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ドローン攻撃の真実。オバマ政権による殺戮を暴露した、我が国の「裏切り者」ダニエル・ヘイルに祝福を。

ドローン攻撃の真実を暴露した我が国の「裏切り者」に祝福を
<記事原文 寺島先生推薦>
Chris Hedges: Bless our American traitors
Russia Today
2021年7月20日
クリス・ヘッジス(Chris Hedges)
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年7月31日



 クリス・ヘッジスは、ピューリッツァー賞受賞記者であり、ロシア・トゥデイの「On Contact」という米国の対外政策や、経済状況や、米国社会における市民の自由についての週刊インタビュー番組の司会をつとめている。14冊の著書があり、そのいくつかは、ニューヨーク・タイムズのベストセラーになっている。

 ドローン攻撃の真実を暴露した我が国の賞受賞記者であり、ロシア・トゥデイの「On Contact」という米国の対外政策や、経済状況や、米国社会における市民の自由についての週刊インタビュー番組の司会をつとめている。14冊の著書があり、そのいくつかは、ニューヨーク・タイムズのベストセラーになっている。

 米軍で軍事情報分析を担当していたダニエル・ヘイルは、世界規模で行っているドローンを使った戦争において、米国が非戦闘員たちを無差別殺害していることを暴露した人物だ。 その英雄的行為のせいで、ダニエルは刑務所で10年刑期を服役中だ。それなのにこんな戦争犯罪を見過ごしている人々は、殺戮ゲームを楽しみ続けている。

 当時空軍の現役軍人で、軍事情報分析担当だったダニエル・ヘイルは、2011年10月、ニューヨークのズコッティ公園のデモ占拠運動(訳注:ウォール街を占拠せよ運動のこと)に軍服姿で参加していた。ダニエルが掲げていたプラカードには「ブラッドリー・マニングを解放せよ」と書かれていた。(当時マニングはまだ自分が性転換したことを公表していなかった)。 ヘイルの行為は良心からのものだった。制服姿の軍人でヘイルのような行為を取る勇気のある人はほとんどいないだろう。ヘイルは1週間の休暇を取ってこの公園の抗議活動に参加していた。ヘイルがその場にいた10月14日の午前6時、ニューヨークのマイケル・ブルームバーク市長が初めて公園の占拠を解こうとし始めていた。 ヘイルは何千もの抗議活動者たちと連帯して抗議活動に加わっていた。 その中には運輸関係の労働組合員や、教員たち、チームスターズという労働組合の組合員たち、通信関係職の労働組合員たちもいた。彼らが公園の周りで抗議集団を形成していた。ヘイルは警察が後退し、群衆が歓声を上げているところを目撃した。しかしヘイルの反体制的な市民活動はこのとき始まったばかりだったのだ。 

 当時ヘイルはブラッグ基地に駐留していた。その数ヶ月後、ヘイルはアフガニスタンのバグラーム空軍基地に派遣された。後に分かったことだが、ヘイルがズコッティ公園の抗議活動に参加していた時、バラク・オバマは遥か1万2千マイル離れたイエメンに ドローン攻撃の命令を下していた。そのドローン攻撃により殺されたのは、アブドゥッラフマーン・アル・アウラキ。その二週間前に既にドローにより殺害されていた強硬派宗教指導者であった米国市民アンワル・アル・アウラキの16歳の息子だった。オバマ政権の主張によれば、それはアラビア半島のアルカイダの幹部(であると間違って考えられていた)イブラヒム・アル・バンナを標的にしたものだとのことだったが、彼がその少年や他の子どもたちと共にいたため、その場にいた全ての人が殺害された、とのことだった。 この非戦闘員に対する無差別大量殺人は公になったが、このような非戦闘員を無差別に殺した事件は何千も起こっており、それはヘイルなど最高級の内部機密を知る要員だけが承知している事実だった。

