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首相が代わっても、日本が国家主義や軍事主義に陥り、米国の対中戦略の一躍を嬉嬉として担うことは変わらない。

首相が代わっても、日本が国家主義や軍事主義に陥り、米国の対中戦略の一躍を嬉嬉として担うことは変わらない。

<記事原文 寺島先生推薦>

As it ditches its leader, Japan grows ever more nationalistic and militaristic as it happily joins America’s anti-China crusade


トム・ファウディ(Tom Fowdy)
is a British writer and analyst of politics and international relations with a primary focus on East Asia.

Russia Today 論説面 2021年9月3日

<記事翻訳>寺島メソッド翻訳グループ 2021年9月16日



 菅義偉の首相在任は短期で終わるだろうが、菅首相がやめても日本の対外政策が変わることは期待できない。日本政府は今後も米国のいいなりだろう。

 オリンピックは中止すべきだという世論を完全に無視し、COVID-19症例数の急増を招いた日本の菅義偉首相が、今月で自由民主党の党首から降り、首相を辞任することになった。オリンピックの主催国となることを、国際社会から名声を得る良い機会にしようとしていたのだが、その結果は日本の世論から激しい反発を受け、支持率も下げ、これまでの感染者数の記録を更新するCOVID-19のデルタ株の流行を招くことになった。

 菅首相の任期は比較的短かった。前任の安倍首相が健康状態を理由に辞任したことを受けて、首相に就任したのがほんの一年前だ。西側の民主主義国家にとっては、このような短い任期は驚きだが、前任者の例を除けば(安倍首相は首相として日本で最長の任期をつとめた)、実は日本の与党が、指導者の首を「回転ドア」方式で回すのはよくあることなのだ。これまでも首相の任期が、たった1~2年のことが多かった。

 従って菅首相の辞任が、皆が思い描いているような大幅な変化を招くことにはならないのだ。日本政府の外交政策が変わることを期待している人などいない。特に日中関係や日米関係が劇的に変化することはまず考えられない。

 指導者の首を定期的に取り替えるのは自由民主党の常套手段である、そうやって自由民主党はほぼ常時権力を手にしてきたのだ。これが日本の民主主義の成熟度が西側諸国と比べて低く見られている理由だ。以下なぜ日本の政体がそうなっているのかについて論説していく。

 第2次世界大戦後、日本が米国に降伏したのは先月で76年前になる。そのとき日本は、ドイツとは全く違うやりかたで処理された。ナチス政権が、世界から非難された人類に対する犯罪やイデオロギーの責任を同盟国から厳しく問われたのとは違い、、米国がとった政策は、東アジアでの急変する戦略構想において、大日本帝国の遺産を破壊し、日本が隣国、特に朝鮮や中国に対して行った戦争犯罪を明らかにすることには反対し、日本を元の状態に戻して、再生させることだった。

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Japan’s Yoshihide Suga declines to run for reelection as ruling party chief, paving way for his resignation as prime minister

 今の日本国家というのは、戦前とは違う新しいものではない。「政権」が変わっただけだと解すればよい。つまり日本の支配者層や影響力が戦後になって取り除かれずに、再編成されただけだったのだ。しかしそれはもちろん、米国の影響下においてのことだが。ダグラス・マッカーサーと天皇ヒロヒトの歴史的に有名なツーショットが、当時の両国関係を鮮明に表している。この写真は日本の国民に対して「今後は誰が支配者になるのか」について象徴的な啓示を行うために撮影されたのだ。天皇制は維持して良いが、天皇の上にもうひとつの従うべき権威があることを理解させるためのものだったのだ。

 新しい日本は民主主義社会になる予定だった。しかし実際のところその民主主義は政権の意図や目的と合致した民主主義、つまり米国により監視された中での民主主義だったのだ。 保守派である自由民主党が戦後まもなく政策の選択を任される主要な組織となり、1950年代には、共産党系の団体は執拗にパッシングを受けた。

