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CIAはどのようにグーグルを作ったのか:大規模な監視や終わりのない戦争、そしてスカイネット(Skynet)などの背後にある秘密の連携網の内側

<記事原文 寺島先生推薦>
How the CIA Made Google: Inside the Secret
Network Behind Mass Surveillance, Endless War, and Skynet

筆者:ナフィーズ・アームド(Nafeez Ahmed)
出典:INTERNATIONALIST 360°  2015年1月24日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年12月12日


第一部
 陰の連携網

第二部-なぜグーグルはNSA(国家安全保障局)になったのか
大規模な監視や終わりのない戦争、そしてスカイネット(Skynet)などの背後にある秘密の連携網の内側
 戦争マシーン
 知は力なり
 「長期戦争」
 ヨーダとソビエト
 エンロンやタリバン、そしてイラク
 エンロンとペンタゴンの戦争計画
 ペンタゴンのプロパガンダ担当
 監視とプロパガンダとの結びつき
 非正規戦争と疑似テロリズム
 戦略的コミュニケーション:国内外の戦争プロパガンダ
 帝国の逆襲
 陰の存在はなくなる



第一部

 INSURGE INTELLIGENCE(:反乱的機密情報組織。新しいクラウドファンド型の報道関係調査組織)が、アメリカの情報機関がグーグルを支援し、育てた意図には、情報の制御を通じて世界を支配しようとすることあったと糾弾する独占的な記事を掲載した。その記事によると、グーグルは、NSA(国家安全保障局)とCIA(中央情報局)から設立資金を受け、「情報優位性」を維持するため米国の情報機関によって選ばれた数ある民間のスタート・アップ企業*の最初の企業に過ぎなかった、という。
スタートアップ企業*・・・新たなビジネスモデルを開発する企業のこと

 この巧妙な戦略の起源は、ペンタゴン(国防総省)が内密に資金提供していたある一連の組織にさかのぼる。この組織が、過去20年にわたり、米国政府と事業者や産業、金融、企業、およびメディア部門のエリート層との架け橋として機能していた。この組織が、株式会社アメリカにおいて最も強力な特定利益を持つ一部の企業が、民主的な責任と法の支配を組織的に回避し、米国および世界中の政府政策、および世論に影響を与えることを可能にしたのだ。その結果は惨憺たるものだ:NSAの大規模監視や、世界戦争の恒常化、および米軍をスカイネット*(Skynet)に変える新しい取り組み、などだ。
スカイネット *・・・ 映画『ターミネーター』などに登場する、自我を持つ架空のAIコンピュータのこと

 パリでのシャルリー・エブド襲撃*を受けて、西側諸国の政府はテロ対策を名目に、大規模な監視権限の拡大やインターネットの統制を急速に合法化しようとしている。
シャルリー・エブド襲撃*・・2015年1月7日、フランスの風刺週刊新聞『シャルリー・エブド』の本社がイスラム過激派に襲撃され、12人が殺害された事件(コトバンクより)

 欧米の政治家たちは、NSA(米国家安全保障局)方式の監視を保護し、暗号を禁止してインターネットの個人情報に侵入する能力を向上させることを求めている。ひとつの構想としては、電気通信会社間の協同関係を構築し、「適切」と考えられる状況で「憎悪と暴力を助長する」と見なされる内容を一方的に削除することがある。政府および議会段階で激しい議論が行われており、弁護士と依頼人の間の機密事項の保持という原則に制限をかける可能性も探られている。

 これらの対策がシャルリー・エブド襲撃の再来を防ぐのにどれだけ役立ったかは謎のままだ。特に、テロリストたちはすでにフランスの情報機関のレーダーに最大で10年間も載っていることを考えればそうだ。

 この話に新味はほとんどない。9/11の残虐行為を皮切りに多くのテロ攻撃が発生し、それぞれの攻撃が市民の自由を犠牲にした過激な国家権力の拡大をもたらし、さらにはテロリストが潜むとされる地域に対して軍事力が向けられてきた。しかし、この十分に試行された定式が危険を減少させた兆候はほとんどない。むしろ、我々は深化する暴力の悪循環に閉じ込められているようで、明確な終わりが見えない。

 各国政府当局がその権限を拡大しようとする中、INSURGE INTELLIGENCEの影響力は、米国の情報機関が私たちの現在知っているウェブ上のプラットフォームの育成に関わる程度にまで増している。そしてその正真正銘の目的は、その技術を利用して、世界的な「情報戦争」を戦うための枠組みをつくることだ。この戦争は少数のエリートが我々多数者に君臨する力を有することを正当化するのが目的だ。この話の要となるのは、21世紀を多くの面で定義づけ、目立たずどこにでもその存在感を示す企業であるグーグルだ。

 グーグルは、自社を友好的で洒落た使いやすいな技術企業と位置付け、自社が傑出できたのは、技術や運、そして本物の革新を重ね合わすことができたからだ、と述べている。これは事実だ。しかし、それは一面にすぎない。実際には、グーグルはその背後に米国の軍産複合体が潜んでいる煙幕だ。

 ここで初めて明らかにされるグーグルの台頭の内幕は、グーグル社だけの話では到底すまない、いくつかの厄介な問題を露わにする。その結果、アメリカの国家安全保障諸機関の進化を促進し、その運営から法外な利益を得る寄生的な連携網の姿に脚光が当てられることになろう。

陰の連携網

 過去20年間、米国の外交および諜報戦略は、イスラム世界に対する長期にわたる軍事侵略と市民の包括的な監視から成る、世界的な「テロとの戦い」をもたらした。これらの戦略は、ペンタゴン内外に存在する秘密の連携網によって、指示されたものではないにせよ、生み出されたものと言えるだろう。

 クリントン政権下で設立され、ブッシュ政権下で統合され、そしてオバマ政権下でしっかりと確立されたこの超党派の連携網は、ほとんどがネオコン的思想を持つ者たちから成り立ち、2015年初頭にはアメリカ国防総省(DoD)内でその支配を確立した。これはペンタゴンの外部にある得体の知れない企業組織を通じて運営されているが、実際の管理はペンタゴンが行なっている。

 1999年、CIAは有望なスタート・アップ企業に資金を提供し、情報機関に有益な技術を生み出す可能性があると考えたため、独自のベンチャー・キャピタル*投資会社であるIn-Q-Tel*を設立した。しかし、In-Q-Telの着想はそれよりも早い。ペンタゴンが独自の民間部門組織を設立した時だ。

ベンチャー・キャピタル*・・・高い成長率が見込まれる未上場企業に対して、主に投資をおこなう投資会社
In-Q-Tel*・・・1999 年に米国CIAが先端ITを取り込むために設立したベンチャー・キャピタルである。事業規模は小さいが、市場メカニズムを活用し、両用技術、ITの振興策として成果を挙げている。(国立国会図書館サイト)


