中国がイラクに進出しているが、米国のやり方とは違う
中国がイラクに進出しているが、米国のやり方とは違う
<記事原文 寺島先生推薦>
China moves in on Iraq, but not like America did
中国はイラク国内に1000校の学校の建築を行う契約をイラク政府と結んだ。それは米国が、イラクでの戦闘任務の終了を発表した直後だった。米国はこれまでイラク国民100万人の命を奪ってきた。
RT 論説面 2021年12月19日
ブランドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)

is a Prague-based American journalist, columnist and political commentator. He has a syndicated column at CGTN and is a freelance reporter for international news agencies including Xinhua News Agency. Follow him on Twitter @BradBlank_

先週イラク政府と結んだ契約のもと、中国電力建設集団は679校、シノテック社は残りの321校を建築することになった。
このニュースは、米国がイラクで果たしてきた役割がなくなった文脈の中で起こったことだ。米国はイラクでの「戦闘任務」の終了を発表したばかりだった。そして米軍は撤退することになった。撤退するのは米兵2500人程度と、同盟国の兵1000人だ。完全な撤退ではなく、イラクにおける米軍の役割が、「助言者的立場」に変わる、とのことだ。
恐らくイラクにおける両国の外交の進め方ほど、米中が他国と外交関係を結ぶやり方の違いを浮き彫りにしている事例はないだろう。
もちろん、米国側にはここに至るまで紆余曲折の経緯があったことは事実だ。2003年に米国はジョージ・W・ブッシュ元大統領のもと、イラクに侵攻した。その口実は、イラクが「大量破壊兵器」を所持しているという間違った口実だった。その口実の元、戦争を始め、結局その戦争は9年近く長引くことになった。
犠牲者数についていえば、100万人以上のイラク国民がこの戦争の最初の数年で亡くなった。さらに数え切れない人々が、住処や生活を奪われたり、怪我に苦しめられたりした。さらに米軍による女性や子どもたちに対する戦争犯罪がイラクで行われたと言われている。
米国は2011年にイラクから軍を引いたが、2014年に再度軍を入れた。その目的は、イスラム帝国(IS、かつてのISIS)に対抗することだけに限定されていた。その目的は果たされたが、米軍や同盟諸国軍によって更なる戦争犯罪が行われたと言われている。
米軍を歓迎する気持ちはとうになくなり、イラク国会は、イラク駐留の何千もの米兵たちを撤収させる決議を出した。これはイランの最高司令官ガーセム・ソレイマーニー将軍と、イラクのアブ・マフディ・アル・ムハンディス副司令官が暗殺されたことをうけてのことだった。このような米国の行為は、イラン・イラク両国に対するあからさまな戦争行為だった。
米国は、イラクの国会議員たちが出したこの決議を無視し、イラクに不法に駐留し続け、イラクに対して空爆を行うことさえした。その上、イラク民兵からの警告にも耳を貸さず、「助言者的立場」という名目で、軍の駐留を続ける構えだ。
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: Nation that has hundreds of overseas military bases says China isn’t allowed one
ジョー・バイデン大統領政権からすれば、イラクでアフガニスタンの二の舞は踏みたくないところだろう。アフガニスタンでは、米軍の撤退がタリバンを支配者として返り咲かせてしまった。
しかし、アフガニスタンとイラクを比較しても意味がない。米国の言い分は、「イラクでISの再興を防ぐ為の駐留だ」ということかもしれないが、「イラクに他国が影響力を伸ばすのを押さえ込みたい」というのが本音のところだろう。例えば、米国安全保障の専門家たちは、イラクを中東における米国の言いなり国家や、中東で最も米国に近い同盟国であると見なしている。それはイラク戦争が影響してたまたまそうなった、という見方をしてきたのだ。
