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億万長者ビル・ゲイツのメディア支配: ロバートF ケネディ・ジュニアを徹底的に誹謗中傷 

<記事原文>Billionaires’ Media: The Smearing of Robert F.. Kennedy Jr..

ジョイス・ネルソン
グローバルリサーチ
2020年10月6日
<記事翻訳>寺島美紀子・隆吉
2021年1月7日

 

 9月17日、トロントに拠点を置くグローブ・アンド・メール紙は、ロバート・F・ケネディ・ジュニアを中傷した異常で特別に長い記事を掲載し、かれを「ソーシャルメディアを使って誤った情報を流す最大の人物」と呼んだ。次の見出しが、その記事の要約となっている。

 「ケネディは、COVID-19、ワクチン、5G等々のデマを『撒き散らす最大の人物』になった」[1]

  10年以上にわたりケネディ・ジュニアは、かれが設立した組織「子どもの健康防衛」を通じてワクチンの安全性に関する問題を提起してきた。グローブ・アンド・メール紙の記事は次のように述べている。

 
他の陰謀論者と同様に、RFK Jr..は、COVID-19のパンデミックの最中に、人気がうなぎのぼりになった。ワクチン反対のメッセージを、危機に乗じてうまく適応させたり、マイクロソフトの創設者ビル・ゲイツ、すなわちCOVID-19ワクチンその他の問題および5G通信ネットワークの安全性について、虚偽の申し立てを発したりしているからだ。2月以降、ケネディ・ジュニア氏のソーシャルメディアは、フォロワーが22万9000人から今日では66万5000人の三倍にふくれあがった。



グローブ・アンド・メール紙からのスクリーンショット

ケネディ家のひとりは、COVID-19、ワクチン、5G等々のデマを撒き散らす「スーパー拡散人」になった


ロバート・F・ケネディ・ジュニアはかつては環境問題専門家と称賛されていたが、かれのワクチン反対の支援活動と陰謀論は、かれをパンデミックにおける偽情報の磁石にしてしてしまった。


アレックスィ・モストラス

グローブ・アンド・メール紙への寄稿

2020年9月16日発行、9月17日更新


  中傷としか呼べない記事の末尾で、紙版のグローブ・アンド・メール紙は述べた。「この記事はもともと『トータス』に掲載されたもので、これは亀のように歩みは鈍いが賢明なニュース報道に尽力している別種のニュース編集室である。『トータス』を読むには、グローブ紙の読者なら30日間の無料トライアルと特別半額の提供を受けることができる」

  不思議なことに、この記事が言及しなかったのは、RFKジュニアが立ち上げた団体「子どもの健康防衛」や、ケネディの8月29日のベルリンでの演説についてだった。ベルリンでは巨大な集会で演説していた。その巨大な集会でケネディがひとびとに語ったのは、COVID-19パンデミックは「エリートのために危機を利用するもの」であるということであり、エリートたちはいまや「中産階級を破壊」し、「監視とデータマイニング(大量のデータからある傾向を取り出すこと)」のために「隔離政策を利用して5Gを地域社会にもちこみ」、「億万長者」に利益をもたらす「デジタル通貨」とキャッシュレス社会にわれわれ全員を移行させようとしているのだ、ということだった。

 同様に、『トータス』の記事が言及しなかったのは、「子どもの健康防衛」が8月17日、フェイスブック、マーク・ザッカーバーグ、三つのファクトチェック会社にたいして訴訟を起こし、公衆衛生に関する真実の情報を検閲したとして訴訟を起こしたことについてだった。[2]

 それでは、『トータス』とは何(あるいは誰)か。

「亀のように歩みは鈍いが賢明なニュース」?

