アンドレ・ヴルチェク氏が亡くなった。彼は、真実を求める情熱的な戦士だった。
<記事原文>
The Death of Andre Vltchek, a Passionate Warrior for Truth
グローバル・リサーチ 2020年9月25日
エドワード・カーティン
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年10月30日

「もし世界がひっくり返っているのならば、我々が世界をひっくり返してもとの正しい姿にもどすべきではないのか?」– エドゥアルド・ガレアーノ(1998) 『逆さま』から
何十年もの間、古き良きジャーナリスト(しかし実際は彼は若い)であり、芸術家でもあるアンドレ・ヴルチェク氏は、世界中を旅し、真実を追い求めてきた。そして、つねに背筋を伸ばして立ち、世界を変えようとし、不正に対して立ち上がるよう人々を励ましてきた。今の時代の記者はいすに座ったまま記事を書くのだが、彼は勇気と不屈の精神を持って歩き回る記者だった。彼はものごとの本質をまっすぐに話した。そのため、ある特定の人々やニセ左翼の出版社に良く思われていなかった。そのような人々はアンドレの中にある真の怒りを嗅ぎ取っていたのだ。そして、アンドレには偽善を嗅ぎ取れる力があった。そのことが、彼らを恐れさせたのだ。だからこそ、そういったメディアは、アンドレの記事を載せるのをやめたのだ。アンドレは他の多くの記者が恐れて足を踏み入れないようなところでも行った。そして、西側諸国の帝国主義的な暴力による被害を受けた地域の人々と話を交わした。アンドレは、無防備な人々を守り、自己防衛するよう励ました。
でも、アンドレはもういない。アンドレは、運転手付きのレンタカーの後部座席に乗っているときに亡くなった。彼らは夜通しトルコのイスタンブールに向かっているところだった。アンドレは眠っていた。ホテルについて妻がアンドレを起こそうとしたが、だめだった。享年57歳。
アンドレには、安らかに眠ってほしい。だが、アンドレの言葉を鳴り響かせよう。そして、正義と平和を求めるアンドレの情熱的な叫び声も。。凶暴な略奪者が支配するこの世界に、正義と平和を求めるアンドレの情熱的な叫びを鳴り響かせよう。
アンドレやアンドレの業績を知っている人たちは、彼を亡くしたことを深く、深く悲しんでいる。アンドレの友人であり同僚でもあるピーター・ケーニッヒ氏も胸を打つ追悼の記事を書いている。
ケーニッヒ氏が書いている通り、ヴルチェクはつねに世界中の弱者たちを守っていた。その弱者とは、人間と思われず使い捨てにされている人たち、「周辺に追いやられている」人たち、有色人種たち、西側諸国が起こした戦争の被害者たち(その戦争には、軍による戦争も経済による戦争もある)だ。 そして、その人たちが住んでいるのは西パプア、イラク、シリア、アフリカなどだ。アンドレは怒りっぽかった。ただその怒りは正当性のある怒りだった。 怒りの対象は、一方的にしか物事を伝えない西側メディアと、自分たちに都合のよい「真実」を常に説き聞かせているそれらメディアのエリートたちに対してであった。
アンドレは最近米国にいた。以下は、アンドレが米国に関して書いた文章だ。
一つだけ分かって欲しい。ここにいると聞こえてくる声は、奴らの声だ。何度も聞こえてくる。奴らは世界の人々に何が問題で何が問題ではないか押しつけてくる!こんな声はアフリカや中東やアジアの国々では決して聞こえてこない。そのような地域では、人々は完璧に何が問題なのかを理解している。問題の根本が人種問題にあるのか、そうでないか、アフリカや中東やアジアの人々には分かっている。
私はたった二週間しか米国に滞在していないが、米国社会の深い危機を分析できた。私が訪れたのは、ワシントンDCとミネアポリスとニューヨークとボストンだ。そこで多くの人々に話しかけた。私が目撃したのは、混乱状況であり、さらに、米国の人々が世界の他の地域のことを全く頭にいれていないことだ。この惑星を何十年間もずっと陵辱し続けてきた米国は、自分たちの事を世界的な視点で見るということが全くできないのだ。市民たち(その中にはメディア関係の人々も含まれるが)は、恐ろしいほど無知で、古い考えに凝り固まっている。
しかも自分勝手だ。
私は何度も尋ねた。「黒人たちの命は世界中で大切にされているのですか?コンゴ共和国の黒人たちもですか?西パプアの黒人たちもですか?」と。誓ってもいい。明確な答えは全く返ってこなかった。
誰かが伝えなければいけない。誰かが米国人たちの目を開けさせなければ。
私はたった二週間しか米国に滞在していないが、米国社会の深い危機を分析できた。私が訪れたのは、ワシントンDCとミネアポリスとニューヨークとボストンだ。そこで多くの人々に話しかけた。私が目撃したのは、混乱状況であり、さらに、米国の人々が世界の他の地域のことを全く頭にいれていないことだ。この惑星を何十年間もずっと陵辱し続けてきた米国は、自分たちの事を世界的な視点で見るということが全くできないのだ。市民たち(その中にはメディア関係の人々も含まれるが)は、恐ろしいほど無知で、古い考えに凝り固まっている。