ただし、米国政府筋の中枢部は、中東における中国やロシアの影響力の拡大を、望まない傾向であると見ている。中露は中東の安全保障にますます参画しており、特に中国は貿易や経済発展分野において進出を強めている中でのことだ。米国政府の中枢部は、中東を中国の台頭を抑え込むべき重要な地域であると捉えている。
しかしこのような見方自体が中国政府と米国政府のイラク国民や、中東を総体的にどう捉えるかについての質の違いを浮き彫りにするものだ。
一言でいえば、「自立支援か支配か」だ。最近のイラクの発展を、中米両国の影響から見比べれば、両国の捉え方の違いが具体的にはっきり分かる。
もちろん、西側諸国のメディアは数えきれない程の見出しを出して、各国と契約を結ぶことで中国が利益を得ようとしているという構図を強調し、このような取引は不正で、ただの機嫌取りで、中国が他国支配の際繰り出す狡いやり方だという報じ方をしている。そしてこれらの西側諸国のメディアが強く問いかけているのは、中国が支援している国々は、自国や、自国民の本当の利益のために必要なものを中国から支援してもらったことに対して「どんな代償」を支払うことになるのか、という点だ。
とはいえ、イラクを見ればこのような言説が意味をなさないことがすぐに分かる。米国は、何年もの間イラクを爆撃したことなど忘れ、イラク国民を殺害したことは問われないと思っている。どれだけイラクからその反動を受けたとしても(イラク侵攻は、人類史上人々から最も大きい抗議を受けた事件である)、米軍は今でも不当にイラクに居座っている。
反面中国は、イラクに1000校の学校を建設予定だ。そして誇張でもなんでもなく、これらの学校が子どもたちのためになるであろうことは疑いもない。イラクの子どもたちは米国による対イラク戦争で被害を蒙ってきた。その子どもたちが通っていた学校がその戦争で破壊されたこともあっただろう。
これ以上、いわゆる「中国帝国主義」と、実在する米国帝国主義の違いについて論じる必要があろうか?
<記事原文 寺島先生推薦>
China moves in on Iraq, but not like America did
中国はイラク国内に1000校の学校の建築を行う契約をイラク政府と結んだ。それは米国が、イラクでの戦闘任務の終了を発表した直後だった。米国はこれまでイラク国民100万人の命を奪ってきた。
RT 論説面 2021年12月19日
ブランドリー・ブランケンシップ(Bradley Blankenship)

is a Prague-based American journalist, columnist and political commentator. He has a syndicated column at CGTN and is a freelance reporter for international news agencies including Xinhua News Agency. Follow him on Twitter @BradBlank_

先週イラク政府と結んだ契約のもと、中国電力建設集団は679校、シノテック社は残りの321校を建築することになった。
このニュースは、米国がイラクで果たしてきた役割がなくなった文脈の中で起こったことだ。米国はイラクでの「戦闘任務」の終了を発表したばかりだった。そして米軍は撤退することになった。撤退するのは米兵2500人程度と、同盟国の兵1000人だ。完全な撤退ではなく、イラクにおける米軍の役割が、「助言者的立場」に変わる、とのことだ。
恐らくイラクにおける両国の外交の進め方ほど、米中が他国と外交関係を結ぶやり方の違いを浮き彫りにしている事例はないだろう。
PM @MAKadhimi oversees the signing of contracts with the China to build 1,000 schools in Iraq, within the framework agreement between the two governments.