 『トータス』(『トータス』メディア、『トータス』紙ともいう)は2019年4月、三人の人物によって立ち上げられた。

* ジェームズ・ハーディング(ルパート・マードックのタイムズ紙の元編集長で、その後は2017年10月に辞任するまでBBCニュースの責任者だった)

* ケイティ・ヴァンネックスミス(ウォールストリート・ジャーナル紙とダウ・ジョーンズ社の元社長)

* マシュー・バーザン(元駐英米国大使)



『トータス』の共同設立者たち(左からハーディング氏、ヴァンネックスミス氏、バーザン氏)(ウェブサイトより)

 

 ロンドンに拠点を置く『トータス』の最初の財政的支援者は、以下のとおり[3]。

* バーニー・メンサ(銀行家。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ新興成長市場のグローバルヘッド)

* ソール・クライン(ハイテク投資家)

* 匿名の支持者二人


 『トータス』のウェブサイトでは、ハーディングが編集長、ヴァンネックスミスが発行者、マシュー・バーザンが会長、セチ・クルツマン(ネクサス・マネジメント社の元創設者)が独立取締役として挙げられている。

 このウェブサイトには現在27の主要な資金調達パートナーも掲載され、その中には、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、カナダ年金計画投資委員会、エーデルマン社、フェイスブック、グーグル、ロックフェラー財団などがある。

 この論考では、ゲイツ財団とエーデルマン社に焦点を当てることになるが、エーデルマン社は世界最大の広報会社のひとつと考えられており、世界中に67の支店がある。

 『トータス』は2018年11月に米クラウドファンディング・サイト「キックスターター」を利用して、会員専門のサイトを立ち上げた。これは、ニュース資金のための「再分配モデル」で、高額会員層が、より低額(または無料)会員層に資金を提供するものだ。

 2019年6月までに、『トータス』の会員数は8000人となり、そのうち40%が30歳未満だった。各企業は会員に資金を提供し、慈善団体・学術団体・その他のグループが、「ロンドン在住以外のひと、10代、高齢者、労働者階級といった、『トータス』の読者層の格差を埋める」ために、分配する。
 カナダの新聞プレスガゼットもこう指摘した。2019年4月の『トータス』発足からわずか3か月後に、「サンタンデール銀行とPR会社エーデルマンを含む」7つの主要ブランド会社が会員に資金を提供するために調印したと。[6]

 『トータス』の会員になるための費用は、30歳未満のひとの場合の月額5ポンド(または年間50ポンド)から、月額24ポンド(他の個人)、月額250ポンド(企業や裕福なスポンサー)まである。創設時の5000人の学生会員は無料会員権を受け取る。2019年11月までに、『トータス』は「2万人近くの会員」を擁していて、会員を補助する広範な企業支援により、会員数が急速に増加したと主張していた[7]。

 『トータス』は、共同出資者と会員間、共同出資者と利害関係者間、共同出資企業とその従業員間で、ThinkIns(編集会議や討論)を頻繁に主催している。「われわれは新しいジャーナリズムを開拓していると信じている」とウェブサイトは述べている。「だから、われわれは諸問題を調査し、21世紀のアイデアを発展させることができる。これを会員と共同出資者が一緒になっておこないたいと考えている。みなさんに席を用意したい」。『トータス』は会員を「家族」と呼んでいる。

 『トータス』のウェブサイトは、「われわれは広告をとらない。代わりに、われわれのジャーナリズムは、会員と共同出資者によって資金提供されている。新しいかたちのジャーナリズムを支持し、公開討論を可能にし、専門知識を共有し、彼らの見解を伝えることをいとわない企業とのパートナーシップを確立する」。しかし、『トータス』は急いで付け加える。「共同出資者は、もちろん、われわれがジャーナリズム企業であることを知っている。だから、われわれの独立性は交渉の余地のないものだ。もし、関連性か、あるいはニュース記事のどちらかを選ばなければならないとすれば、つねにニュース記事のほうを選ぶ」

 9月17日のRFK Jr..の中傷記事に関して、『トータス』は、資金調達パートナー(ゲイツ財団、フェイスブック)二社との関連性をとるか、「ニュース記事」をとるかで、選択を迫られることはなかった。三つすべてがうまく一致していたからだ。