 2013年から民間の契約社員として働き始めていたヘイルは、ドローン攻撃計画についての17件の機密文書を綿密な調査をする記者であるジェレミー・スカヒル氏に漏洩した。なおこの記者の名前は裁判の文書では明らかにされていない。2015年10月15日にインターセプト紙が
発表したその漏洩文書によれば、2012年1月から2013年2月までの間で米国特別空爆攻撃により200名以上の人が殺害されたとのことだった。その中のたった35名が意図されていた標的だった。その文書によれば、或る5ヶ月の攻撃計画においては、空爆で殺害された人のほぼ9割が意図されていた標的ではなかったことが分かった。多くの場合、ただそこにいただけの一般市民たちの死は「攻撃の中で殺害された敵である」として秘密裏に処理されることが常だった。

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’US home-made drones are inferior and cost more than the Chinese ones they’ve replaced... and that spells trouble for Bidenh

 ヘイルは3月31日にバイデン政権の米国司法省により、スパイ活動法違反により有罪であることを認めることを強制された。このスパイ活動法は、1917年に敵国に国家機密情報を渡した者を罰するために制定された法律だ。ヘイルは司法取引の一部として、「国家機密情報を保持し譲渡した」ことと、記者に11件の機密文書を漏洩したことを認めた。ヘイルはバージニア州のアレクサンドリア成人拘束センターで身柄を拘束されており、7月27日の判決を待っている。ヘイルが司法取引を拒絶しておれば、50年の刑期を受けていた可能性がある。今彼は禁錮10年を求刑されている。

 悲しいことにヘイルに関する裁判は、受けるに相応しい関心を得られていない。「ドローンによる殺害を禁止する会」のニック・モッタンは、同調している画家にワシントンDCのダウンタウンにある壁にヘイルの似顔絵を描いてもらったのだが、モッタンが話しかけた街の人々が、ヘイルの置かれている厳しい状況についてだれも知らなかったこと気づいた。 ACLUやPENといった著名な人権団体は、概して沈黙を保ち、ヘイルの件と関わらないようにしているようだ。 「ダニエル・ヘイルと共に」という団体は、バイデン大統領にヘイルを恩赦し、内部告発者をスパイ活動法をもとに罰することをやめるよう求めている。さらに判事にたくさんの書簡を送り、寛大な措置を採るよう嘆願するという取組も行ってきた。そしてヘイルの裁判費用のための寄付も集めている。

 「ダニエル・ヘイルは最も重要な内部告発者のひとりです」と、エドワード・スノーデンは、 マサチューセッツ大学アマースト校で5月1日に開かれた「米防衛省文書の開示50周年記念行事(訳注:1971年にダニエル・エルスバーグ記者がニューヨーク・タイムズにベトナム戦争に関する防衛省の文書の記事を出したことを指す)」の一環として行われたウェブ会議で語った。「ヘイルはすべてを犠牲にしました。本当に信じられないくらい勇敢な人物です。ヘイルは私たちにドローン攻撃についての真実を伝えてくれました。ご存知の通り、誰もがドローン攻撃の標的になりうることは明白なのです。それなのに政府は、様々な方法を用いてその事実を否定してきました。でもそうなのです。実際に起こっていることなのです。或る5ヶ月のドローン攻撃計画において犠牲になった方々の9割が罪のない人々であり、ただそばにいただけの人々であり、ドローン攻撃の標的ではなかった人々だったのです。こんな事実を掴むことはできなかったでしょうし、証明することもできなかったでしょう。ダニエル・ヘイルからの告発がなかったとしたら」

 数週間前に行われた「デモクラシー・ナウ」の司会者エイミー・グッドマンとのインタビューに答えて、ダニエル・エルスバーグは、ヘイルが「尊敬に値する行為を行いました。こんなことを今まで行った公務員はほとんどいません。市民活動行為の一つとして、自分の身を犠牲にして、自国政府の犯罪行為や誤った行為を告発し、抗い、内部告発してくれました」と答えて居る。

 ヘイルが起訴されているのは、スパイ活動法のためであるので、他の内部告発者たち(具体的には、チェルー・マニングやジェフリー・スターリングやトーマス・ドレイクやジョン・キリアコウ)と同様に、ヘイルも2年半刑務所に入っている。その理由は米国の秘密軍事施設で日常的に行われている残虐行為を暴露したからだ。従ってヘイルはなぜ内部告発したのかの理由や、裁判に対してどんな意図を持っているかについて説明することを許されていなかった。 さらには裁判で、子どもを含む多数の非戦闘員たちがドローンによる暗殺攻撃のせいで殺傷されたことについての証拠を提示することもできなかった。ヘイルは、バージニア州東地方裁判所で判決を受けたが、この裁判所があるのは、住民の多くが軍のインテリジェンス機関と関わりを持つ地域であり、政府側に立った厳しい判決を下すことで悪名高い裁判所だ。