 「ハイランズ・フォーラム(Highlands Forum)」として知られるこの民間の連携網は、1990年代半ば以来、ペンタゴンと軍の外の有力なアメリカのエリート層との架け橋として機能している。政権は何度か変わったが、ハイランズ・フォーラムの周辺の連携網は、アメリカの国防政策支配をますます成功させている。

 ブーズ・アレン・ハミルトン(Booz Allen Hamilton)社やサイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル・コーポレーション社のような巨大防衛関連企業は、政府との間に回転ドアを持ち、防衛政策に影響を与え、同時に利益を得る能力を持つことから、「影の情報機関」と呼ばれることがある。しかし、これらの請負業者は権力と資金をめぐって競争する一方で、重要なところでは協力もしている。ハイランズ・フォーラムは20年にわたり、影の情報社会の最も著名な構成員が、関連業界の他の指導者たちとともに、米国政府高官と集うオフレコの場を提供してきた。

 私が初めてこの連携網の存在を知ったのは2014年11月、オンライン雑誌『VICE』の『Motherboard』欄で、チャック・ヘーゲル米国防長官が新たに発表した「国防革新構想」の正体がスカイ・ネットの構築、あるいはそれに類するものであり、本質的には自動化されたロボット戦の新時代を支配するためのものだ、と報じたときだった。

 この記事は、ワシントンDCにある国防大学(NDU)(とくに、米国の国防政策を開発するための最高水準の研究を行なっている)が2ヶ月前に発表した、ペンタゴンが資金提供した「白書」に基づいている。この白書は、新たな構想の背景にある考え方と、それを利用しようとする画期的な科学技術の発展を明らかにしている。


第二部-なぜグーグルはNSA(国家安全保障局)になったのか
大規模な監視や終わりのない戦争、そしてスカイネット(Skynet)などの背後にある秘密の連携網の内側


 大規模な監視は、統制に関わるものだ。その推進者たちは、無秩序に歯止めをかけ、次の脅威を完全に警戒するために必要な統制である、と主張(本気で信じているかもしれない)している。しかし、政治腐敗の横行や経済格差の拡大、気候変動やエネルギー変動による資源にかけられている圧力の増大といった状況の中で、大規模な監視は、国民の犠牲の上に、単に権力を永続させるための道具になりかねない。

 見落とされがちだが、大規模な監視の主要な機能は、敵対者を知り尽くすことによって彼らを敗北に導くことだ。問題は、敵がテロリストだけではないということだ。あなたと私なのだ。今日に至るまで、プロパガンダとしての情報戦の役割は本格化しているが、多くのメディアは組織的にそれを無視している。

 ここでINSURGE INTELLIGENCEが暴露しているのは、ペンタゴンのハイランズ・フォーラムがグーグルのようなハイテク大企業を取り込み、大規模な監視を追求する中で、アメリカ政府やアメリカ国民、そして世界に対する情報戦争の一環として、終わらない戦争ややむことのない軍拡政策を正当化させるために、メディアを操作する秘密工作にいかに重要な役割を果たしてきたか、についてだ。


戦争マシーン


キース・アレグザンダー(Keith Alexander)将軍(中央)(2005年から2014年までNSA長官と中央安全保障局長、また2010年から2014年まで米国サイバー軍の指揮官)、2010年ハイランズ・フォーラムのサイバー抑止に関する話し合いにて。

 2013年9月、モンテリー国際問題研究所のサイバー・セキュリティ・イニシアチブ(MIIS CySec)のウェブサイトに、ペンタゴンのハイランズ・フォーラムの創設者の一人であり、米国防請負会社SAICの副社長であるCIA相談役のジェフリー・クーパーによる「サイバー抑止力」に関する論文の最終版が掲載された。この論文は、2010年にハイランズ・フォーラムで行なわれた「サイバー軍の関与と抑止」と題する話し合いで、当時のNSA長官キース・アレグザンダー将軍に提出されたものである。

 MIIS CySecは、同組織の所長とフォーラムのリチャード・オニール会長の間で調印された覚書を通じて、ペンタゴンのハイランズ・フォーラムと正式に提携しており、この構想自体には、フェイスブックやグーグル、そしてイーベイなどのハイテク企業に10億ドル規模の評価額を出すことを主導したゴールドマン・サックスの重役、ジョージ・C・リーが出資している。

 クーパーの目を見張るような論文は、MIISのサイトではもう入手できないが、アメリカ法曹協会が主催した公開国家安全保障会議のデータ保存ログから、その最終版を入手することができる。クーパーは現在、SAIC/Leidos社の最高技術責任者を務めており、ブーズ・アレン・ハミルトン社をはじめとする防衛技術企業連合体の一員として、NSAの監視能力の開発を請け負っている。

 ハイランズ・フォーラムによるNSA長官への説明は、国防次官(情報担当)の委託により、これまでのフォーラムで開発された考え方に基づいて行われた。この説明は、ワシントンDCの戦略国際問題研究所(CSIS)での、MIIS Cysec所長のイタマラ・ロシャール(Itamara Lochard)博士が司会を務めたハイランズ・フォーラムの「非公開の話し合い」で、アレグザンダー将軍に提出された。

 ラムズフェルドの情報戦略工程表と同様、クーパーはNSA長官に対して、「デジタル情報システム」を「脆弱性の大きな源」であると同時に、「国家安全保障」のための「強力な道具であり武器」である、と説明した。彼は、米国のサイバー情報部門が、潜在的敵対勢力と実際の敵対勢力に関する「詳細な知識」を最大限に活用する必要性を提唱し、これによって威嚇や報復のために利用できる「すべての潜在的な影響力」を特定できるようにした。クーパーによると、「連携網による抑止」を可能にするために米国の情報機関が求められることは、「関係する特定の連携網とその結びつきの型(結びつきの種類と強さを含む)についての深い理解と具体的な知識」の開発であり、そのためには、認知科学と行動科学を利用して、その型の予測の助けとすることが必須となる、という。彼の論文は、さらに進んで、潜在的な「敵対者」や「対抗相手」に関する監視やソーシャル・メディア探索から得られたデータを簡略的に捉えるための理論的構造についても本質的に踏み込んでいる。

 このNSA長官(ハイランズ・フォーラムのもう一人の代表であるミシェル・ウェスランダー・クエイド)への説明会の1年後、ミシェル・ウェスランダー・クエイドはグーグルに入社、防衛情報次官補を助言するペンタゴンの役職を離れて同社の最高技術責任者となった。その2カ月前、国防科学委員会(DSB)の国防情報に関する対策本部は、対反乱(COIN)や情報、監視、そして偵察(IRS)作戦に関する報告書を発表した。クエイドは、報告書作成にあたって国防科学委員会対策本部に助言を与える説明会をおこなった政府情報専門家の一人である。対策本部へ説明したもう一人の専門家は、ハイランズ・フォーラムを退いたリントン・ウェルズである。DSBの報告書そのものは、ブッシュ大統領に任命されたジェームズ・クラッパー国防次官(当時情報担当)が依頼したもの。アレグザンダー将軍にハイランズ・フォーラムでの説明を依頼したのもクラッパーだった。クラッパーは現在、オバマの国家情報長官であり、彼は2013年3月、NSAはアメリカ市民のデータをまったく収集していないと主張するという、議会で宣誓した上での嘘をついた。

