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アメリカ帝国は自滅する。しかしこんなに早くとは誰が思ったろうか


アメリカ帝国は自滅する。しかしこんなに早くとは誰が思ったろうか。
<記事原文 寺島先生推薦>
The American Empire Self-Destructs, But Nobody Thought That It Would Happen This Fast

Counter Punch 2022年3月8日

マイケル・ハドソン(MICHAEL HUDSON)

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年3月24日



 2022年3月8日

 帝国はしばしばギリシャ悲劇のような経過をたどる。避けようとしていた運命がもたらされるのだ。このことはまさにアメリカ帝国にもあてはまる。それは、それほどゆっくりではなく、自壊してゆく。

 経済や外交の予測の基本的な前提は、すべての国が自国の利益のために行動するということだ。しかし、そのような理屈は今日の世界では何の役にも立たない。政治的領域を超えたところを見る観察者は、米国のロシアやその同盟国(中国)との外交的対立を「自分自身の足を撃つ」といった言い回しで表現する。しかし、誰も「アメリカ帝国」がこれほど早く自滅するとは思っていなかった。

 この一世代以上の間ずっと、米国の著名な外交官たちは警告を発してきた。ロシアと中国の同盟がユーラシア大陸を支配する究極の外的脅威になるだろうと。そしていま、アメリカのロシアに対する経済制裁と軍事的対立がこの2カ国を結びつけ、他の国々をユーラシア大陸の新興軌道に押し込もうとしている。

 アメリカの経済・金融勢力はこの運命を回避できると思われてきた。1971年に米国が金を廃止して以来、半世紀の間、世界の中央銀行は、外貨準備を米国財務省証券、米国銀行預金、米国株式・債券の形で保有し、ドル本位制を維持してきた。その結果、米国は、ドルの借用書を作成するだけで、対外軍事支出や他国への投資買収の資金を調達することができた。米国の国際収支の赤字は、支払い余剰国の中央銀行に外貨準備として預けられ、一方、南半球の債務国は、債券保有者への支払いと対外貿易を行うためにドルを必要とした。

 この通貨的特権―ドル・シニョリッジ(貨幣発行特権)―は、米国の外交が、近東の石油を奪う以外は、自国の軍事力をあまり使うことなく、新自由主義的政策を世界の他の地域に押し付けることを可能にしてきた。

 最近の米国による制裁措置の拡大によって、欧州やアジアなどの国々はロシア、イラン、中国との貿易や投資を阻害され、米国の同盟国は膨大な機会費用(機会損失のコスト)を押し付けられている。そして、最近、ベネズエラ、アフガニスタン、そして今回、ロシアの保有していた金と外貨準備が没収されたこと[1]、併せて外国人富裕層の銀行口座が狙い打ちされたことによって、ドル保有や、今やドルの従属通貨であるポンドやユーロNATOの資産が、世界経済状況が不安定になったときの安全な投資避難所であるという考え方は終わってしまった。(外国人富裕層は取り上げられた自分の口座が戻ってくるかもしれないという期待感につられて自分を納得させようとしているのだが。)

 だから、私は、この米国中心の金融化したシステムが、わずか1~2年の間に脱ドルしていくスピードを見ていると、なんだか悔しくなってくるのだ。というのも、私の提唱する「超帝国主義」の基本テーマは、過去50年間、米国債本位制がいかに外国の貯蓄を米国の金融市場や銀行に流し、ドル外交にただ乗りしてきたか、ということだったからだ。私は、脱ドル化は、米国に緊縮財政を強いている金融の二極化を避けるために、中国やロシアが経済を支配しようとする動きによって主導されるのではないかと思っていた。[2]。しかし米国当局は、逆に、ロシアや中国、その他米国に縛られていない国々に対して、壁に書かれた文字を見て(訳註:[聖書]差し迫った災難のしるしを見る)、脱ドルへの躊躇を克服するように迫っているのだ。

 私は、ドルに依存した帝国経済の終焉は、他の国々が離脱することによってもたらされると予想していた。しかし、そうはなっていない。米国の外交官たちは国際的なドル主義を終わらせることを自ら選択し、その一方で、ロシアが農業と工業を確実に自立させる手段を構築するのを手助けしている。この世界的な崩壊プロセスは、アメリカのNATO同盟国やその他の経済的従属国がロシアと取引するのを妨害する制裁から始まって、実際には何年も続いている。この制裁は、ロシアに対して、保護関税と同じような効果があった。

 ロシアは自由市場の新自由主義的なイデオロギーに魅了され、自国の農業や産業を守るための手段を講じることができないままだった。米国はロシアに国内自立を強いたのだが、それはロシアが自立するために必要な支援となった。どういうことかと言うと、バルト諸国がアメリカの制裁にしたがってチーズなどの農産物をロシア市場に出せなくなると、ロシアはすぐに独自のチーズや乳製品の分野を作り上げ、世界有数の穀物輸出国になったのだ。