 億万長者のメディア

 2018年秋、『トータス』がもうじき立ち上がることに関して話題が沸騰していたとき、コロンビア大学ジャーナリズム大学院のデジタルジャーナリズムセンター所長のエミリー・ベルは、ガーディアン紙に意見記事を書いた。ベルは『トータス』のこの投機的な冒険を神秘的」と呼んだ。そして、こう指摘した。大手メディアは財政的な「圧力」を受けており、『トータス』によってつくりだされたような「ニュース資金調達の再分配モデル」が必要かもしれないと[8]。

 トータスのアプローチを賞賛しつつ、「結局は億万長者が答えとなるかもしれない」ということは容認されるだろうとベルは書いた。そして次の例を引用した。

アップル創設者スティーブ・ジョブの未亡人、ローレン・パウエル・ジョブが、『アトランティック』誌を購入。
セールスフォース社の創設者、マーク・ベニオフが、『タイム』誌を購入。
アマゾン代表、ジェフ・ベゾスが、ワシントンポスト紙を買収。[9]


 ベルが明らかに、意図的に書かなかった事実がある。過去10年間にフェイスブックやグーグルなどが、かつては大手メディアへ注入されていた莫大な広告収入を奪いとって『トータス』の役員や株主を豊かにし、他方、世界中のニュース編集室を骨抜きにしてきたということである。億万長者がそこに足を踏み入れてメディアの所有者になり、他方で何千人ものジャーナリストが投げ捨てられたという事実だ。そして彼らは、主要問題に関する情報と公共の言説の統制をさらに進めているのだ。

 『トータス』の資金調達パートナーには、地球上で最も裕福な億万長者の二人、ビル・ゲイツとマーク・ザッカーバーグが含まれている。

 もちろん、カナダの読者は、(『トータス』の記事を掲載した)グローブ・アンド・メール紙が、カナダで最も裕福な家族、トムソン家の所有であることを思い出す必要がある。「トムソン家はその財産をパンデミック中に90億ドル近く増加させた。3月には417億ドルだったのが、今では506億ドルにまで達しているからだ」。[10]

READ MORE: Press in His Pocket: Bill Gates Buys Media to Control the Messaging: Robert F.. Kennedy Jr..

 不思議なことに、ガーディアン紙上でエミリー・ベルが表明した希望は、『トータス』が「(ニュース)報道がほとんどされない分野に富の1%を殺到させることを促してくれるだろう」ということだ。この報道がほとんどされない分野とは、「所得格差、人種差別、保健サービス、気候変動、権威主義の行進、女嫌いの止めようもない台頭、人工知能の課題、民主的制度の崩壊」などの分野である[11]。これは左右の意見があまり対立しない分野である。あたかも、こうした問題の報道が、どのように報道されているかではなく、ただその分野が報道されているということだけが重要であるかのようである。

 実際、多くのプロのジャーナリストが消えてしまった。ということは、大手メディアが、企業の報道発表、シンクタンク報告書、企業お抱えの専門家、あるいは政治家などによる言葉の偏った解釈にますます依存しつつある、ということを意味する。そしてそれこそが、『トータス』および、その共同出資者エーデルマン社のようなPR企業の、まさにバックボーンであり、かれらは顧客のためにそうした問題を管理するべく存在するのだ。実際、PRウオッチ(「メディアと民主主義のセンター」というニュースサイト)はエーデルマン社をこう呼んだのだ。「世界最大のPR会社だが、草の根運動スタイルを装った偽装団体や不正工作と同義語である」と[12]。

イベント201

 『トータス』が立ち上げられた直後、その共同出資者二人が世界的なパンデミック演習「イベント201」に参加した。これは2019年10月にニューヨーク市で開催され、世界を牽引する15人の主要人物が参加した。

 

 COVID-19について広く執筆している独立系ジャーナリストのローズマリー・フレイは電子メールで、私に次のことを教えてくれた。

 「イベント201は、新しいコロナウイルス・パンデミックをシミュレートし、イベント直後に現実世界で起き始めたことと不気味なほどそっくりでした。その中には、ウイルス対抗措置もあり、結果として市場は暴落しました」

