なぜNATO諸国は「エネルギーのハラキリ」を進めるのか?グリーン・ゼロカーボンの狂気。産業崩壊か?
なぜNATO諸国は「エネルギーのハラキリ」を進めるのか?
グリーン・ゼロカーボンの狂気。産業崩壊か?
<記事原文 寺島先生推薦>
Why Do NATO States Commit “Energy Hara Kiri”? Green Zero Carbon Madness. Industrial Collapse?
F・ウィリアム・エンダール( F. William Engdahl)著
グローバルリサーチ、2022年1月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月8日

***
米国とEU・NATO諸国の明らかに自殺的な国家グリーン・アジェンダ経済政策から判断すると、ロシアと中国に対する米国とNATOの軍事姿勢がますます侵略的になっているのには大きな矛盾があります。 世界の最も先進的な産業経済の驚くべき転換が進行中であり、勢いを増しているからです。
転換の核心は、エネルギーであり、2050年までに「ゼロカーボン」エネルギーを実現しようという馬鹿げた要求です。エネルギー産業から炭素を排除することは、現時点では不可能であり、おそらく今後もありえません。しかし、それを推し進めるということは、世界で最も生産的な経済を引き裂くことを意味します。実行可能な産業エネルギー基盤がなければ、NATO諸国の軍事行為などただの悪ふざけになります。太陽光、風力、蓄電池といった「再生可能な」エネルギーなど実際はお話にもなりません。それらは信頼できないエネルギー源なのです。こんなエネルギーに頼ろうというのは、歴史上で最も巨大な科学的妄想の一つです。
12月31日、新ドイツ連立政権は残りの6基の原子力発電所のうち3基を恒久的に閉鎖しました。天然ガスの埋蔵量が低くなる厳しい冬に入ろうとしている時であり、厳しい寒冷前線によって停電になる可能性がある時にです。ドイツが2番目のロシアのガスパイプライン、ノルド・ストリーム2の輸入を拒否したため、ドイツは2021年1月と比較して電力のスポット価格(訳注:翌日の電気価格を前もって入札で決めておく価格のこと)が500%上昇しています。
あらかじめ計画されたEUのエネルギー危機
2011年、メルケル首相が原子力発電の早期終了を宣言し、彼女の悪名高いエネルギー転換は、原子力を段階的に廃止して再生可能エネルギーにすることでしたが、その時点で17の原子力発電所がすべての電力の25%を確実に国に供給していました。今、残り3つの発電所は2022年末までに閉鎖しなければなりません。同時に、2016年以降の政府のグリーンエネルギー計画は、2022年1月時点で15.8ギガワットの石炭発電を閉鎖しました。太陽光と風力は、輝かしいプロパガンダにもかかわらず、その発電ギャップを埋められず、ドイツの電力網は、EU近隣諸国のフランスとチェコ共和国から重要な電力を輸入しなければなりません。皮肉にもその多くが原子力発電所からの輸入です。ドイツは今日、エネルギー転換の結果として、どの産業国家よりも電力コストが高くなっています。
現在、フランスからの原子力発電の供給が問題となっています。12月、フランスの国営原子力機関EDF(フランス電力会社)は、腐食損傷の発見後、合計4基の原子炉を点検と修理のために停止すると発表しました。4月の選挙に直面しているマクロン大統領は、ドイツの強い反核の立場に反対していて、EUの中で原子力発電の勝者の役割を演じようとしています。しかしフランスは最近の主張にもかかわらず、原子力電力網は脆弱であり、今後数年間で12基の原子炉を石炭発電と共に停止する計画です。そして、原子力への大規模な新たな投資を行う可能性は低く、フランスとドイツの両方が将来のエネルギー不足に対して脆弱なままになっています。マクロンの「フランス2030年プログラム」は、小型原子力発電技術にわずか12億ドルの投資を要求しているだけです。