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Armed drone intercepted near US Embassy in Baghdad after rockets hit base housing American troops (PHOTOS, VIDEOS)

 「Stanford International Human Rights and Conflict Resolution Clinic(スタンフォード国際人権及び紛争解決協会)」が2012年に出した「ドローン下での生活」という報告は、パキスタンにおけるドローン攻撃が人々にどのような影響を与えるかについて詳しく伝える文書を提示している。それによると、ドローンはヘルファイアミサイルを発射することが多いが、そのミサイルには約9kgの爆発装置のついた弾頭が装備されている。ヘルファイアミサイルにはR9Xという名で知られている内部に弾頭を持つ異種ミサイルがあると、ニューヨーク・タイムズは報じている。この異種ミサイルは、爆発させるのではなく、45kgの金属を発射するミサイルだ。 このミサイルのもうひとつの特徴に、「内部に6本の長剣が隠されている」ことがある。この長剣により、「ミサイルの進路上にあるいかなるものも数秒で切り刻んでしまう」ことが可能だという。もちろん人間を切り刻むことも。

 米国のドローンによる一般市民の死者数は、何万とは言わずとも、何千もの数になる。例えば、独立系記者の組織であるBureau of Investigative Journalism (TBIJ:調査を求める記者の会)の報告によれば、2004年6月から2012年の6月中旬までに、ドローン攻撃によりパキスタンでは、2562人~3325人が殺害されたとのことだ。 そのうち474人~881人が一般市民であり、子どもも含まれていたとのことだ。

 ドローンは毎日24時間、イラク、ソマリア、イエメン、アフガニスタン、パキスタン、シリアの上空を舞っている。なんの警告もなしに、ドローン攻撃は、遥か彼方のネバダ州の空軍基地からのリモコン操作で実行される。 その発射命令のせいで、家や乗り物を破壊し、現地の地域住民や、地域の集会や葬式や婚礼で集まっている人々の命を奪う。ドローンのリモコン操作を担当していた若い軍人の発言が漏洩している。それによれば、その軍人はドローン攻撃による殺害行為を、まるで強化されたテレビゲームでもしているかのように考えて、自分が犯している無差別殺人行為を冷淡に捉えていることがわかる。ドローン攻撃を操作していた軍人は、ドローン攻撃による子どもの被害者のことを「食べきりサイズのテロリスト」と呼んでいたようだ。

 「アリを踏みつけてしまっても気にならないでしょう?」空軍で以前ドローン操作を担当していたマイケル・ハスがガーディアン紙の取材でこう語っている。「ドローンの標的のことをそう思えるように訓練させられるのです。画面上のただの黒いしみでしかないように。こんな精神的訓練を受ければ、自分が果たすべき仕事を完遂しやすくなり始めます。奴らは殺されて仕方ないんだ、それは彼らが悪いんだ、と思わされるのです。毎日仕事をやりきるために、自分の心の中にある良心を押し殺さなければならなかったのです。そして、“お前のやっていることはおかしい”という良心から発せられる声を無視しなければならなかったのです」

 上空のあちこちで四六時中ドローンが飛んでいて、いつそのドローンに自分や家族が殺されるか分からないという状況下では、無力感や不安や常に恐怖と隣り合わせという精神状態になってしまっておかしくない。

 2012年のパキスタンでのドローン戦争に関する報告にはこうある。「ドローンが常に存在することで、男性も女性も子どもたちも常に恐怖にさらされ、地域で、不安や精神的なトラウマが醸成される。ドローンの存在下で生活するということは常に、死を招くドローン攻撃がいつ発生してもおかしくないという心配を抱え、自分が自分を守れないという無力感に苛まれ続けることになる。このような恐怖は人間の行動に影響を与える。米国は同じ地域を数回攻撃する作戦をとり、かつて救助隊員もドローンにより殺害されたという証拠があるため、地域住民も人道支援家たちも、負傷した被害者を救助することを恐れたり躊躇したりしている。地域住民の中には、団体で集まる機会をなくそうとしているものもいる。部族の重要な紛争解決についての話し合いであっても、だ。それはドローン攻撃の標的になることを恐れてのことだ。 子どもたちを家から出さないようにしている親もいる。ドローン攻撃をうけて傷を負ったり、精神的な打撃を受けた子どもたちを学校に行かせない親も出てきている」