 ミシェル・クエイドの米軍情報機関全体における実績は、これらの情報機関においてウェブ上の手段やクラウド技術を活用するような移行を実現したことであった。彼女の思想は、DSB対策本部報告書の主要部分に顕著に表れている。その目的は、ペンタゴンの「投資決定に影響を与える」ことであり、「反乱を評価し、その環境にある人々を理解し、COIN作戦を支援するための適切な情報能力を推奨すること」であると説明されている。

 報告書は、南アジアや東南アジア、北アフリカ、西アフリカ、中東、南アメリカなど24カ国について、今後数年間に米軍に「COINの課題」をもたらす可能性のある国名を挙げている。その中には、パキスタンやメキシコ、イエメン、ナイジェリア、グアテマラ、ガザ/西岸、エジプト、サウジアラビア、レバノンなどの「独裁政権」が含まれている。報告書は、「経済危機や気候変動、人口圧力、資源不足、あるいは統治力の欠如が、これらの国家(あるいは他の国家)を破綻させるか、侵略者/反乱軍の標的になるほど弱体化させる可能性がある」と論じている。そこから、「グローバルな情報基盤」と「ソーシャル・メディア」は、地域的な影響を持つ「出来事の速度や激しさ、そして勢いを急速に増幅させる」ことができる、という。さらに、「そのような地域は、米国本土への攻撃や人員を募集、作戦に資金を供給、訓練そして作戦を供給するための聖域となる可能性がある」とした。

 この文脈では、大規模な武力行使が必要となる前に、反乱を回避する、あるいはまだ初期の段階で反乱に対して先手を打つために、軍の「left of bang」*作戦の能力を高めることが急務である。報告書はさらに、「インターネットとソーシャル・メディアは、識字率が高いだけでなく、インターネットに接続されている社会における社会内のつながりを分析するデータの重要な情報源である」と結論づけている。そのためには、「住民を中心とした作戦」に備えるために、「さまざまな文化や言語にわたるブログ圏やその他のソーシャル・メディアを監視する」必要がある、という。
「left of bang」*・・・Patrick Van Horne & Jason A. Rileyの著書。副題:海兵隊の戦闘作戦計画で生き残れ!から取られた作戦名。「兆候を感知し、すぐ行動に移せ」という意味。

 この報告書によると、ペンタゴンはまた、「国民や人との繋がり、地理、その他の経済的・社会的特性に関する基礎データ」に基づき、「国民の行動をよりよく理解し、予測する」ための「行動の定型化と予行演習」の能力を高めなければならない、という。さらに、このような「国民を中心とした作戦」は、資源問題に由来する「水危機や農業に関する問題、環境に関する問題、賃貸料に基づくものであろうと資源紛争の初期」においても「ますます」必要とされるようになり、これには、「天然資源の枠組みの有機的な一部としての国民動態」の監視も含まれなければならない、という。

 その他の増強分野としては、「データを整理し検索可能にするための一貫した時空間構造」におけるあらゆる形態の情報のための、「頭上ビデオによる監視」や「高解像度の地形情報」、「クラウド・コンピューティング*能力」、「データ移動」であり、「時空間記号化と解析を支援」できる「社会科学構造」を開発し、「個人のすべての取引に個人情報を紐付けする」ために、「最も基本的な行政上のサービスを受けられる所に、様々な形態の生体認証技術(指紋、網膜スキャン、DNAサンプルなど)を配布」することなどだ。加えて、ペンタゴンが「国民に対する深い理解」を深める補助として、「人類学的、社会文化的、歴史的、人文地理学的、教育的、公衆衛生学的、その他多くの種類の社会・行動科学的データと情報」を開発するのを支援するために、学術団体を導入しなければならない、とある。
クラウド・コンピューティング*・・・ウェブ上でコンピューター作業をおこなうこと

 グーグルに入社して数カ月後、クエイドは2011年8月、ペンタゴンの国防情報システム局(DISA)顧客・産業フォーラムにグーグル社を代表して出席した。このフォーラムは、「サービス、戦闘司令部、省庁、連合軍」に、「我々の戦闘員を支援する能力を実現し、確保するための革新的技術について、産業界と直接関わる機会」を提供するものだった。この催しへの参加者たちは、「国防計画情報環境」の構築に不可欠な存在だった。この環境とは、「ネットワークやコンピューティング、環境、サービス、情報保証、およびネットワーク運用自動化(NetOps)機能を含む統合プラットフォーム」と定義され、戦闘員が「軍事作戦の全局面にわたり、情報に接続し、自分自身を特定し、情報を発見および共有し、協力する」ためのものだ、という。フォーラムの討論者のほとんどは国防総省の役員で、グーグルのクエイドを含むわずか4人だけが業界の討論者だった。


SAIC/Leidos’
ジェフリー・クーパー(中央)(ペンタゴンのハイランズ・フォーラムの創設者のうちの一人)。2010年のCSISで開催されたサイバー抑止に関するフォーラム話し合いで、ゴールドマン・サックスの共同経営者であるフィル・ヴェナブルズ(右)の発言を聞いている。


 DISAの高官たちもハイランズ・フォーラムに出席している。例えば、ポール・フリドリヒス(Paul Friedrichs)はDISAの最高情報セキュリティ機関の技術部長であり主任技術者だ。


知は力なり

 以上を考慮すると、2012年、ハイランズ・フォーラムの共同議長であるレジナ・デューガンがDARPA(国防高等研究計画局)を離れ、グーグルの上級管理者として入社した数か月後に、当時のNSA長官であるキース・アレグザンダー将軍がグーグルの創業者であるセルゲイ・ブリン(Sergey Brin)と情報共有についてメールでやり取りしていたことはそれほど驚くことではない。これらのメールは、調査ジャーナリストのジェイソン・レオポルド(Jason Leopold)が情報公開法に基づいて入手したもの。アレグザンダー将軍はグーグルを「米軍の国防産業基地の重要な構成員」と表現した。この立場は、ミシェル・クエイドが、どうやら、固めていたものだ。ブリンと前NSA長官(アレグザンダー将軍)との陽気な関係は、ブリンが1990年代半ば以来、CIAおよびNSAの代表と連絡を取っており、これらの機関がグーグル検索エンジンの創設に一部資金提供したり監督していたことを考えれば、完全に理解できる。