 「イベントの主要スポンサーのひとつがビル&メリンダ・ゲイツ財団です。そして、ゲイツ財団の代表者が15人の主要人物の中にいました。もうひとりの主要参加者は、エーデルマン社のグローバル最高執行責任者であるマシュー・ハリントンでした」

 

 フレイは3月29日のブログ記事(rosemaryfrei.ca/blog)で、イベント201のビデオ映像を引用して、次のように言った。
 「イベント201の中心的な予測のひとつは、『インターネット上に流れる膨大な量の偽情報と誤報』でした。エーデルマン社のハリントンが円卓会議で述べた見解は、これに対抗するには、フェイスブック、グーグル、ツイッターなどのソーシャルメディアが、自分たちこそ抵抗勢力に対抗する科学団体や健康団体と協力する放送局であり共同出資者であることを認識しなければならない、ということでした。もしその分野が偽情報で溢れているなら、自分たちこそ正確な情報を溢れさせる、というのがかれらの主張でした」

 フレイは私に言った。
 「エーデルマン社のハリントンは『情報伝達には中央集権化した対応であることが必要だ。そうすれば、その情報はNGO団体や医療従事者などを代表する博識な支持者たちにつぎつぎに転送されていく。国際的な基盤にたった中央集権化だ』とも述べたのです」

 エーデルマン社とゲイツ財団は、インターネット上で誤報や偽情報が流れることを心配したので、この『トータス』の共同出資者の二社は、さらに、フェイスブックとグーグルという『トータス』の共同出資者の二社とも力を合わることにしたらしい。というのも、フェイスブックとグーグルは、パンデミック(都市封鎖)中にさまざまなウェブサイトからの公衆衛生情報を検閲しているからだ。ちなみに、フェイスブックのある広報担当者は最近、ガーディアン紙に「4月から6月のあいだに700万件のCovid-19関連の誤情報を削除した」と語っている[13]。

 『トータス』が会員に提供する特典・恩恵のひとつは、他のサイトから選び抜かれた「毎日のニュース配信」である。『トータス』は「世界全体を見渡した一元的対応」を意図しているように思われる。エーデルマン社の助けを借りて、世界中の67の支社を基盤とすれば、そのような情報統制は実現可能であろう。

ゲイツとメディア

 以上のことは、9月17日の『トータス』の記事が何を懸念しているかを説明するのに役立つかもしれない。「2月以降、氏のソーシャルメディアの支援者は22万9000人から今日では66万5000人の三倍にもにふくれあがったからだ」[14]

 皮肉なことに、ケネディ氏への支援者数が三倍にもふくれあがったというニュースは、ビル・ゲイツ財団のメディアに接する何百万人ものひとびとの身近なところには、どこにも届いていない。ビル・ゲイツ財団がヨーロッパと北米の大手メディアに数億ドルを注いで(ケネディ・ジュニア阻止のために動いて)いるからだ。

 『コロンビア・ジャーナリズム・レビュー』誌(コロンビア大学大学院で公開されているプロのジャーナリストのためのアメリカの雑誌)2020年8月21日の特集記事で、ティム・シュワブは述べた。ら
 「慈善家がメディアの資金不足を埋めるにつれて――そしてそれこそがコロナウイルスの大流行に続くメディアの低迷のなかで、拡大することがほぼ確実な慈善家の役割なのであるが――考えられないほど大きくなった懸念は、肝心の資金寄付者について、ニュース編集室がどれほど公正に報道できるかということである。ニュース編集室への主要資金提供者であり、頻繁に好意的な報道の対象となっているゲイツ財団のことを考えれば、この懸念はどれほど大きくても大きすぎることはない」[15]

 シュワブは「ゲイツ財団が2020年6月末までに出した約2万件の慈善助成金を調べ、ジャーナリズムに2億5000万ドル以上が投入されたことを発見した」と述べた。助成金の受け取り手は、

* BBC(イギリス国営放送)