 ドローンは死を無作為に引き起こす殺人兵器になってしまった。ドローン攻撃から、運良く生き残れたとしても、死ぬまで障害を持つことになるのが普通だ。

 「ドローンから発射されたミサイルは様々な方法で人を殺傷できる。例えば焼却や、爆弾の破裂や、内部器官を破壊できる爆風などだ」 とその報告にはある。 「ドローン攻撃から生き残れた人々も、原形をとどめないくらいのひどい火傷や、爆弾の破片による負傷や、手足の切断などの被害に遭う。視覚や聴覚を喪失することもある」

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‘’US forces come under ‘indirect’ rocket attack near occupied gas field in Syria

 現在33歳のヘイルは、戦争について常に疑念を持っていた。しかしオバマが政権をとることになった2009年に入隊した。ヘイルは、オバマがブッシュ政権が行ってきたやり過ぎで不法な政策を取りやめることを期待していた。しかし、政権を取って数週間後に、オバマはアフガニスタンの駐留軍を1万7千人増やすことを承認した。アフガニスタンは3万2千人の米軍と、3万2千人のNATO軍が駐留していたのに、だ。その年の終わりまでには、オバマはさらにアフガニスタン駐留軍の規模を3万人拡大させ、米軍の死傷者数は2倍に膨れ上がった。さらにオバマはドローン計画を大幅に拡大させ、ドローン攻撃を行った回数を、オバマが大統領になる前年よりも何十回も増やし、就任二年目までに117回ものドローン攻撃を行った。大統領職を去るまでにオバマは、少なくとも3千人の過激派と思われていた人や、何百もの一般市民の殺害を命じている。さらにオバマは「署名攻撃」という名で知られている攻撃を許可した。これはCIAが、身元確認をきちんと行わなくとも、過激派と思われる人々に対して、ドローン攻撃を実行することを許可するものだ。オバマはドローン戦争の足場を広げ、サウジアラビアやトルコなど海外にドローン基地を設置し、シリアやイエメンに対する攻撃を強めようとした。さらにオバマ政権は、スパイ活動法違反として8人の内部告発者を起訴したが、これはそれ以前の政権が起訴した総人数を超える数だった。トランプやオバマ政権と同様、バイデン政権も世界規模にドローン攻撃を拡大しようという姿勢を継続している。

 「軍に入隊する前から、ハッキリと分かっていました。自分が入ろうとしている所は、私が反対していて、決して同意できないところだと」。ヘイルは2016年のドキュメンタリー映画『ナショナル・バード』の中で こう語っていた。「私が入隊したのはやけくそな気持ちからでした。私はホームレスでした。私は絶望していたのです。ほかにどこにも行き場がなかったのです。軍に入ることが最後の砦でした。空軍は私を受け入れる準備がいつでもできていました」

 そのドキュメンタリー映画の中で、ヘイルは自身の複雑で恵まれなかった子ども時代について触れている。

 以下は映画でのヘイルの発言だ。「面白いことでもあり、少し皮肉っぽい事実なのですが、私は一族の中で唯一”塀の中”に入ったことのない成人男性でした。今のところはですが。私の家系は、長く服役者の一族なのです。「ろくでなし」の伝統がひきつがれているというか・・。酔っ払い運転はするし、ヤクは売るし、携帯してはいけないところで銃を携帯しているし、いつでもどこでも悪さを働く。うちの家系はそんな人だらけでした」

 ヘイルはフォート・ブラッグ基地統合特殊作戦コマンドの任務が課され、言語と諜報活動の訓練を受けた。ヘイルはアフガニスタンの米国国家安全保障局で、軍事機密分析活動の仕事を任され、ドローン計画の標的の身元確認を行っていた。ヘイルは. 機密(機密)コンパートメント情報(TS/SCI) の機密取り扱い者として認められていたので、一般市民の目には届かないような大規模で世界的なドローン計画や、オバマ政権が所持していた大規模な秘密の「殺人者リスト」を目にすることができていた。