しかし、原子力問題がEUのエネルギー危機の中で唯一の欠点ではありません。現在のEUエネルギー計画はあらゆる面で、現代の産業経済を破壊するように設計されており、ドイツのポツダム研究所のような環境シンクタンクにたっぷり資金提供をしている設計者はそれを知っています。石炭、ガス、原子力に置き換えて、風力と太陽光という二つの危ういエネルギー源だけに頼ることは、単純に不可能だと言われています。
風車と群衆の狂気
日照が少ないドイツにとって、風力が有力な選択肢です。しかし、2021年の冬が劇的に示したように風力の問題の1つは、それが常に吹くわけではなく、しかも予測できないことです。そうなると、原子力と同様に石炭や天然ガスが強制的に追い出されるときに、停電の可能性や信頼性の高いバックアップ電源の必要性が出て来ます。ドイツのような国が再生可能エネルギーの進歩を誇りたいとき、風力発電は、総電力という面で誤って評価されています。
実際に大切なのは、ある期間に産み出される実際の電力、容量係数、または負荷係数と呼ばれるものです。太陽光の場合、容量係数は通常約25%に過ぎません。北ヨーロッパや北米の太陽は24時間照るわけではありません。また、空は常に雲がないわけではありません。同様に、風は常に吹くとは限らず、ほとんど信頼性がありません。ドイツは45%の総再生可能エネルギー比率を誇っていますが、それは現実を隠しています。2021年の研究では、フラウエンホーファー研究所は、ドイツが2045年、100%カーボンフリーの目標に達するために、少なくとも現在の6~8倍の太陽光発電所を設置しなければならないと推測されています。報告書によると、現在の総54GWの太陽光発電容量は、2045年までに544GWも必要とされています。これは、3,568,000エーカーまたは140万ヘクタールの土地面積を必要とし、全国で16,000平方キロメートル以上の固体ソーラーパネルを設置しなければなりません。それを補うのに風車の追加が計画されています。こんな計画は、自殺的な計画です。
カーボンフリーの実際的な選択肢として、風力と太陽光の欺瞞がわかり始めています。今年1月5日、政府が猛烈に風力と太陽光の発電所を建設しているカナダのアルバータ州では、華氏マイナス45°近くの気温で厳しい寒さの日、同州にある13の電力網接続太陽光発電施設は、736メガワットの電力を供給するとされていたのに、たった58メガワットしか貢献できず、2,269メガワットの容量規格を持つ26の風力発電所は、電力網にたった18メガワットの電力しか供給できませんでした。つまり、再生可能エネルギーの合計は、理論的に必要とされていた再生可能エネルギーの3,005メガワットのうち、わずか76メガワットでした。2021年2月の激しい雪の間、テキサス州はドイツと同様に太陽光と風力に問題がありました。また、雪が降るとき、太陽光発電はに立ちません。
「グレート・ゼロ・カーボン」陰謀
再生可能な供給源を使ってゼロカーボンに到達するには、巨大な土地の作付面積を太陽光発電の反射板で埋め尽くすか、風力発電所専用にする必要があります。1つの推定によると、米国のために想定される46,480の太陽光発電施設のために必要な土地の量は650,720平方マイルであり、これは米国の南部48地域のほぼ20%であり、テキサス州、カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州の地域を合わせた面積になります。米国バージニア州だけとってみても、新しいグリーン法「バージニア・クリーン・エコノミー法(VCEA)」が成立し、これまでに780平方マイルのソーラー板の太陽光発電プロジェクト申請が大幅に増加しました。 デビッド・ウォジックが指摘するように、それは約50万エーカーの田園地帯、農地、森林が破壊され、約500のそれぞれのプロジェクトでバージニア州の農村部の大部分が埋め尽くされることになります。そして主に中国からの輸入になるでしょうが、何百トンもの有毒廃棄物になる運命である驚異的な1億6000万枚のソーラーパネルが必要とされます。
何百万もの仕事を生みだすのか?
