中間選挙の結果をどう捉えるか?
What Do We Make Of The Midterm Election?
Paul Craig Roberts
- PaulCraigRoberts.org - https://www.paulcraigroberts.org -
(2018年11月7日)
(翻訳: 寺島メソッド翻訳グループ 2018年11月22日)
<記事原文>https://www.paulcraigroberts.org/2018/11/07/what-do-we-make-of-the-midterm-election/

中間選挙の結果について、私の意見を求める声が読者からあります。
CNNが番組で流した選挙結果の地図を見てみます。北東海岸、西海岸の狭い地域、南西部と南部のヒスパニック、そして黒人の居住地域を除くと、アメリカ全体としては圧倒的に共和党に票が流れました。
私見です。アメリカ中部で票が共和党に流れたのは「哀れな人々」(2016年大統領選におけるヒラリー候補の言葉)がトランプを守りたかったからです。理由は二つあります:
①一つはトランプが経済的苦境に陥った人々に語りかけたことが理由です。
そもそもアメリカの企業が海外に仕事を輸出し、アメリカの労働者と中産
階級の首を締め上げた結果生じた経済的苦境でした。
②もう一つは民主党が「アイデンティティー政治」を取り込んだことです。そ
の結果民主党は白人をヘイトの対象とする政党になってしまいました。と
りわけ異性愛だけをよしとする白人男性へのヘイトです。彼らは、自分た
ちが少数者集団、ゲイそして女性たちの犠牲者だと考えています。そんな
彼らが白人を問題視する民主党に投票するはずがありません。
クリントン夫妻の時代以前、民主党は労働者階級を代表していました。民主党は実業界を代表する共和党の動きを牽制する政党だったのです。それでいろいろなことのバランスが保たれていました。ところが、クリントン夫妻の時代になって異変が起こりました。民主党選挙区の人たちの仕事を海外に移そうとする共和党の動きにOKサインを出したのです。自分たちの選挙区を売り払った代償として、クリントン夫妻が得たものは共和党の金庫です。それを民主党も使えるようにしました。民主党も共和党も今ではウォール街や軍産複合体に操られています。
労働者階級は、民主党に見捨てられたため、今では共和党に投票します。
民主党の選挙区に、行き場のなくなった労働者階級は、もはや含まれません。民主党は方向をヘイトに向けました。民主党は現在「ヘイト政党」です。民主党はアイデンティティー政治の「犠牲者グループ」にヘイトを教え込んでいます。この動きで一般の白人は民主党の犠牲者になっています。かくして、民主党は白人票を失い、「犠牲者」の票を獲得することになります。 移民が増えれば結局は「犠牲者」票が確実に一般白人票を上回るでしょう。その場合、民主党のアイデンティティー政治支配下でアメリカの一般白人は、今度は犠牲者グループとなります。実際多くの民主党員が語っていることに注意を払えば、それが彼らの意図するところだとわかります。
2、3時間前から種々のレポートに目を通していますが、民主党員の75%はトランプを弾劾したいと考えています。理由についての記述は何もありません。私が思うに、その唯一の理由はヘイトです。トランプは「女は男のおもちゃ」と考える億万長者白人男性の典型です。
これで事情はお分かりでしょう。
特筆すべきはトランプが今回は共和党で当選しましたが、出馬は民主党からでした。彼はロシアとの和平賛成派でした。労働者階級の仕事を何とかしようとしていました。平和と職の安定は民主的なスローガンです。しかし、民主党はトランプを嫌悪しました。何故ならトランプは抑圧的な白人男性の典型だからです。この理屈に合わないヘイト感情が民主党を軍・安保複合体との同盟関係に誘導しました。この軍・安保複合体はロシアとの和平に強力な異を唱えています。和平は彼らの予算と権力を脅かすからです。民主党は「闇の国家」と手を携えながらロシアとの和平を妨害しました。そして第三世界からアメリカへ大量の移民が流入することを支持しました。そんなことをすれば労働者階級の経済的な基盤はますます危うくなります。目的は第三世界からの移民票を獲得し、失った労働者階級の票を埋め合わせることです。
この第三世界からの移民にあてがわれる仕事は、アメリカ中産階級労働者層の収入に依存していることを、民主党ははっきり言って分かっていません。この収入が消滅すれば、第三世界からの移民はもはや存在しない仕事のためにやって来ません。彼らは生活の糧を失ったアメリカ人が支払っている社会保障費の恩恵を受けに彼らはやって来るのです。
アメリカの一般的白人が罪の意識に屈して崩壊しない限り、民主党は終わりだと思うのです。今回の中間選挙は民主党の有終の美となりました。
だからと言って未来がバラ色というわけでもないでしょう。民主党の動きのせいでトランプは世界に対して攻撃的なスタンスを取ることになりました。アメリカはこの攻撃をとうてい支持できません。トランプの「いじめっ子」的性格の旗は降ろすことが可能なのでしょうか?トランプは、イスラエルと深い繋がりをもつユダヤ教徒の娘婿を排除することなのできるのでしょうか?
