アメリカ外交政策のジレンマ。危険な状況だ。第三次世界大戦の危機が迫っている
アメリカ外交政策のジレンマ。危険な状況だ。第三次世界大戦の危機が迫っている
<記事原文 寺島先生推薦>
America’s Foreign Policy Dilemma. A Dangerous Situation. The Risk of World War III is Real
ポール・クレイグ・ロバーツ博士
グローバルリサーチ、2021年12月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年1月12日

アメリカの外交政策は、アメリカ例外主義の傲慢さに満ちていて、危険な状況を認識できていない。
そして、危険な状況が、我々を待っている。
ロシアのセルゲイ・リャブコフ副外相は、NATOのロシア国境に向けたこれ以上の拡大を、ロシアは容認できないことを明らかにした。
ロシアは、ウクライナとグルジアの旧ロシアの共和国が、北大西洋条約機構(NATO)加盟国になることを問題外とした。この赤い線が無視されれば、その結果は「悲惨なことになるだろう」とリャブコフは述べた。さらに、ロシアは軍事的に対応するだろうし、安全保障を損なうのはロシアではなく、西側であると彼は言った。
言い換えれば、クレムリンが見ているように、ウクライナやグルジアを北大西洋条約機構(NATO)に組み込むことは、ロシアの国家安全保障にとって容認できない脅威である。もうお終いだ。交渉の可能性はない。
合理的な世界だったら、極超音速核ミサイルを搭載し、優れた軍事力を持った国によるこのような明確な声明は、真剣に受け止められるだろう。
しかし、欧米の世界はもはや合理的ではない。傲慢さに酔っている世界だ。北大西洋条約機構(NATO)の事務総長は、事実上、核兵器を持った国からの最後通告に、そんな強力な国の安全保障上の懸念を即座に拒絶することによって答えた。
愚かなNATO事務総長は、「ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟するかどうかは、ブロックの加盟国とその指導者次第であり、ロシア政府は決定に関与できない」と愚かにも述べ、NATOはロシアの反対にほとんど気にもとめず、NATOは「すでにウクライナ軍を訓練し、彼らと協議し、合同演習を行い、軍事物資と技術を提供している」と自慢げに続けた。
So NATO, so drunk on exaggerated American military power, spit in the Kremlin’s eye
バイデン大統領と国家安全保障会議に答えてホワイトハウスの報道官は、アメリカ政府は北大西洋条約機構(NATO)の拡大について「妥協しない」と述べ、ロシアが何を要求しようが、アメリカ政府はNATO拡大を停止する考えはないと付け加えた。
このこととその結末を、しっかり確認しておこう。言い換えれば、ワシントンの立場は、ロシアが、ワシントンによって定められた以外は、正当な国家安全保障上の権益を持っていないということである。
ここには、かなり危険な状況がある。足を踏まれている方が、「我慢できない」と言っているのに、 踏んでいる方が踏まれている方に、「その問題について何も言う権利はない」と言っているようなものだ。
20世紀の冷戦中、私たち冷戦戦士はソ連が何かことばを発すれば、一言一句、抑揚まで聞き逃さないよう耳を傾けた。当時は愚か者が耳栓をしていたり、男気を見せびらかしたいがために核戦争の危機を招くことなどは問題外だった。当時、米国の大学には、軍・安保複合体からの資金援助に依存していないロシアの研究部門があった。公開討論もあった。ロシア人が状況をどのように見たかを皆に気づかせるために、スティーブン・コーエンのような独立した専門家が常にいた。
Russia Has Western Enemies, Not Partners
今日、独立した学識は消え去った。大学でのロシア研究プログラムは、援助資金に従属してみんなロシア嫌いだ。客観的な学者がいないので、米国の情報コミュニティには見識のある人がいない。バイデンの国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバンの最近の声明では、米国の情報機関はプーチンがウクライナ侵攻を「真剣に考慮している」と報告しているのだ。
