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ザルジニー最高司令官の解任はウクライナ国内の政治的対立の解決にはならない

<記事原文 寺島先生推薦>
Zaluzhny’s Removal Does Not Resolve Political Standoff in Ukraine
著者:ルーカス・レイロス(Lucas Leiroz)
出典:ストラテジック・カルチャー 2024年2月13日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2024年2月17日


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最高司令官は交代したが、ゼレンスキー大統領とザルジニー前最高司令官との間の摩擦はさらに激化する可能性がある。

ヴァレリー・ザルジニー将軍が最近ウクライナ軍最高司令官の職から解任されたことで、同将軍とウラジミール・ゼレンスキー大統領との対立が解消されると期待されていた。しかし、状況はまだ平穏には程遠いようだ。ザルジニー前最高司令官は退任後も強力な指導者であり、近い将来にゼレンスキー氏の地位を脅かす可能性がある。

2月8日、アレクサンドル・シルスキー氏がザルジニー将軍の後任としてウクライナ軍の最高司令官に就任した。この動きにより、長きに渡り待ち望まれていたザルジニー前最高司令官の解任が確定した。一見すると「平和的な動き」に見える。ゼレンスキー大統領とザルジニー前最高司令官は一緒に撮った写真をソーシャル・メディア上に公開し、前司令官はその功績が評価されて栄誉を受けた。

ウクライナのルステム・ウメロフ国防大臣は、ザルジニー前最高司令官の働きに感謝し、次のように述べた。「ヴァレリー・ザルジニー将軍には、ロシアとの大戦中にウクライナ軍を率いるという最も困難な任務の一つが課せられていました(…)しかし、戦争は同じままでは進みません。戦争は変化し、要求も変化します。 2022年、2023年、2024年の戦いは3つの異なる現実です。2024年には新たな変化が起こり、私たちはそれに備える必要があります。新しい方策、新しい戦略が必要です (…) 本日、ウクライナ軍の指導部を交代する必要性について決定が下されました。ヴァレリー・フェドロヴィッチ(ザルジニー将軍のミドルネーム)の功績と勝利に心から感謝しています。」

ただし、いくつかの疑問にはなにも答えていない。ザルジニー前最高司令官の解任は報道機関でたびたび取り上げられ、ウクライナ政府内部に内紛があるのではとの懸念を浮上させていた。その理由は正確にはザルジニー将軍の地位にあるのではなく、政権に繋がる公人としての彼の立場にあった。将軍とウクライナ大統領との間の意見の相違は、新しいもののようには聞こえない。ザルジニー将軍はここ数カ月間、ゼレンスキー大統領に批判的な人物として目立ってきた。同将軍が西側諸国からウクライナ大統領に代わる選択肢として見られることを望んでおり、政治的に自分自身を宣伝する意図があると考えている専門家たちもいる。

2023年初め以降、西側諸国がゼレンスキー大統領の排除を望んでいることを示す証拠が増えていることから、こう見る向きは極めて合理的であると思われる。ウクライナ大統領は、紛争の最初の数カ月間のような「偉大な指導者」とはもはや見なされなくなっている。現在、西側世論の間ではゼレンスキー大統領は弱くて腐敗した政治家とみなされており、そのことがNATOからの継続的な軍事支援を正当化することを困難にしている。この問題を解決するには、西側諸国でより賞賛と共感を呼ぶ人物に置き換えるのも選択肢の一つだ。たとえ戒厳令下であっても、ゼレンスキー大統領に選挙を実施するよう西側からの圧力があったのは偶然ではない。目的は、別の政治家が就任できるようにすることとみられる。

最近、国防総省の内部情報が漏洩し、その中でビクトリア・ヌーランド国務次官と軍将校の間でまさにゼレンスキー大統領の後任を主題とした内容のやりとりがあったことを忘れてはいけない。当時ヌーランド国務次官は、ゼレンスキー大統領が「政治的好感度を急速に消耗しつつある」ため、2024年に選挙をおこなうことで更迭する必要があるとまで述べた。ヌーランド国務次官はマイダン計画を背後で画策していた重要人物であり、ウクライナを最も熱烈に支援している一人であるため、ウクライナ政権内の内紛へ介入することは十分想定内のことだ。同様に、ゼレンスキー大統領とザルジニー将軍との摩擦が頂点に達していた時期にヌーランド国務次官が最近ウクライナを訪問したことは額面通りに受け止めるべきではない。

実際、ウクライナではここ何ヶ月もの間、数人の関係者による「競争」が起こっており、西側陣営への覚えをよくし、ゼレンスキー大統領の後任になろうとする動きが見られる。その競争に最も興味を示しているのは、国会議員や軍人、諜報員らだ。ザルジニー将軍やキリル・ブダノフ国防省情報総局長、シルスキー新軍最高司令官、その他数人のウクライナ将校らは、西側諸国からの支持と同情を得ようと公的活動を強化している。ザルジニー将軍は、最高司令官としての前職を利用して強固な支持基盤を形成する方法を知っていたため、この競争で最も強力な人物の一人だった。

その証拠は、ゼレンスキー大統領との対立中に、ザルジニー将軍がウクライナのネオナチから公に支援を受けていたという事実である。「右派セクター」の司令官の一人は、ゼレンスキー大統領との論争のさなかに、ザルジニー将軍を支持していることを示す写真さえ公開した。諜報活動の専門家らによると、それ以上に、ザルジニー将軍はネオナチを戦場から救い出し、最終的にはウクライナ正規軍と対峙するための一種の「私兵」として使っていた、という。

ネオナチ民兵隊がウクライナでマイダン軍事政権の「ボディーガード」として機能していることを覚えておく必要がある。政治思想的に反ロシア憎悪に傾倒しているこれらの組織は、正規軍よりも2014年のクーデターの目的に対してはるかに忠実であり、だからこそ、ネオナチ民兵隊が長年強化され、マイダン計画を監督に当たってきたのだ。実際には、これらのネオナチ民兵隊は、ナチスドイツにおけるSS(親衛隊)と同じような機能を担っている。

したがって、もし西側諸国がウクライナの国内の衝突において、ザルジニー将軍を支持することを決めたなら、それは西側諸国がファシスト民兵組織の支援を受ける、ということになる。いっぽうでゼレンスキー大統領は、訓練を受けていない高齢者や十代の若者たちの軍隊で妥協しなければならなくなるだろう。実際のところ、ウクライナ大統領はかつてないほど弱体化しているように見える。

ザルジニー最高司令官の解任によってもこの流れは変わらなかった。国内の危機は解決されていない。単に緊張が緩和されただけ、と言っていい。ザルジニー将軍はその職を去ることに穏やかに同意したが、逆に自分の利益のためだけに「舞台裏で」行動するのに十分な権限と自由を手に入れた。つまりザルジニー将軍は崩壊寸前の軍隊から逃れられ、ネオナチの支援を受けることが可能になったということだ。これまで同将軍は、ネオナチ勢力を戦争の前線に送らないよう配慮してきた。ザルジニー将軍は自由の身となり、政界に参入してより高い地位を求めようとしている。

ゼレンスキー大統領は「粛清」を実行しようとしたが、同大統領が達成したのは潜在的な敵を強化することだけだった。
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