* NBC(米国の三大ネットワークのひとつで、NBCユニバーサルグループの主体企業)
* アルジャジーラ(アラビア語と英語でニュース等を24時間放送している衛星テレビ局)
* プロパブリカ(アメリカの非営利・独立系の報道機関)
* ナショナルジャーナル(ワシントンD..C..に拠点を置くアドバイザリーサービス会社)
* ガーディアン紙(イギリスの大手一般新聞)
* ユニビジョン(アメリカのスペイン語のテレビネットワーク)
* ミディアム(電子出版のプラットフォーム)
* フィナンシャルタイムズ紙(イギリスで発行されている経済紙)
* ニューヨークタイムズ紙
* アトランティック誌(ボストンで、奴隷制度廃止、教育、その他の現代の政治問題についての主要作家の解説を掲載した文学・文化解説誌、The AtlanticMonthlyとして設立)
* テキサス・トリビューン紙(テキサスの政治トピックを追うローカルNPOメディアで、年間1億円以上を稼ぐ)
* ガネット紙(バージニア州マクリーンに拠点を置く)
* ワシントン・マンスリー誌(ワシントンDCを拠点とする米国の政治と政府の隔月発行の非営利雑誌)
* ルモンド紙(フランスの夕刊紙。紙名はフランス語で「世界」を意味する)
* シアトルタイムズ紙(シアトルで発行されている新聞。シアトルの日刊紙の中で購読者が最も多い)
* 調査報道報告センター(カリフォルニア州に拠点を置く非営利のニュース組織。1977年から調査ジャーナリズムを実施。不平等、虐待、腐敗を暴露し、責任ある報告が知られている)
* パティスィパント・メディア(米国の映画製作会社。主に社会性の強い映画を製作)
* ピューリッツァー危機報告センター(2006年に設立された米国ニュースメディア組織。国際的なシステム危機の報道基準を引き上げ、公共・政府政策立案者を関与させることが目標)
* 全国プレス財団(ジャーナリスト向けの教育プログラムに焦点を当てた米国のジャーナリズム組織。功績に対して賞を発行)
* 国際ジャーナリストセンター(米国ワシントンD..C..にある非営利の専門組織で、世界中でジャーナリズムを推進している。1984年以来、27年間で180か国から7万人を超えるジャーナリストと直接協力してきた)
* アメリカンプレス協会(News Media Allianceと提携している非営利の教育非営利団体。ニュースメディアの進歩を奨励することが使命)

 
 シュワブはこのリストも不完全だとしたが、それはゲイツ財団が資金提供を報告する義務がないためだ。

 シュワブは述べた。「報道機関がゲイツにたいしてパンデミックに関する並外れて大きな発言力を与えたのと同様に、ゲイツ財団は長年のあいだ慈善寄付を利用して、世界中の保健から教育(チャータースクールに支持表明)および農業(プロ遺伝子組み換えに支持表明)に至るまでのすべてに関する公共の言説をかたちづくってきた。その影響力の大きさは、ビル・ゲイツを『フォーブス』誌の世界最強の人物リストに押し上げたことを見ればわかる。[16]

 最近、ドイツの大手新聞シュピーゲルも、他の報道機関と同様に、ゲイツ財団から「3年間で約200万ユーロから300万ユーロ」を受け取ったということだ。これは「ニュースに影響を与えようとするゲイツ財団の秘密の行動戦略ではないのかという疑問」を提起している[17]。他方、ゲイツが資金を提供している報道機関について、ゲイツはこう答えた。「実際、それら報道機関が記事に書いていることは完全にかれら次第だ」と[18]。つまり、「報道内容に私は口を挟んでいない」と言いたいわけだ。

 しかし、CJR(コロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌)のティム・シュワブによると、
 「ゲイツがニュース編集室にお金を渡すと、報道内容が制限される。しばしば、世界中の保健や教育などの話題にたいしてである。というのはゲイツ財団は世界中の保健や教育などに取り組んでいるからだ。そしてそれが報道機関にたいするゲイツ財団の行動戦略を高めるのに役立つというわけだ」[19]