ワシントンは、2014年以来、こう言っている。クリミアのロシア海軍基地を押収する過程で、ロシアに友好的なウクライナ政府をワシントンが倒した時からだ。凝り固まったメッセージだ。考察はない。プロパガンダの繰り返しだけ。だから、我々には、プロパガンダの繰り返し以外に何もできない国家安全保障会議があるだけだ。
事実上、アメリカ政府はすでにロシアと戦争をしている。
一方、先週の木曜日12月16日の夕方、ワシントンとそのネオナチ・ウクライナの操り人形は、ワシントンとウクライナが失地回復論者のナチズムであるというロシアの疑惑を確認することとなった。つまり、ナチズムを非難する国連決議に反対票を投じたのは2カ国だけだった。そう、それは米国とウクライナだった。米国の投票が全く愚かなものであることは並外れている。ワシントンがナチズムを支持していることは、ロシア政府が全く思いもよらなかったことだ。
私の世代は、イデオロギーで教え込まれずに西洋で教育を受けた最後の世代であり、第一次世界大戦と第二次世界大戦に関する嘘にもうんざりしていた。
これに続く世代は、ドイツ占領下の西ウクライナでは、大規模な軍隊が組織され、ドイツ軍のロシアへの進撃に組み込まれたことをほとんど知らない。ロシア政府が裏庭のことを無視してソチオリンピックを楽しんでいる間、ワシントンがウクライナ政府を打倒し、旧ロシア領にアメリカの傀儡国家を設置していたのは、これらの「バンデラズ」(訳注:ステピング・バンデラ。第二次世界大戦後ソ連に組み込まれたウクライナの独立に向けて動いていた人物)の残滓だった。
人々が犯す過ちは、どんな采配が取られたかで見るよりも、世界史を振り返る方が正しく捉えることができる。
私は、四半世紀、高官レベルに参加してよく知っているが、ワシントンが致命的な間違いを犯しているのがわかる。ワシントン政権は傲慢さに満ちているので、ロシアが忍耐力を使い果たしたことを理解できない。
ロシア人は現実の問題を見ている。ワシントンが見ているのはプロパガンダの機会だ。これは、ワシントンの誤算につながる状況だ。誤算は致命的になる。
この記事の続報
アメリカでは、ロシア嫌いが暴れ回っている。
政権はプロパガンダのスピーカーのように、ロシアがウクライナ侵攻の寸前であると毎日繰り返している。
長い間ロシアを敵とみなすように仕込まれたアメリカ国民は、この主張を何度も聞いてきたが、それが現実となっている。
傲慢なバイデン政権はロシアの安全保障上の懸念を拒絶しており、共和党も変わりはない。ロシアに対する盲目的な好戦性が高まっている。共和党の上院議員も、プーチンがウクライナに侵攻し、「ウクライナの人々の主権を奪う」つもりだというプロパガンダに加勢している。(ワシントンは、2014年に選挙で選ばれたウクライナ政府を倒し、キエフに傀儡国家を打ち立てたとき、すでにそう言っていた。)
共和党は、「勇敢なウクライナ軍」にさらに4億5000万ドルの武器支援をせき立てている。そして、おまけに、共和党はロシアをテロリスト国家に指定したがっている。
ウクライナ危機は、法案を支持する共和党が軍・安保複合体と密接に結びついているように、一部は兵器売買市場計画である。しかし、誰もが、ワシントンへの信頼がゼロになったクレムリンへの影響を見落としている。
クレムリンの安全保障上の懸念に、アメリカ政府が無関心であるため、クレムリンはおそらく最終段階になると見て、2つの戦略的核ミサイル部隊に戦闘準備を命じた。さらに、ロシアは北極海ルートを閉鎖し、米国の地平線上のレーダーを妨害するために無線工学部隊と電子ドームを配備した。黒海で米海軍の挑発が続けば、ロシアは黒海も閉鎖するかもしれない。
一方、ワシントンが武装したネオナチ・ウクライナ大隊は、ドンバスのロシア人との対決をエスカレートさせている。
ワシントンは、厄介な退却か、それとも大規模な対決のために準備している。ワシントンに残されたカードはほとんどない。
以下の記事も参照してください。
https://www.paulcraigroberts.org/2021/12/13/the-biden-putin-talk/
https://www.paulcraigroberts.org/2021/12/14/russia-speaks-can-the-dumbshits-in-washington-hear/
https://www.paulcraigroberts.org/2021/12/16/cuban-missile-crisis-redux/
https://www.paulcraigroberts.org/2021/12/16/washington-spits-in-the-kremlins-eye/
