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露中の戦略的忍耐力は西アジアの戦火を消せるだろうか?

<記事原文 寺島先生推薦>
Will Russia-China Strategic Patience Extinguish the Fire in West Asia?
筆者:ぺぺ・エスコバル(Pepe Escobar )
出典:The Unz Review  2023年11月21日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月15日





 昔むかし、ドン川の畔(ほとり)の、今はまだ「ウクライナ」と呼ばれている(今後その名前は変わるかもしれないが・・・)地方の南部のステップ地帯に、アケメネス朝ペルシャの偉大な王、ダレイオス一世が、地球上で最も強力な軍を率いて現れたのだが、当時追いかけていた敵から奇妙な伝言を受け取った。その敵とは、遊牧民スキタイの指導者、イダンテュルソス王だった。

 一人のスキタイの使者がペルシャの野営地に到着したのだが、この使者が持ってきたのは、鳥とネズミ、カエルと5本の矢だった。

 それからその使者は急いで立ち去った。

 狡猾なダレイオス一世は、その伝言の意味を「スキタイがペルシャに降伏しようとしている」と取った。

 「早まってはいけません」と声をかけたのは、ダレイオス一世の外交顧問の高官で、たまたま王の義理の弟であったゴブリアスだった。彼がこの暗号を読み解いたのだ。その意味は「汝らペルシャ人が、鳥になって空を行き、ネズミになって地を掘り、カエルになって湖の上を飛び跳ねて逃げ帰らない限り、お主らは二度と故郷には戻れず、この地に留まり、スキタイの矢に撃たれることになるだろう」だと。

 シルクロードができるずっと前の大昔のこの故事が証明している事実は、捕まえるのが大変な弓矢使いの騎馬民族に対して、ユーラシアのステップ地帯で戦争を仕掛けることは、戦略的に悪夢になる、という教訓だ。

 さらにこの故事から伝わることは、ガザ地区にいるサンダル履きのゲリラや瓦礫の中に隠されたRPG(ロシア式対戦車擲弾)を相手に戦争を仕掛けることも、悪夢である、という教訓だ。トンネルから閃光のように小部隊が飛び出し、イスラエルのメルカバ戦車が攻撃され燃やされる、そしてその小部隊は地下に潜っていく。そんな闘いが待っているからだ。

 歴史がもうひとつ教えてくれているのは、ダレイオス一世はスキタイ遊牧民を面と向かっての闘いに引きずり込めなかった、という事実だ。それで紀元前512年、ダレイオス一世は、2500年後に米国が繰り出した一手を先んじて見せたのだった。つまり、勝利宣言をした上で引き上げたのだ。


着陸した航空母艦としてのイスラエル

 米将軍に始まりアラブ街の食料品店まで、西アジアの状況に明るい人々なら誰でも知っている事実は、イスラエルは着陸した航空母艦であり、その使命は、米覇権国家のために西アジアに目を光らせておくことにある、という事実だ。もちろん、犬と犬が食うか食われるかという厳しい地政学上の環境にあって誤解されやすいことは、全ての犬が悪ふざけをしている、と捉えることだ。米国の覇権を求める集団である「影の政府」にとって、さらにはホワイト・ハウスや国防総省にとってもあきらかにそうなのだが、非常に白熱した現状において大事なのは、イスラエルの究極の過激派かつジェノサイド的思想を持つリクード党が主導するネタニヤフ政権であって、「イスラエル」自体ではない、ということだ。

 そう考えれば、ネタニヤフは、いまや困難な状況に置かれている、汗でベタベタのスウェットシャツを身にまとっているキエフのあの役者のまさに鏡像に見える。

 地政学的には米国にとって大助かりだ。覇権国家米国に向けられた大量虐殺の罪に対する批判をそらせるようなライブ映像が、この惑星上のすべてのスマートフォンから流れているのだから。

