「貧乏人に選択の余地なし」。米国住宅市場の醜い現実
貧乏人に選択の余地なし。米国住宅市場の醜い現実
<記事原文 寺島先生推薦>
Beggars can’t be choosers: The ugly reality of the US housing market
RT 2022年1月30日
ヘレン・ブイニスキー
Helen Buyniski is an American journalist and political commentatoratRT.@velocirapture23@velocirapture23
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月25日

生まれて初めて家を購入するつもりだった人々が、「一戸建てを持ちたい」という夢を諦めざるを得なくなっている。さらに、コロナのせいで仕事を奪われ、住宅市場から追い出された、元自宅保有者たちも同じ目にあっている。このような状況の中、かつてはバカにされていたトレーラーハウス(移動式住居)が、いまや大手メディアからもてはやされている。USAトゥディの記事によると、利益奪取に飢えたいくつかの未公開株式投資会社が、何年も前からトレーラーパークを所有していた諸企業の株を買い占め、アメリカン・ドリームの崩壊に乗じて賭けに出ている、とのことだ。
トレーラー・パークとは、移動式住居が密集したコミュニティ。上の画像を参照
トレーラーハウスがダサい時代は終わった
「移動住宅トレーラー(トレーラーハウスのこと)」を所有する米国民は2200万人に上っていると、マニュファクチャード・ハウジング協会(Manufactured Housing Institute)は伝えている。「普通の」住宅の半分の価格で買えるとあって、 アメリカ国民家族の平均純資産が横ばい、あるいは低下し、インフレが急上昇し、 株式市場がますます現実経済から乖離している生活が長期にわたり続けられている中、トレーラーハウスに対する汚名は返上されつつある。結局のところ、貧乏人には選択の余地なしなのだ。
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Land of the fee, home of the grave? For all its international posturing and boasting, the US can’t even take care of its citizens
しかし家を持つということはアメリカン・ドリームの第一歩だとずっと考えられてきた。さらには家を持てないとしても、借家でありながらいかにも持ち家であるように見せるくらいにはならないといけないと考えるひともいた。神の仰せでは、トレーラーハウスなどという怪しげな住処に落ち着くな、ということだった。トレーラー・パークが持つイメージというのは、麻薬依存性で歯が抜けていたり、不法に政府から補助金をたかっている連中が住むところ、一言でいえば、「クズの塊が集まっているところ」だと思われていた。
このようなトレーラー・パークに投資しているいくつかの未公開株式投資会社は、このトレーラー・パークの住民たちに「自分は普通の人の生活水準から転げ落ちてしまった」と思わせたくないと考えている。しかし、トレーラー・パークをイメチェンさせ、魔法のような広報活動を駆使して(しかもそうすることで価格をつりあげて、そうした未公開株式投資会社に礼を尽くそうという魂胆もある)、「こじんまりとしたかわいいおうち」でできた素敵な住宅街というイメージ植え付けに成功したとしても、そのイメージが世間に受け入れられる前からトレーラー・パークに住んでいた人々は、もっと安い土地への移動を余儀なくされているかもしれない。
トレーラー・パークへの投資の魅力を取り上げた記事においては、移動式住居の持ち主が貧しい状況に置かれていることをあからさまにいいこととして報じている。「呼び名とは違い、移動式住居に住んでいる人々が居住地から移動するのは困難であり、これらの人々が移住する際に発生する費用を賄えないことはよくあることです。ですので、これらの居住者たちは土地の賃貸料を上げられても文句がいえない状況にあり、トレーラー・パークの所有者にとっては利益を増やせるチャンスになります」と。
ホームレスたちにいい思いをさせることになっている?
