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西側は新疆問題だけ取り立てて厳しく批判するが、パレスチナ人に対する虐殺には全く目を向けない

<記事原文 寺島先生推薦>
The West pushes the Xinjiang issue hard and selectively, while ignoring the sustained slaughter of Palestinians

トム・ファウディ(Tom Fowdy)著

is a British writer and analyst of politics and international relations with a primary focus on East Asia.

 
Russia Today 論説面

 2021年5月14日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2021年6月8日



 「中国でイスラム教徒はひどい扱いを受けているらしい。ひどい人権侵害行為だ。やめさせなくては」
「でもガザでも、イスラム教徒は爆撃を受け、殺害され、家から追い出されているよ?」
「いやいや、彼らは反イスラエルのテロリストなのだ」

 ガザが燃やされ続けている。そしてパレスチナ人たちの家が墓場になっている。西側諸国のイスラム教徒に対する偽善の二面性は、いつまでも汚いままだ。


ALSO ON RT. COM

Israeli settlers attack Palestinians, steal land with impunity. Imagine outrage & calls for sanctions if any other state did it

 驚くことではないが、死者数はうなぎ登りに上がっているのに、イスラエルの軍事行動に対する西側からの糾弾の声は全く上がってこない。米国はこの件に関して国連安保理決議に反対し、アントニー・ジョン・ブリンケン米国務長官は、何のためらいもなく、イスラム教の祝祭である「イード祭」を祝福するツイートを残している。

 イスラエルに対しては糾弾がない中で、5月13日、大手メディアや、米国関連の機関がこぞってあからさまに中国の新疆自治区の問題を取り上げていた。

 いくつかの記事が意図的に発表された。具体的には、「全米民主主義基金に支援されたウイグル族人権プロジェクト」という機関が、イスラム教の指導者を投獄したというでっち上げ事件で中国を非難したり、米国と軍事産業が支援している「オーストラリア戦略政策協会」が、モスクを破壊したとして、中国を非難した。それと同時に、米国とその同盟国は、国連で、中国に非難の声を浴びせ、ブリンケン国務大臣は、新疆のことを「屋外刑務所」呼ばわりしていた。

 西側は、新疆問題を厳しく、とりたてて取り上げている。その一方で、パレスチナに関する長期にわたる残虐行為については無視したままだ。西側は、なぜ多くのイスラム教の国々が、この件に関して中国政府に支援の手を差し出し、西側の言い分を聞こうとしないかについて不思議に思っている。その答えは、イスラエルとパレスチナ間の紛争が(パレスチナの周囲で起こっている西側が支援しているほかの紛争でも同じ事だが)、イスラム世界と、米国とその同盟国の間で、いつの間にか、地政学上の不信感を生んできた主要な楔(くさび)になっているからだ。

 これらイスラム世界の国々には、米国が行う人権に関する言説を真剣に聞き入れる理由が全くない。というのも、米国は中東において破壊行為を行ってきたからであり、中国とは外部の干渉から「自国の主権」を守るという共通の利益を共有できるからだ。

 西側は自国民に対しては、博愛や真摯な善意として自分たちのイメージを植え付けている。そうでもしないと、帝国主義の長い歴史を隠したり、書き直したりできないからだが、とにかく、西側は世界を良くし、世界の正義のために力を尽くしているというイメージを市民に植え付けている。西側の理論では、「道徳的に正しい」とされることが、「政治的な真実」を構成するものと重なり合わされている。 そのため、人権という概念が、政治的意図や、よこしまな企みや、経済力や、有害な意思によってもたらされた可能性のある考えによって、利用されていることに疑念を持つ市民はほとんどいない。この偽善にまっすぐ向き合えば、「冒涜者」という烙印が押される。こうして、「普遍的な人権」とされているものが、全く普遍的ではないという状況が起こるのだ。

 