 そしてこれら全ての行為が法律というベニヤ板の上でおこなわれているのだ。ホワイト・ハウスと国務省が、イスラエル政府に節度のある行動をとるよう「助言」しているのだから。曰く「病院や学校、医療従事者や報道関係者、何千もの女性たち、何千もの子どもたちを爆撃しても問題ない、ただし紳士的にやってくれ」と。

 現在、米覇権国家はとても高価な鉄の浴槽を完備しているアルマダ(無敵艦隊)を東地中海に、お粗末な航空母艦数隻と一隻の原子力潜水艦をペルシア湾に配備した。こんなものが、地下トンネルに潜むゲリラを調べ、イスラエルを「守る」助けになどなるわけがない。

 ネオコンとシオ(ニスト)・コンの最終目標は、いうまでもなく、ヒズボラやシリア、イラクのハシュド・アル・シャアビ、そしてイランだ。つまり「抵抗する枢軸国」だ。

 イラン・ロシア・中国が、ネオコンが唱える新たな「悪の枢軸国」になったが、この三国は偶然にも「ユーラシア統合を目指す三大勢力」だ。これら三国はガザにおける大虐殺行為を、イスラエルと米国の手によるものだ、と捉えている。そしてその重要な狙いもはっきりと特定している。それは、「エネルギー」だ。

 偉大すぎる経済学者であるマイケル・ハドソン氏が、こう記している。「いま、まさに「十字軍」と全く同じようなことが起こっている。これはエネルギーを制するのは誰かを決めるための真の戦いなのだ。というのも、繰り返しになるが、大事なことは、エネルギーの流れを制することができれば、昨年、米国がドイツに対しておこなったノルド・ストリーム破壊事例と同じことを世界全体に対しておこなえることになるという事実があるからだ」と。


動き始めたBRICS10

 そしていま、私たちが目にしている素晴らしい事例は、OIC(イスラム諸国会議機構)/アラブ諸国外相団が、いくつかの重要な国々の首都を歴訪し、ガザでの完全休戦計画とパレスチナ独立国家に向けた交渉を推進しようとしていることだ。この外相団は、「ガザ接触団(the Gaza Contact Group)」とよばれ、サウジアラビアやエジプト、ヨルダン、トルコ、インドネシア、ナイジェリア、パレスチナが参加している。

 この外相団の最初の訪問地は北京で、王毅外相と面会した。次の訪問先はモスクワで、セルゲイ・ラブロフ外相と面会した。このことから知っておく必要がある事実は、まだ正式には結成されていないBRICS11がすでに機能している、という事実だ。

 いや、実のところはBRICS10だ。というのも、親米覇権国家および親シオニストであるハビエル・「チェーンソーで切り刻む*」・ミレイ氏がアルゼンチンの大統領に選出されたからだ。その結果、アルゼンチンは、おそらく、ロシア主導の下BRICS11が結成されることになっていた2024年1月1日の時点でBRICSから離れることになりそうだ。
*選挙期間中、ミレイ候補は、チェーンソーを持って「既存政党をぶった斬る」というパフォーマンスを見せていた。

 サウジアラビアで開催されたOIC/アラブ連盟によるパレスチナ問題に関する特別会議では、穏健な最終宣言しか出せず、グローバル・サウス/グローバル・マジョリティのほぼ全体を落胆させていた。しかし、それ以降ある動きが始まったようだ。

 各国の外相らが密に連絡を取り始めたのだ。最初はエジプトが中国と、その後イランやトルコと協議し始めた。直感的な言い方に聞こえるかもしれないが、これらの動きは、今の状況の重大さを裏付けるものだ。このことは、イランの外相がこの外相団に加わっていない理由の説明になる。これらの外相団を率いているのは、事実上サウジアラビアとエジプトだからだ。

 ラブロフ外相との面会がおこなわれたのは、ちょうどパレスチナ問題に関するBRICSのオンラインでの臨時会合と同日だった。この臨時会合は、南アフリカ共和国が招集したものだった。極めて重要な点は、話をしている人々の背後に、新たな加盟国であるイランとエジプト、エチオピアの国旗が見えたことだ。

