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アサンジが、米国ではなく中国の犯罪を暴いていたらどうだったか?

アサンジが、米国ではなく中国の犯罪を暴いていたらどうだったか?
<記事原文 寺島先生推薦>
Imagine if Assange had exposed Chinese crimes, not US ones

2021年12月10日
ジョージ・ギャロウエイ(George Galloway)

George Galloway
was a member of the British Parliament for nearly 30 years. He presents TV and radio shows (including on RT). He is a film-maker, writer and a renowned orator. Follow him on Twitter @georgegalloway

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年1月28日



 もしジュリアン・アサンジが中国のジャーナリストや出版人だったら、ノーベル賞を受賞し、人権デーの目玉となり、今週はジョー・バイデン大統領の民主化サミットの頂点を飾るものとして彼の肖像画が置かれただろう。

 アサンジの名前は、アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官が発表した、脅威に晒されているジャーナリスト350人のリストの筆頭に挙げられていただろう。このリストは、皮肉でもなんでもない 、彼の管轄部署がアサンジをスーパーマックス刑務所に175年間収監するために引き渡そうとした日に発表されることになっただろう。

 もし、アメリカの犯罪ではなく、中国の犯罪がアサンジによって明らかにされていたら、彼は今頃、冬季オリンピックのボイコットキャンペーンの広告塔になっていただろう。

 今日のニュース速報のリードはすべて彼の運命で埋まり、まだ稼働中のすべてのマスコミは、この「車輪の上の蝶」(訳注:処刑具に繋がれた受刑者を表す慣用句)を押しつぶすことへの怒りを大々的に公表することになるだろう。

 かわいそうなジュリアン、中国人に生まれていればよかったのに。

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Julian Assange’s extradition battle: What you need to know

 しかし、彼の「罪」は、特に挙げれば以下の5点である:
 ①暗殺や報告されていない1万5000人以上の民間人の死を含むイラクでのアメリカの戦争犯罪を暴露したこと、
 ②グアンタナモでの14歳から89歳までの男性や少年の拷問を暴露したこと、
 ③アメリカが国連事務総長や他の外交官を違法にスパイしていることを暴露したこと、
 ④2009年のホンジュラスのCIAが扇動した軍事クーデターを暴露したこと、
 ⑤何千人もの犠牲者が出たイエメンでのアメリカの秘密戦争を暴露したこと。

 ロンドンの高等法院は、かつらと絢爛たる法衣を身に着け、今やボロボロの断片と化した英国司法ばかりか、ジャーナリズムそのものに致命的な打撃を与えた。そして、理論上、第四の機関(=ジャーナリズム)が民主主義そのものの見張り番であることを考えると、英国がいやしくも民主主義国家であるという建前を打ち消したことになる。この一週間ですべてを台無しにした。自分たちが選び取った「民主主義的な制度」は他の国よりはましだ、という自慰的な自己満足にふけっていたのだ。

 アサンジの事例は最初のハードルを越えられるはずもなかった。その後いくつもハードルはあったが、どうでもいいものだ。英米間の犯罪人引き渡し条約は、政治的訴追を受けることになる人間を相手国に引き渡すことを明確に除外することを明記している。

 皮肉なことに、これは米国にいるアイルランド共和国の逃亡者が、英国で政治的な訴追を受けるため英国に引き渡される可能性を、米国が遮断するためであった。アメリカの大統領はすべて、(オバマすらそうだが)、その系統がきちんと辿れないにしても、祖先はアイルランド人だ。3000万票のアイルランド系アメリカ人の票がかかっている以上、政治的な動機で犯罪者とされる人物については万全の態勢をとることになる。

 この条約を密かに締結した当時の内務大臣デービッド・ブランケット(David Blunkett)に、ネルソン・マンデラのような人物が政治犯として送り込まれる可能性について私は直接質問した。それに対して「そんなことは絶対にありえない」と保証してくれたのだった。

 そんな保証も、中世貴族院のタペストリーのように、今や糸のほつれたぼろきれ。

 適正な法手続きについて数え切れないほどひどい違反があった。そのことを取り上げても、限りなくゼロに近いアサンジの身柄引き渡しの可能性は消滅しただろう。3つだけ挙げてみよう。


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Assange verdict branded as ‘travesty of justice’

 ①米国政府が、ジュリアン・アサンジと彼の有能で高名な弁護士との数年にわたる法的会合をすべてビデオで密かに記録していたことが明らかになった時点で、どの民主主義国家でも、自尊心のある裁判官ならこの訴訟を破棄するはずだった。

 ②アサンジに対する重要な証人が、アイスランド人の泥棒、詐欺師、幼児性愛で有罪判決を受けた嘘つきであり、しかも告発の根拠となった彼の証言が嘘の塊であることを今は自分から認めていることが明らかになった時点で、ほんとうの裁判官ならアメリカ政府に不利な判決を下しただろう。

 そして、③米政府がロンドンでアサンジを誘拐し、必要ならハロッズ百貨店の外、エクアドル大使館周辺の路上で殺害するという周到な計画を立てていたことが明らかになった時点で、アサンジに身辺について米国が約束する「保証」の価値はどん底に落ちた。それは当てにならない。まして、米国へ引き渡すことなど、到底認められないだろう。

 しかし、メディアの輪転機はアサンジのために稼働していない。彼はベルマーシュ刑務所でひっそりと死につつある。

 プロンプターを読む技術で高額な報酬を得ている航空機添乗員風の欧米の「ジャーナリスト」たちは、アサンジの運命と自分たちの「職業」の運命について何も語らない。彼らは、もしこれがアサンジに起こっているのなら、自分たちにも起こりうることだと知っている。しかし、「夜に飛ぶ矢」(訳注:新共同訳「旧約聖書 詩篇」:91-5では「昼飛んで来る矢」。すなわち目に見える恐怖のこと)のように、彼らはそうなる可能性を、とうの昔に自ら断ち切ってしまっている。彼らにとって、喜ばしい確信に満ちた朝が巡ってくることは絶対ないだろう。隷属とその報酬としての銀貨だけが手元に残る。

 そして、アメリカの圧倒的破壊力を持つマスメディアは、再び、事実上何も語らず正義を打ち砕く。それは、車輪の上で蝶を壊すということだ。誰もその悲鳴を聞くことはできない。
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