 ロシアは、ルーブルの為替レートの裏づけとして米ドルを必要としないことに気づき始めている。(あるいは気づきそうになっている)。自国の中央銀行が国内の賃金支払いや資本形成に必要なルーブルを作り出すことができるのだ。米国がドルやユーロの外貨準備を没収したことで、ロシアはセルゲイ・グラジエフが長年主張してきた新自由主義的な金融哲学を捨て、最後には現代通貨理論(MMT)を支持するようになるのかもしれない。

 米国の表向きの狙いが損なわれる動きは、ロシアの有力な億万長者に対する米国の制裁でも同じであった。1990年代の新自由主義的なショック療法と民営化によって、ロシアの独裁者たちは、公的領域から奪い取った資産を現金化する唯一の方法を手に入れた。それは、その資産を法人化し、ロンドンやニューヨークで株式を売却することだった。国内の貯蓄は一掃され、米国のアドバイザーはロシアの中央銀行に独自のルーブル貨幣を作らないよう説得した。

 その結果、ロシアの国家的な石油、ガス、鉱物の財産は、ロシアの産業と住宅を改善するための資金として使われることはなかった。民営化で得た収益は、ロシアに新たな保護手段を生み出すための投資ではなく、イギリスの高級不動産やヨット、その他の世界中にある資本を移せる資産を買収すること、つまり成金的な買収に使われたのである。しかし、ロシアの億万長者の保有するドル、ポンド、ユーロを人質に取った制裁の効果は、ロンドン・シティが彼らの資産を保有する場所としてあまりにも危険な場所になることでもあった。それはまた米国の制裁対象となりうる他の国の富裕層にとっても同様である。米国の上級官僚は、プーチンに最も近いロシアの富裕層に制裁を加えることで、プーチンが西側から離脱することに反対させ、さらに彼らがNATOの工作員として効果的に働くようになることを望んだ。しかし、ロシアの億万長者にとっては、自国が最も安全な場所に見え始めている。

 これまで何十年もの間、米国連邦準備制度理事会と財務省は、金が外貨準備としてその役割を回復することに反対してきた。つまり、バイデン氏とブリンケン氏は、その国の独自の利益ではなく、米国の「規則の秩序」に従うよう強要しようとしているのだが、インドとサウジアラビアはこのドル保有政策をどのように見ているだろうか? 最近の米国の独断的なふるまいのために、自国の政治的自治を守るためにはドルやユーロの保有を金に転換することしか選択肢がなくなってきている。金を資産に使えば、費用ばかりかさむ米国の破壊的な要求の人質にますますされているという政治責任を追求されることもなくなるからだ。

 米国の外交は、ロシアの外貨準備が封鎖され、ルーブルの為替レートが急落した後、各企業にロシア資産を小銭で捨てさせるようにヨーロッパ政府に指示し、その屈辱的な従属性を詰った。ブラックストーン、ゴールドマン・サックス、その他の米国の投資家は、シェル・オイルやその他の外国企業が売却した資産を買い取るために素早く行動した。

 1945-2020年の戦後世界秩序がこれほど早く崩壊するとは誰も思っていなかった。どのような形になるかはまだ分からないが、真に新しい国際経済秩序が生まれつつある。しかし、「熊を突ついた」結果生じた米・NATOの対ロシア攻撃による対立は臨界質量レベルを超えてしまった。もはやウクライナだけの問題ではない。それは、世界の多くを米国・NATOの軌道から遠ざけるための引き金、触媒に過ぎない。

 次の対決が起きるのは、欧州の愛国的政治家たちが、欧州や他の同盟国を米国に依存した貿易や投資で支配する米国の行き過ぎた権力から脱却しようとするときかもしれない。従属し続けることの代償は価格インフレーションに見舞われ、民主的な選挙政治がアメリカのNATO軍に従わされることだ。

 このような結果は、実は「意図されていなかった」とは考えられない。あまりにも多くの観察者が次に何が起こるかを予想してきた。その筆頭のプーチン大統領やラブロフ外相はNATOが東ウクライナのロシア語話者を攻撃することにこだわって、ロシアの西部国境に重火器を移動させながら自分たちが窮地に陥れば、どんなことが起きるかを説明していた。その結果は予想できたのだ。ただ、米国の外交政策を支配しているネオコンたちは全く気にも留めなかった。ロシアの懸念を認めることは「プーチンの理解者Putinversteher」と見なされるからである。