  ゲイツにたいする批判的報道がなされることは「希有」であると、シュワブは述べた。「だから、拡大する懸念は、ゲイツに関する報道が前例となるということだ。一般的に流行しているゲイツ報道のやり方は、次世代のハイテク億万長者(ジェフ・ベゾスやマーク・ザッカーバーグを含めて)が慈善家に転身することについて、報道陣がどう報道すべきかのモデルになるということだ」と[20]。

 しかし、それが『トータス』のようなサイトの出番なのである。30歳未満の年齢層の獲得、ThinkIns(『トータス』の編集会議や討論サイト)、貧困者のための無料購読、会員への毎日のニュース提供、「家族」としての会員とその配偶者への尊敬、大手PR会社とのパートナーシップなどなど。

「不正工作」

 PRウオッチが2014年8月に、エーデルマン社を「草の根運動スタイルを装った偽装団体や不正工作と同義語」と呼んだとき、PRウオッチが注目したのは2008年に明らかになった過去のスキャンダルだ。これはエーデルマン社が労働組合との紛争中に、顧客であるウォルマートを支援するため、インターネットを使って、偽の「草の根」運動をおこない、偽の「草の根ブロガー」をつくりだしたことだった。ところが、そのわずか数か月後の2014年11月に噴出した別のスキャンダルで、エーデルマン社の別のPR戦術があからさまに露呈することになろうとは、当時のPRウオッチは、知る由(よし)もなかった。

 2014年11月、グリーンピースが発表した暴露文書は、エーデルマン社が顧客のトランスカナダ社にたいして出した内部PR情報を暴いたものだった。これは、エナジー・イーストと呼ばれるオイルサンド・パイプラインにたいしてカナダ国民の支持を得ようとする工作だった。グリーンピースはその情報を「不正工作」と呼んだ。

 その暴露文書が明らかにしたのは、カナダ人をパイプライン「推進派」に転向させる「恒久的宣伝活動」のためのエーデルマン社の計画であり、トランスカナダ社は6つの州全体に広がっているオイルサンド瀝青からシェールオイルを取り出そうとしていた。

 CBCニュースは次のように報じた。
 
エナジー・イースト・プロジェクトのウェブサイトをクリックするだけで、プロジェクトに関する詳細情報を要求できる。

 エーデルマン社は次のように言っている。「平均的な市民を、衆目の事柄の活動家に変えることができる」

 その文書のひとつには「標的をしぼった広告宣伝と行動追跡を使用して、個人の急所に直接的に訴えて、支持者から活動家へ、そして推進派へと開発できるのだ」とあった。……

 その文書によれば、「支援活動は、ひとびとを単に請願書に署名したりするというところから、公開の集会で証言したり、広告や宣伝のために個人的物語を添えたりするまでに成長させることができるのだ」「かれらは推進派という豊かな基盤をわれわれに提供し、われわれの大義を熱心に理解し、支持し、たいてい、喜んで求められることをやってくれる」[21]

 エーデルマン社はさらに次のように勧めていた。メディアを通じて「第三者の声も特定して集め、聞き、同じ意見のエコー・チェンバー現象を構築する必要がある」のだと。
(エコー・チェンバー現象とは、閉鎖的空間内で同じ意見をどこまでも反復することで、特定の情報・信念が増幅または強化される状況だ)

 エーデルマン社は、「危険性を無効にする」ために「主要な敵対集団についての詳細な背景調査」を提案した。その敵対団体は以下のような面々だ。

・カナダ評議会
・エキテール(カナダの非営利団体。コミュニティが支援する農家と消費者の農業システムを管理)
・デビッド・スズキ財団(科学ベースの環境組織。カナダと米国の両方で設立された非営利組織)
・アヴァーズ(米国を拠点とする非営利組織。気候変動、人権、動物の権利、汚職、貧困、紛争などの問題に関する世界的な活動を推進。ガーディアン紙は「世界最大かつ最も強力なオンライン活動家ネットワーク」と見なしている)
・エコロジー・オタワ(気候変動、汚染、廃棄物のような問題に懸念を表明する、オタワ市のボランティアによる非営利団体)