 2014年7月、クエイドは、Force 2025変革構想の一環として米陸軍の「サイバー能力」の向上を促進することになる「急速取得セル」の創造について米陸軍の公開討論会で講演した。彼女はペンタゴンの高官たちに対して、「陸軍の2025年の技術目標の多くは、今日利用可能な商用技術または開発中の技術を活用して実現できる」と述べ、さらに「産業界は新しい視点を支援するために陸軍と提携する準備ができている」と強調した。同じ頃、ほとんどのメディアはグーグルがペンタゴンの資金提供から距離を置こうとしていると報じていたが、実際にはグーグルは戦術を切り替え、独自に商業技術を開発し、それをペンタゴンが変革目標とする軍事面に応用させようとしたのだ。

 とは言っても、クエイドはグーグルと米国軍の情報機関との関係において唯一の核心人物というわけではない。

 2004年、グーグルはCIAのベンチャー企業投資会社であるIn-Q-Telから衛星地図ソフトウェアKeyholeを買収した。その後1年、In-Q-Telの技術評価部長であり、最初にKeyholeへの投資で重要な役割を果たしたロブ・ペインター(Rob Painter)はグーグルに移った。In-Q-Telでのペインターの仕事は、「CIAやアメリカ国家地理空間情報局National Geospatial-Intelligence Agency(NGA)、およびアメリカ国防情報局Defense Intelligence Agency(DIA)にとって非常に価値のあると考えられる新しいスタート・アップ技術企業を特定し、調査し、評価すること」に焦点を当てていた。実際に、NGAはKeyholeを通じて得られた情報が、2003年以降のイラクでの米国の作戦を支援するためにNSAによって使用されたことを確認していた。

 元米陸軍特殊作戦情報将校のペインターが、2005年7月にグーグルで新たに就いた仕事は、Google Earth Enterprise(Keyhole改め)の連邦管理者だった。2007年ごろには、ペインターはグーグルの連邦政府の主任技術者となっていた。

 その年、ペインターはワシントン・ポスト紙に対して、グーグルが、アメリカ政府に対して高度で秘密版の製品を販売し始めている「初期の段階」にいると語った。「グーグルは過去1年間にわたり、技術製品を軍事、民間機関、および情報機関の必要性に適応させるために、ワシントン地域の営業力を強化してきた」とポストは報じた。ペンタゴンは既に、ロッキード・マーチン社とのパートナーシップで開発されたGoogle Earthのバージョンを使用しており、「イラクの地上における軍事情報を表示する」ために利用していた。これには、「イラクの主要な地域の鳥瞰」や、「バグダッドのスンニ派とシーア派の地区、およびバグダッドにある米軍とイラク軍の基地の表示」も含まれていた。「ロッキード社もグーグルも、地理空間機関がデータをどのように使用しているかは明らかにしなかった」。 グーグルは政府に対して新しい「Google Earthの強化版」や「政府機関が国内で使用できる検索エンジン」を販売することを目指していた。

 2010年に流出したホワイトハウスの記録により、グーグルの幹部が複数回、米国国家安全保障会議の高官たちと会合を持っていたことが明らかになった。グーグルの政府担当部長であるアラン・デイビッドソンは、2009年に少なくとも3回、米国国家安全保障会議の高官たちと会合を持った。その中にはロシア担当のホワイトハウス上級部長であるマイク・マクフォールと中東担当顧問であるダニエル・シャピロもいた。同様に、グーグルの特許出願から明らかになったところによれば、同社は意図的に「ペイロード」データを収集していた。これは、個々のWi-Fiネットワークから「地理位置情報」の特定を可能にするものだった。同じ年に、グーグルはNSAとの合意書に署名し、サイバー・セキュリティの名の下で同社の利用者な個人情報、ハードウェア、ソフトウェアへの制限なしの接続を提供していることが明らかになった。これらの合意は、当時のアレグザンダー将軍が国内の数百の通信企業のCEOとの繰り返される話し合いに専心して出来たものだった。

 したがって、米国の軍産複合体の主要な貢献団体および基盤はグーグルだけではない。それはインターネット全体であり、広範囲にわたる民間会社だ。その多くは米国の情報機関(またはその共同体に組み込まれた強力な資金提供者)の庇護と資金援助を受けている。これがインターネットと通信インフラを維持している。それはまた、CIAのベンチャー企業であるIn-Q-Telに最先端の技術を提供する多くの新興企業であり、そこでそれらの技術は軍事情報共同体全体での応用と発展のために取り入れたり、進化させることが可能になるのだ。最終的に、NSAなどの機関が使用するグローバル監視装置と機密ツールは、ほとんどがペンタゴンの外部で運営されているグーグルのような外部の研究者や民間請負業者によって作られてきた。

 ペンタゴンのハイランズ・フォーラムの活動に反映されているこの構造により、ペンタゴンは、そうでなければ見逃してしまうような技術革新を迅速に利用することができる一方で、そのような技術が実際に何に使われているのかという不快な疑問を避けるために、少なくとも表向きはこの民間部門と距離を置いている。

 しかし、次のことは、実際のところ、明らかではないだろうか?ペンタゴンは、公然にせよ非公然にせよ、戦争が目的なのだ。グーグルのような企業は、NSAの技術的監視基盤の構築を支援することで、軍産複合体が最も得意とする「現金のための殺人」に加担することになる。

 大規模な監視の性質が示唆するように、その対象はテロリストだけではない。ひいては「テロ容疑者」や「潜在的テロリスト」であり、その結果、集団全体(特に政治活動家)を米国の諜報機関による監視の対象とし、活動中および将来の脅威を特定して、国内外で想定されるポピュリストの反乱を警戒しなければならなくなる。予測分析と行動特徴は、ここで極めて重要な役割を果たす。

 大規模な監視とデータ利用はまた、殺人を伴う特殊作戦実行を支援するという、独特の作戦目的も持っている。たとえば、怪しげなアルゴリズムによってCIAの無人機攻撃殺害リストの標的を選定したり、陸・空・海の戦闘指揮官に地理空間やその他の情報を提供したりする。ツイッターやフェイスブックなどのソーシャル・メディアへの投稿ひとつで、漠然とした直感や疑いだけで極秘テロ監視リストに登録され、容疑者が殺害リストに載る可能性さえある。

 ペンタゴンや情報機関、国防請負業者、そしてグーグルやフェイスブックのような友好的とされるハイテク大企業などを包括する軍産複合体による無差別かつ包括的な大規模監視の推進は、それ自体が目的ではなく、権力の道具であり、その目的は自己の永続化にある。それは軍産複合体にとって素晴らしいことであると同時に、他の誰にとっても素晴らしいことなのだろう。


「長期戦争」

 軍産複合体の中心にある、骨の髄まで愛国主義的な、自己陶酔的な、自画自賛的な権力志向を何よりもはっきり説明しているのは、ハイランズ・フォーラムに長年参加しているトーマス・バーネット博士の著書『ペンタゴンの新しい地図』である。バーネットは2001年から2003年までペンタゴンの戦力再編成局で戦略的未来担当補佐官を務め、上司のアーサー・セブロウスキー副提督からリチャード・オニールに推薦されていた。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーになっただけでなく、バーネットの本はワシントンの国防高官や中東の現場で活動する戦闘指揮官など、米軍で広く読まれていた。