バイデン政権と再生可能エネルギー皇帝ジョン・ケリーは、彼らのグリーンアジェンダと、より良い再建策は、何百万もの新しい仕事を生みだすと偽って主張しています。彼らがあえて触れていない事実は、そのことにより仕事が増えるのは中国であるということです。中国はほぼ独占的に世界の全てのソーラーパネルを生産しているからです。中国は既に10年前に、政府から補助金を得た安価なパネルで米国やEUの競争相手を蹴散らしているのですから。
同様に、ほとんどの風力発電は中国企業によって中国で作られています。一方、中国は記録的な量の石炭を使用し、EUと米国よりりも10年遅い2060年までにゼロカーボンの公約を延期しました。中国は、偽のデータに基づく気候変動理論、つまりCO2が地球を破壊しようとしているという嘘によって、彼らの産業支配を危険にさらす気はありません。ドイツ労働組合連盟DGBは最近、2011年以降、主に中国製のソーラーパネルがドイツの大手太陽光発電会社を破壊したため、再生可能エネルギー部門だけで約15万人の雇用を失ったと推定しました。そして、ドイツは最もグリーンエネルギーに狂ったEUの国です。自明のこととして、風力や太陽光というエネルギー密度の低い再生可能エネルギーは、基本的な電力コストをかなり高くするので、ドイツは経済全体でこれまで以上に多くの雇用を失うことになるのです。
NATOの産業崩壊
太陽光と風力は、従来の炭化水素や原子力発電よりもはるかに高くつくので、電力の全体的なコストを押し上げ、多くの企業が閉鎖するか、または他の場所に移転することを余儀なくされています。公式の統計詐欺だけがこれを隠しています。ヨーロッパと北米は、予想される何百万ものソーラーパネルや風力発電所を建設するために、膨大な量の鉄鋼とコンクリートを必要とします。それは従来の石炭や原子力を膨大に必要とします。4,700万台のドイツの電気自動車を自前で充電するには、何台の電気自動車用充電ステーションが必要でしょうか?そして、どのくらいの電力需要が必要とされるのでしょうか?
米国の重要なグリーン・エネルギー・シンクタンクRethinkXは、2021年に「エネルギーの再考:2020-2030:100%ソーラー、風力、蓄電池はほんの始まりに過ぎない」と題した再生可能エネルギーのプロパガンダ研究を発行しました。風力と太陽光の低容量の問題に対する彼らの答えは、25%の低い容量係数を補うために、想定されるよりも500%または1000%多く発電所を建設することです。彼らは、「我々の分析は、太陽光、風力、蓄電池(SWB)の組み合わせによる100%クリーンな電気が、2030年までに米国大陸全体と世界の他の地域の圧倒的多数に、物理的に可能かつ経済的に手頃な価格で提供されることを示しています。この有り余るクリーンエネルギー出力は、我々がスーパーパワーと呼んでいますが、年間を通してほぼ限界コストゼロで利用できるようになります」。 その声明は、少しのデータや具体的で科学的な実現可能性の分析なしで、単なる独断的な主張として提示されています。
「国連アジェンダ21」の設計者、カナダ人の故モーリス・ストロングは、億万長者デビッド・ロックフェラーの石油仲間で国連次官であり、1972年6月の「ストックホルム地球の日会議」の事務総長でした。彼はまた、ロックフェラー財団の理事を務めました。彼はおそらく他の誰よりも、ゼロカーボン「持続可能な経済」の脱工業化アジェンダに責任があります。
1992年の国連リオ地球サミットで、彼はゲイツやシュワブのような急進的な優生学の唱道者のぶっきらぼうな計画を公然と述べました。「[それは]、先進国文明が崩壊しようとする地球のための唯一の希望ではありませんか? それを実現するのは私たちの責任ではないでしょうか?」 その計画こそ、今日の「グレイト・リセット」(地球の大々的な変革)なのです。
戦争をしている場合なのか?
