テキサスの寒波による危機が改めて示した、米国政府は自国民を守れないし、守る気もないという事実
<記事原文 寺島先生推薦>
The Texas crisis has again shown how America is both unable and unprepared to protect its own people
RT 論説欄
2021年2月19日
トム・ファウディ(Tom Fowdy)著

Tom Fowdy is a British writer and analyst of politics and international relations with a primary focus on East Asia.
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年3月26日

米国の貧弱なインフラが、今週再び脚光を浴びることになった。テキサス州で大規模な停電が起こったのだ。これは、米国政府が国民の福祉にお金を回さないで、爆弾の購入にお金を回していることから来る当然の帰結だ。
想定外の大寒波が襲来したテキサス州は、前代未聞の危機に直面している。氷点下の寒波に襲われ、テキサス州の多くの地域で電気や水の供給が数日間止まってしまった。そして食料輸送網も厳しい状況に置かれた。最近の記事によれば24名の犠牲者が出ている。
食料品列や、店内の空っぽの棚の映像は、社会主義国家であるという理由で米国が制裁を科し、長年嘲笑の対象にしてきた国々の様子とよく似ている。しかし、テキサス州は氷を溶かそうと苦労しているが、凍っているのは町並みだけではないのだ。米国政府からの反応も凍っているのだ。連邦政府や議会はどんな対策をしているというのか?何もしていない。
ほぼ50万人の命を奪うと言われているCovid-19パンデミック下の米国には、自国領内の災害に適切に対応できる力をほぼなくしてしまっているようだ。軍隊や兵器を世界中に配置している米国のこのような失態はとんでもないことだ。しかしこの二つの要因はまったく偶然の一致ではない。このような米国の国家運営のまずさは、何も新しいものではない。これは実際、米国の政策や社会体制の根本的な一面なのだ。米国の政策や、社会体制は、まるで信心深く、自由市場を公共の福祉よりも優先するのだ。そして軍や爆弾に対する関心は、一般市民に対する関心よりも勝るのだ。
つまり最終的には、米国のインフラ基盤は限られたものであり、貧弱な状態におかれることになるのだ。だから今回テキサス州でみられたような問題に直面した際に、米国政府がその問題に対処しようとする意思や能力が不足しているという事実は、驚くべきことではないのだ。
「大きな政府は良くない」というのが、米国の多くの政治家たちの決まり文句になってきた。米国においては、政府が経済や社会福祉のすべての分野に介入することは、しばしば問題であると見なされている。というのも、そのような介入の出費をまかなうには税金を高くする必要があるからだ。それが、効率的ではないという感覚を生み出し、「個人の自由」を阻害すると思われてきたからだ。
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Texas freeze exposes cold, dark heart of America in which EVERYTHING is now political
もうひとつほとんど宗教的に信じられていることは、自由市場経済は美徳であるという信念だ。そして、自由市場経済は、国家よりもうまく人々の要求を自然に解決してくれる要因となるという信念だ。そしてこんな信念を信奉している人々こそが、公共インフラにおける政府が主導する開発には団結して激しく反対してきたのだ。そしてそれは特に、「社会化医療」として軽んじられている医療分野においてのことであった。だから例えば、オバマケアのような健康保険計画ひとつだけでも、大きな議論を生んできたのだ。
その結果、米国内に存在するインフラはたいてい「利益を生む」ために運営されているのだ。お金にならないといけないという縛りが社会全体の利益よりも優先され、不均衡を生むことになっている。利益を生むことが、可能な限り多くの人々に最大限奉仕することよりも大事だと思われているのだ。
病院がその良い例だ。病院の数は余るほどありそうなのだが、実際の所はほとんどが私立病院であり効果的な医療を受ける費用は天文学的数字になる。同様に、米国の高速鉄道網が貧弱なままである理由は、政府が鉄道関連業に支出しようとすることも、政治的な制約を受けるからだ。輸送業における 「利益を得るため」という哲学のせいで、自動車業界や航空業界が優先されているからだ。
つまり、米国政府は公共福祉を行っており、計画も持っているのだが、運用上においては、それらは不完全で、穴だらけの状態であることが多いのだ。もちろん、お金持ちは別だが。
このような状況こそテキサス州の危機が起こった理由だ。テキサス州が通常温暖である地域であり、こんな激しい天候に見舞われることが予想できなかったという事実はあるが、指摘すべきことは、米国のエネルギー基盤も民営化されているという事実だ。つまりは、「利潤追求」のための企業により運営されているのだ。企業というのは、お金儲けを優先させるものであり、高い品質のインフラ整備を行うことには否定的である。そして、そのようなインフラ整備は必要最小限に抑えられ、利潤を得ることが最優先されるのだ。こうして、悪天候に一度見舞われただけでも、社会全体が壊滅状態になってしまうのだ。
さて、この現状に対して政府はどう対応しただろうか。何もしていない。しかしこんなことは初めてのことではない。こんなことはずっと米国で起こってきたことなのだ。国民の公共の福祉に利するようなシステムにはなっていないのだ。2005年にニューオーリンズで起こったハリケーン・カトリーナ災害の際も、まったく同じようなものだったのだ。
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Dear US media, we don't need Russia to attack our power grid, we're perfectly capable of tanking it ourselves...just look at Texas
それでもまだ、米国政府は大規模にインフラ整備を行うことに前向きではない。ニューディール政策が採られていた時代ははるか遠くになってしまった。しかし、これは間違いのない事実であり、どちらの政権でも変わらないことなのだが、例年米国の軍事費は1兆ドルを超過している。米国国防授権法は、米国政府にとって犯さざるべき存在なのだ。では医療やインフラ面はどうなのだろう?医療やインフラは政府にとっては聞きたくない言葉なのだ。政治の世界には項目による優先順位は確実に存在する。医療やインフラは、優先事項ではないのだ。
この現状が、米国と中国との厳しい対比を鮮明にしているのだ。中国は、国家が常時積極的にインフラに資金を投入している。その理由は、インフラに投資すれば、公共の福祉が向上し、経済発展につながるからだ。その結果、40年前は発展途上国であり、貧困に苦しんでいた中国であったのに、今は交通輸送網や公共インフラの状況は米国を凌駕している。
ジョー・バイデンはこの状況を認識しているようで、中国のインフラ面に関する支出について、こんなことを語っている。「中国は我々のおかげで食べていけているのだ」。この言葉から分かることは、バイデン新政権は、米国が中国に遅れをとっていることを認めており、米国がインフラ整備にかけるお金を増やしたいと思っている、ということだ。
問題は、「どうやって増やすか?」だ。言うは易く、行うは難し。テキサス州での出来事とCovid-19危機、両者が明らかにしたのは、政治体制が制限を受けている中で、公共インフラにお金を回すことがどれだけ難しいかということだ。そのような困難とは無縁の、社会主義国家と張り合うような国にしようとすることは、規制や、私企業の利益追求という観点から見ても、ほとんど不可能だろう。
給付金についての熱い議論に加わっている人たちが直面するのは、資金面についての議論の有害さと困難さだ。結局、銃弾や、爆弾や、私的利益のことでないと、米国政府は関心を示さないのだ。だからこそ、米国政府は、自国民を養い、自国民を保護できない現状を繰り返しているのだ。それを改めてテキサス州が見せてくれた。
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