 バーネットは1998年にペンタゴン・ハイランズ・フォーラムに初めて参加し、2004年12月7日には、ペンタゴンの高官やエネルギー専門家、インターネット企業家、そしてジャーナリストらが出席した同フォーラムに招かれ、彼の仕事についての報告をおこなった。バーネットはその1週間後、ハイランズ・フォーラム仲間のデイビッド・イグナティウスからワシントン・ポスト紙の書評で絶賛され、同じくフォーラム仲間のトーマス・フリードマンからも推薦を受けた。そのおかげで彼の信用は高まり、読者層は大きく広がった。

 バーネットの見方は根っからの新保守主義である。彼は世界を本質的に2つの領域に分ける: すなわち、経済のグローバル化のルールに従って行動する先進国(アメリカ、カナダ、イギリス、ヨーロッパ、日本)と、そこに到達するために尽力する発展途上国(ブラジル、ロシア、インド、中国、その他)からなる「コア(核)」と、グローバル化の驚異から基本的に「切り離されている」ことによって定義される、危険で無法地帯の国々からなる「ギャップ(溝)」である。これには中東とアフリカの大部分、南米の大部分、中央アジアと東欧が含まれる。「コア」を特徴づけるグローバリゼーションの文化的・経済的「ルール設定」を普及させ、その「ルール設定」を普及させるために世界中で安全保障を強化することによって、「ギャップを縮める」ことが米国の課題である。

 アメリカ権力のこれら2つの機能は、バーネットの「リヴァイアサン」と「システム管理者」という概念がすべてを尽くしている。前者は資本主義市場の普及を促進するためのルール設定であり、軍事法と文民法によって規制される。後者は、安全保障を実施し、国家建設に関与するために、軍事力を「ギャップ」に投射することである。「再建」ではなく、「新しい国家」の建設であることを彼は口を酸っぱくして強調している。

 バーネットにとって、ブッシュ政権が2002年に国内では「愛国者法」を導入し、人身保護権を潰し、国外では国家安全保障戦略を打ち出し、一方的な先制攻撃を可能にしたことは、「コア」がこの崇高な使命に着手するために必要なルール設定書き換えの始まりであった。米国が安全保障を確保するためにはこれしかない、とバーネットは書いている。「ギャップ」が存在する限り、それは常に無法な暴力と無秩序の源となるからだ。特に次の段落は、彼の展望を要約している。

「世界の警官としてのアメリカは、安全保障を生み出す。安全保障は共通のルールを生み出す。ルールは外国からの投資を引き寄せる。投資は生活基盤施設を生み出す。生活基盤施設は天然資源への接続を生み出す。資源は経済成長を生み出す。成長は安定を生み出す。安定は市場を生み出す。そして、グローバル市場で成長し、安定すれば、あなたは「コア」の人間となる。以上、ミッション達成!」



 新保守主義的な傾向にもかかわらず、バーネットがこの展望を実現するために必要だと予測したことの多くは、オバマの下でも追求されている。近い将来、米軍はイラクやアフガニスタンだけでなく、ウズベキスタン、ジブチ、アゼルバイジャン、北西アフリカ、南部アフリカ、南米などに派遣されるだろうとバーネットは予測していた。

 バーネットのペンタゴンでの説明は、ほぼだれもが全員熱狂的に受け入れた。ハイランズ・フォーラムは彼の著書をわざわざ購入し、フォーラムの参加者全員に配布した。2005年5月、バーネットは再び招待され、彼の「システム管理者」の考え方をテーマにしたフォーラム全体会に参加した。

 こうしてハイランズ・フォーラムは、ペンタゴンが「テロとの戦い」の概念全体を定義する上で主導的な役割を果たした。元IMB副社長で、1997年から2001年まで大統領の情報技術諮問委員会の共同委員長を務めたアーヴィング・ウラダウスキー・バーガー(Irving Wladawsky-Berger)は、2007年のあるフォーラムでの経験を、効果的な言葉遣いをしながら、次のように語っている。

「そして、国防総省が長期戦争と呼び始めた対テロ戦争です。この言葉は、私がフォーラムで初めて耳にしたものです。私たちが現在置かれている紛争全体を表現するのに、とても適切な言葉だと思います。これは真にグローバルな紛争です。私たちが現在直面している紛争は、私たちの生活様式そのものを破壊し、彼らが自分たちの生活様式を押し付けようとする文明あるいは文化の戦いの様相を呈しています」。



 問題は、ペンタゴンが主催するこの強力な徒党以外、誰もが同意しているわけではないということだ。「私は、バーネットの治療法が病気よりましだとは納得していない」と、元ペンタゴンの近東・南アジア部門の上級分析官で、イラク戦争への準備段階において同部門がいかに意図的に虚偽の情報を捏造したかを内部告発したカレン・クウィアトウスキー(Karen Kwiatowski)博士は書いている。「(バーネットの治療法を使えば)アメリカの自由や立憲民主主義、そして血の犠牲は、それが値するよりもはるかに大きなものになることは確実だと思う」。

 しかし、「ギャップの縮小」と「コアの安全保障の維持」を同一視することは、滑りやすい斜面に身を置くことになる。米国が「世界の警察官」としての指導的役割を果たせなくなれば、「ギャップ」は拡大し、「コア」は縮小し、世界全体の秩序の布地がほつれてしまいかねない。この論理によって、アメリカはその使命の正当性を政府にも世論にも否定させるわけにはいかない。そんなことをすれば、「ギャップ」が制御不能になり、「コア」を弱体化させ、「コア」の保護者であるアメリカとともに共倒れになる可能性がある。それゆえ、「ギャップの縮小」は単なる安全保障上の必須事項ばかりではない。存立に関わる優先事項であり、この計画全体の正当性を世界に示すために、情報戦によって後押しされなければならないのだ。

 オニールが1989年に米海軍に提出した報告書に明記された情報戦争の原則に基づけば、情報戦争の標的は「ギャップ」の国民だけでなく、「コア」の国民とその政府(米国政府を含む)もその標的となる。元米情報当局高官ジョン・アレクサンダーの話だが、ペンタゴンの最高指導部に読ませたというこの極秘報告書は、情報戦争の目標は、次の3つに絞る必要があると言っている。①敵対国にはその脆弱性を納得させること、②世界中の潜在的友好諸国には「(自分たちの)大義は正当なものだ」と認めさせること、そして最後に、③民間人と政治指導者には血の「代償」によって得られる宝はその価値があると信じさせること、だ。

 バーネットの著作がペンタゴンのハイランズ・フォーラムで売り込まれたのは、アメリカの軍産複合体にとって説得力のある「気分のいい」思想を提供するという点でうってつけだったからだ。