未公開株式投資会社がトレーラー・パークをガツガツと買い漁る中、生活水準を保つことが難しくなった人々は、住処をトレーラー・パークから移し、文字通り「道路上」に移動している。米国のRV車(レクレーション車両)の車市場は爆発的に広がっている。それは特にコロナパンデミックにより、人が密集した都市部から逃れたいという気持ちが生まれ、報道によると、最近の調査で、2021年、米国民の4人に1人がRV車を買うか、借りるか、調べてみたい計画を持っていることがわかったとのことだ。それに伴い、RV車の購入費や維持費が高騰し、RV車を持とうとしていた多くの人々が、買うのを小さなバンに変えたり、ベッドや台所やトイレなしの車種にしたりしている。
SNS上では、#バンライフ(vanlife)のようなハッシュタグが出回り、「キャンプ用バン」が大人気になっ ていることを歓迎するような空気があるが、2020年の映画「ノマドランド(Nomadland)」が描いたように、ホームレスや、お年寄りや、「引退させられた(社会保障が受けられるまでまだ数年残っていたり、自分の稼ぎだけでは食べていけない)」りして、#vanlifeをせざるを得ない人々がたくさんいる。彼らは、定職につけず、仕事を探して国内をあちこち移動したり、街角にこっそり駐車して凌いでいる。 彼らの所持品は急激に増加している国中の保管施設のひとつに直ぐに預けられる。学生ローンの返済に追われる若者たちは実家の両親の家に転がり込むこともできるが、財を失う人々が増加している、その若者たちの祖父母世代は、成人した実子たちの家へは行きたくない(行けない場合もある)ので、年金が奪われ、ブラックロック社などの資産運用会社の管理下に置かれることになり、その年金がギャンブルのような投機に使われたのだ。
READ MORE: Assets of world’s largest investment manager hit record $10trn
未公開株式投資会社が、人々を立ち退き層に追いやっている
現在の米国民は、今自分が経済的階層のどの階層にいるかに関係なく、立ち退き層に転落してしまう危険がある。そしてそうなってしまえば必ず、未公開株式投資会社が、吸血鬼の牙を尖らせて落伍者たちの首に近づいてきて、僅かに残っている彼らの金融資産を吸い尽くそうとする。ブラックロック社やブラックストーン社のような国際金融カルテルは、産業界のどこにでも居着いてしまっている。一戸建てだった住宅街が丸ごと賃貸住宅に変えられた住宅街から、立ち退かされたり、抵当に入れられたり、ただ家賃が払えなくなったりして出ていってしまった住民たちが預けざるを得なくなった所持物の保管庫だったり、どこでもござれなのだ。
何ひとつ儲け口の機会を見落とすことなく、これらの企業群は所有物保管業(以降トランクルーム)市場にも参入している。この市場には、立ち退かされたり、住居を差し押さえられたりしたすべての居住者や、アパート暮らしからバンでの生活に生活水準が落ちてしまったすべての人や、「カウチ・サーフィン(民泊施設の情報を提供してくれるサイト)」にずっと頼らざるを得なくなったすべての人々が関わっている。このトランクルーム市場は、2025年には1156億2千万ドル規模の産業に成長すると見込まれている。この推定値を出したのは、モルドール情報研究所(Mordor Intelligence Research)だ。モルドール(指輪物語に出てくる”影の国”の名前)とはなんとこの状況にふさわしい名前だろう!この研究所は、2019年時点でこの市場に876億5千万ドルという価値を付けていた。ブラックストーン社は、このトランクルーム分野が「魅力的な市場である」ことを認識している。それは「資本支出がほとんど必要なく、売上高の変化も比較的小幅であり、賃貸料を上げることもできる。というのも、[保管物]で得られる収入のほとんどは、所有者が月ごとに支払う保管費からの収入だから」だとのことだ。
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US investment giants buying homes and the MSM telling us we should rent – this ‘new normal’ spells the death of the American Dream