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Russia unveils new deadly attack drone variant, as military-industrial chief says country to become major player in export market

 「そのようなリストはいくつか存在し、様々な理由により個人を標的にするために使用されていた」と、ヘイルは『なぜ私が監視リスト文書を暴露したのか』というエッセイで記述している。このエッセイはもともと、ジャーミー・スカヒルとインターセプト紙のスタッフによる『複雑な暗殺:政府による秘密のドローン戦争の内側』という著書に入っていたのだが、その時は筆者は匿名だった。 この著書は、ヘイルが暴露した文書に基づいて書かれたもので、 インターセプト社から出版された『ドローン文書』という8部構成の第一弾として出版されたものだ。

 ヘイルはそのエッセイでこう記述している。「厳重に保管されているリストもあれば、複数の諜報員や地方警官に回されているリストもあった。”高い値打ちがある”と思われていた標的を殺害したり確保したりするために使われているリストもあるし、脅したり、押さえつけたり、ただその人の行動を監視することが目的だけの人々が載せられたリストもある。 しかし殺すためのものであろうと、黙らせるためのものであろうと、すべてのリストは、テロリストアイデンティティデータマート環境(TIDE)から得られたものであり、その情報は国家テロ対策センター内のテロリスト監視センターで保管されている。TIDEが存在することは公表されているが、TIDEが政府においてどんな機能を果たすかという詳細については、一般市民にはまったく知らされていない。2013年8月にこのデータベースに登録されている人の数が100万人の大台を突破した。現在はさらに登録者は何千人も増えている。これは2003年に開始されて以来、最も速いペースだ」

 ヘイルの記載によれば、テロリスト監視センターが控えているのは、標的になりそうな人々の名前や生年月日などの個人情報だけではないそうだ。「病気の治療記録、戸籍抄本、パスポートの内容、車のナンバー、メールアドレス、携帯の電話番号(国際加入者識別番号や、 国際モバイル機器ID番号も含む)、銀行通帳の番号、購買記録などの詳細な個人情報、さらにはDNAや顔認証ソフトで画面認証ができる精度の顔写真など」も控えられているそうだ。

 容疑者のデータは「ファイブ・アイズ」という名で知られているオーストラリア・カナダ・ニュージーランド・米国・英国の5国で形成されている機密情報ネットワークにより収集され保管されている。リストに載せられている容疑者にはそれぞれTPNとも呼ばれる、TIDEの個人番号が付けられている。

 「オサマ・ビン・ラディン(個人番号は1063599)も、アンワル・アル・アウラキの息子アブドゥルラフマン・アル=アウラキ (個人番号は26350617)も、秘密工作の標的になった人物なら誰でもまずはTPNによる番号が付けられ。その番号に従って全工作員から密に監視される。そのような経過を経てから、容疑者は最終的に個別のリストに記載され、裁判の手続きを経ずに死刑執行される」とヘイルは記載していた。

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Rockets and mortars fired at US base in Syria, reportedly in reprisal for airstrikes against Shia militia

 ヘイルがさらに暴露したのは、TIDEのデータベースに記載されている100万以上の人々の中には2万1千人の米国民も含まれている、という事実だ。

 2013年7月に空軍をやめたのち、ヘイルは2013年12月から2014年8月までの間、民間の防衛関連企業である国家地球空間情報局で地政学分析者として働いていた。彼によれば、年収8万ドルのその仕事を選んだ理由は、大学にいくために金がどうしても必要だったからだそうだ。しかしそのころにはヘイルはドローン計画に嫌気がさしており、ドローン攻撃の残忍さと無法さを世間に知らせようと決意していた。平和活動家のディビッド・デリンジャーに触発され、ヘイルはデリンジャーと同様「米国人としての生き方や死に方」に対する裏切り者になる道を選んだ。ヘイルは自分がドローン攻撃による殺害に共犯したことを悔い改め、身の安全と自由を犠牲にするつもりだった。