 しかし、新保守主義的思想は、もちろんバーネットに端を発しているとは言い難い。彼自身は、たとえ彼の著作がペンタゴン全体で極端な影響力を持ったとしても、役回りとしては小さい。ハイランズ・フォーラムに関わる高官たちの退行的な思考は、9.11のはるか以前から見て取れる。この傾向はフォーラムに関連する人物たちによって停止され、米国の国外政策と情報政策をますます攻撃的な方針を正当化する力強い促進力となった。


ヨーダとソビエト

 ハイランズ・フォーラムに代表される思想は、1994年に設立されるずっと以前、アンドリュー・"ヨーダ"・マーシャル*のONA(Office of Net Assessment)がペンタゴンの将来計画に関する主要な活動拠点であった時代から読み取ることができる。
アンドリュー・"ヨーダ"・マーシャル*・・・長年に渡って要職を務めたが、表舞台にはほとんど立たないことから、「伝説の軍略家」、「伝説の戦略家」、「伝説の老軍師」とも呼ばれている。また、スター・ウォーズシリーズの登場人物になぞらえて「国防総省のヨーダ」とも通称された。(ウィキペディア)

 長年にわたり、国家安全保障ジャーナリストによって広く流布されてきた俗説は、ONAが国防総省専属の神託マシーンであるという評判は、マーシャル所長の驚異的な分析的先見の明によるものだというものだ。おそらく彼は、ソ連の脅威がアメリカの情報機関によって誇張されすぎていることを先見的に認識した数少ない人物の一人だったのだろう。彼はペンタゴン内部で、ソ連の軍事力予測を再評価するよう政策立案者たちに呼びかけていた。

 ただし、この話は真実ではない。ONAは冷静な脅威分析ではなく、軍事拡張主義を正当化する偏執狂的な脅威予測だった。「フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)」誌のジェフリー・ルイス(Jeffrey Lewis)は、マーシャルがソ連の軍事力についてより均衡の取れた評価を求める理性的な声を提供するどころか、ソ連の脅威が差し迫っているという誇大広告を否定するONAの調査結果を軽視しようとしたと指摘している。米国がソ連の攻撃性を過大評価していたと結論づける調査を依頼したマーシャルは、その調査結果に「納得していない」との表書きをつけて、その調査書を配布した。ルイスは、マーシャルの脅威投影の考え方が、(存在しない)サダムとアル・カイダの結びつきに関する定型的なネオコンの言説を支持するための馬鹿げた研究の委託にまで拡大したことを図で示している。さらに、彼は2002年にリチャード・パール(Richard Perle)が招かれた際、ペンタゴンの防衛政策委員会に提出された中東地域の地図の描き直しを求めるRANDコンサルタントによる悪名高い報告書さえ取り上げている。

 調査ジャーナリストのジェイソン・ベスト(Jason Vest)も同様に、冷戦時代、マーシャルが長い間ソ連の脅威を誇張し、新保守主義者の圧力団体「現在の危険に関する委員会」にCIAの機密情報データへの接続権を与え、「ソ連の軍事的意図に関する国家情報評価」を書き直す上で重要な役割を果たしたことを、ペンタゴンの情報源から突き止めた。これは9.11後、イラク侵攻と占領を正当化するための情報操作の先駆けであった。ONAの元職員は、マーシャルが「最後の最後まで」差し迫ったソ連の脅威について好戦的であったことを確認した。例えば、元CIAのソビエト学者メルヴィン・グッドマン(Melvin Goodman)は、マーシャルがアフガニスタンのムジャヒディーンにスティンガーミサイルを提供するよう働きかけたのもマーシャルだったと回想している。


エンロンやタリバン、そしてイラク

 冷戦後の1994年、ペンタゴンはウィリアム・ペリー(William Perry)元国防長官(元CIA長官で、予防戦争のようなネオコン思想を早くから提唱していた)の指揮の下、ハイランズ・フォーラムを創設した。意外なことに、政府と産業界の橋渡し役としての同フォーラムの怪しげな役割は、エンロンとアメリカ政府との関係を見れば一目瞭然である。フォーラムがペンタゴンの大規模な監視政策を強化するように仕組んだのと同時並行的に、フォーラムは、アフガニスタン戦争とイラク戦争に結実する戦略的思考に直接影響を与えた。

 2000年11月7日、ジョージ・W・ブッシュがアメリカ大統領選挙に「勝利」した。エンロンとその社員たちは、ブッシュ陣営に合計100万ドル以上を寄付した。これには、ブッシュのフロリダ再集計委員会への1万500ドルの寄付と、その後の大統領就任祝賀会への30万ドルの寄付が含まれる。エンロンはまた、12月の再集計のためにブッシュに代わってフロリダとワシントンをロビー活動する共和党の弁護士を送迎するために、社用ジェット機を提供した。1989年以来、エンロンは合計580万ドルの選挙献金を行なっており、その73%は共和党に、27%は民主党に献金していることが後に連邦選挙文書で明らかになった。ブッシュ政権高官の15名もエンロン株を所有している。その中にはドナルド・ラムズフェルド国防長官、カール・ローブ上級顧問、トマス・ホワイト陸軍長官らがいる。

 しかし、ペンタゴン・ハイランズ・フォーラムの創設者であるリチャード・オニール会長は、その論争の的となった選挙のわずか1日前に、エンロンのCEOであるケネス・レイに手紙を送り、ペンタゴンと陸軍の近代化に関してフォーラムで講演するよう招待した。オニールからレイへのEメールは、連邦エネルギー規制委員会が入手したEメール「エンロン・コーパス」の一部として公開されたが、これまで知られることはなかった。

 そのメールは「国防次官補(C3I)兼国防総省CIOのアーサー・マネーに代わって」と始まり、レイを「国防長官のハイランズ・フォーラムに参加しないか」と誘った。このフォーラムについてオニールは、「著名な学者や研究者、産業界のCEO/CIO/CTO、メディア、芸術、専門職のリーダーたちからなる分野横断的な団体で、私たち全員が新たに関心を持つ分野を検討するために、過去6年にわたって会合を開いてきた」と説明した。また、フォーラムの話し合いには、「ホワイトハウスや国防総省、その他の政府機関から上級官僚が参加している(政府からの参加は約25%に制限している)」と付言した。

 ここでオニールは、ペンタゴンのハイランズ・フォーラムが、基本的には政府の目標だけでなく、エンロンのような参加業界のリーダーの関心事を探るものであったことを明らかにした。国防総省は、レイに「国防総省(および政府全般)のための情報/変革戦略の模索」、特に「ビジネスの視点(変革、生産性、競争優位性)」を求めていた。彼は、エンロンを「高度に硬直化した規制産業における変革の顕著な例であり、新しいモデルと新しい市場を創造した」と高く評価した。

 オニールは、ペンタゴンがエンロンに国防総省の将来において極めて重要な役割を担ってもらいたいと考えていることを明らかにした。それは、「情報の優位性を持つ作戦戦略」の構築だけでなく、「産業界からの成功事例や発想の多くから恩恵を受けることができる(国防総省の)巨大グローバル・ビジネス」との関連においても、である。