ヨーロッパ諸国や米国などのNATO加盟国のかつて先進的でエネルギー集約的だった経済が、この自殺の道を歩み続けるならば、圧倒的な軍事防衛や攻撃を仕掛ける能力は蜃気楼にすぎなくなるでしょう。最近、腐敗したドイツEU委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ドイツのハイテク防衛産業とその供給業者が、十分に「グリーン」で、または「持続可能」ではなかったので、銀行信用を受け取るべきではないと宣言しました。報道によると、銀行はすでにそのメッセージを受け取って、石油・ガスと共に防衛産業が対象となるようになりました。ドイツ国防相のフォン・デア・ライエンは、ドイツの防衛が壊滅的な崩壊状態になることを許したことで多くの人々に非難されました。
今彼らの非常識な「アジェンダ2030」と「ゼロカーボン・アジェンダ」の一方的な追求のせいで、バイデン政権とEUは、この10年が終わる前に、彼らの産業を意図的な破壊への道に押し進めています。そんな時に、ウクライナ、ベラルーシ、アルメニア、そして現在カザフスタンにおいて、ロシアに向かって現在のNATO拡大計画を推進しようというのでしょうか?近い将来、軍事産業インフラの基礎を欠くことを知った上で、今ロシアと戦争を始めて、彼らの産業破壊計画に対する潜在的な抵抗を排除したいとでもいうのでしょうか?中国以外で、ロシアは挑発された場合、NATOに壊滅的な打撃を与える唯一の可能性を秘めた国だというのに。
精神病の集団形成または群衆の狂気
1852年、英国の歴史家チャールズ・マッケイは、『人々の異常な妄想と群衆の狂気の回想録』というタイトルの古典を書きました。そこでは、12世紀の宗教的な大十字軍、魔女マニアやオランダのチューリップマニア、その他多くの一般的な妄想の背後にある集団ヒステリーにあまり知られていない洞察を与えています。経済的、政治的自殺への世界的な不合理な突進を理解することは重要です。
証明されていない実験的な遺伝子改変ワクチンと、世界的に続くロックダウンを受け容れさせる大量のCOVIDワクチン計画の背後にいる主要な同じ役者が、ビル・ゲイツとフランシス教皇を含め、クラウス・シュワブ世界経済フォーラムの「グレートリセット」とその「国連アジェンダ2030グリーン・ゼロカーボン」で、世界に前例のない過酷な経済政策を受け入れさせる狂気の背後にいます。
従順で肉体的にも弱い人々を狂気に追いやる状況を説明するには、ベルギーの心理学教授マティアス・デスメット博士とロバート・マローン博士が、「群衆精神病の集団形成」と名付けた集団心理という概念が必要となるでしょう。いわば多くの人々にかけられた催眠術のようなものです。
地球温暖化の神話とコロナ・パンデミックのアジェンダの両方が、このような大量催眠術を必要としていることは明らかです。
COVIDの恐怖ヒステリーがなければ、グリーンアジェンダがここまで進むことはなかっただろうし、私たちの電力網が、まさに停電の危機に瀕し、経済は崩壊の危機に瀕することはなかったでしょう。WHOが主導したCOVIDパンデミックとグリーン・アジェンダの両方の究極の目標は、ブラックロック*やグーグルアルファベット*のような一握りのグローバル企業が利益を独占するために、シュワブが提唱する世界経済全体のディストピアである「グレイト・リセット」へ突き進むことです。
<訳注>*ブラックロック---ニューヨークに本拠を置く世界最大の資産運用会社
*グーグル-アルファベット---グーグルとその持ち株会社アルファベット、
アメリカの多国籍コングロマリット
*
F.ウィリアム・エンダールは、戦略的リスクコンサルタント兼講師であり、プリンストン大学で政治学の学位を取得し、石油と地政学のベストセラー作家です。グローバル化研究センター(CRG)の研究員。
この記事は「New Eastern Outlook」によって最初に公開されました
グリーン・ゼロカーボンの狂気。産業崩壊か?
