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2021年のダボス会議の演説でプーチンと習近平が示したのはもうひとつの未来像だった


<記事原文 寺島先生推薦>Davos 2021 speeches by Putin, Xi point to a different future


ジェームス・オーニール(James O’Neill)著
ジャーナルネオ
2021年2月6日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2021年3月28日


 ダボス会議は毎年の定例会をこの度開催したが、今回はコロナウイルス感染防止のため、初めてオンライン上での開催となった。米国の代表はジョン・ケリーだ。彼はオバマ政権時に役職に就いていて呼び戻された多くの民主党議員のうちの一人だ。ロシアの代表はウラジーミル・プーチン大統領だった。そして中国の代表は、習近平国家主席だったが、それは2017年以来のことだった。西側メディアは概して、この両者の演説について報じることはなかったが、この両者の演説で言わんとするところは、重要なものであり、もっと詳しく報じられるべき内容だった。

 プーチン大統領は、あらかじめ2019年に出版された著書をクラウス・シュワブから受け取っていた。彼は、このダボス会議の主要運営者の一人であり、プーチン大統領の個人的な友人でもある。この著書のタイトルは『第四次産業革命』、著者はクラウス・シュワブだ。プーチンはこの著書の内容のひとつを、演説の主題に採用していた。

 この著書の主題は、2020年のコロナウイルス事件に明らかに薄らいでしまってはいるが、それでもまだいくつかの重要な議論の種を提供するものであり、プーチン大統領も演説の骨組みとして使用したのだ。プーチン大統領が言及したのは、COVID-19 は、世界経済においてもともと存在していた構造的な問題を加速させたという事実だった。そして、特にプーチン大統領が言及したのは、準経済的問題が問題を累積化させていることだった。その準経済的問題が、各国の経済成長を不安定している理由であるとプーチン大統領は語り、経済成長が安定しないために、世界的な問題を悪化させているとも語った。世界経済において格差が拡大していることについて、プーチン大統領が厳しく非難したのは、収入や利益を支配している1パーセントの富裕層である。このような状況が、世界中の問題を悪化させていると語った。

 プーチンはあまり言及しなかったが、このような状況については、これらの問題が世間からさあ認識されることはありそうにないことなのだ。その原因の小さくない理由のひとつに、大手メディアがこの問題の要因を作り出しているのが誰なのかを報じないことがある。というのも、大手メディアの所有者がまさにこの1パーセントの富裕層だからだ。外国の政府を悪く言うプロパガンダ攻撃が激しくなっている。プーチン大統領は直接口にはしなかったが、ロシアが西側メディアからデタラメな情報を流される被害者になってきたことは明白だ。

 プーチン大統領は、いま行われていることがもっと熾烈さをますように思われると指摘した。具体的には、ある勢力からの企みに抵抗している国々に対する圧力が激しくなるということだ。プーチン大統領は名指しにはしなかったが、その勢力とは米国であることを仄めかしていた。米国は、不当な貿易障壁や制裁、そして金融面・技術面・情報技術分野におけるその他の制限措置を駆使し、思いどおりにならない国々を支配しようとしている。

 こんなルールのない、あったとしても支配者層が自分たちの思うがままにことを回せるルールしかないこんなゲームを続けていても、一方的な軍事行動が起こる可能性がますます増えるという結末を迎えるだけだろう。

 プーチン大統領が優先事項として提示したのは4点であり、世界各国がこれらに従えば破壊的な結末が起こることを回避できる、と語った。まずプーチン大統領が訴えたのは、全ての人々に快適な暮らしを提供することだ。 しかしこの課題の実現は極めて難しいので、プーチン大統領はこのような状況を打破するための具体的な取り組みについては明言しなかった。

 2つ目の課題は、全ての人に職を与えることだった。そうなれば、持続可能な成長と収入が確保される。そしてプーチン大統領が、そのために不可欠な条件として取り上げたのは、全ての年代層を対象に学習機会を提供することだった。

 3つ目の課題は、人々に自分たちは質の良い医療を受けることができるという安心感を持たせるということだった

 4つ目の課題は、家庭の収入状況に関係なく、子どもたちが適切な教育を受けられるようにしなければならない、という点だった。

  これら4点は、徹底的に網羅的な必要な要求という訳ではないが、文明生活にとっての基盤とは何か?という議論を呼び起こす問題提起となっている。すでにこれら4点を実現できている国々も多い。例をあげればスカンジナビア諸国やニュージーランドなどだ。しかし、いわゆる先進国と呼ばれている地域の中にも、明確な貧富の格差がある国々もあり、現状を突破することは、すぐにはできない。