 エーデルマン社はまた次のようにも勧めていた。「相手にとって扱いにくい人員を、その敵対する団体に潜り込ませるのだ。団体の使命から気をそらさせ、かれらの資金や要員を転向させるのだ」と。[22]

 大手メディアでさえ、これを「不気味な戦術だ」と呼び、あるコラムニストは「コミュニケーション秘密工作、偽の草の根運動、忠実なるツィッター荒し隊、敵対者への索敵殲滅作戦だ」「敵対者のクローゼットの骨組みまで一掃してしまうものだ」と言及した。
 トランスカナダ社はエーデルマン社の助言から距離を置かざるを得なくなり、ついに、エナジーイースト・パイプライン・プロジェクトを中止した。

 エーデルマン社のPR戦術に関するこのような経歴は、強い疑念を抱かせるものだ。いったいどの程度まで、『トータス』もこれと似たような戦略を採用しているのだろうかと。

キャッシュレス社会

 RFKジュニアについての中傷記事を読んだひとたちは、記事の見出しで「COVID-19ワクチン、5G等々のデマを撒き散らす」と書かれている、「等々」の部分が何を指しているのか疑問に思っていたかもしれない。それはおそらく、ケネディ・ジュニアがベルリンでおこなった発言のことを指しているのだろう。そのとき、ケネディは、億万長者が自分たちの利益のためにわれわれ全員の通貨を「デジタル通貨」に転換させることに反対したからだ。

 ゲイツ財団は「ベター・ザン・キャッシュ同盟」の構成員であり、その同盟はUSAID(アメリカ国際開発庁)と提携して、2016年に、インドのノレンダ・モディ政権にたいして、流通から紙幣(500ルピーと1000ルピーの)を削除するよう求めた。
 これはまるで、北米で10ドル紙幣と20ドル紙幣を突然すべて削除する、と宣言するようなものである。しかもその紙幣の保有者は、特定の期限までに銀行に入金する必要があり、そうしなければ、その紙幣は価値がなくなるぞ、と脅迫されるようなものである。[24]
 (ちなみに、「ベター・ザン・キャッシュ同盟」とは、現金からデジタル決済への移行を加速する75の政府、企業、国際組織のグローバルパートナーシップ)

 ゲイツ財団とUSAIDの他に、「ベター・ザン・キャッシュ同盟」に加盟しているのは、マスターカード、ビザ、フォード財団、オミダイア・ネットワーク (EBay)、銀行大手のシティグループ等々だ。
 (ちなみに、オミダイア・ネットワークとは、ゲイツ財団とインパクト投資会社で構成される慈善投資会社。EBayはピエール・オミダイヤが設立したグローバルEC企業)[25]

 USAIDとその企業提携社らは、インドの人口の55%だけしか銀行口座をもっておらず、すべての取引の95%が現金でおこなわれていることを事前に知っていた。したがって、その突然の変化はインドの最貧困層に甚大な影響を与えた。最貧困層は現金のために「非公式経済部門」で働いていた。
(非公式経済部門とは、公式経済部門と違って、課税されず、いかなる政府機関の関与も受けず、国民総生産統計にも表れない経済部門。関連する言葉として、ブラックマーケット・陰の経済・地下経済・システムDなどがある)。
 この法令の結果、大規模な飢饉が発生し、食べ物を買う手段がなくなったため、何千人ものひとびとが死亡した。さらに、何千もの中小企業が倒産した[26]。
 ゲイツは、シュピーゲル紙の最近のビル・ゲイツ・インタビューで、貧しい国々にたいする懸念を表明し、「われわれの基盤は命を救うことだ」と弁解している[27]。しかし、それは確かに2016年11月のインドでは当てはまらなかった。