<記事原文 寺島先生推薦>
Why Do NATO States Commit “Energy Hara Kiri”? Green Zero Carbon Madness. Industrial Collapse?
F・ウィリアム・エンダール( F. William Engdahl)著
グローバルリサーチ、2022年1月19日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月8日

***
米国とEU・NATO諸国の明らかに自殺的な国家グリーン・アジェンダ経済政策から判断すると、ロシアと中国に対する米国とNATOの軍事姿勢がますます侵略的になっているのには大きな矛盾があります。 世界の最も先進的な産業経済の驚くべき転換が進行中であり、勢いを増しているからです。
転換の核心は、エネルギーであり、2050年までに「ゼロカーボン」エネルギーを実現しようという馬鹿げた要求です。エネルギー産業から炭素を排除することは、現時点では不可能であり、おそらく今後もありえません。しかし、それを推し進めるということは、世界で最も生産的な経済を引き裂くことを意味します。実行可能な産業エネルギー基盤がなければ、NATO諸国の軍事行為などただの悪ふざけになります。太陽光、風力、蓄電池といった「再生可能な」エネルギーなど実際はお話にもなりません。それらは信頼できないエネルギー源なのです。こんなエネルギーに頼ろうというのは、歴史上で最も巨大な科学的妄想の一つです。
12月31日、新ドイツ連立政権は残りの6基の原子力発電所のうち3基を恒久的に閉鎖しました。天然ガスの埋蔵量が低くなる厳しい冬に入ろうとしている時であり、厳しい寒冷前線によって停電になる可能性がある時にです。ドイツが2番目のロシアのガスパイプライン、ノルド・ストリーム2の輸入を拒否したため、ドイツは2021年1月と比較して電力のスポット価格(訳注:翌日の電気価格を前もって入札で決めておく価格のこと)が500%上昇しています。
あらかじめ計画されたEUのエネルギー危機
2011年、メルケル首相が原子力発電の早期終了を宣言し、彼女の悪名高いエネルギー転換は、原子力を段階的に廃止して再生可能エネルギーにすることでしたが、その時点で17の原子力発電所がすべての電力の25%を確実に国に供給していました。今、残り3つの発電所は2022年末までに閉鎖しなければなりません。同時に、2016年以降の政府のグリーンエネルギー計画は、2022年1月時点で15.8ギガワットの石炭発電を閉鎖しました。太陽光と風力は、輝かしいプロパガンダにもかかわらず、その発電ギャップを埋められず、ドイツの電力網は、EU近隣諸国のフランスとチェコ共和国から重要な電力を輸入しなければなりません。皮肉にもその多くが原子力発電所からの輸入です。ドイツは今日、エネルギー転換の結果として、どの産業国家よりも電力コストが高くなっています。
現在、フランスからの原子力発電の供給が問題となっています。12月、フランスの国営原子力機関EDF(フランス電力会社)は、腐食損傷の発見後、合計4基の原子炉を点検と修理のために停止すると発表しました。4月の選挙に直面しているマクロン大統領は、ドイツの強い反核の立場に反対していて、EUの中で原子力発電の勝者の役割を演じようとしています。しかしフランスは最近の主張にもかかわらず、原子力電力網は脆弱であり、今後数年間で12基の原子炉を石炭発電と共に停止する計画です。そして、原子力への大規模な新たな投資を行う可能性は低く、フランスとドイツの両方が将来のエネルギー不足に対して脆弱なままになっています。マクロンの「フランス2030年プログラム」は、小型原子力発電技術にわずか12億ドルの投資を要求しているだけです。