そんなことはできそうもありません。そんなことをすれば、彼はエルサレムへのアメリカ大使館移転や他の決定を撤回せざるを得なくなるでしょう。そして彼や娘婿クシュナー大統領上級顧問とイスラエル首相ネタニヤフとのいろいろな近しい関係は、もし彼がアメリカはイスラエルのコントロールから自由だと言明すれば、音を立てて崩れ去りますし、それは外交上の問題ばかりでなく、彼の家族問題ともなるでしょう。
トランプがイスラエルに対して従属的姿勢を取ることは奇妙です。そんなことをしてもユダヤ人民主党員から得られる政治的利点は何もないからです。中間選挙においてユダヤ人の票は圧倒的に民主党に流れました。トランプがアメリカ大統領として初めて、おそらくは国家元首としてただ一人、エルサレムをイスラエルの首都として認定しても関係ありませんでした。
ユダヤ人で下院の権力の座に登り詰めた民主党員のアダム・シフは、トランプ大統領の調査を手ぐすね引いて待っていると発言しています。シフはトランプの首根っこを掴まえる自信がありそうです。実際、ユダヤ人はアメリカの人口に占める比率は極小であるにも拘わらず、議会で最重要な委員会の5つのポストを占有しています。
①Jerrold Nadlerは司法委員会
②Eliot Engelは外交委員会
③Nita Loweyは歳出委員会
④Adam Schiffは諜報特別委員会
⑤John Yarmuthは予算委員会
アメリカの歴史の中で最もユダヤ的な大統領であるトランプが国内のユダヤ人の標的にされていることをどう説明したらいいのでしょう?たぶんこうです。ユダヤ人は非ユダヤ人社会を崩壊させることにより強い関心を抱いているのです。ユダヤ人にとって、その偏執狂的な見方では、非ユダヤ人社会は脅威です。トランプがイスラエルの中東政策(=「パレスチナ人ジェノサイド」)を全面的に支持していることなど眼中にありません。
ドナルド・トランプ以前のアメリカの大統領がこれほど完璧にイスラエルに身売りしたことは一度もありません。トランプはあのちっぽけで、取るに足らないイスラエルという国に対してそんなことをしているのです。
トランプが「偉大なアメリカを再び!」を実現することはあり得ません。アメリカをイスラエルに従属させていては無理です。
Paul Craig Roberts
- PaulCraigRoberts.org - https://www.paulcraigroberts.org -
(2018年11月7日)
(翻訳: 寺島メソッド翻訳グループ 2018年11月22日)
<記事原文>https://www.paulcraigroberts.org/2018/11/07/what-do-we-make-of-the-midterm-election/

中間選挙の結果について、私の意見を求める声が読者からあります。
CNNが番組で流した選挙結果の地図を見てみます。北東海岸、西海岸の狭い地域、南西部と南部のヒスパニック、そして黒人の居住地域を除くと、アメリカ全体としては圧倒的に共和党に票が流れました。
私見です。アメリカ中部で票が共和党に流れたのは「哀れな人々」(2016年大統領選におけるヒラリー候補の言葉)がトランプを守りたかったからです。理由は二つあります:
①一つはトランプが経済的苦境に陥った人々に語りかけたことが理由です。
そもそもアメリカの企業が海外に仕事を輸出し、アメリカの労働者と中産
階級の首を締め上げた結果生じた経済的苦境でした。
②もう一つは民主党が「アイデンティティー政治」を取り込んだことです。そ
の結果民主党は白人をヘイトの対象とする政党になってしまいました。と
りわけ異性愛だけをよしとする白人男性へのヘイトです。彼らは、自分た
ちが少数者集団、ゲイそして女性たちの犠牲者だと考えています。そんな
彼らが白人を問題視する民主党に投票するはずがありません。
クリントン夫妻の時代以前、民主党は労働者階級を代表していました。民主党は実業界を代表する共和党の動きを牽制する政党だったのです。それでいろいろなことのバランスが保たれていました。ところが、クリントン夫妻の時代になって異変が起こりました。民主党選挙区の人たちの仕事を海外に移そうとする共和党の動きにOKサインを出したのです。自分たちの選挙区を売り払った代償として、クリントン夫妻が得たものは共和党の金庫です。それを民主党も使えるようにしました。民主党も共和党も今ではウォール街や軍産複合体に操られています。
労働者階級は、民主党に見捨てられたため、今では共和党に投票します。