 「エンロンは私たちにとって大きな関心事です」と彼は再確認した。「皆さんから学ぶことは、国防総省が新たな戦略を構築する上で大いに役立つでしょう。お忙しいスケジュールの中、ハイランズ・フォーラムに参加できる限りご参加いただき、グループの皆さんとお話できることを願っています」。

 そのハイランズ・フォーラムの会合には、ホワイトハウスとアメリカの諜報機関幹部が出席した。その中には、CIAのジョーン・A・デンプシー(Joan A. Dempsey)副長官も含まれていた。デンプシー副長官は、以前は情報担当の国防次官補を務め、2003年にはブッシュによって大統領対外情報諮問委員会の専務理事に任命された。彼女はその後、イラクとアフガニスタンにおけるペンタゴンの主要請負業者であるブーズ・アレン・ハミルトン社の上級副社長に就任し、とりわけ、現在われわれが知っているように、イラクにおける非常に腐敗した復興計画を追跡するための連合国暫定当局のデータベースを作成した。

 エンロンとペンタゴンとの関係は、前年にすでに本格化していた。当時エンロンのエネルギー・サービス担当副会長だったトマス・ホワイトは、米軍との広範なコネを利用して、フォート・ハミルトンで陸軍基地の電力供給を民営化する試案の契約を取り付けた。エンロンはこの契約の唯一の入札者だった。翌年、エンロンのCEOがハイランズ・フォーラムに招かれた後、ホワイトは「陸軍長官に就任してわずか2週間後」の6月に最初の演説を行い、陸軍のエネルギー・サービスのさらなる「迅速な民営化」とともに、「このような契約の締結を加速させることを誓った」。USAトゥデイ紙は、「エンロンは、加速的な契約締結により恩恵を受ける可能性があり、また、このビジネスを求めている他の企業も恩恵を受ける可能性がある」と述べている。

 同月、ブッシュのペンタゴンはドナルド・ラムズフェルド国防長官(ラムズフェルド自身もエンロンの株を大量に保有していた)の権限で、別のエンロン幹部とエンロンの社外上級財務助言者の一人をハイランズ・フォーラムのさらなる極秘の話し合いに招待した。

 エンロン・コーパスを通じて入手した6月22日付けのリチャード・オニールからのメールによると、当時エンロンの取締役副社長兼職員代表であったスティーブン・キーンは、25日(月)にもハイランズのプレゼンテーションを行う予定であった。「国防長官主催のハイランズ・フォーラムが近づいており、あなたの参加を非常に楽しみにしています」とオニールは書き、キーンに「議論の中心になります。国防総省の変革を真剣に検討している私たちにとって、エンロンの経験は非常に重要です」と請け合った。

 スティーブン・キーンは現在、北米最大級のエネルギー会社であるキンダー・モルガンの社長兼COO(次期CEO)であり、物議を醸しているキーストーンXLパイプライン計画の重要な支持者である。

 キーンと同じハイランズ・フォーラムの話し合いに出席する予定だったのは、当時金融コンサルタント会社マッキンゼーの共同経営者だったリチャード・フォスター(Richard Foster)だった。「ディック・フォスター(Dick Foster)の新著『Creative Destruction(創造的破壊)』を、国防副長官と次官補に渡しました。彼が概説するエンロン事件は重要な議論の対象となります。私たちはフォーラムの参加者にも同書を配布する予定です」とオニールはメールで語った。

 フォスターの会社マッキンゼーは、1980年代半ばからエンロンに戦略的財務に関する助言を提供していた。2001年2月にエンロンのCEOに就任し、ケネス・レイが会長に転じたジョー・スキリング(Joe Skilling)は、1990年にエンロンに入社する前は、マッキンゼーのエネルギー・コンサルティング事業の責任者を務めていた。

 マッキンゼーと当時の協力関係にあったリチャード・フォスターは、エンロンの急速な、しかし不正な成長の原因となった中核的な財務管理戦略の策定に深く関わっていた。マッキンゼーは、エンロンを破滅に導いた不正会計の認識は否定してきたが、会社の内部文書によれば、フォスターはハイランズ・フォーラムの話し合いの1カ月前にエンロンの財務委員会に出席し、「会社の爆発的成長を促進するための外部の民間協力関係の必要性」について議論していた。

 マッキンゼーの文書によれば、同社は「エンロンがオフバランス(簿外の)資金を広範囲に使用していることを完全に認識していた」。インディペンデント紙の経済担当編集者ベン・チュー(Ben Chu)が指摘するように、「マッキンゼーは、怪しげな会計手法を全面的に支持した」。この手法がエンロンの市場評価のインフレを招き、「2001年に同社を崩壊させることになった」のである。

 実際、フォスター自身、2000年10月から2001年10月にかけてエンロンの取締役会に6回出席している。この時期は、エンロンがブッシュ政権のエネルギー政策やペンタゴンのアフガニスタンとイラクに対する計画への影響力を強めていた時期とほぼ一致する。

 フォスターはペンタゴンのハイランズ・フォーラムの常連でもあり、彼のLinkedInのプロフィールには、エンロンとの関係を強化した2000年以降、同フォーラムの構成員と記されている。また、2002年にシンガポールで開催された第1回アイランド・フォーラムでもプレゼンテーションをおこなった。

 チェイニー・エネルギー対策本部へのエンロンの関与は、2001年のブッシュ政権によるアフガニスタンとイラクの両侵略計画と関連しているようだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチの元理事で元国連調査官のリチャード・フォーク教授が指摘しているように、エンロンのケネス・レイは、「国家エネルギー政策を概説する報告書を起草する極秘の過程にいて、ディック・チェイニー副大統領が信頼した主要な秘密助言者であった。

 2000年11月から2001年6月にかけて、ペンタゴンのハイランズ・フォーラムを通じて行われたエンロン幹部と米政府高官との親密な秘密会議は、エンロンとペンタゴンの計画との間にますます共生的な結びつきを確立し、強固なものにする上で中心的な役割を果たした。同フォーラムの役割は、オニールが常々言っているように、産業界と政府の相互の利害関係を探るためのアイデア研究所として機能することだった。


エンロンとペンタゴンの戦争計画

 2001年2月、ケネス・レイを含むエンロン幹部がチェイニー・エネルギー対策本部に積極的に参加し始めたとき、国家安全保障会議(NSC)の機密文書はNSC職員に、以前は別々だった問題を「融合」させるために対策本部と協力するよう指示している:「ならず者国家に対する作戦方針」と「新規および既存の油田・ガス田の獲得に関する行動」である。

 ロン・サスキンド『忠誠の代償 : ホワイトハウスの嘘と裏切り』(2004年)で引用されているように、ブッシュの財務長官ポール・オニールによれば、閣僚たちは最初のNSC会議でイラク侵攻について議論し、イラクの油田を切り分けた戦後の占領地図まで用意していたという。当時のブッシュ大統領からの伝言は、当局者は「これを実行する方法を見つけなければならない」というものだった。