米国民はこの未公開株式投資会社の最大手群による生活全般の買収に注意しておくべきだ。 ブラックストーン社の子会社は、2008年のリーマンショック時に起こった「差し押さえ不動産による危機」の後に、住宅街をまるごと差し押さえる権利を主張していた時、国連が介入せざるを得ない状況に追い込まれた。そのとき証明されたのは、不動産業界という熾烈な業界においても、未公開株式投資会社がもつ利益獲得能力(つまり家の持ち主から資産を吸い上げる能力) が非常に貪欲であるという事実だった。そして、超低金利のせいで引き起こされている今回の新しい住宅ブームにおいて、未公開株式投資会社による買い占めが再び起ころうとしていることは、ブルームバーグ紙が多数の記事を報じていることからわかる。その記事から伝わるのは、米国民は「一戸建ての家主になる」とい夢を捨て、「住宅賃貸者」になれ、という事実だ。
「巻き添え被害」
これらの未公開株式投資会社の運営方法は、リーマンショック時から全く進歩していない。ニューヨーク在住の「カーラさん(今後訴訟を起こす可能性もあるため仮名にしている)」は、今年初旬、ライフストレージ社(Life Storage:セルフサービスのトランクルームを設置している会社。ブラックロック社が買収している)のトランクルームに預けていた荷物を取りに行った際、持ち物が黒いカビで汚れていることに気づいた。それは自分の荷物が置いてあるところに続いている廊下にこびりついていた嘔吐物から出たもののように見えた。 そのカビや、神経毒らしきもののせいで、「私の生活や、健康や、精神状態や、貯金は台無しになりました」とカーラさんはRTの取材に答えている。さらに今の状況がこの先もずっと続きそうで、気持ちを支えてくれていた飼い猫までが、そのカビから逃れようと、住居であるカーラさんの車から逃げ出そうとしたそうだ。つまりカーラさんの新車にまでそのカビが繁殖してしまっていたということだ。カーラさんによると、何もかもが「防げたことです。私の荷物が置いてあったところをトランクルーム管理者がきちんと管理していれば、顧客を巻き添え被害に合わせることにはならなかったでしょう」とのことだ。
最終的には、施設運営者がカーラさんからの主張を受け入れ、カビに気づかなかったことや、嘔吐物の処理をしなかったという落ち度を認めたが、このように保管物にカビを生やしてしまったという事実は、未公開株式投資会社が新規産業に乗り出すときは、一般市民たちのことを常に軽く見ていることを表している象徴的な事件だと言える。このような情のない大企業群(例えばブラックロック社は、自社利益で10兆ドル以上の資産、運用や管理を通した間接的な利益としてさらに数兆ドルを得ている)は顧客に対して適切なサービスを提供する能力は有していない。 故意に悪事を働こうとしていない場合でもそうだ。じめじめとした屋根のない地下室のような場所に荷物を保管することは、顧客に対する対応として当たり前だと思われているのかもしれないし、そのような保管施設で1日数時間働いている労働者に対しても同じことかもしれない。 しかしそんなことで生じる数ドルの費用などは、ライフ・ストレージ社の必要経費にはじめから含まれているのだろう。この会社が丁寧に応対しているのは、株主たちだけなのだから。管理施設にお金をかける理由などなかったのだろう。その結果、人々の生活はむちゃくちゃにされ、一部の企業に儲けが集中し、中小企業は倒産の嵐という今の潮流が引き起こされている。その原因は、政府がコロナ対策として自国民を殺してしまうような経済対策しかとれていないからだ。
READ MORE: Businesses sue over ‘irreparable harm’ from Biden jab mandat
さらなる悪循環
中流階級の夢さえ手にできる米国民はほとんどおらず、「みんなそうだから」といわれて、絶望が現実になり、小さい夢で妥協せざるを得なくなっている。しかし家を持ちたいという希望はいまでも1番で、賃貸住宅生活で甘んじるのが2番で、さらにはホテルで長期間暮らすことも急速に人気になっている。皆が望んでそうなっているわけではない。トレーラー・パークで起きている現象と同じ兆候だ。ただし問題は、「賃貸者として適さない人々」が記載されている非公式のブラックリストがあることだ。このブラックリストにはますます多くの米国民が記載されている。ブラックリスト入りした人々は、十分な信用格付けや、きちんとした銀行通帳があったとしても、賃貸市場からはじき出されてしまう。
ニューヨーク・シティに25年間在住している「ジェーン」さんは、ここ8年間アパートを借りることが法的に認められていない。ジェーンさんによると、それは執念深い建築物管理会社が長期間ジェーンさんを排除しようとしていて、ジェーンさんが支払った賃貸料の小切手を現金化しないことで、ジェーンさんが不良賃貸者であると主張しようとしているからだという。ブラックリストから自分の名前を抜いて欲しいという要求をする中で分かったことは、何十もあるブラックリストの中のひとつにでもリスト入りしてしまえば終わりだということだ。 これらのブラックリストは、賃貸者の情報を調べる調査会社が保管しているのだが、その目的は
