中露は米国による国際金融支配を終わらせようとしている
中露は米国による国際金融支配を終わらせようとしている
<記事原文 寺島先生推薦>
China & Russia are ready to end US dominance of global finance
Russian President Vladimir Putin held extensive talks with his Chinese counterpart, Xi Jinping, earlier this week, with the two world leaders agreeing on plans to establish a new shared international financial framework.
RT 2021年12月19日
グレン・ディーセン
By Glenn Diesen, Professor at the University of South-Eastern Norway and an editor at the Russia in Global Affairs journal. Follow him on Twitter @glenn_diesen.
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年1月15日

中国とロシアは新たな国際金融の骨組を樹立しようという動きを徐々に見せ始めている。それは、2008年の世界規模で起こった金融危機(訳注:別名リーマンショック)により、米国への依存過多は危険であることが判明したからだ。両国に対する米国による経済制裁が続く中、その制裁が逆に、両国が国際金融の別の骨組みを必死に模索しようとする要因となっているようだ。
米国支配下での世界の銀行取引
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米国を中心とした金融構造は巨大な力を生み出す源だ。国際間の貿易のほとんどがドル建てで行われており、支払いはSWIFT(国際銀行間金融通信協会)と呼ばれる取引団体を通じて行われている。このSWIFTという協会において米国は巨大な影響力を有している。そして資金調達については、主に米国の投資銀行から出された資金が使われ、借金利子は米国の格付機関により決定されている。さらに世界の主要なクレジットカード会社までもが米国企業だ。このような経済構造から生まれる力のおかげで、米国は帝国を維持できている。そうやって米国は多額の貿易赤字でも持ちこたえ、敵諸国のデータを集め、同盟諸国には好意的な扱いをし、敵諸国には制裁で衝撃を与えることが可能なのだ。
しかし、米国を中心とした金融構造はもはや持続可能ではない。ホワイトハウスは、改善すべき貿易不均衡を統制する術を失っている。借金は抑制が効かないほど増え続け、あちこちで見られているインフレのせいで貨幣の流通は破壊されている。さらに米国政府がその経済構造を外交政策に利用して、敵諸国に制裁を課していることが状況を悪化させている。米国の防衛戦略によると、中露2カ国は米国が照準を合わせている主要敵国であるとはっきり伝えている。そのことにより、中露両国が米国の金融構造から脱して、別の金融構造を樹立することを余儀なくさせているのだ。
ドル体制からの脱却
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ドル体制からの脱却、すなわち準備通貨や、取引通貨としてドルに依存する体制からの脱却が、いま盛んに試みられている。USドルの支配的役割は、75年以上も国際間の金融システムにおいて続けられてきた。ドルが強い通貨のままで持続できている理由として以下の3つの要因が挙げられる。①米国経済が巨大であること②インフレ率を低く抑えることにより、ドルの威力を維持できていること③金融市場が、自由で流動的であること。の3点だ。米国経済が比較的低迷している中、抑制が効かないほどのインフレ状態が生じ、さらに米国金融市場が武器として利用されている。ドルの強い役割を支えてきた基盤が急速に終息に向かっているのだ。
世界最大のエネルギー輸入国である中国と、世界最大のエネルギー輸出国であるロシアの間の金融提携は、ペトロダラーの力を弱らせる決定的な要因となった。2015年に、ロシアと中国の間の貿易のほぼ9割はドル建てで行われていたが、2020年には、ユーラシアの2大国家である両国のドル建て貿易は、約半数の46%までに減少している。さらにロシアは外貨におけるドルの割合を減らす方向で進んでいる。中露貿易におけるドル体制からの脱却の潮流は、中露以外の国々との貿易でドルを使わない潮流をも生み出している。そのような潮流が進んでいるのは、ラテンアメリカ諸国や、トルコや、イランや、インドなどだ。ここ何十年もの間、米国は世界全体に向けてドルを送り出してきたが、そろそろその波の方向が変わり、価値を失ったドルの波が自国に戻ってくる時が来ているのかもしれない。
金融制裁
世界中の銀行間の金融取引におけるSWIFT体制は、これまで国際間の支払いにおける世界で一つしかない体制だった。しかしSWIFTが果たしてきた中心的な役割が崩れ始めたのだ。それは米国がSWIFTを政治の道具に使い始めたからだ。米国はまず、イランと北朝鮮をSWIFT体制から締め出した。そして2014年には、米国はロシアに対しても締め出すことを警告し始めた。ここ数週間は、SWIFTという武器を使ったロシアに対する警告が激しさを増している。