しかし、原子力問題がEUのエネルギー危機の中で唯一の欠点ではありません。現在のEUエネルギー計画はあらゆる面で、現代の産業経済を破壊するように設計されており、ドイツのポツダム研究所のような環境シンクタンクにたっぷり資金提供をしている設計者はそれを知っています。石炭、ガス、原子力に置き換えて、風力と太陽光という二つの危ういエネルギー源だけに頼ることは、単純に不可能だと言われています。
風車と群衆の狂気
日照が少ないドイツにとって、風力が有力な選択肢です。しかし、2021年の冬が劇的に示したように風力の問題の1つは、それが常に吹くわけではなく、しかも予測できないことです。そうなると、原子力と同様に石炭や天然ガスが強制的に追い出されるときに、停電の可能性や信頼性の高いバックアップ電源の必要性が出て来ます。ドイツのような国が再生可能エネルギーの進歩を誇りたいとき、風力発電は、総電力という面で誤って評価されています。
実際に大切なのは、ある期間に産み出される実際の電力、容量係数、または負荷係数と呼ばれるものです。太陽光の場合、容量係数は通常約25%に過ぎません。北ヨーロッパや北米の太陽は24時間照るわけではありません。また、空は常に雲がないわけではありません。同様に、風は常に吹くとは限らず、ほとんど信頼性がありません。ドイツは45%の総再生可能エネルギー比率を誇っていますが、それは現実を隠しています。2021年の研究では、フラウエンホーファー研究所は、ドイツが2045年、100%カーボンフリーの目標に達するために、少なくとも現在の6~8倍の太陽光発電所を設置しなければならないと推測されています。報告書によると、現在の総54GWの太陽光発電容量は、2045年までに544GWも必要とされています。これは、3,568,000エーカーまたは140万ヘクタールの土地面積を必要とし、全国で16,000平方キロメートル以上の固体ソーラーパネルを設置しなければなりません。それを補うのに風車の追加が計画されています。こんな計画は、自殺的な計画です。
カーボンフリーの実際的な選択肢として、風力と太陽光の欺瞞がわかり始めています。今年1月5日、政府が猛烈に風力と太陽光の発電所を建設しているカナダのアルバータ州では、華氏マイナス45°近くの気温で厳しい寒さの日、同州にある13の電力網接続太陽光発電施設は、736メガワットの電力を供給するとされていたのに、たった58メガワットしか貢献できず、2,269メガワットの容量規格を持つ26の風力発電所は、電力網にたった18メガワットの電力しか供給できませんでした。つまり、再生可能エネルギーの合計は、理論的に必要とされていた再生可能エネルギーの3,005メガワットのうち、わずか76メガワットでした。2021年2月の激しい雪の間、テキサス州はドイツと同様に太陽光と風力に問題がありました。また、雪が降るとき、太陽光発電はに立ちません。
「グレート・ゼロ・カーボン」陰謀
再生可能な供給源を使ってゼロカーボンに到達するには、巨大な土地の作付面積を太陽光発電の反射板で埋め尽くすか、風力発電所専用にする必要があります。1つの推定によると、米国のために想定される46,480の太陽光発電施設のために必要な土地の量は650,720平方マイルであり、これは米国の南部48地域のほぼ20%であり、テキサス州、カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州の地域を合わせた面積になります。米国バージニア州だけとってみても、新しいグリーン法「バージニア・クリーン・エコノミー法(VCEA)」が成立し、これまでに780平方マイルのソーラー板の太陽光発電プロジェクト申請が大幅に増加しました。 デビッド・ウォジックが指摘するように、それは約50万エーカーの田園地帯、農地、森林が破壊され、約500のそれぞれのプロジェクトでバージニア州の農村部の大部分が埋め尽くされることになります。そして主に中国からの輸入になるでしょうが、何百トンもの有毒廃棄物になる運命である驚異的な1億6000万枚のソーラーパネルが必要とされます。
何百万もの仕事を生みだすのか?