住居に関する裁判所(housing court)で訴えたり、訴えられたりした時のためだけだ。 家主たちに、「この人たちは問題あり」と思わせるためだけだ。家主たちが、裁判に勝とうが関係なく。ジェーンさんがブラックリストに名前を載せられたくないのは、米国内のどこかで借りられる家を見つけたいからだ。人生のほとんどを過ごした住み慣れたニューヨークで暮らすことはもう諦めている。 ニューヨーク・タイムズもこの賃貸主のブラッリスト現象について報じている。 – 「ブラックリストに一度名前が載ってしまえば、アパートを借りることは不可能になるだろう」。– さらにこの業界では再構築が起こっていて、中小の家主たちが事業からはみ出されている。終わる兆候の見えない不況のせいでローンが払えなくなっているからだ。いっぽう(未公開株式投資会社のような)大手が乗り出し、より多額の金を使って、借主の権利を主張する活動家たちを法廷で待ち構え、裁判でうち負かそうとしている。
ブラックリストに載せられた人々は、避難所を長期滞在型ホテルに求めているが、ジェーンさんが追い込められているように、そのような人々をホームレス状態に追いやった最初の状況の時と同じ問題と向き合わされることがますます増えている。それは彼らの破滅などお構いなしの情け容赦のない金融カルテルがこれらの長期滞在型ホテル(または廉価アパート住宅街や、トレーラー・パークや、先述のトランクルームでも同じことだが)を、不況に強い投資先だと見ていることだ。これらの産業の好調が持続すれば、事実上の「社会信頼度を図る尺度」として機能しているブラックリストを無視できなくなる。そうなれば、ジェーンさんのような人々は、このブラックリスト地獄からますます逃げ出せなくなっていく。
この様な状況から分かることはハッキリしている。状況はますます悪化の一途だ。これらの未公開株式投資会社がムチを入れる中、米国民はこの国を丸ごと飲み込まれることになる。 それを止めるには金融権力の集中化という流れを逆行させる行動を起こさねばならない。 「米国民の最大の過ちは、自信(confidence)と能力(competence)を取り違えていることです」と先述のカーラさんは語っている。 そして、カーラさんの思いを以下のようにまとめた。「この残忍な過ちこそが、資本主義が生み出した悲劇的な今の社会の原因になっているのです」。何百万もの米国民が立ち退き層への階段をころげ落ちている。その階段には貪欲な銀行家たちのヨダレが塗りたくられている。人々は所有物を売り払い、アメリカン・ドリームの終焉を目にしている。そしてこの夢から目覚めたときに、多くの人々はアメリカン・ドリームが終わったことを認めざるを得ないだろう。
<記事原文 寺島先生推薦>
Beggars can’t be choosers: The ugly reality of the US housing market
RT 2022年1月30日
ヘレン・ブイニスキー
Helen Buyniski is an American journalist and political commentatoratRT.@velocirapture23@velocirapture23
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月25日

生まれて初めて家を購入するつもりだった人々が、「一戸建てを持ちたい」という夢を諦めざるを得なくなっている。さらに、コロナのせいで仕事を奪われ、住宅市場から追い出された、元自宅保有者たちも同じ目にあっている。このような状況の中、かつてはバカにされていたトレーラーハウス(移動式住居)が、いまや大手メディアからもてはやされている。USAトゥディの記事によると、利益奪取に飢えたいくつかの未公開株式投資会社が、何年も前からトレーラーパークを所有していた諸企業の株を買い占め、アメリカン・ドリームの崩壊に乗じて賭けに出ている、とのことだ。
トレーラー・パークとは、移動式住居が密集したコミュニティ。上の画像を参照
トレーラーハウスがダサい時代は終わった
「移動住宅トレーラー(トレーラーハウスのこと)」を所有する米国民は2200万人に上っていると、マニュファクチャード・ハウジング協会(Manufactured Housing Institute)は伝えている。「普通の」住宅の半分の価格で買えるとあって、 アメリカ国民家族の平均純資産が横ばい、あるいは低下し、インフレが急上昇し、 株式市場がますます現実経済から乖離している生活が長期にわたり続けられている中、トレーラーハウスに対する汚名は返上されつつある。結局のところ、貧乏人には選択の余地なしなのだ。
