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アメリカン・ドリームとともに崩れゆくアメリカ

アメリカン・ドリームとともに崩れゆくアメリカ

<記事原文   寺島先生推薦>

America is Crumbling along with the American Dream

NEO 2022年2月7日

著者 ヴァレリー・クリコフ(Valery Kulikov)

 <記事翻訳  寺島メソッド翻訳グループ>

2022年2月17日



 ここ数日、欧米のメディアは米国の将来を占う象徴的な記事をいくつも発表している。

 まず、ジョー・バイデン大統領のピッツバーグ訪問の数時間前に、同市で橋が崩落したというThe Hill紙の報道は注目に値するだろう。これは、「世界で最も成功している国」のリーダーが落胆したような、米国の4万5千の橋の悲惨な現状というよりも、むしろ国全体の危機的状況を予感させる出来事であったことは明らかである。この「現状」については、ジョー・バイデン自身が、経済が依然として苦境にあることは絶対に明らかであると指摘している。1000万人以上のアメリカ人が失業し、400万人が6カ月以上仕事を失っている。3,600万人の国民が瀬戸際に立たされている。

 しかし、ドイツの週刊誌『シュピーゲル』は、すでにアメリカを襲っている災難について、もっと率直に、「アメリカは貧しい人々の国である」と述べている。現在、アメリカ人の6人に1人が飢餓に直面している。パンデミック以前から、約3,500万人の米国民が十分な食料を得られないでいる。「フィーディング・アメリカ(Feeding America)」によると、COVIDの大流行によって、その数はすでに5,050万人に上り、そのうち1,700万人は子どもたちだという。世帯主のほぼ4分の1が自分の食料確保に不安を抱いていると認めており、これは2018年末の2倍にあたる。特に子供のいる家庭の生活は厳しい。ニューヨークやロサンゼルスのような豊かな巨大都市であっても、貧困化の兆候は至る所に見られる。無料の温かい食事を求める列は非常に長く、最後に立っている人は昼食を食べられないかもしれない。その日の配給が単になくなってしまうからだ。食糧銀行は、米国政府からの20億ドルの援助が予定されているが、「差し迫った危機」を解決するには十分でないと指摘している。

 「アメリカ没落」のさらなる証拠として、サンフランシスコの高級住宅用超高層ビル「ミレニアムタワー」でさえ、「ピサの斜塔」のように、「年に約3インチ(7.5センチ)ずつ沈み、横に傾き続けている」と「ガーディアン」は報じている。米国を訪れたデンマークの新聞ユランス・ポステン(Jyllands-Posten)の特派員は、「世界は米国の崩壊を目の当たりにしている」と書いている。

 米労働統計局によると、昨年12月、米国のインフレ率算出の主要ツールとなる消費者物価指数は、2020年同月比で7%上昇し、1982年6月以来の高水準に達したという。ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)のディレクター兼シニアエコノミストであるサラ・ハウス氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に次のようにコメントしている。「今、インフレに関しては、まだ途方もない勢いがあります。インフレ率は今後数ヶ月でピークを迎える可能性が高く、全般的な上昇ペースは消費者、企業、政策にとって難題として残るでしょう」と。高いインフレはすでに消費者が実感できるほどに伝わっており、消費者は支出を減らし始めている。

 米国のインフレ率は過去40年間で最も高い水準に達している。ガソリンや食品価格の急激な上昇により、アメリカ人は倹約を余儀なくされている、とABCニュースは報じている。

 AP通信によると、このような困窮の中で、ロサンゼルスのダウンタウンに近づく列車内の貨物コンテナを、泥棒が数ヶ月にわたって自由に物色しているという。彼らの「獲物」は、アマゾンやREI(レクリエーショナル・イクイップメント:アウトドア用品店)などの小売業者からの小包だ。線路の両側には、ホームレスのためのキャンプがある。「地球上で最も公平な社会」からはみ出した何千人もの人々にとって、陳腐な泥棒が唯一の生計手段となっている。

 ジョー・バイデン政権は、「人種的正義」を標榜しながら、自分たちが犯した過去の罪を償うために白人を苦しめている、とFox Newsは報じている。同チャンネルが指摘するように、差別は医療にまで及んでいる。貴重なCOVID-19薬は、慢性疾患の有無にかかわらず、主に非白人種に処方されているのである。