 この悲しい現実が、プーチン大統領の演説の最後の言葉に込められていた。彼はこう言った。「国家間の競争や敵意がなくなったことはないし、今もなくなっていない。そして、これから先もなくなることはないだろう。しかし、なくそうと努力することは、敵意があってもそれが戦争を引き起こすことにはならないと確信できる。」

 一方、習近平国家主席が自身の演説で語ったのは、今世界が直面している4つの課題についてだった。1つ目は、世界が今取り組むべきことは、マクロ経済政策の調整を「ステップアップ」させることで、世界経済を、強力で、持続可能で、バランスがとれていて、包括的に成長させるということだった。

 習近平国家主席が提示した2つ目の課題は、世界に今必要な事は、「イデオロギー的な偏見を排除し、平和のうちに共存でき、お互いの利益のためになり、ウィン・ウィンの協力関係 (この”ウィン・ウィン“という言葉は彼が演説で使ったことばそのままだ)を共に追いかけることだ」とのことだった。

 社会体制の違い自体が脅威の原因になるわけではない。習近平国家主席は、世界にその脅威をもたらしたのは「傲慢さと、偏見と、憎しみだ」と言う。習近平国家主席は、かなり率直に、或る企みがその脅威の主要な原因になっていると語った。その企みとは、「ある国家の歴史や、文化や、社会体制を、別のものに無理矢理置き換えさせようとする」ものだと述べた。

 この最後の言葉こそ、西側の指導者たちが読むべきであり、取り込むべき内容だったのだ。西側の中でも、特にオーストラリアだ。オーストラリアは中国の成長を自らの存在を脅かす外部からの脅威と捉えている。このような脅威を裏付けするような証拠は何もないのに。しかし、西側メディアは、この脅威の分析を繰り返し報じ続けているのだ。

 3つ目に習近平国家主席が語ったのは、発展国と発展途上国の間の格差を是正する取り組みについてだった。そして、発展途上国が発展することは、世界全体の繁栄と安定を確実にすることになるだろう、と語った。

 4つ目の課題は、世界的な課題に協力して取り組む必要があるということだった。どんな世界的な課題も、一国の努力だけでは解決できない。さらに意図的に分断や、供給網の切断や、制裁を科しても、孤立を生むことにしかならず、お互いが疎遠になった関係では、世界は分断と対立に向かうだけだと言う。

  そして、西側諸国に直接呼びかけたと思われる事項は、西側諸国が法律の解釈をねじ曲げ、資本の独占を享受していることに対してだった。習近平国家主席が述べたのは、「私たちは国際法や国際間の取り決めを遵守し続けるべきであり、自国の覇権を追い求めるべきではない」ということだ。さらに習近平国家主席が語ったのは、各国政府は国際社会においては「一国や数カ国によって決められた取り決めではなく、我々すべてに適用される規則や常識」に基づいて行動すべきだ、ということだ。

 最後の言葉だけでも、西側勢力に警鐘をならすのに十分だ。というのも、西側諸国は、ずっと「国際間の秩序に基づく規則」を口実に独占権を主張してきたからだ。西側諸国が言っている「国際間の規則や秩序」とは、自分たちの規則であり、自分たちの秩序なのだ。習近平国家主席は、そんな時代は終わり、国際間の法律というのは、文字通り国際間の法律であるべきだ、ということを明確に伝えたのだ。これまで70年以上もの間、「国際間の法律」を口実に、ごく少数の富裕層の富を守るために起こった終りのない戦争や、ごく少数のものたちのための果てしない富の蓄積が続けられてきたのだから。

 西側諸国がプーチン大統領や、習近平国家主席の演説に耳を傾けるとは思えないし、ましてやその演説を聴いて、自分たちの振る舞いを変えることなどはしないだろう。しかし世界は変化している。古い西側勢力がこの変化に気づき、自分たちの行いを変えようとするのが早ければ早いほど、プーチン大統領や習近平国家主席が明確に打ち出した目標を達成できる日が近づくだろう。両者の演説が西側諸国でほとんど報じられなかったことは、良くない兆候である。しかし、ユーラシア地域の様々な国々による多くの同意事項が積み重なれば、古い世界は急速になくなっていく。そのことが認識されるのが早ければ早いほど、世界は安全な場所になるだろう。

 

 


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