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Land of the fee, home of the grave? For all its international posturing and boasting, the US can’t even take care of its citizens
しかし家を持つということはアメリカン・ドリームの第一歩だとずっと考えられてきた。さらには家を持てないとしても、借家でありながらいかにも持ち家であるように見せるくらいにはならないといけないと考えるひともいた。神の仰せでは、トレーラーハウスなどという怪しげな住処に落ち着くな、ということだった。トレーラー・パークが持つイメージというのは、麻薬依存性で歯が抜けていたり、不法に政府から補助金をたかっている連中が住むところ、一言でいえば、「クズの塊が集まっているところ」だと思われていた。
このようなトレーラー・パークに投資しているいくつかの未公開株式投資会社は、このトレーラー・パークの住民たちに「自分は普通の人の生活水準から転げ落ちてしまった」と思わせたくないと考えている。しかし、トレーラー・パークをイメチェンさせ、魔法のような広報活動を駆使して(しかもそうすることで価格をつりあげて、そうした未公開株式投資会社に礼を尽くそうという魂胆もある)、「こじんまりとしたかわいいおうち」でできた素敵な住宅街というイメージ植え付けに成功したとしても、そのイメージが世間に受け入れられる前からトレーラー・パークに住んでいた人々は、もっと安い土地への移動を余儀なくされているかもしれない。
トレーラー・パークへの投資の魅力を取り上げた記事においては、移動式住居の持ち主が貧しい状況に置かれていることをあからさまにいいこととして報じている。「呼び名とは違い、移動式住居に住んでいる人々が居住地から移動するのは困難であり、これらの人々が移住する際に発生する費用を賄えないことはよくあることです。ですので、これらの居住者たちは土地の賃貸料を上げられても文句がいえない状況にあり、トレーラー・パークの所有者にとっては利益を増やせるチャンスになります」と。
ホームレスたちにいい思いをさせることになっている?
未公開株式投資会社がトレーラー・パークをガツガツと買い漁る中、生活水準を保つことが難しくなった人々は、住処をトレーラー・パークから移し、文字通り「道路上」に移動している。米国のRV車(レクレーション車両)の車市場は爆発的に広がっている。それは特にコロナパンデミックにより、人が密集した都市部から逃れたいという気持ちが生まれ、報道によると、最近の調査で、2021年、米国民の4人に1人がRV車を買うか、借りるか、調べてみたい計画を持っていることがわかったとのことだ。それに伴い、RV車の購入費や維持費が高騰し、RV車を持とうとしていた多くの人々が、買うのを小さなバンに変えたり、ベッドや台所やトイレなしの車種にしたりしている。
SNS上では、#バンライフ(vanlife)のようなハッシュタグが出回り、「キャンプ用バン」が大人気になっ ていることを歓迎するような空気があるが、2020年の映画「ノマドランド(Nomadland)」が描いたように、ホームレスや、お年寄りや、「引退させられた(社会保障が受けられるまでまだ数年残っていたり、自分の稼ぎだけでは食べていけない)」りして、#vanlifeをせざるを得ない人々がたくさんいる。彼らは、定職につけず、仕事を探して国内をあちこち移動したり、街角にこっそり駐車して凌いでいる。 彼らの所持品は急激に増加している国中の保管施設のひとつに直ぐに預けられる。学生ローンの返済に追われる若者たちは実家の両親の家に転がり込むこともできるが、財を失う人々が増加している、その若者たちの祖父母世代は、成人した実子たちの家へは行きたくない(行けない場合もある)ので、年金が奪われ、ブラックロック社などの資産運用会社の管理下に置かれることになり、その年金がギャンブルのような投機に使われたのだ。
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未公開株式投資会社が、人々を立ち退き層に追いやっている
現在の米国民は、今自分が経済的階層のどの階層にいるかに関係なく、立ち退き層に転落してしまう危険がある。そしてそうなってしまえば必ず、未公開株式投資会社が、吸血鬼の牙を尖らせて落伍者たちの首に近づいてきて、僅かに残っている彼らの金融資産を吸い尽くそうとする。ブラックロック社やブラックストーン社のような国際金融カルテルは、産業界のどこにでも居着いてしまっている。一戸建てだった住宅街が丸ごと賃貸住宅に変えられた住宅街から、立ち退かされたり、抵当に入れられたり、ただ家賃が払えなくなったりして出ていってしまった住民たちが預けざるを得なくなった所持物の保管庫だったり、どこでもござれなのだ。