 このような背景に反して、自由民主党は従来「民主主義的与党」が果たすべき役割とは違う役割を果たしてきた。その中で自由民主党は日本社会のすべての組織の中で、身の丈以上の影響力と権力を維持し、権力の座におさまるという意図をほぼ常時実現させてきた。

 1950年からたった2期 (1993年から1998年までと2009年から2012年まで)を例外として、自由民主党は事実上一党独裁体制で日本を支配してきた。それに対して野党が統一し、他国で見られるような支配者層の意図を共有する二大政党制が組めるような機能的な対抗勢力を組織する力をもつことはなかったし、急に人気を得たポピュリストに勢力を握られ、苦しむこともなかった。民主主義社会において、一つの党がこんなにも長期に渡り権力の座にとどまれたのはなぜだろうか?

 その裏の理由は、米国と緊密につながっている自由民主党が、日本の地政学的な立ち位置をうまく利用し、政策を支持する勢力を作ることに成功してきたからだ。そんなことは他の野党にはできない芸当だったのだ。そのような芸当の中には、菅首相の辞任で見られたような、国民から支持が得られないような政策を採った首相の首を「回転ドア」システムで回す芸当も含まれている。具体的な方法は?大概は中国や北朝鮮に対する恐怖心を煽ったり、韓国に対して非難の声を上げることだ。このような芸当がいつとなく繰り返され、それにより国民の愛国心を刺激して、自由民主党が掲げる強硬で保守的な政策を国民が支持する政治的な土台を整えてきたのだ。

 この手口は近年ますますやりやすくなっている。今は米中間の緊張が高まり、中国を食い止めるという日本の役割はますます重要になっており、日本が軍国主義や国家主義の色合いを強めてるからだ。日本が台湾への支援を深めていることを見れば、その状況がよくわかる。さらには、日本の最新の防衛白書の表紙に武士のイラストが使われていることも、状況が劇的に変化していることを表す一例だ。

  このような外交姿勢が日本の内政にどのような影響を与えているかを示す重要な例をあげよう。それは安部前首相が「国会解散」を宣言し、総選挙に打って出たのが2017年の北朝鮮との危機のまっただ中であったという事実だ。このとき安部前首相は、北朝鮮に対して「強く」当たることや、「日本国憲法の平和条項の改正」を訴えていた。その結果、自由民主党は大勝を収めた。このような東アジアの新しい地政学において、自由民主党は以前にもまして権力を得ている。

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 米国との緊密な関係というのが自由民主党のこのような手口には不可欠なものであり、日本の内政にこの両国の主従関係がどんな影響を与えているかを示すものだ。米国こそが、「日本政権」を温存させ、再興させた国であり、日本をアジアにおける米国の安定した地政学的旗手に変換した国なのだ。従って自由民主党は、米国の戦略目的に応じて役割を果たそうと力を入れれば、それが結局国政での利点を伸ばすことに繋がるのだ。具体的には、近隣諸国への恐怖や反感を煽るというやり方だ。

 抑えておくべき事実は、自由民主党が政権を失い、日本国民が他の勢力を与党に選んだ時期が、1990年代と、2000年代の2期だったということだ。この時期に政権交代が起こったのは、日本の経済状況が良くなかったのが理由のひとつに挙げられるが、もうひとつの理由は、その時期は米国が「テロとの戦い」を外交政策の中心に据えていた時期だったこともある。テロとの戦いは中東に焦点が置かれていて、日本は関連性が薄く、中国との友好関係を深めようとしていた時期だった。

 しかし2009年以降は、核ミサイル問題や、米中関係の悪化に伴い、北朝鮮や中国との関係が悪化し続けている。そのため自由民主党の支配者層は再び日本を支配下に収め、政権を奪取し、全力をあげて反共の熱を煽っている。これは、1960年代や、1970年代に自由民主党が行ったことと同じことだ。

 従って菅首相が去っても、日本政府が変化することをあまり期待しすぎない方がいい。間もなく新しい男性か女性が、指導者の地位につくだろうが、米国の敵国に対しては敵対し、国内に向けてはその敵国の脅威を煽ろうという自由民主党政権下の日本の基本的な外交政策は維持されるだろう。



 

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