<記事原文 寺島先生推薦>
America’s Foreign Policy Dilemma. A Dangerous Situation. The Risk of World War III is Real
ポール・クレイグ・ロバーツ博士
グローバルリサーチ、2021年12月20日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年1月12日

アメリカの外交政策は、アメリカ例外主義の傲慢さに満ちていて、危険な状況を認識できていない。
そして、危険な状況が、我々を待っている。
ロシアのセルゲイ・リャブコフ副外相は、NATOのロシア国境に向けたこれ以上の拡大を、ロシアは容認できないことを明らかにした。
ロシアは、ウクライナとグルジアの旧ロシアの共和国が、北大西洋条約機構(NATO)加盟国になることを問題外とした。この赤い線が無視されれば、その結果は「悲惨なことになるだろう」とリャブコフは述べた。さらに、ロシアは軍事的に対応するだろうし、安全保障を損なうのはロシアではなく、西側であると彼は言った。
言い換えれば、クレムリンが見ているように、ウクライナやグルジアを北大西洋条約機構(NATO)に組み込むことは、ロシアの国家安全保障にとって容認できない脅威である。もうお終いだ。交渉の可能性はない。
合理的な世界だったら、極超音速核ミサイルを搭載し、優れた軍事力を持った国によるこのような明確な声明は、真剣に受け止められるだろう。
しかし、欧米の世界はもはや合理的ではない。傲慢さに酔っている世界だ。北大西洋条約機構(NATO)の事務総長は、事実上、核兵器を持った国からの最後通告に、そんな強力な国の安全保障上の懸念を即座に拒絶することによって答えた。
愚かなNATO事務総長は、「ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟するかどうかは、ブロックの加盟国とその指導者次第であり、ロシア政府は決定に関与できない」と愚かにも述べ、NATOはロシアの反対にほとんど気にもとめず、NATOは「すでにウクライナ軍を訓練し、彼らと協議し、合同演習を行い、軍事物資と技術を提供している」と自慢げに続けた。
So NATO, so drunk on exaggerated American military power, spit in the Kremlin’s eye
バイデン大統領と国家安全保障会議に答えてホワイトハウスの報道官は、アメリカ政府は北大西洋条約機構(NATO)の拡大について「妥協しない」と述べ、ロシアが何を要求しようが、アメリカ政府はNATO拡大を停止する考えはないと付け加えた。
このこととその結末を、しっかり確認しておこう。言い換えれば、ワシントンの立場は、ロシアが、ワシントンによって定められた以外は、正当な国家安全保障上の権益を持っていないということである。
ここには、かなり危険な状況がある。足を踏まれている方が、「我慢できない」と言っているのに、 踏んでいる方が踏まれている方に、「その問題について何も言う権利はない」と言っているようなものだ。
20世紀の冷戦中、私たち冷戦戦士はソ連が何かことばを発すれば、一言一句、抑揚まで聞き逃さないよう耳を傾けた。当時は愚か者が耳栓をしていたり、男気を見せびらかしたいがために核戦争の危機を招くことなどは問題外だった。当時、米国の大学には、軍・安保複合体からの資金援助に依存していないロシアの研究部門があった。公開討論もあった。ロシア人が状況をどのように見たかを皆に気づかせるために、スティーブン・コーエンのような独立した専門家が常にいた。
Russia Has Western Enemies, Not Partners
今日、独立した学識は消え去った。大学でのロシア研究プログラムは、援助資金に従属してみんなロシア嫌いだ。客観的な学者がいないので、米国の情報コミュニティには見識のある人がいない。バイデンの国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバンの最近の声明では、米国の情報機関はプーチンがウクライナ侵攻を「真剣に考慮している」と報告しているのだ。
ワシントンは、2014年以来、こう言っている。クリミアのロシア海軍基地を押収する過程で、ロシアに友好的なウクライナ政府をワシントンが倒した時からだ。凝り固まったメッセージだ。考察はない。プロパガンダの繰り返しだけ。だから、我々には、プロパガンダの繰り返し以外に何もできない国家安全保障会議があるだけだ。
