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ジョン・ピルジャー:ジュリアン・アサンジに対するスターリニスト的裁判


<記事原文 寺島先生推薦>
John Pilger: The Stalinist trial of Julian Assange
RT 論説面

2020年9月7日

ジョン・ピルジャー

John Pilger
Journalist, film-maker and author, John Pilger is one of two to win British journalism’s highest award twice. For his documentary films, he has won an Emmy and a British Academy Award, a BAFTA. Among numerous other awards, he has won a Royal Television Society Best Documentary Award. His epic 1979 Cambodia Year Zero is ranked by the British Film Institute as one of the ten most important documentaries of the 20th century
.

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2020年9月25日



 ジュリアン・アサンジの長い壮絶な試練を報じたジョン・ピルジャーは、ウィキリークス編集者である彼の身柄引き渡し公聴会が最終段階に入った9月7日、ロンドンの中央刑事裁判所の建物の前で以下の演説を行った。

 10年以上前にジュリアン・アサンジに初めて会ったとき、私は彼になぜウィキリークスを始めたのかと尋ねました。彼はこう答えました:「透明性と説明責任は、道徳的問題であり、それは公共生活とジャーナリズムの本質でなければならないものだ

 私は、出版人や編集者が道徳をこんな風に唱えるのをこれまで耳にしたことは皆無でした。アサンジが強く思っているのは、ジャーナリストは人々の代理人ではあっても権力の代理人ではない、ということです。つまり、私たち国民は、国民の名で行動していると言い張る人々の最も暗い秘密を知る権利を持っているだ、と彼は言っているのです。

 もし権力者が嘘をつくなら、私たちは真相を知る権利があります。もし彼らが非公式にはこう言い、公の場ではそれと全く反対のことを言うなら、私たちは真相を知る権利があります。ブッシュやブレアがイラクでやったように、彼らが私たちに対して陰謀を企て、民主主義者のふりをするなら、私たちは真相を知る権利があります。

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 こういった目的を持った道徳性こそが権力者たちの結託を脅かすのです。彼らの願望は世界の多く地域を戦争に突入させ、トランプのファシストアメリカの中にジュリアンを生き埋めにすることです。

 2008年の米国国防総省の極秘報告書には、米国がこの新たな道徳的脅威に対抗する方法が詳細に記述されていました。ジュリアン・アサンジに対して個人的な中傷キャンペーンを秘密裏に指示すれば、それは「彼を表舞台に引きずり出し、[そして]刑事訴追へと」つなげることになるだろう、というのです。

 目的はウィキリークスとその創設者を黙らせ、犯罪人に仕立て上げることでした。どのページにも、たった一人の人間に対して、そして言論の自由、思想の自由、さらには民主主義の原則そのものに対する戦争が到来することがはっきり記述されていました。

 帝国の突撃隊とは、自称ジャーナリストたちのことなのでしょう。いわゆる主流派の大物たちのこと。特に意見の分かれる所に狙いを定め、そこを巡回して回る「リベラル派の人々」のことです。

 そして、それが今回起こったことなのです。私は50年以上も記者をしてきましたが、このような中傷キャンペーンは見たことがありませんでした。「記者クラブ」への入会を拒否した男がその人格暗殺を仕組まれました。彼の信念は、ジャーナリズムは人々に奉仕するものであって、人々の上に立つ人間たちに奉仕するものではない、ということです。

 アサンジは彼を迫害する者たちの面目を潰しました。彼は、スクープの上にスクープを次々と重ねました。彼はメディアが推進する戦争の不正を暴き、アメリカの戦争の殺人性、独裁者たちの腐敗、グアンタナモ刑務所の数々の邪悪な振る舞い、を暴露しました。

 彼は西側にいる私たちに鏡を見ることを強要したのです。彼は、メディアの世界で真実の公式の語り手とされている人たちが(帝国の)協力者であることを暴露したのです。彼らのことは、「ビシー」(訳注:第二次世界大戦時、ペタンによる対独協力政府が置かれたフランス・オーベルニュ・ローヌ・アルプス地方北西部の温泉都市)ジャーナリストと呼びたい。アサンジが自分の命が危ないと警告しても、この詐欺師たちはだれ一人信じなかった。スウェーデンでの「セックススキャンダル」は仕組まれたものであり、アメリカという地獄のような場所が彼の辿る究極的な運命になっていると警告しても彼らはだれ一人信じなかった。そして彼の言っていることが正しかったのです。何度も正しかったのです。

 今週行われるロンドンでの身柄引き渡し公聴会はジュリアン・アサンジを葬ろうとする英米の最後の作戦行動です。適正な法手続きはありません。あるのは復讐の手順です。アメリカの起訴は明らかに不正なものであり、まやかしであることは隠しようもありません。これまでの流れを見ると、公聴会は冷戦時代のスターリン主義者たちの動きを彷彿とさせるものです。

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 今日、「マグナ・カルタ」を私たちに与えてくれた国イギリスは、悪意のある外国権力に司法を操作することを許し、自国の主権を放棄したこと、そして、ジュリアンに悪質な心理的拷問を加えていることで以前のイギリスではなくなっています。ジュリアンに加えられている心理的拷問は、国連の専門家であるニルス・メルツァーが指摘したように、ナチスがその犠牲者たちの反抗心を打ち砕くのに最も効果的であるとして、洗練された拷問の一形態です。

 ベルマーシュ刑務所のアサンジを訪ねるたびに、この拷問の影響を目の当たりにしてきました。私が最後に彼と会った時、彼の体重は10キロ以上も落ちていました。腕の筋肉は完全になくなっていました。信じられないことですが、彼のしゃれたユーモアのセンスは昔通りでした。

 アサンジの祖国のオーストラリア政府は、国民的英雄として称賛されるべき自国民に対して密かに陰謀的な企てを図ってきたために、ただひたすら卑怯な態度を示すばかりです。何の見返りもなしに、ジョージ・W・ブッシュがオーストラリアの首相を「副保安官」に任命したわけではありません。

 今後3週間でジュリアン・アサンジに何が起こっても、欧米の報道の自由は、破壊されないにしても、衰退すると言われています。しかし、どの報道機関ですか?ガーディアン紙ですか?BBC、ニューヨーク・タイムズ、ジェフ・ベゾスのワシントン・ポスト紙ですか?

 ここに掲げたメディアのジャーナリストたちは自由に息ができます。ジュリアンと表向き歩調を合わせ、彼の画期的な仕事を利用し、金を稼ぎ、彼を裏切ったガーディアン紙のユダたちは何も恐れることはありません。彼らは権力に必要とされているから安全なのです

 報道の自由の行方は、今では誇り高き少数者にかかっています。つまり、主流メディアの枠外にいる人たち、インターネット上の反体制派で、「記者クラブ」には属しておらず、金持ちでもなければピューリッツァー賞を貰ったわけでもないのに、健全で、体制に反抗的で、道徳的なジャーナリズムを生み出している人々、つまりジュリアン・アサンジのような人たちです。

 他方、私たちの責任は真のジャーナリストの側に立つことです。彼の掛け値のない勇気は、自由が可能であると信じる私たちすべてにとって啓示となるはずです。彼に敬礼!

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