 グローバル・サウス、特に中東の国々はこの偽善を認識している。経験から、人権という概念は、西側諸国が自分たちを支配するための戦略や、軍の目的を前に進める口実に使っていることを、これらの国々はわかっている。それは、これらの国々の人々の自由や、生活の質の向上に向かって本当に努力するということとは逆の方向だ。従って、西側にとって都合が悪ければは、イスラエルとパレスチナ間の紛争のような、イスラム世界にひどい苦痛を与える問題も普通に無視される。これが1948年の第一次中東戦争以来、中東の国々が西側に対して反感をもつ意識や考え方の基盤になっている。
 
 この地域では、西側による介入がこれまで何度もあった。そのほとんどは、1991年から2012年の間に行われた。その理由に使われたのが「人権」だった。介入が行われたのは、イラクと、リビアと、シリアだ。シリアのことについていえば、西側はバサール・アル・アサド大統領が、10年間の内戦で、市民を殺害したことを糾弾し、アサド大統領の退陣を要求してきた。しかし一方で、西側はイスラエルによるパレスチナ人の長年にわたる殺害については、承認し続け、イスラエルが占領地域において領土を拡張しようという政策や、多くの近隣諸国に対してもとどまることを知らない拡張欲を示すことを可能にしている。そして西側は、70年間にわたるイスラエルと中東諸国との衝突を解決できずにいる。

 さあ、あなたがイスラム教国家だとしたら、米国とその同盟国を信じるだろうか?突然彼らが、「残虐行為だ!!」、「大虐殺だ!!」と騒ぎ立て、「新疆のイスラム教徒の少数民族の権利を守るために立ち上がろう」などと言い始めたとしても。こんなことを心から信じるイスラム教国家など存在するだろうか?

 戦争や爆撃で中東の国々を破壊してきたまさにその国々が、穏健な言い方でさえイスラエルを批判することを拒んできたまさにその国々が、今になって「イスラム教徒の保護者」ヅラをするというのか?イスラム教諸国家が、西側諸国の「中国非難合唱団」に参加せず、中国の政策を支持することに何の不思議もない。イスラム教諸国が、中国が無神論政策を取っていることや、共産主義国家であることに反対していたとしても、新疆問題に関して、共通の利益となる非常に重要な点がひとつある。 それは、「国家主権を守ること」だ。
 


 新疆で何が起こっているかについてどう考えているかに関わらず、イスラム教諸国の多くは、かつて列強の植民地であった国々であり、過去も今もずっと西側からの介入に苦しんでいる。だからこそ、中国政府が基本としている政策である「内政不干渉」主義や、「西側の介入から自国の主権を守る」ことを重視した政策は、これらのイスラム教諸国には、魅力的で筋が通った解決法に映るのだ。 そんなイスラム教諸国が、「新疆問題追求車両」に乗り込んで、「西側は人権問題を口実にして他国を非難しても許される」などと主張するわけがない。そんなことをしてなんの意味があろうか?

 イスラム教諸国が新疆問題に関して中国を支持することには無数の理由があるが、逆に西側を信頼する理由など全くないし、米国や、英国などの国々が、この件に関する非難の声を上げているのは、政治的な目的に過ぎず、イスラム教徒たちのより良い方向を真摯に心配しているからでは全くないことを彼らは分かっている。

ALSO ON RT.COM

The accusation of Uighur genocide is Pompeo’s last-gasp attempt to morally nuke China, but he’s unlikely to find many backers

 
 ガザの建物が破壊され、人々が殺戮されている。この現状に対して沈黙することや、無関心を貫くことは、西側が「人権」についての懸念を大声で叫ぶことばよりも実は雄弁だ。最後にわかりやすいまとめでこの記事を終えたい。

「パレスチナ問題については、イスラム教諸国が怒っているが、西側の支配者たちは無視している。新疆問題については、米国が率いる同盟諸国が怒っていて、イスラム教徒たちにも西側の言い分を支持し、一緒に怒って欲しいと必死に思っている。でもその気持ちはイスラム教徒には無視されている」

 





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