これに対して中国はCIPS(訳注:中華人民共和国の人民元の国際銀行間決済システム)、ロシアはSPFS(訳注:ロシアの金融メッセージ転送システム)という体制を開発した。両体制ともSWIFT体制の代替となるものだ。SWIFT体制の代替としてこれらの体制と契約したヨーロッパの国々もいくつか出てきている。その目的は、米国による越権行為的な妨害を逃れ、イランとの貿易を継続するためだ。中露が新たな国際金融構造を樹立するためには、CIPSとSPFSの結合は避けられないだろう。そして両者の結合は両国以外の世界各国に広がっていくだろう。米国がロシアを閉め出せば、世界各国のSWIFT体制から脱却は加速することになるだろう。
複数の開発銀行
米国が主導しているIMF、世界銀行、アジア開発銀行は、米国が繰り出す経済政策を支える著名な機関だ。中国主導によるアジアインフラ投資銀行 (AIIB)が2015年に設立されたことは、世界の金融構造を変える大きな分岐点となった。というのも、米国の主要な同盟諸国(日本を除く)が米国からの警告を拒否して、この銀行と契約を結んだからだ。かつてBRICS開発銀行とも呼ばれた「新開発銀行」の設立は、米国主導による開発諸銀行からさらにもう一歩脱却する動きだった。「ユーラシア開発銀行」や、この先設立されるであろう「SCO(上海協力機構)開発銀行」は、米国の統制下にある開発諸銀行を終止符に向かわせるさらなるきっかけとなるだろう。
相乗効果
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さらに中露は自前の格付機関を開発し、これまで両国で支配的な地位を占めていたVISAやマスターカードの価値を下落させた。この新たな金融構造の樹立には、エネルギーの提携や、技術の提携が補完的役割を果たすことになる。第四次産業革命に向かう中、中国もロシアも米国のハイテク産業に依存する気はないからだ。さらに中露は米国支配下の通商路を使用しない方法を模索している。中国は一帯一路構想に数兆ドルを投資し、新たな大陸間通商路や海洋通商路の構築に努めている。いっぽうロシアは、似てはいるが、より控えめな通商路構想を練っている。その中には、中国と連携して、北極圏を海洋通商路にしようという構想も含まれている。これらハイテクを駆使した計画や、通商路構想に資金を出し、運営を進めていけば、望ましい相乗効果が得られ、新たな国際金融構造の樹立に向けたさらなる発展が望まれるだろう。
米国はさらなる制裁を課し、多極体制に基づく国際金融構造の樹立を妨げようとするだろう。しかし強硬な対外経済政策を維持しても、世界各国が米国から脱却しようとする流れしか作れないだろう。制裁を課しても、対象諸国はなんとか制裁から逃れようと、意地悪な権力に頼らずに生き抜く方法を学んでいくことになるだろう。敵諸国を弱化させ、孤立させようと始めた制裁措置が、結局は米国を孤立させてしまうことになるのだ。
<記事原文 寺島先生推薦>
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Russian President Vladimir Putin held extensive talks with his Chinese counterpart, Xi Jinping, earlier this week, with the two world leaders agreeing on plans to establish a new shared international financial framework.
RT 2021年12月19日
グレン・ディーセン
By Glenn Diesen, Professor at the University of South-Eastern Norway and an editor at the Russia in Global Affairs journal. Follow him on Twitter @glenn_diesen.
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年1月15日

中国とロシアは新たな国際金融の骨組を樹立しようという動きを徐々に見せ始めている。それは、2008年の世界規模で起こった金融危機(訳注:別名リーマンショック)により、米国への依存過多は危険であることが判明したからだ。両国に対する米国による経済制裁が続く中、その制裁が逆に、両国が国際金融の別の骨組みを必死に模索しようとする要因となっているようだ。
米国支配下での世界の銀行取引
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米国を中心とした金融構造は巨大な力を生み出す源だ。国際間の貿易のほとんどがドル建てで行われており、支払いはSWIFT(国際銀行間金融通信協会)と呼ばれる取引団体を通じて行われている。このSWIFTという協会において米国は巨大な影響力を有している。そして資金調達については、主に米国の投資銀行から出された資金が使われ、借金利子は米国の格付機関により決定されている。さらに世界の主要なクレジットカード会社までもが米国企業だ。このような経済構造から生まれる力のおかげで、米国は帝国を維持できている。そうやって米国は多額の貿易赤字でも持ちこたえ、敵諸国のデータを集め、同盟諸国には好意的な扱いをし、敵諸国には制裁で衝撃を与えることが可能なのだ。
しかし、米国を中心とした金融構造はもはや持続可能ではない。ホワイトハウスは、改善すべき貿易不均衡を統制する術を失っている。借金は抑制が効かないほど増え続け、あちこちで見られているインフレのせいで貨幣の流通は破壊されている。さらに米国政府がその経済構造を外交政策に利用して、敵諸国に制裁を課していることが状況を悪化させている。米国の防衛戦略によると、中露2カ国は米国が照準を合わせている主要敵国であるとはっきり伝えている。そのことにより、中露両国が米国の金融構造から脱して、別の金融構造を樹立することを余儀なくさせているのだ。