しかも自分勝手だ。
私は何度も尋ねた。「黒人たちの命は世界中で大切にされているのですか?コンゴ共和国の黒人たちもですか?西パプアの黒人たちもですか?」と。誓ってもいい。明確な答えは全く返ってこなかった。
誰かが伝えなければいけない。誰かが米国人たちの目を開けさせなければ。
数年前、私は南カリフォルニアに招かれ、当時製作中だったアフリカについてのドキュメンタリー映画を紹介する機会があった。(その映画のタイトルは『ルワンダの策略』で、西側諸国により引き起こされた大虐殺についての映画だ。その大虐殺は、ルワンダで、そして後にはコンゴ民主共和国で行われたものだ) 。そこでは何百万人もの黒人たちが死に瀕していた。その大虐殺の原因の大部分は、米国の白人たちの止むことのない贅沢のせいだ。
ところが、話すことを許される前に、私はこんな警告を受けた。「気を付けてください。米国の人々は敏感なのです。残虐な真実を見せすぎないでください。人々が嫌な思いをするかもしれません。」
この警告を聞いて、私はすんでのところで、その場を立ち去りそうになった。会の主催者への敬意がなかったら、そうしていただろう。
今ならわかる。いまこそ、米国の人たちに真実を見せるときだ。血が流れる川を。この惨劇を引き起こしているのは、米国人の怠惰さであり、自分勝手さであり、欲望だ。米国の人たちに、米国以外の世界の人たちの怒りの叫びを聞かせる時なのだ。
ところが、話すことを許される前に、私はこんな警告を受けた。「気を付けてください。米国の人々は敏感なのです。残虐な真実を見せすぎないでください。人々が嫌な思いをするかもしれません。」
この警告を聞いて、私はすんでのところで、その場を立ち去りそうになった。会の主催者への敬意がなかったら、そうしていただろう。
今ならわかる。いまこそ、米国の人たちに真実を見せるときだ。血が流れる川を。この惨劇を引き起こしているのは、米国人の怠惰さであり、自分勝手さであり、欲望だ。米国の人たちに、米国以外の世界の人たちの怒りの叫びを聞かせる時なのだ。
しかし、ご存じのように、そんなことはほぼ不可能だ。米国の人々の目と耳を開かせることは。なぜなら、米国の人たちは死んでもそんなことはしないよう凝り固まっているからだ。しかし、アンドレは必死でそれを試みた。そして、アンドレの苛立ちはますます大きくなっていた。なぜならそんなことをしても、相手は耳が聞こえていないようだったから。
アンドレは勇猛な戦士であると同時に、愛の人でもあった。アンドレは、世界の人々や世界の文化に深い愛を持っていた。アルベール・カミュと同じく、アンドレは美と苦しみに身を捧げようとしていた。その仕事こそ、まさにアンドレの天職だった。文学と文化を愛し、これまで生み出された最善の芸術と美を慈しむアンドレが深く憎んだのは西側諸国がたびたび見せる振る舞いだった。西側諸国は、権力者による喧伝に惑わされ、無知で無教養な場所になってしまった。一言でいえば「生命のない社会」だ。西側にないのは、幸福感や温かさや詩だ。そして、愛だ。西側諸国では、そんなものたちがすべて極端に供給不足になっているのだ。
アンドレは以下のように感じていたし、口にも出していた。「米国では消費主義が強要され、人々は虚無主義に陥り、米国が世界中の人々を苦しめているという事実を認めたがっていない。なんという自分勝手なバカ騒ぎなのか。「俺にくれ、くれ、くれ」の世界だ。アンドレはこのような状況を魂の死だと感じていた。こんな状況はたとえ見せかけであれ、人々が信仰する宗教の教えとは真逆の状況だ。人々は、絶望を見えなくするためそんな宗教にすがっているのだが。
アンドレは以下のように書いている。
「こんなことはやめないといけない。私がこういうのは、私がこの世界を愛しているから。この世界とは、西側帝国の外にまだ存在する世界だ。私はそんな世界に陶酔しているし、憑りつかれている。私が心から愛する世界。大きな喜びのある世界。一瞬一瞬、すべてがいとおしい。」
詩、音楽、偉大な文学。これらが、アンドレが愛したものたちだ。これらを守るために、彼は平和を守る要塞の上で戦っていたのだ。
読者の皆さんには、ぜひ、アンドレの以下の記事を読んでほしい。「愛と西側の虚無主義と革命的な楽観主義」
アンドレは稀有な存在であり、勇気のある人物だった。アンドレの栄誉をたたえ鐘を鳴らそう。
以下は、ケネス・レクスロス氏がアンドレのために書いた詩だ。詩人の心を持った戦士アンドレのために。
無言
木々は静かにたたずんでいる
暑さの中で
心を解き放ち
君の思いを伝えてほしい
君はどういう人間だったのか
そして今、君はどういう人間なのか.
鐘の音のように
そう、だれもが鳴らしたことのない鐘の音のように。
アンドレ・ヴルチェク氏による記事はこちら
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