 欧州の高官たちは、ドナルド・トランプが狂っていて、国際外交のリンゴ箱をひっくり返しているのではないかという心配を世界に伝えることに違和感を覚えなかった。しかし、今度は彼らは盲目になったようだ。バイデン政権がブリンケン国務長官とビクトリア・ヌーランド=ケイガンを介して内臓に秘めていたロシア憎悪を復活させたからだ。トランプの表現様式や物言いは粗野だったかもしれないが、アメリカのネオコン一味はもっと世界中に脅威を与える対立の強迫観念を持っている。彼らにとってはどちらの現実が勝利するかが問題だった。自分たちが作れると信じている「現実」なのか、それともアメリカの支配の外にある経済的現実なのか、ということだ。

 国際通貨基金や世界銀行、米国外交の強力な武器に取って代わるためにそれぞれの国家が自分でしてこなかったことを、米国の政治家はその国にやれと言っている。ヨーロッパ、近東、南半球の国々が自国の長期的な経済的利益を計算しながら離脱するのではなく、アメリカは彼らに自分でその仕事をやるように追い立てているのだ。ロシアや中国にしたのと同じである。ますます多くの政治家が、いま、ドルに依存した貿易や投資、さらには対外債務処理に代わる新たな通貨体制によって自国がより良くなるのかどうかを問うて有権者の支持を求めている。

 エネルギーと食糧の価格高騰は、特に南半球の国々―自国のCovid-19問題や迫り来るドル建て債務の返済期限に直面している国々―を直撃している。何かが起こらなければならない。これらの国々は外国の債権者への支払いのためにいつまで緊縮財政を強いられるのだろうか。

 ロシアのガスや石油、コバルト、アルミニウム、パラジウムなどの基礎原料の輸入に対する制裁に直面し、米国と欧州の経済はどのように対処するのだろうか。アメリカの外交官は、自国経済がどうしても必要とする原材料をリストアップし、それゆえその品目を今回の貿易制裁の対象から外している。これは、プーチン氏にとってアメリカに圧力をかける便利なリストとなるのではなかろうか。世界外交を再構築し、アメリカが従属国に課している高価なアメリカ製品への依存を強いる「鉄のカーテン」からヨーロッパ諸国やその他の国々が抜け出すために使えるからだ。

バイデンが起こすインフレ

 しかし、NATOの冒険主義からの最終的な脱却は、米国自身の内部からもたらされなければならない。今年の中間選挙が近づくと、政治家は、ガソリンやエネルギーに代表される価格インフレが、バイデン政権によるロシアの石油・ガス輸出阻止の政策的副産物であることを米国の有権者に示すことに肥沃な土壌を見いだすだろう。(ただ、ガソリンがぶ飲みの大型SUV所有者には悪いニュースだ!)ガスは暖房やエネルギー生産に必要なだけでなく、肥料を作るのにも必要で、これはすでに世界的に不足している。この状況は、米国とヨーロッパへのロシアとウクライナの穀物輸出を阻止することによって悪化するが、すでに食料価格は高騰している。

 金融業界の現実観と、NATOの主要メディアが宣伝する現実との間には、すでに著しい乖離がある。3月7日、月曜日の欧州株式市場は、ブレント原油が1バレル130ドルにまで高騰する一方で、始値から急落した。BBCの朝のニュース番組「Today」では、石油トレーダーである保守党のアラン・ダンカン議員が、天然ガスの先物価格が2倍近くに上昇し、ヨーロッパに旧価格でガスを供給する企業が倒産する恐れがあると警告していた。しかし、軍事的な「憎しみの2分間」のニュースに戻ると、BBCはウクライナの勇敢な戦士を賞賛し続け、NATOの政治家はさらなる軍事的支援を促した。ニューヨークでは、ダウ平均株価が650ポイントも急落し、金は1オンス2,000ドルを超えて急騰した。これは、金融セクターが米国のゲームの行方をどう見ているかを反映している。ニッケルの価格はさらにもっと上がっている―40%だ。

 ロシアに軍事的な対応を迫り、それによって世界に悪い印象を与えようとすることは、ヨーロッパがNATOにもっと貢献し、さらに大量の米国製兵器を買い、米国への貿易と通貨の依存度を深めることを目的とした演出であることが判明している。このような状況が引き起こす不安定さは米国を脅威的に見せる効果があることも分かっている。それはロシアが西側NATO諸国から脅威的だと言われるのと同じである。


注釈

[1] リビアの金も、2011年のNATOによるムアンマル・カダフィの打倒の後、姿を消している。
[2] 最近では、Radhika Desai and Michael Hudson (2021), "Beyond Dollar Creditocracy:。A Geopolitical Economy,(ドル信用による支配を乗り越える:地政学的経済の視点から)" Valdai Club Paper No.116. Moscow: Valdai Club, 7月7日, repr. in Real World Economic Review (97)を参照。


マイケル・ハドソンは『Killing the Host(宿主を殺す)』(電子版はCounterPunch Booksから、印刷版はIsletから出版されている)の著者である。新著は『J is For Junk Economics(JはJunk Economics(ガラクタ経済学)』。 連絡先: mh@michael-hudson.com
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