経済界におけるインドの政策立案者たちは、実業界とともに、西側の制裁措置について注視している。インドのマスコミはロシア銀行が取る措置や、ルーブルの為替レート、ロシアの金融市場の機能についての詳細を報じている。

 インドの人々を最も悩ませているのは、世界経済や世界の供給網において構造的な問題が生まれるかもしれないという問題だ。例えば、インド準備銀行(インドの中央銀行の位置づけだ)が懸念を表明したのは、経済制裁の影響により、エネルギー価格の変動や、金融市場の不安定化、や物価変動率が影響を受ける可能性についてだった。

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 World’s third biggest oil consumer snubs calls to avoid Russian crude – media

 インドの市場関係者たちは西側が主導している制裁措置に加わる気はないが、ロシアのこの先の協力関係に影響がでることを心配している。そのためインドステイト銀行(インド最大の貸与銀行)は、世界各国がロシアに課した制裁の対象者であるロシア関係者との取引をすべて中止した。それは同行のもつ世界的に重要な存在感を維持し、米国やEUの規制に従う必要があるための措置である。

 しかし驚くほどのことでもないが、西側の主導と歩調を合わすだろうと思われていた著名な経済団体の中にはそうしなかった団体もあるのだ。そうした方が世界中からの投資や先進的な事業を呼び込もうというインドの長期的計画を阻害する可能性があるのに、だ。ロシアが関心を持っているのは、インドステイト銀行の手引きにより急速に発展しているインド経済と関係をもつことである。この活気あるインド経済こそ、印露間経済提携全体において最も重要な要因だ。

旧友こそ親友

 インドが現状、どのような利益を得ることができるか疑問に思っている人もいるだろう。一つ目の利点は、インド政府にとって、ロシアを基軸に東方に展開できる新しいチャンスが得られるということだ。というのも、今回ロシア政府には非西側諸国との連携を強めるという選択肢しか実質上ないからだ。ロシアと欧州は地政学的観点からいえばお互い強く結びついていているから、この先欧州の安全保障構造を再構築し、他の分野で協力しあえる共通理解を再度見つけなければならなくなるだろうが、今両者においてはこれまでの歴史的な関わりを再確認しないといけない余地が生じ、新しい協力関係を模索し、お互いの共通理解を最大限にまで高める必要性が生まれているからだ。

 二つ目の利点は、いわゆる「ロシアの中国への依存」を減少させるために本格的に動き出さないといけない時期に来ているという点だ。「ロシアが中国の従属国になる」という話は、当局や、学会や、専門家たちの中で近年ずっと出回り続けている話だ。インド政府にとってこのゲームに本格的に参戦できる機会はこの先またとないだろう。ロシアと新しい契約を結び、提携事業を立ち上げ、投資を増やすことで、インドが望む勝利が手に入るチャンスなのだ。

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 US recalls official memo that hammered nations for being ‘in Russia's camp’

 最後の利点は、西側、主に米国からの厳しい圧力にも負けず、インドがロシアとの特別な協力関係の下で特権的な利益を得ようという姿勢を示せることだ。この姿勢より、ロシア政府内部に存在する「インドは西側の方に傾倒しつつあるのではないか」という声を封じ込めるこめる効果的な作戦はないだろう。

幸運は用意された心にのみ宿る

 この先扱っていかなければならない状況は疑いなく先が見えない。しかし今のロシアは、今回の危機においてインドが示した立場にはきっと満足している。この印露間のやりとりに対して支持をする声は何千ものの人々から上がっている。

 インドとロシアは新しい世界秩序の中でさらに協力を深めていくことになる。従前の世界秩序ではもはや世界は機能しないようだ。新しい世界秩序においては、印露二か国の指導者の政治的意図や、両国の起業家たちの動機が重要な位置を占めることになろう。


 この記事はグレブ・マカレヴィチ(Gleb Makarevich)による

 

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