米国は、チベットで中国を標的にする
<記事原文 寺島先生推薦>
US Targets China over Tibet
US Targets China over Tibet
2021 年1月25日
ジャーナルNEO
著者:ブライアン・ベレティック

米国議会は最近、いわゆる「チベット政策支援法(TPSA)」を可決したが、それはCOVID-19救済一括法案と、1.4兆ドルの政府支出法案に滑り込ませてであった。米国務省が出資するボイス・オブ・アメリカが「米国議会はチベットを支援する画期的な法案を可決する」という記事で伝えた。
その記事は次のように述べている。
米国議会は月曜日、中国がダライ・ラマの後継者を任命しようとした場合、中国当局者に制裁を加えるなど、主要分野におけるチベットへの米国支援を増加させる法案を可決した。
VOAはまた、次のことを報告している。
これは米国政府が、ダライ・ラマ継承を妨害する中国当局者に対して、経済制裁とビザの制裁を行うことになり、チベット自治区の首都であるラサに米国領事館を設立できないかぎり、中国政府がこれ以上米国に領事館を開設することを認めないことを、中国に要求している。
VOAは、米国の動きを讃えた亡命「中央チベット政府」(CTA)の言葉を引用した。しかし、この亡命政治運動は、中国のチベット自治区内に住む実際の人々を代表できないし、そして代表していないので、この米国の支援がどれほど問題であるかについてはほとんど言及されていなかった。
この法案は、米国による露骨な中国内政干渉の行為である。そして特にこのようなチベットにおける米国の干渉は半世紀以上続いてきたのだ。
ワシントンのチベット介入の長い歴史
ワシントンによるこの最新の動きは、チベット介入の長く、卑劣な歴史を増大させる。
米国務省独自の歴史課には、1968年の文書「303委員会の覚書」がオンライン・コレクションに含まれており、「チベット作戦に関する状況報告」というタイトルで書かれている。
そこでは、「政治行動、プロパガンダ、準軍事活動、情報活動」を含む「CIAのチベット計画(その一部は1956年に開始された)」について議論されている。この文書は、ダライ・ラマについてと、米国中央情報局(CIA)が彼に対して行った関わりについて言及している。
また、「新しい若い指導者の核」と「チベットの大義への広範な同情」についても議論している。それはすべて米国政府によって意図的に設計されたチベット分離主義への幅広い投資の結果であった。
この文書はまた、チベット独立を全面的に推進する完全なプロパガンダ・キャンペーンであることを認めている。
この文書は次のように述べている。
政治活動とプロパガンダ分野において、チベット計画は、中国の政権の影響力と能力を軽減することを目的としている。それは、ダライ・ラマの指導の下、チベット人や諸外国の支援を通じて、チベット自治の概念のもとに、チベット内の政治的進展に対抗する抵抗力の創造に向けて行われる。それは、中国共産党の拡大の封じ込め-NSC 5913/1.2(秘密解除されていない資料編の6行)の最初に述べられた米国の政策目標である。
そして、それはまさに米国政府が何十年も前から行ってきたことであり、最近では「チベット政策と支援法」の形で現れている。
「米国民主主義のための国家基金(NED)」は、1980年代に米国政府によって創設され、毎年米国議会によって資金提供され、米国議会と米国務省が共同で監督し、チベットに関する少なくとも17のプログラムがリストアップされている。
その中には、「国際チベット独立運動」や「自由チベットの学生たち」など、中国チベット自治区に関する分離主義を公然と推進する2つの組織が含まれている。
その他の計画として、「新世代のチベット人指導者育成」や「組織活動やリーダーシップ訓練」などは、米国務省歴史課の文書に記載された計画の直接的な継続であり、1950年代と1960年代にCIAによって実施されたものである。
チベットに関して以前CIAが行ってきたことを、今は米国NEDが行っているという事実は、ウィリアム・ブルムのような米国政府の外交政策の批評家による主張に対してさらなる信頼性を与える。彼は、NEDの全目的は「CIAが何十年もひそかにやってきたことを、やや公然と行うこと」であり、そしてCIAの秘密活動に関連する汚名を濯ごうとしているのです、と指摘した。
チベットにおける米国の干渉は、アメリカ政府による中国領土内及び周辺での封じ込め、挑発、包囲、弱体化に関わるはるかに広範な戦略の一部に過ぎない。
中国西部地域の新疆に関するワシントンの反中国プロパガンダ・キャンペーンは続いており、また香港での秩序回復の試みが実施されるように中国に圧力をかけようとしている。
米国が支援する様々なカラー革命は、東南アジアを含む中国の緊密な同盟国の国境内、特にタイのような国々で醸成され続けている。ここ数週間、バンコクの通りの「民主化」の抗議者は、香港の反体制派グループと公然と結びつき、チベットと新疆ウイグル過激派双方の分離主義者の旗をいつも掲げ、ますます反中国的性格を帯びるようになっていた。
米国上院は、タイの反政府デモ隊を公然と支持する決議を可決した。そのデモは、米国のNEDが資金援助する組織の支援を受けていて、その一部は反政府運動の中核的指導層を構成している。
すべてを結びつけるのは、実際にチベットに源を発する東南アジアのメコン川沿い諸国への米国務省の介入である。VOAの記事では、次のように述べてさえいる。
・・・・TPSA(チベット支援法案)は、チベットの人権問題、環境権、宗教の自由、そして亡命民主的チベット政府の問題に取り組んでいる。またTPSAは、大規模な中国の水力発電プロジェクトが水を転用し、地域の生態系を脅かしているという、環境活動家や近隣諸国からの長年の懸念を受けて、水安全保障問題に対する地域的枠組みを求めている。
したがって、ワシントンの反中キャンペーンの規模と様々な性格は、チベットだけに圧力をかけることに限定されていない。チベットは、中国に対する多くの相互につながった米国の圧力の一つに過ぎない。中国が反発しているように、米国とその依然として大規模で有力なメディア網は、この反応を「侵略」、さらには「領土拡張」とさえ描写しているが、ワシントンの当初の挑発とそれに続く挑発については言及をはぶいている。
何世紀にもわたって断続的に統治してきたチベットに対する中国の支配は、今ほど強くはなかった。前例のないほど社会的・経済的に地域を発展させる中国の推進力によって、ワシントン政界やワシントンDCに拠点を置く分離主義チベット組織に絡みついているチベットの「独立」という概念が、消えゆくフィクションに過ぎないことがほぼ完全に明かである。
ワシントンが失敗した外交政策を追い続けることに固執することは、その規模が大規模であるにもかかわらず、世界の舞台での信頼性をさらに損ない、政治的、そしておそらく経済的にさえ孤立させることになるだろう。チベットに関して中国に新たな「制裁」を実施しようとして、さらに中国との紛争の脅威をエスカレートさせるリスクさえある。
問題は、アメリカ政府のハード面、ソフト面での政治力が、中国の国際関係のブランドと真に競争できるかどうかである。中国ブランドは、経済貿易、インフラプロジェクト、軍事ハードウェアの販売に基づいており、ビジネスのために必要とされるワシントンからの政治的従属がないのだ。
そして、もしワシントンの外交政策が対抗できないという答えであれば、ワシントンの力が世界的に衰退し続け、中国の力がその空隙を埋め続ける中で、ワシントンは次にどのような措置を取るのだろうか。
ブライアン・ベレティックは、バンコクを拠点とする地政学的研究者であり、作家であり、特にオンラインマガジン「ニュー・イースタン・オマーチ」に関わっている。
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