 イランのライースィー大統領は、歯に衣を着せず、BRICS加盟諸国に使える全ての政治的・経済的手段を用いて、イスラエルに対して圧力をかけるよう求めた。習近平国家主席は、再度「二国家解決」を要求し、中国がその仲介に入る選択肢を示した。

 習近平国家主席は、初めて自身のことばで、こう言い放った。「パレスチナ問題の解決なしに、中東の安全保障は成り立ちません。これまで多くの機会で強調してきたことですが、パレスチナ・イスラエル間の紛争の連鎖を断ち切ることができる方策には、『二国家解決』しかありません。つまり、パレスチナに正当な国家資格を保証することです。そして、パレスチナ独立国家の成立を保証することです」と。さらにその実現には、国際的な会議を持つべきだ、とも述べた。

 これらすべての動きの裏には、今後数日後に、BRICS10が団結してこの問題に何らかの対処を見せる見通しが透けて見える。今後、イスラエル/米国政府に対して最大限の圧力をかけることで停戦を求め、グローバル・マジョリティほぼ全体からの支持を得る方向に向かうだろう。ただし言うまでもないことだが、米覇権国家が、それがうまくいくことを見逃す、という保証はない。

 例えば、トルコを含めた秘密交渉は難航している。その構想は、トルコ政府が、アゼルバイジャンのバクーからトルコのジェイハンに繋がるBTCパイプラインを使ったイスラエルへの石油供給を断つ、というものだった。その石油は、バクーからタンカーでイスラエルのアシュケロンに運ばれている。そうやって運ばれる石油が、イスラエルの軍機構が使用する石油の少なくとも4割を占めているからだ。

 いまだにNATOに加盟しているトルコ政府は、躊躇した。というのも、米国からの手厳しい反応が避けられなくなるからだ。

 長期的に見て、サウジアラビア政府は、もっと大胆な行動を取ることも可能だ。2002年の「アラブ平和構想」に基づき、パレスチナ問題の決定的な解決がない限りは、イスラエルへの石油輸出を止める、という選択肢を取ることもできるのだ。しかしMbS(ムハンマド・ビン・サルマン)王子はそうはしないだろう。というのも、サウジアラビアの富はすべてロンドンとワシントンに投資されているからだ。ペトロ・人民元が実現する道のりは、まだまだ長く曲がりくねり、でこぼこだ。

 現在、「レアルポリティーク」主義を地で行くジョン・ミアシャイマー教授のような人々が正しく指摘しているとおり、イスラエル・パレスチナ問題を交渉で解決するのは不可能だ。現在の状況を一見すれば、中露やアラブ諸国が提唱している「二国家解決」は死に体だといえる。ミアシャイマーの指摘どおり、パレスチナ国家というのは、米国における「インディアン居留地のようになる」だろう。つまり、「互いに分断され、孤立させられ、国家の形にはならない」ということだ。


大虐殺は如何にしても止めなければ

 ではロシアはどうすればいいのか?以下に、情報に基づくとてもよいヒントを示す。

 「迷宮にいるプーチン」ということばがもつ意味は、ロシア政府が積極的にこの問題に関わっており、BRICS10を使って、西アジアに平和を実現しようとしている、ということだ。つまり永久に発生する米覇権国家によるハイブリッド戦争の中にあっても、ロシア国内の安定は維持されている、ということだ。これらの全ての戦争はすべて繋がっているなかでのことだ。

 いつもの連中が火を付けた西アジアの問題に関して戦略的友好関係のもとで中露がとった方策は、すべて戦略的な時期と忍耐力が関わってくるものだ。そのことをクレムリンも中南海も大量に提示している。
 
 裏で何が起こっているのかを本当に理解できる人はいない。絡み合ったいくつもの戦争の裏で深い影が暗躍している。西アジアのことになれば特に、砂漠の砂塵から舞い上がる蜃気楼で全てが包まれて見えなくなるのが常だ。