バイデン政権と再生可能エネルギー皇帝ジョン・ケリーは、彼らのグリーンアジェンダと、より良い再建策は、何百万もの新しい仕事を生みだすと偽って主張しています。彼らがあえて触れていない事実は、そのことにより仕事が増えるのは中国であるということです。中国はほぼ独占的に世界の全てのソーラーパネルを生産しているからです。中国は既に10年前に、政府から補助金を得た安価なパネルで米国やEUの競争相手を蹴散らしているのですから。
同様に、ほとんどの風力発電は中国企業によって中国で作られています。一方、中国は記録的な量の石炭を使用し、EUと米国よりりも10年遅い2060年までにゼロカーボンの公約を延期しました。中国は、偽のデータに基づく気候変動理論、つまりCO2が地球を破壊しようとしているという嘘によって、彼らの産業支配を危険にさらす気はありません。ドイツ労働組合連盟DGBは最近、2011年以降、主に中国製のソーラーパネルがドイツの大手太陽光発電会社を破壊したため、再生可能エネルギー部門だけで約15万人の雇用を失ったと推定しました。そして、ドイツは最もグリーンエネルギーに狂ったEUの国です。自明のこととして、風力や太陽光というエネルギー密度の低い再生可能エネルギーは、基本的な電力コストをかなり高くするので、ドイツは経済全体でこれまで以上に多くの雇用を失うことになるのです。
NATOの産業崩壊
太陽光と風力は、従来の炭化水素や原子力発電よりもはるかに高くつくので、電力の全体的なコストを押し上げ、多くの企業が閉鎖するか、または他の場所に移転することを余儀なくされています。公式の統計詐欺だけがこれを隠しています。ヨーロッパと北米は、予想される何百万ものソーラーパネルや風力発電所を建設するために、膨大な量の鉄鋼とコンクリートを必要とします。それは従来の石炭や原子力を膨大に必要とします。4,700万台のドイツの電気自動車を自前で充電するには、何台の電気自動車用充電ステーションが必要でしょうか?そして、どのくらいの電力需要が必要とされるのでしょうか?
米国の重要なグリーン・エネルギー・シンクタンクRethinkXは、2021年に「エネルギーの再考:2020-2030:100%ソーラー、風力、蓄電池はほんの始まりに過ぎない」と題した再生可能エネルギーのプロパガンダ研究を発行しました。風力と太陽光の低容量の問題に対する彼らの答えは、25%の低い容量係数を補うために、想定されるよりも500%または1000%多く発電所を建設することです。彼らは、「我々の分析は、太陽光、風力、蓄電池(SWB)の組み合わせによる100%クリーンな電気が、2030年までに米国大陸全体と世界の他の地域の圧倒的多数に、物理的に可能かつ経済的に手頃な価格で提供されることを示しています。この有り余るクリーンエネルギー出力は、我々がスーパーパワーと呼んでいますが、年間を通してほぼ限界コストゼロで利用できるようになります」。 その声明は、少しのデータや具体的で科学的な実現可能性の分析なしで、単なる独断的な主張として提示されています。
「国連アジェンダ21」の設計者、カナダ人の故モーリス・ストロングは、億万長者デビッド・ロックフェラーの石油仲間で国連次官であり、1972年6月の「ストックホルム地球の日会議」の事務総長でした。彼はまた、ロックフェラー財団の理事を務めました。彼はおそらく他の誰よりも、ゼロカーボン「持続可能な経済」の脱工業化アジェンダに責任があります。
1992年の国連リオ地球サミットで、彼はゲイツやシュワブのような急進的な優生学の唱道者のぶっきらぼうな計画を公然と述べました。「[それは]、先進国文明が崩壊しようとする地球のための唯一の希望ではありませんか? それを実現するのは私たちの責任ではないでしょうか?」 その計画こそ、今日の「グレイト・リセット」(地球の大々的な変革)なのです。
戦争をしている場合なのか?