 ヘイルは映画の中でこう語っている。「大統領が国民の前に立って、”一般市民の犠牲者を一人も出さないことを確認しながらすべての行動を行っています”という時は、そうとしか言えないからそう言っているだけです。標的となっている人物を殺すためにある行動を起こすときは常に、ある程度の試行錯誤が必要となります。或る命令が下された後でないと、実際どれほどの損害を与えられたかがわからないのです。よくあることですが、統合特殊作戦コマンドや、CIAもそうですが、諜報機関が当てにしている情報は、後からくる情報なのです。誰を標的にしていて、その攻撃で誰が死んだのか。あるいは、その攻撃で殺すことができなかったのか、その情報を当てにしているのです」

 ヘイルはさらにこう語っている。「ドローンやドローンの使用法を守ろうとしている人々はこう言います。“ドローンは米国民の命を危険な状態にさらすことなく守ってくれているのだ”と。しかしドローン攻撃の本当の姿は、政策決定者に力を与えているだけです。というのもドローン攻撃は、脅迫なしで、即座に実行できるからです。ドローンならできます。ドローンなら、米国にとって危険な人物になる可能性があって、心から消したいと思っている人物を殺すことができます。 しかしその標的を殺すことができなかったり、その攻撃で関係者を殺してしまったりしても、その後はありません。高い価値をもつ標的であれば、その標的1人を一度で殺害するのが目的になるのですが、その攻撃で殺されてしまったその標的以外の人々は、その標的の関係者ということにされてしまいます。従ってカメラのフレームに写っている全ての人が、入隊できる年齢層、つまり16歳かそれ以上の人だと思われる人であると特定されるならば、その人々は決められた契約下では妥当な標的と見なされます。その攻撃により、そこにいたすべての人を殺害したのであれば、”全員片付けた”とだけ言うのです」

 ヘイルは警告している。「ドローンは、リモコンによる殺害をあまりにも容易に、あまりにも手軽にやり遂げてしまう武器です」と。

 2014年の8月8日、FBIがヘイルの自宅にいきなり侵入してきた。それはヘイルが勤めていた民間会社での仕事をやめる日だった。ヘイルがドアを開けると、FBIの男性職員と女性職員がヘイルの眼前にバッヂを突き出していた。

 「その直後に2人の背後から20人の職員が現われました。ほぼ全員が銃を構え、戦闘服を身につけていました」とヘイルはドキュメンタリー映画の中で語っている。「その時は本当に怖かったです。何が起こっているのか理解できませんでした。総勢少なくとも30名から50名の工作員たちがいた可能性がありました。その工作員たちが、夜に家の中や外の色々な場所に立って、全ての部屋や、とにかく全てのもの写真を撮ったり、色々なものを探し回っていました」

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‘’‘’‘Blatant violation of sovereignty’: Iraqi PM, military condemn US airstrikes on its soil against ‘Iran-backed’ militia groups

 家宅捜査を終えるまでには、ヘイルの家の電化製品は、携帯電話も含めてすべて没収されていた。

 その後の5年間、ヘイルは自分の人生がとうなるか不安でいっぱいの生活を送っていた。仕事を探すのに苦労し、不況と戦い、自殺未遂もした。ヘイルは自分の苦境のことを人に話すことが法律で禁じられていた。それは心療内科の相談員に対してもだった。2019年にトランプ政権は、ヘイルをスパイ活動法に関する4件の違反行為と、政府の所有物を盗んだ1件の行為で起訴した。

 ドローン攻撃により暗殺が実行された何千もの人々は、米国が宣戦布告していない国の人たちであることが多い。これは国際法から大きく逸脱している行為だ。ドローン攻撃は、世界の大部分を我々の敵に変えてしまっている。米国市民も含まれている秘密の暗殺者リストが、行政機関を、裁判官や、陪審員や、死刑執行人に変更できることにしている。正当な手続きを経る権利は踏みにじられている。このような殺害を行ったものに説明責任はない。ヘイルは自分の仕事と自由を犠牲にして、私たちに警告してくれたのだ。ヘイルが国にとっての脅威ではない。私たちが直面する脅威は、秘密のドローン計画がもたらすものだ。ドローン計画は収拾がつかなくなっており、不吉なことに米国警察もドローンを採用している。確認を怠れば、他人に向けたテロ行為はすぐに自分の元に返ってくるのだ。


本記事の初出は、サイトScheerpostのこちらの記事。


 


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