何ひとつ儲け口の機会を見落とすことなく、これらの企業群は所有物保管業(以降トランクルーム)市場にも参入している。この市場には、立ち退かされたり、住居を差し押さえられたりしたすべての居住者や、アパート暮らしからバンでの生活に生活水準が落ちてしまったすべての人や、「カウチ・サーフィン(民泊施設の情報を提供してくれるサイト)」にずっと頼らざるを得なくなったすべての人々が関わっている。このトランクルーム市場は、2025年には1156億2千万ドル規模の産業に成長すると見込まれている。この推定値を出したのは、モルドール情報研究所(Mordor Intelligence Research)だ。モルドール(指輪物語に出てくる”影の国”の名前)とはなんとこの状況にふさわしい名前だろう!この研究所は、2019年時点でこの市場に876億5千万ドルという価値を付けていた。ブラックストーン社は、このトランクルーム分野が「魅力的な市場である」ことを認識している。それは「資本支出がほとんど必要なく、売上高の変化も比較的小幅であり、賃貸料を上げることもできる。というのも、[保管物]で得られる収入のほとんどは、所有者が月ごとに支払う保管費からの収入だから」だとのことだ。
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米国民はこの未公開株式投資会社の最大手群による生活全般の買収に注意しておくべきだ。 ブラックストーン社の子会社は、2008年のリーマンショック時に起こった「差し押さえ不動産による危機」の後に、住宅街をまるごと差し押さえる権利を主張していた時、国連が介入せざるを得ない状況に追い込まれた。そのとき証明されたのは、不動産業界という熾烈な業界においても、未公開株式投資会社がもつ利益獲得能力(つまり家の持ち主から資産を吸い上げる能力) が非常に貪欲であるという事実だった。そして、超低金利のせいで引き起こされている今回の新しい住宅ブームにおいて、未公開株式投資会社による買い占めが再び起ころうとしていることは、ブルームバーグ紙が多数の記事を報じていることからわかる。その記事から伝わるのは、米国民は「一戸建ての家主になる」とい夢を捨て、「住宅賃貸者」になれ、という事実だ。
「巻き添え被害」
これらの未公開株式投資会社の運営方法は、リーマンショック時から全く進歩していない。ニューヨーク在住の「カーラさん(今後訴訟を起こす可能性もあるため仮名にしている)」は、今年初旬、ライフストレージ社(Life Storage:セルフサービスのトランクルームを設置している会社。ブラックロック社が買収している)のトランクルームに預けていた荷物を取りに行った際、持ち物が黒いカビで汚れていることに気づいた。それは自分の荷物が置いてあるところに続いている廊下にこびりついていた嘔吐物から出たもののように見えた。 そのカビや、神経毒らしきもののせいで、「私の生活や、健康や、精神状態や、貯金は台無しになりました」とカーラさんはRTの取材に答えている。さらに今の状況がこの先もずっと続きそうで、気持ちを支えてくれていた飼い猫までが、そのカビから逃れようと、住居であるカーラさんの車から逃げ出そうとしたそうだ。つまりカーラさんの新車にまでそのカビが繁殖してしまっていたということだ。カーラさんによると、何もかもが「防げたことです。私の荷物が置いてあったところをトランクルーム管理者がきちんと管理していれば、顧客を巻き添え被害に合わせることにはならなかったでしょう」とのことだ。
最終的には、施設運営者がカーラさんからの主張を受け入れ、カビに気づかなかったことや、嘔吐物の処理をしなかったという落ち度を認めたが、このように保管物にカビを生やしてしまったという事実は、未公開株式投資会社が新規産業に乗り出すときは、一般市民たちのことを常に軽く見ていることを表している象徴的な事件だと言える。このような情のない大企業群(例えばブラックロック社は、自社利益で10兆ドル以上の資産、運用や管理を通した間接的な利益としてさらに数兆ドルを得ている)は顧客に対して適切なサービスを提供する能力は有していない。 故意に悪事を働こうとしていない場合でもそうだ。じめじめとした屋根のない地下室のような場所に荷物を保管することは、顧客に対する対応として当たり前だと思われているのかもしれないし、そのような保管施設で1日数時間働いている労働者に対しても同じことかもしれない。 しかしそんなことで生じる数ドルの費用などは、ライフ・ストレージ社の必要経費にはじめから含まれているのだろう。この会社が丁寧に応対しているのは、株主たちだけなのだから。管理施設にお金をかける理由などなかったのだろう。その結果、人々の生活はむちゃくちゃにされ、一部の企業に儲けが集中し、中小企業は倒産の嵐という今の潮流が引き起こされている。その原因は、政府がコロナ対策として自国民を殺してしまうような経済対策しかとれていないからだ。