 だが少なくとも、私たちはペルシャ湾岸諸王国の周りの蜃気楼を取り払うことは可能だろう。つまりGCC(湾岸協力理事会)だ。特に、サウジアラビアのMbS王子と彼の相談相手であるアラブ首長国連邦のMbZ(ムハンマド・ビン・ザーイドン)王子の本心がどこにあるかについて、だ。非常に重要な事実は、アラブ連盟とOIC(イスラム諸国会議機構)がGCCの統制下にある、という事実だ。

 しかし、サウジアラビア政府もアラブ首長国連邦政府も、BRICS10に加盟しているのだから、両政府は、米覇権国家のあらたな一手が、西アジアにおける一帯一路構想(BRI)の前進を足踏みさせるために、この地域で戦火を起こしたという状況を、しっかりわかっているはずだ。

 そのとおりだ。この戦争は中国に対するハイブリット戦争を実際の熱戦に昇華させるための戦争なのだ。「パレスチナ問題」の最終解決策と並ぶ目的はそこだ。

 米覇権国家から見て、これらアラブの砂漠の遊牧民二国家を米国が次に繰り出すD.O.A(dead or alive 生きるか死ぬか)的一手にガッチリと組み込ませることができれば、大儲けなのだ。その一手がIMEC(インド―中東回廊)だ。これは、欧州―イスラエル―アラブ首長国連邦―サウジアラビア―インドをつなぐ貿易回廊で、理論上はBRIの競争相手となる構想だ。

 アラブ界隈の隅から隅までで話し合われている大きな主題のひとつは、なぜ、魂を売り飛ばしてしまっているGCC(湾岸協力理事会)が、シオニズムと対決することよりも、パレスチナ人たちの抵抗を消してしまうことの方に情熱を傾けてしまっているのか、についてだ。

 少なくともその答えのひとつとなるのは、GCCが今おこなわれている大虐殺に対して、無反応という反応(いま、必死に埋め合わせしようとしているが)を見せていることだ。このことは、米覇権国家が体系的におこなっているイラクやシリア、アフガニスタン、リビア、イエメン、スーダンやソマリアに対する、スローモーションでの大虐殺や強姦、略奪に対して、無反応という反応を見せているのと同じことだ。

 しかし、大虐殺のこととなると、阻止しないことは、まったくありえないことで、非人間的行為だ。しかし今後の展開はまだ先が見えない。今後の方向性は、GCCが立場を決め、精神的にも地政学的にもより広いアラブ世界から完全に袂を分かつ方を選ぶかどうかにかかっている。

 この大虐殺は、21世紀前半を定義付ける重要な分かれ道だ。グローバル・サウス/グローバル・マジョリティ諸国が完全に団結し、どの勢力が歴史上正しい道を進んでいるのかをはっきりさせられるかどうかの。次にどう動こうとも、米覇権国家には西アジア全体やハートランド、大ユーラシア、グローバル・サウス/グローバル・マジョリティを完全に失ってしまうという終幕が待っているように思える。

 ブローバック(外政上の失敗が自国の不利益に跳ね返ってくること)の働きというのは予測不可能だ。西アジアの「着陸した航空母艦」による狂気の沙汰のせいで、中露の戦略的友好関係がさらに加速し、21世紀が「ユーラシアの世紀」になるという道のりがさらに強固なものになる、という結果しか招かなかったのだから。
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Re: No title

拝復 L 様
ご指摘、ありがとうございました。
直しておきました。
管理人

No title

 日々の翻訳とご紹介、ありがとうございます。
 ところで、
>BRICSのオンラインでの臨時会合と同日だった。この臨時会合は、南アフリカ共和国が招集したものだった。極めて重要な点は、話をしている人々の背後に、新たな加盟国であるイランとエジプト、”エストニア”の国旗が見えたことだ。
 ”エストニア”になってますが、BRICS新加盟国だから「エチオピア」でしょうね。

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