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ウクライナで野党が禁止され、「情報の一本化」が目指されている

ウクライナで野党が禁止され、「情報の一本化」が目指されている

<記事原文 寺島先生推薦>Opposition political parties banned in Ukraine and ‘unified information policy’ imposed

ゼレンスキーはウクライナにおける左翼政党や反NATO政党の禁止措置を正当化しようとしている。その言い分は、これらの政党がロシアと繋がっていているからだとしている。しかし実の所はこれらの政党はロシアによる侵攻には反対している。

People's Dispatch 2022年3月21日

アブダル・ダーマン(Abdul Rahman)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月26日

ウクライナの国会議事堂のヴェルホーヴナ・ラーダ

 ウクライナの反政府勢力に対してさらなる攻撃が加えられた。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナ国内の主要な野党の活動の禁止を発表したのだ。理由は、これらの野党はロシアとつながりがあるからということだった。さらにゼレンスキー大統領は、ウクライナ国内のすべてのTV局を合併することも発表した。その理由は、「情報を一本化する政策のため」だとした。これにより政府がメディアを完全な支配下に置くことになる。

 ウクライナ国内の連帯を維持するためだというゼレンスキー大統領は、以下のような声明を出した。「ウクライナ国家安全保障委員会の決定により、ロシアの侵略行為による現在の全面戦争戒厳令下において、ロシアと繋がりをもつ多くの政党の活動を中止することになった」と。

 さらにゼレンスキー大統領はウクライナ国内のすべてのTV局を閉鎖し、国営TVに統一することも発表した。同大統領の主張によれば、この措置により、戒厳令下において「情報を一本化する政策」が導入できる一助となるとのことだった。なお既にウクライナではロシアのTV局の放映は禁じられている。

 この措置により11の政党の活動が禁じられたが、その中には「野党プラットフォーム生活党」も含まれていた。この党は総議席が450であるウクライナ国会の中で39議席を持つ政党だ。それ以外に活動が禁止された政党には、シャリティ党、我々の党、左派野党、左派勢力連合党、社会主義党がある。これらの政党のいくつかは左翼政党であり、ウクライナがNATOやEUに加盟することに反対してきた諸政党だ。

 政党活動の禁止が発表された後、「野党プラットフォーム生活党」はこの措置を「不法である」とし、法廷に訴えることを宣告した。同党は同党の活動家や事務職員たちに対して活動を続けるよう依頼し、さらに以下のような声明を出している。「国をどうまとめるかについて、政治論議や政策論議をして妥協点を探す手続きを踏まず、政府当局は襲撃や脅迫や抑圧や報復という形で反対勢力を抑え混もうとしている」と。

 「野党プラットフォーム生活党」はウクライナ東部のロシア語話者居住地に強い基盤を持っている政党だ。党首はヴィクトル・メドヴェードチュク(Віктор Медведчуk)であるが、彼は反逆罪でウクライナ政府から起訴中だ。メドヴェードチュクはロシアによるウクライナ侵攻後、自宅軟禁されていた。しかしウクライナ政府によると、メドヴェドチュクは自宅軟禁から逃れたとのことだ。メドヴェードチュクの弁護士は、この起訴は不当であるとしていた。

 今からほんの数週間前の3月6日には、「ウクライナレーニン主義共産主義青年連盟」の指導者であるアレクサンドル・コノノビッチ(Aleksandr Kononovich)とミハイル・コノノビッチ(Mikhail Kononovich)もウクライナ治安部隊により逮捕され、投獄された。それ以降、この両名の現状に関する情報は極端に制限されている。

 SNSを利用して、野党活動を禁止するこの措置に批判の声を上げている専門家もいる。




 さらに西側メディアにおいてこの措置に対する批判の声が少ないことに疑問を呈して、「これは民主主義を抹殺する行為になる」と嘆く専門家もいる。多くの人が、これこそ西側メディアの「二重基準性」を示すものだとコメントしている。



 ウクライナ政府のこの措置に対して公式見解を出していない西側諸国の政府も、様々な方面からの批判に直面している。



反対派を禁止してきた長い歴史

 野党を切り離そうという今のウクライナの措置が批判されているのは、この措置が、現政権が親西側政策や親NATO政策を批判する勢力を全く受け入れようとしていない姿勢を示すものだからだ。右派やネオナチ勢力による政界支配が見られるようになったのは、2014年のユーロマイダン運動以来のことだ。この運動により当時のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領が辞任に追い込まれた。その理由は、同大統領の政権が親EU路線をとらず、ロシアに接近する路線を提案していたからだった。

 ウクライナ政府が強い憎しみを示している対象は他にもある。それはウクライナに残存する旧ソ連時代の名残だ。ウクライナ政府は公共地からソ連時代の遺物を排除するという問題の多い政策を採ってきた。

 戦争が始まった2月24日より5年も前から、ゼレンスキー大統領は、諸野党と繋がりがあるとして少なくとも3局のTV局の活動を閉鎖した。具体的にはZIK局、NewsOne局、112ウクライナ局だが、閉鎖されたこれらのTV局の所有者はタラス・コザック(Тарас Козак)という「野党プラットフォーム生活党」の国会議員だった。

2015年にはウクライナ当局はウクライナ国内での共産党の活動も禁止した。その理由は、共産党が分離主義や民族闘争を支持していたからとのことだった。具体的には、共産党がロシアによるクリミア併合や、ドネツクやルガンスクの独立運動の動きに同意したためだとしていた。共産党の活動禁止を発令する際にウクライナ当局が使ったのは、2015年5月に成立した「脱共産主義法」という問題の多い法律だった。この法律により、共産党は党名とロゴマークを変えるように命じられた。さらにこの法律により、政府が過去のソ連共産主義時代の遺物を消去できるようになった。

 批判の声が広がったが、ウクライナ当局はこの問題の多い法律の取り消しには応じなかった。このこともウクライナ当局がネオナチ勢力に取り込まれている現状である。ゼレンスキー大統領が右派勢力に対して同様の措置を取っていないことは注目すべき点である。同大統領が標的にしているのは親露とされる勢力であるという事実は、ウクライナ国内でこれらの親露勢力が、政治論議において影響力を持っているということにほかならない。

 

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