事実上、アメリカ政府はすでにロシアと戦争をしている。
一方、先週の木曜日12月16日の夕方、ワシントンとそのネオナチ・ウクライナの操り人形は、ワシントンとウクライナが失地回復論者のナチズムであるというロシアの疑惑を確認することとなった。つまり、ナチズムを非難する国連決議に反対票を投じたのは2カ国だけだった。そう、それは米国とウクライナだった。米国の投票が全く愚かなものであることは並外れている。ワシントンがナチズムを支持していることは、ロシア政府が全く思いもよらなかったことだ。
私の世代は、イデオロギーで教え込まれずに西洋で教育を受けた最後の世代であり、第一次世界大戦と第二次世界大戦に関する嘘にもうんざりしていた。
これに続く世代は、ドイツ占領下の西ウクライナでは、大規模な軍隊が組織され、ドイツ軍のロシアへの進撃に組み込まれたことをほとんど知らない。ロシア政府が裏庭のことを無視してソチオリンピックを楽しんでいる間、ワシントンがウクライナ政府を打倒し、旧ロシア領にアメリカの傀儡国家を設置していたのは、これらの「バンデラズ」(訳注:ステピング・バンデラ。第二次世界大戦後ソ連に組み込まれたウクライナの独立に向けて動いていた人物)の残滓だった。
人々が犯す過ちは、どんな采配が取られたかで見るよりも、世界史を振り返る方が正しく捉えることができる。
私は、四半世紀、高官レベルに参加してよく知っているが、ワシントンが致命的な間違いを犯しているのがわかる。ワシントン政権は傲慢さに満ちているので、ロシアが忍耐力を使い果たしたことを理解できない。
ロシア人は現実の問題を見ている。ワシントンが見ているのはプロパガンダの機会だ。これは、ワシントンの誤算につながる状況だ。誤算は致命的になる。
この記事の続報
アメリカでは、ロシア嫌いが暴れ回っている。
政権はプロパガンダのスピーカーのように、ロシアがウクライナ侵攻の寸前であると毎日繰り返している。
長い間ロシアを敵とみなすように仕込まれたアメリカ国民は、この主張を何度も聞いてきたが、それが現実となっている。
傲慢なバイデン政権はロシアの安全保障上の懸念を拒絶しており、共和党も変わりはない。ロシアに対する盲目的な好戦性が高まっている。共和党の上院議員も、プーチンがウクライナに侵攻し、「ウクライナの人々の主権を奪う」つもりだというプロパガンダに加勢している。(ワシントンは、2014年に選挙で選ばれたウクライナ政府を倒し、キエフに傀儡国家を打ち立てたとき、すでにそう言っていた。)
共和党は、「勇敢なウクライナ軍」にさらに4億5000万ドルの武器支援をせき立てている。そして、おまけに、共和党はロシアをテロリスト国家に指定したがっている。
ウクライナ危機は、法案を支持する共和党が軍・安保複合体と密接に結びついているように、一部は兵器売買市場計画である。しかし、誰もが、ワシントンへの信頼がゼロになったクレムリンへの影響を見落としている。
クレムリンの安全保障上の懸念に、アメリカ政府が無関心であるため、クレムリンはおそらく最終段階になると見て、2つの戦略的核ミサイル部隊に戦闘準備を命じた。さらに、ロシアは北極海ルートを閉鎖し、米国の地平線上のレーダーを妨害するために無線工学部隊と電子ドームを配備した。黒海で米海軍の挑発が続けば、ロシアは黒海も閉鎖するかもしれない。
一方、ワシントンが武装したネオナチ・ウクライナ大隊は、ドンバスのロシア人との対決をエスカレートさせている。
ワシントンは、厄介な退却か、それとも大規模な対決のために準備している。ワシントンに残されたカードはほとんどない。
以下の記事も参照してください。
https://www.paulcraigroberts.org/2021/12/13/the-biden-putin-talk/
https://www.paulcraigroberts.org/2021/12/14/russia-speaks-can-the-dumbshits-in-washington-hear/
https://www.paulcraigroberts.org/2021/12/16/cuban-missile-crisis-redux/
https://www.paulcraigroberts.org/2021/12/16/washington-spits-in-the-kremlins-eye/
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