民主党の選挙区に、行き場のなくなった労働者階級は、もはや含まれません。民主党は方向をヘイトに向けました。民主党は現在「ヘイト政党」です。民主党はアイデンティティー政治の「犠牲者グループ」にヘイトを教え込んでいます。この動きで一般の白人は民主党の犠牲者になっています。かくして、民主党は白人票を失い、「犠牲者」の票を獲得することになります。 移民が増えれば結局は「犠牲者」票が確実に一般白人票を上回るでしょう。その場合、民主党のアイデンティティー政治支配下でアメリカの一般白人は、今度は犠牲者グループとなります。実際多くの民主党員が語っていることに注意を払えば、それが彼らの意図するところだとわかります。
2、3時間前から種々のレポートに目を通していますが、民主党員の75%はトランプを弾劾したいと考えています。理由についての記述は何もありません。私が思うに、その唯一の理由はヘイトです。トランプは「女は男のおもちゃ」と考える億万長者白人男性の典型です。
これで事情はお分かりでしょう。
特筆すべきはトランプが今回は共和党で当選しましたが、出馬は民主党からでした。彼はロシアとの和平賛成派でした。労働者階級の仕事を何とかしようとしていました。平和と職の安定は民主的なスローガンです。しかし、民主党はトランプを嫌悪しました。何故ならトランプは抑圧的な白人男性の典型だからです。この理屈に合わないヘイト感情が民主党を軍・安保複合体との同盟関係に誘導しました。この軍・安保複合体はロシアとの和平に強力な異を唱えています。和平は彼らの予算と権力を脅かすからです。民主党は「闇の国家」と手を携えながらロシアとの和平を妨害しました。そして第三世界からアメリカへ大量の移民が流入することを支持しました。そんなことをすれば労働者階級の経済的な基盤はますます危うくなります。目的は第三世界からの移民票を獲得し、失った労働者階級の票を埋め合わせることです。
この第三世界からの移民にあてがわれる仕事は、アメリカ中産階級労働者層の収入に依存していることを、民主党ははっきり言って分かっていません。この収入が消滅すれば、第三世界からの移民はもはや存在しない仕事のためにやって来ません。彼らは生活の糧を失ったアメリカ人が支払っている社会保障費の恩恵を受けに彼らはやって来るのです。
アメリカの一般的白人が罪の意識に屈して崩壊しない限り、民主党は終わりだと思うのです。今回の中間選挙は民主党の有終の美となりました。
だからと言って未来がバラ色というわけでもないでしょう。民主党の動きのせいでトランプは世界に対して攻撃的なスタンスを取ることになりました。アメリカはこの攻撃をとうてい支持できません。トランプの「いじめっ子」的性格の旗は降ろすことが可能なのでしょうか?トランプは、イスラエルと深い繋がりをもつユダヤ教徒の娘婿を排除することなのできるのでしょうか?
そんなことはできそうもありません。そんなことをすれば、彼はエルサレムへのアメリカ大使館移転や他の決定を撤回せざるを得なくなるでしょう。そして彼や娘婿クシュナー大統領上級顧問とイスラエル首相ネタニヤフとのいろいろな近しい関係は、もし彼がアメリカはイスラエルのコントロールから自由だと言明すれば、音を立てて崩れ去りますし、それは外交上の問題ばかりでなく、彼の家族問題ともなるでしょう。
トランプがイスラエルに対して従属的姿勢を取ることは奇妙です。そんなことをしてもユダヤ人民主党員から得られる政治的利点は何もないからです。中間選挙においてユダヤ人の票は圧倒的に民主党に流れました。トランプがアメリカ大統領として初めて、おそらくは国家元首としてただ一人、エルサレムをイスラエルの首都として認定しても関係ありませんでした。
ユダヤ人で下院の権力の座に登り詰めた民主党員のアダム・シフは、トランプ大統領の調査を手ぐすね引いて待っていると発言しています。シフはトランプの首根っこを掴まえる自信がありそうです。実際、ユダヤ人はアメリカの人口に占める比率は極小であるにも拘わらず、議会で最重要な委員会の5つのポストを占有しています。
①Jerrold Nadlerは司法委員会
②Eliot Engelは外交委員会
③Nita Loweyは歳出委員会
④Adam Schiffは諜報特別委員会
⑤John Yarmuthは予算委員会
アメリカの歴史の中で最もユダヤ的な大統領であるトランプが国内のユダヤ人の標的にされていることをどう説明したらいいのでしょう?たぶんこうです。ユダヤ人は非ユダヤ人社会を崩壊させることにより強い関心を抱いているのです。ユダヤ人にとって、その偏執狂的な見方では、非ユダヤ人社会は脅威です。トランプがイスラエルの中東政策(=「パレスチナ人ジェノサイド」)を全面的に支持していることなど眼中にありません。
ドナルド・トランプ以前のアメリカの大統領がこれほど完璧にイスラエルに身売りしたことは一度もありません。トランプはあのちっぽけで、取るに足らないイスラエルという国に対してそんなことをしているのです。
トランプが「偉大なアメリカを再び!」を実現することはあり得ません。アメリカをイスラエルに従属させていては無理です。
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