 ティム・シュワブは『コロンビア・ジャーナリズム・レビュー』誌で述べた。ビル・ゲイツが示したのは、最も論争の的となっている産業界の大ボスが、自分の公共イメージを「技術の悪党」から「慈悲深い慈善家」に、いかにすんなりと変えることができるかであった、と。

 真のジャーナリストなら富と権力を綿密に調査すべきだ。だから、ゲイツはおそらく地球上で最も詮索される人物のひとりであるべきだ。少なくとも、最も称賛されるべき人物でないことは確かだ[28]。

 しかし、ビル・ゲイツが示したのは、『トータス』とその共同出資者や会員の「家族」という仕組みを巧く使えば、そのようなイメージの転換を易々とやっていけるということなのだ。

Joyce Nelson is a freelance writer and author.. She can be reached via www..joycenelson..ca

NOTES

[1]アレクシ・モスルース「ケネディは、COVID-19、ワクチン、5G等々のデマを撒き散らす『スーパースプレッダー』(感染拡大の源となった患者、病原菌を撒き散らす奴)になった」グローブ・アンド・メール紙2020年9月17日。
[2] ジュリア・ウッドフォード「ウッドフォード・ファイル」バイタリティ・マガジン2020年秋号。
[3] エミリー・ベル「ジェームズ・ハーディングの『トータス』は金持ちクラブを超えられるか?」ガーディアン紙2018年10月22日。
[4] www..tortoisemedia.com/partners/
[5]シャーロット・トビット「スローニュース紙のベンチャーである『トータス』は、地元出版社と提携する可能性のある『包括的な』会員モデルを作成する」プレスガゼット紙2019年6月28日。
[6] 同上。
[7]フレディ・メイヒュー「『トータス』は、ポッドキャスティングに移行するにつれて、2万人近くの会員を擁していると主張している」プレスガゼット紙2019年11月8日。
[8] ベル、前掲紙。
[9] 同上。
[10]デリック・オキーフ「COVIDは吸いつくす。あなたが億万長者でない限り。カナダの最富裕層は3月以来370億ドルを集めた」リコシェ紙2020年9月17日。
[11] ベル、前掲紙。
[12] PRウォッチのニック・サージェリー「エーデルマン社は気候変動の誓約をするが、ALEC(米国立法交流評議会。アメリカの州議会議員と民間部門のメンバーがモデル法案について協力するためのフォーラムを提供)については忘れている」トゥルースアウト紙2014年8月17日。
[13] ナイアム・マッキンタイアとベン・クイン「ワクチン反対のフェイスブック投稿との取り組み、一か月で三倍になる」ガーディアン紙 2020年9月19日。
[14] モストルース、前掲紙。
[15]ティム・シュワブ「ジャーナリズムのゲイツ守護者たち」コロンビア・ジャーナリズム・レビュー紙2020年8月21日。
[16] 同上。
[17]ヴェロニカ・ハッケンブローチとマルク・ピツケ「ビル・ゲイツがCOVID-19に関して語る――『われわれがそれ以上進んでいないのはショッキングなことだ』」シュピーゲル紙2020年9月16日
[18] 同上。
[19] シュワブ、前掲紙。
[20] 同上。
[21]マーゴ・マクディアミド「エナジー・イースト・パイプラインの『支持者たち』が、トランスカナダPRの動きの標的にされた」CBCニュース2014年11月18日。
[22]スザンヌ・ゴールデンバーグ「暴露。キーストーン会社のPR集中キャンペーンは、代替策を守るためだ」ガーディアン紙2014年11月18日。
[23] ジェフリー・ジョーンズ「PRの策略は石油産業の信頼性を傷つける」グローブ・アンド・メール紙2014年11月19日。
[24] ジョイス・ネルソン「キャッシュレス社会の推進に抵抗する」『暗黒郷を迂回する――企業ルールへの希望に満ちた挑戦、カナダ・コモックス市』(流域センチネルブックス、2018年、pp.. 48-50)
[25] 同上。
[26] 同上。
[27]ハッケンブローチとピツケ(前掲書)で引用。
[28] シュワブ、前掲書。

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