 ワシントンポストとメリーランド大学が行った世論調査によると、アメリカ国民の約半数(46%)が、国内の民主主義のあり方に「少し」または「絶対」不満があると答えたという。こうした中、当局に対する武力行使を容認する米国人の割合が、ここ数十年で前例のない水準に上昇している。現在、アメリカ人のほぼ3人に1人が、政府に対する暴力は時として正当化されることがあると信じている。このような考えを持つ米国人の割合は、20年来の高水準に達している、と同誌は指摘している。

 「カリフォルニア・ドリーム」は、パンデミックの試練に敗れ、1年間で17万3千人がカリフォルニアを離れた。そして、そのほとんどがロサンゼルス郡とサンフランシスコ郡からだとル・フィガロ誌は伝えている。政権を担う民主党は、この傾向を出生率の低下、移民流入の減少、COVID-19による死亡率の上昇のせいにしているが、共和党は、人口逃避は犯罪増加などの原因となる州の政策のせいだとしている。

 アメリカの国家はかつてないほど病んでいる、とAmerican Conservative誌は書いている。米国の平均寿命は低下しており、一方で病的な不安やうつ病を持つ人々の数は増加している。この出版物は、"アメリカでは、馬から落ちる人は増えているようだが、自分で起き上がることができる人は減っているようだ "と推測している。これらの状態にあるティーンエイジャーや成人の抗うつ剤使用の驚くべき高さは、公式統計に反映されていて、アメリカ人の10%がこのような薬を服用しており、40歳から50歳の女性では25%に近い数字になっている。

 米公共放送NPRと調査会社イプソスが行った世論調査では、アメリカ人の間で政治的、文化的に深い溝があるにもかかわらず、彼らは一つのことに同意している。それは、民主主義とアメリカそのものが危機に瀕しており、崩壊する可能性があるということだ。

 ニュースサイト「Insider」によると、共和党のリンゼイ・グラハム(Lindsey Graham)上院議員は、「失敗した民主党の急進的な政策」によって、アメリカは1930年代後半以来の最も危険な時代に突入したと述べたという。彼は、「アメリカ人は今年、国のあり方を危うくした失敗した民主党の過激なアジェンダに反対するために投票する。」と述べた。

 それにもかかわらず、「アメリカのエリートは、自分たちの失政を裏付けるような現実を否定しようとし、その結果生じた国民の不満を、外国の陰謀家が企てた悪巧みとして扱う」と、American Conservative誌は書いている。そしてこれは、「ロシアのプロパガンダ」とされる国務省の別の文書によって証明されているように、ロシアがあらゆる種類の悪さをしていると非難するということだ。しかし実際には、「西側の "反偽情報 "産業は、それを無視することができる。プーチンは真実を語っている」と同誌は強調する。

 現在のアメリカの政治エリートは、自分たちの間違いを糺す代わりに、数々のプロパガンダ情報キャンペーンを繰り広げている。例えば、「モスクワのウクライナに対する侵略という世界的な脅威」だ。ロシアや中国に対抗できない兵器でヨーロッパ全体を守ろうとしているワシントンのこうした行動の無意味さとあからさまな捏造を、キエフ自身ですら公式に語っているのだ。
 
 そして、「人権の擁護者」であると自ら宣言することで、米国はますますマッカーシズムの牙城となりつつあるのである。左翼やリベラルな人物や組織に向けられたマッカーシズムの時代は、主に1950~54年の政治反動の時期に起こったと考えられている。しかし、最近の出来事を見ると、このイデオロギーが現在のアメリカの政治体制の中でも大きく脈打っていることがよくわかる。外国の敵対者を万能の存在として描き、人々の恐怖心を維持しようと、今日のアメリカで積極的にこの思想を復活させようと試みている勢力が存在するのである。今日のマッカーシズムの伝道師たちは、すべての不幸の背後にはロシアがいるという考えを植え付けようとし、この主張にあえて異議を唱える者がいれば、"こいつはプーチンのために働いている"という裏切り者のレッテルを自動的に貼るのである。

 最近、米国の司法長官代理が、政府の権力に反対する市民を追跡するための「国内テロ」部門を新設すると発表したのも、こうした状況が原因となっている。元米国下院議員のトゥルシ・ガバード(Tulsi Gabbard)がFox Newsのインタビューでこう指摘した。「これは権威主義の土台となる・・・そしてこれは(アメリカの)民主主義において容認できないし、野放しにしてはならない」と。

ヴァレリー・クリコフ、政治専門家、オンラインマガジン「New Eastern Outlook」の専属記者。

 

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