ヨーロッパ諸国や米国などのNATO加盟国のかつて先進的でエネルギー集約的だった経済が、この自殺の道を歩み続けるならば、圧倒的な軍事防衛や攻撃を仕掛ける能力は蜃気楼にすぎなくなるでしょう。最近、腐敗したドイツEU委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ドイツのハイテク防衛産業とその供給業者が、十分に「グリーン」で、または「持続可能」ではなかったので、銀行信用を受け取るべきではないと宣言しました。報道によると、銀行はすでにそのメッセージを受け取って、石油・ガスと共に防衛産業が対象となるようになりました。ドイツ国防相のフォン・デア・ライエンは、ドイツの防衛が壊滅的な崩壊状態になることを許したことで多くの人々に非難されました。
今彼らの非常識な「アジェンダ2030」と「ゼロカーボン・アジェンダ」の一方的な追求のせいで、バイデン政権とEUは、この10年が終わる前に、彼らの産業を意図的な破壊への道に押し進めています。そんな時に、ウクライナ、ベラルーシ、アルメニア、そして現在カザフスタンにおいて、ロシアに向かって現在のNATO拡大計画を推進しようというのでしょうか?近い将来、軍事産業インフラの基礎を欠くことを知った上で、今ロシアと戦争を始めて、彼らの産業破壊計画に対する潜在的な抵抗を排除したいとでもいうのでしょうか?中国以外で、ロシアは挑発された場合、NATOに壊滅的な打撃を与える唯一の可能性を秘めた国だというのに。
精神病の集団形成または群衆の狂気
1852年、英国の歴史家チャールズ・マッケイは、『人々の異常な妄想と群衆の狂気の回想録』というタイトルの古典を書きました。そこでは、12世紀の宗教的な大十字軍、魔女マニアやオランダのチューリップマニア、その他多くの一般的な妄想の背後にある集団ヒステリーにあまり知られていない洞察を与えています。経済的、政治的自殺への世界的な不合理な突進を理解することは重要です。
証明されていない実験的な遺伝子改変ワクチンと、世界的に続くロックダウンを受け容れさせる大量のCOVIDワクチン計画の背後にいる主要な同じ役者が、ビル・ゲイツとフランシス教皇を含め、クラウス・シュワブ世界経済フォーラムの「グレートリセット」とその「国連アジェンダ2030グリーン・ゼロカーボン」で、世界に前例のない過酷な経済政策を受け入れさせる狂気の背後にいます。
従順で肉体的にも弱い人々を狂気に追いやる状況を説明するには、ベルギーの心理学教授マティアス・デスメット博士とロバート・マローン博士が、「群衆精神病の集団形成」と名付けた集団心理という概念が必要となるでしょう。いわば多くの人々にかけられた催眠術のようなものです。
地球温暖化の神話とコロナ・パンデミックのアジェンダの両方が、このような大量催眠術を必要としていることは明らかです。
COVIDの恐怖ヒステリーがなければ、グリーンアジェンダがここまで進むことはなかっただろうし、私たちの電力網が、まさに停電の危機に瀕し、経済は崩壊の危機に瀕することはなかったでしょう。WHOが主導したCOVIDパンデミックとグリーン・アジェンダの両方の究極の目標は、ブラックロック*やグーグルアルファベット*のような一握りのグローバル企業が利益を独占するために、シュワブが提唱する世界経済全体のディストピアである「グレイト・リセット」へ突き進むことです。
<訳注>*ブラックロック---ニューヨークに本拠を置く世界最大の資産運用会社
*グーグル-アルファベット---グーグルとその持ち株会社アルファベット、
アメリカの多国籍コングロマリット
*
F.ウィリアム・エンダールは、戦略的リスクコンサルタント兼講師であり、プリンストン大学で政治学の学位を取得し、石油と地政学のベストセラー作家です。グローバル化研究センター(CRG)の研究員。
この記事は「New Eastern Outlook」によって最初に公開されました
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