— Government of Iraq - الحكومة العراقية (@IraqiGovt) December 16, 2021
The Chinese side was represented by the Vice President of Power China and the regional director of Sinotech. pic.twitter.com/XlgrsYQGXH
もちろん、米国側にはここに至るまで紆余曲折の経緯があったことは事実だ。2003年に米国はジョージ・W・ブッシュ元大統領のもと、イラクに侵攻した。その口実は、イラクが「大量破壊兵器」を所持しているという間違った口実だった。その口実の元、戦争を始め、結局その戦争は9年近く長引くことになった。
犠牲者数についていえば、100万人以上のイラク国民がこの戦争の最初の数年で亡くなった。さらに数え切れない人々が、住処や生活を奪われたり、怪我に苦しめられたりした。さらに米軍による女性や子どもたちに対する戦争犯罪がイラクで行われたと言われている。
米国は2011年にイラクから軍を引いたが、2014年に再度軍を入れた。その目的は、イスラム帝国(IS、かつてのISIS)に対抗することだけに限定されていた。その目的は果たされたが、米軍や同盟諸国軍によって更なる戦争犯罪が行われたと言われている。
米軍を歓迎する気持ちはとうになくなり、イラク国会は、イラク駐留の何千もの米兵たちを撤収させる決議を出した。これはイランの最高司令官ガーセム・ソレイマーニー将軍と、イラクのアブ・マフディ・アル・ムハンディス副司令官が暗殺されたことをうけてのことだった。このような米国の行為は、イラン・イラク両国に対するあからさまな戦争行為だった。
米国は、イラクの国会議員たちが出したこの決議を無視し、イラクに不法に駐留し続け、イラクに対して空爆を行うことさえした。その上、イラク民兵からの警告にも耳を貸さず、「助言者的立場」という名目で、軍の駐留を続ける構えだ。
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: Nation that has hundreds of overseas military bases says China isn’t allowed one
ジョー・バイデン大統領政権からすれば、イラクでアフガニスタンの二の舞は踏みたくないところだろう。アフガニスタンでは、米軍の撤退がタリバンを支配者として返り咲かせてしまった。
しかし、アフガニスタンとイラクを比較しても意味がない。米国の言い分は、「イラクでISの再興を防ぐ為の駐留だ」ということかもしれないが、「イラクに他国が影響力を伸ばすのを押さえ込みたい」というのが本音のところだろう。例えば、米国安全保障の専門家たちは、イラクを中東における米国の言いなり国家や、中東で最も米国に近い同盟国であると見なしている。それはイラク戦争が影響してたまたまそうなった、という見方をしてきたのだ。
ただし、米国政府筋の中枢部は、中東における中国やロシアの影響力の拡大を、望まない傾向であると見ている。中露は中東の安全保障にますます参画しており、特に中国は貿易や経済発展分野において進出を強めている中でのことだ。米国政府の中枢部は、中東を中国の台頭を抑え込むべき重要な地域であると捉えている。
しかしこのような見方自体が中国政府と米国政府のイラク国民や、中東を総体的にどう捉えるかについての質の違いを浮き彫りにするものだ。
一言でいえば、「自立支援か支配か」だ。最近のイラクの発展を、中米両国の影響から見比べれば、両国の捉え方の違いが具体的にはっきり分かる。
もちろん、西側諸国のメディアは数えきれない程の見出しを出して、各国と契約を結ぶことで中国が利益を得ようとしているという構図を強調し、このような取引は不正で、ただの機嫌取りで、中国が他国支配の際繰り出す狡いやり方だという報じ方をしている。そしてこれらの西側諸国のメディアが強く問いかけているのは、中国が支援している国々は、自国や、自国民の本当の利益のために必要なものを中国から支援してもらったことに対して「どんな代償」を支払うことになるのか、という点だ。
とはいえ、イラクを見ればこのような言説が意味をなさないことがすぐに分かる。米国は、何年もの間イラクを爆撃したことなど忘れ、イラク国民を殺害したことは問われないと思っている。どれだけイラクからその反動を受けたとしても(イラク侵攻は、人類史上人々から最も大きい抗議を受けた事件である)、米軍は今でも不当にイラクに居座っている。
反面中国は、イラクに1000校の学校を建設予定だ。そして誇張でもなんでもなく、これらの学校が子どもたちのためになるであろうことは疑いもない。イラクの子どもたちは米国による対イラク戦争で被害を蒙ってきた。その子どもたちが通っていた学校がその戦争で破壊されたこともあっただろう。
これ以上、いわゆる「中国帝国主義」と、実在する米国帝国主義の違いについて論じる必要があろうか?
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