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さらなる悪循環
中流階級の夢さえ手にできる米国民はほとんどおらず、「みんなそうだから」といわれて、絶望が現実になり、小さい夢で妥協せざるを得なくなっている。しかし家を持ちたいという希望はいまでも1番で、賃貸住宅生活で甘んじるのが2番で、さらにはホテルで長期間暮らすことも急速に人気になっている。皆が望んでそうなっているわけではない。トレーラー・パークで起きている現象と同じ兆候だ。ただし問題は、「賃貸者として適さない人々」が記載されている非公式のブラックリストがあることだ。このブラックリストにはますます多くの米国民が記載されている。ブラックリスト入りした人々は、十分な信用格付けや、きちんとした銀行通帳があったとしても、賃貸市場からはじき出されてしまう。
ニューヨーク・シティに25年間在住している「ジェーン」さんは、ここ8年間アパートを借りることが法的に認められていない。ジェーンさんによると、それは執念深い建築物管理会社が長期間ジェーンさんを排除しようとしていて、ジェーンさんが支払った賃貸料の小切手を現金化しないことで、ジェーンさんが不良賃貸者であると主張しようとしているからだという。ブラックリストから自分の名前を抜いて欲しいという要求をする中で分かったことは、何十もあるブラックリストの中のひとつにでもリスト入りしてしまえば終わりだということだ。 これらのブラックリストは、賃貸者の情報を調べる調査会社が保管しているのだが、その目的は
住居に関する裁判所(housing court)で訴えたり、訴えられたりした時のためだけだ。 家主たちに、「この人たちは問題あり」と思わせるためだけだ。家主たちが、裁判に勝とうが関係なく。ジェーンさんがブラックリストに名前を載せられたくないのは、米国内のどこかで借りられる家を見つけたいからだ。人生のほとんどを過ごした住み慣れたニューヨークで暮らすことはもう諦めている。 ニューヨーク・タイムズもこの賃貸主のブラッリスト現象について報じている。 – 「ブラックリストに一度名前が載ってしまえば、アパートを借りることは不可能になるだろう」。– さらにこの業界では再構築が起こっていて、中小の家主たちが事業からはみ出されている。終わる兆候の見えない不況のせいでローンが払えなくなっているからだ。いっぽう(未公開株式投資会社のような)大手が乗り出し、より多額の金を使って、借主の権利を主張する活動家たちを法廷で待ち構え、裁判でうち負かそうとしている。
ブラックリストに載せられた人々は、避難所を長期滞在型ホテルに求めているが、ジェーンさんが追い込められているように、そのような人々をホームレス状態に追いやった最初の状況の時と同じ問題と向き合わされることがますます増えている。それは彼らの破滅などお構いなしの情け容赦のない金融カルテルがこれらの長期滞在型ホテル(または廉価アパート住宅街や、トレーラー・パークや、先述のトランクルームでも同じことだが)を、不況に強い投資先だと見ていることだ。これらの産業の好調が持続すれば、事実上の「社会信頼度を図る尺度」として機能しているブラックリストを無視できなくなる。そうなれば、ジェーンさんのような人々は、このブラックリスト地獄からますます逃げ出せなくなっていく。
この様な状況から分かることはハッキリしている。状況はますます悪化の一途だ。これらの未公開株式投資会社がムチを入れる中、米国民はこの国を丸ごと飲み込まれることになる。 それを止めるには金融権力の集中化という流れを逆行させる行動を起こさねばならない。 「米国民の最大の過ちは、自信(confidence)と能力(competence)を取り違えていることです」と先述のカーラさんは語っている。 そして、カーラさんの思いを以下のようにまとめた。「この残忍な過ちこそが、資本主義が生み出した悲劇的な今の社会の原因になっているのです」。何百万もの米国民が立ち退き層への階段をころげ落ちている。その階段には貪欲な銀行家たちのヨダレが塗りたくられている。人々は所有物を売り払い、アメリカン・ドリームの終焉を目にしている。そしてこの夢から目覚めたときに、多くの人々はアメリカン・ドリームが終わったことを認めざるを得ないだろう。
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