ドル体制からの脱却
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ドル体制からの脱却、すなわち準備通貨や、取引通貨としてドルに依存する体制からの脱却が、いま盛んに試みられている。USドルの支配的役割は、75年以上も国際間の金融システムにおいて続けられてきた。ドルが強い通貨のままで持続できている理由として以下の3つの要因が挙げられる。①米国経済が巨大であること②インフレ率を低く抑えることにより、ドルの威力を維持できていること③金融市場が、自由で流動的であること。の3点だ。米国経済が比較的低迷している中、抑制が効かないほどのインフレ状態が生じ、さらに米国金融市場が武器として利用されている。ドルの強い役割を支えてきた基盤が急速に終息に向かっているのだ。
世界最大のエネルギー輸入国である中国と、世界最大のエネルギー輸出国であるロシアの間の金融提携は、ペトロダラーの力を弱らせる決定的な要因となった。2015年に、ロシアと中国の間の貿易のほぼ9割はドル建てで行われていたが、2020年には、ユーラシアの2大国家である両国のドル建て貿易は、約半数の46%までに減少している。さらにロシアは外貨におけるドルの割合を減らす方向で進んでいる。中露貿易におけるドル体制からの脱却の潮流は、中露以外の国々との貿易でドルを使わない潮流をも生み出している。そのような潮流が進んでいるのは、ラテンアメリカ諸国や、トルコや、イランや、インドなどだ。ここ何十年もの間、米国は世界全体に向けてドルを送り出してきたが、そろそろその波の方向が変わり、価値を失ったドルの波が自国に戻ってくる時が来ているのかもしれない。
金融制裁
世界中の銀行間の金融取引におけるSWIFT体制は、これまで国際間の支払いにおける世界で一つしかない体制だった。しかしSWIFTが果たしてきた中心的な役割が崩れ始めたのだ。それは米国がSWIFTを政治の道具に使い始めたからだ。米国はまず、イランと北朝鮮をSWIFT体制から締め出した。そして2014年には、米国はロシアに対しても締め出すことを警告し始めた。ここ数週間は、SWIFTという武器を使ったロシアに対する警告が激しさを増している。
これに対して中国はCIPS(訳注:中華人民共和国の人民元の国際銀行間決済システム)、ロシアはSPFS(訳注:ロシアの金融メッセージ転送システム)という体制を開発した。両体制ともSWIFT体制の代替となるものだ。SWIFT体制の代替としてこれらの体制と契約したヨーロッパの国々もいくつか出てきている。その目的は、米国による越権行為的な妨害を逃れ、イランとの貿易を継続するためだ。中露が新たな国際金融構造を樹立するためには、CIPSとSPFSの結合は避けられないだろう。そして両者の結合は両国以外の世界各国に広がっていくだろう。米国がロシアを閉め出せば、世界各国のSWIFT体制から脱却は加速することになるだろう。
複数の開発銀行
米国が主導しているIMF、世界銀行、アジア開発銀行は、米国が繰り出す経済政策を支える著名な機関だ。中国主導によるアジアインフラ投資銀行 (AIIB)が2015年に設立されたことは、世界の金融構造を変える大きな分岐点となった。というのも、米国の主要な同盟諸国(日本を除く)が米国からの警告を拒否して、この銀行と契約を結んだからだ。かつてBRICS開発銀行とも呼ばれた「新開発銀行」の設立は、米国主導による開発諸銀行からさらにもう一歩脱却する動きだった。「ユーラシア開発銀行」や、この先設立されるであろう「SCO(上海協力機構)開発銀行」は、米国の統制下にある開発諸銀行を終止符に向かわせるさらなるきっかけとなるだろう。
相乗効果
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China’s Xi thanks Putin for Russian partnership in face of Western pressure
さらに中露は自前の格付機関を開発し、これまで両国で支配的な地位を占めていたVISAやマスターカードの価値を下落させた。この新たな金融構造の樹立には、エネルギーの提携や、技術の提携が補完的役割を果たすことになる。第四次産業革命に向かう中、中国もロシアも米国のハイテク産業に依存する気はないからだ。さらに中露は米国支配下の通商路を使用しない方法を模索している。中国は一帯一路構想に数兆ドルを投資し、新たな大陸間通商路や海洋通商路の構築に努めている。いっぽうロシアは、似てはいるが、より控えめな通商路構想を練っている。その中には、中国と連携して、北極圏を海洋通商路にしようという構想も含まれている。これらハイテクを駆使した計画や、通商路構想に資金を出し、運営を進めていけば、望ましい相乗効果が得られ、新たな国際金融構造の樹立に向けたさらなる発展が望まれるだろう。
米国はさらなる制裁を課し、多極体制に基づく国際金融構造の樹立を妨げようとするだろう。しかし強硬な対外経済政策を維持しても、世界各国が米国から脱却しようとする流れしか作れないだろう。制裁を課しても、対象諸国はなんとか制裁から逃れようと、意地悪な権力に頼らずに生き抜く方法を学んでいくことになるだろう。敵諸国を弱化させ、孤立させようと始めた制裁措置が、結局は米国を孤立させてしまうことになるのだ。
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