 ジュディシャル・ウォッチ(Judicial Watch)が情報公開のもとで入手したチェイニー・エネルギー対策本部の文書によると、同調査班は3月までに湾岸諸国、特にイラクの油田、パイプライン、製油所の地図を作成し、「イラク油田契約の外国企業」と題するリストも作成していた。4月までに、チェイニーが依頼し、ジェームズ・ベーカー元国務長官が監督し、エネルギー業界と国家安全保障の専門家で構成された委員会がまとめたシンクタンクの報告書は、世界市場への石油の流れに対するイラクの「不安定化する影響力」に対処するため、「軍事、エネルギー、経済、政治/外交的評価を含む対イラク政策見直しを直ちに実施する」よう米国政府に促した。この報告書には、ハイランズ・フォーラムの代表でエンロン会長のケネス・レイの提言も含まれていた。

 しかし、チェイニーのエネルギー対策本部は、クリントン政権下で進められていたエンロン絡みのアフガニスタン計画も忙しく推進していた。1990年代後半まで、エンロンはカリフォルニアを拠点とするアメリカのエネルギー会社ユノカルと共同で、カスピ海流域の埋蔵量を掘り起こし、アフガニスタンを横断して石油とガスを運び、パキスタンやインド、その他の市場に供給する石油・ガスパイプラインを開発していた。この試みは、クリントン政権、後にはブッシュ政権も公式に承認しており、2001年を通じてパイプライン契約の条件交渉のため、タリバンの代表と何度も会合を持った。クリントン政権下でアフガニスタン征服を秘密裏に支援していたタリバンは、パイプラインの敷設を許可する見返りとして、アフガニスタンの合法政府として正式に承認されることになっていた。エンロンはパイプラインの実現可能性調査のために4億ドルを支払ったが、その大部分はタリバンの指導者への賄賂として吸い上げられ、さらにCIAの諜報員を雇ってその促進の補助をさせた。

 2001年夏、エンロンの幹部たちがハイランズ・フォーラムでペンタゴンの高官たちと連絡を取り合っていた頃、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSA)では、ラムズフェルドとチェイニーが率いる省庁横断的な「作業グループ」が、インドで進行中のエンロンのプロジェクト、ダボールの30億ドル規模の発電所の完成を支援するために運営されていた。この発電所は、アフガン横断パイプラインからエネルギーを供給する予定だった。ブッシュの国家安全保障顧問であるコンドリーザ・ライスが議長を務めるNSCの「ダボール作業部会」は、ダボール発電所を完成させるようインドに対するアメリカ政府の圧力を強化するため、さまざまな戦術を生み出した。ダボール・プロジェクトとアフガニスタン横断パイプラインは、エンロンにとって濡れ手に粟の海外取引だった。

 2001年を通じて、ケン・レイを含むエンロンの幹部は、米国のエネルギー業界全体の代表者と共に、チェイニーのエネルギー対策本部に参加した。ブッシュ政権が発足した直後の2月から、エンロンはエネルギー対策本部の約10回は開かれた会合の半分には参加した。このような秘密会議の後、エネルギー法案の草案が修正され、エンロンのダボール発電所だけに適用される形で、インドにおける石油と天然ガスの生産を劇的に促進することを提案する新たな条項が盛り込まれた。つまり、アフガニスタン横断パイプラインを通じてインドに安価なガスを供給することは、その時点で、アメリカの「国家安全保障」の問題になった。

 この1、2か月後、ブッシュ政権はタリバンに4300万ドルを提供した。これはアフガニスタン政府が麻薬生産に対する取り締まりを行なっていたことが理由だった。反面、タリバンがオサマ・ビン・ラディンを引き渡さなかったことにより、アメリカが強制したタリバンへの支援停止の国連制裁もあった。

 そして2001年6月、エンロンのスティーブ・キーン副社長がペンタゴン・ハイランズ・フォーラムに出席したのと同じ月、アフガニスタン横断パイプラインが実現しなかったため、同社のダボール・プロジェクトへの期待は打ち砕かれ、その結果、ダボール発電所の建設は中止された。この30億ドルのプロジェクトの失敗が、12月のエンロンの倒産につながった。同月、エンロンの幹部たちはブッシュ政権のドナルド・エバンス商務長官と発電所について会談し、チェイニーはインドの主要野党にダボール・プロジェクトについて働きかけた。また、ケン・レイもこの時期にブッシュ政権に接触し、同社の財務上の問題を伝えたと報道されている。

 8月になると、この取り引きを必死に成立させようとした米政府高官たちは、タリバンがアメリカの条件を受け入れなければ戦争になると脅した:すなわち、戦闘を停止し、反対勢力である北部同盟との連邦同盟に参加すること、ガスの地元消費に対する要求をあきらめることであった。同月15日、エンロンのロビイストであるパット・ショートリッジは、当時のホワイトハウスの経済顧問ロバート・マクナリーに、エンロンは国のエネルギー市場を麻痺させかねない金融破綻に向かっていると語った。

 ブッシュ政権は、タリバンがこの取り引きを拒否することを予期していたに違いない。というのも、彼らは早くも7月からアフガニスタンへの戦争を計画していたからだ。米国とタリバンの交渉に参加した当時のパキスタン外相ニアズ・ナイクによると、米国高官は2001年10月中旬にアフガニスタン侵攻を計画していると伝えていたという。パキスタンの英字紙フロンティア・ポストによれば、戦争が始まるやいなや、ブッシュのウェンディ・チェンバレン駐パキスタン大使はパキスタンのウスマン・アミヌディン石油相に電話をかけ、「提案されているトルクメニスタン-アフガニスタン-パキスタンのガス・パイプライン・プロジェクト」について話し合った。このプロジェクトは、「特にこの地域における最近の地政学的な動きを鑑み、多角的な地域協力の新たな道を開くものである」ことで合意したという。

 9/11の2日前、コンドリーザ・ライスは、大統領書名が緊急に必要とする正式な国家安全保障大統領指令の草案を受け取った。その指令には、タリバン打倒のためのアフガニスタンへの「差し迫った」侵攻を含む、アルカイダとの世界的な戦争を開始する包括的な計画が含まれていた。この指令は、ライスやラムズフェルドを含むホワイトハウスの最高段階、国家安全保障会議の幹部によって承認された。同じ国家安全保障会議関係者は同時に、エンロンのアフガン横断パイプライン・プロジェクトのためのインド発電所取引を確保するためのダボール作業部会を運営していた。翌日、9.11の1日前、ブッシュ政権はタリバン攻撃計画に正式に合意した。

 ペンタゴン・ハイランズ・フォーラムの背景にあるこうした利害関係のつながりをよく見ると、それがブッシュ政権特有のものではないことがわかる。だからこそ、オバマ大統領がアフガニスタンからの撤兵を準備しているときに、彼はアフガニスタン横断パイプライン・プロジェクトに対する同国政府の支持を再確認し、それを建設する米国企業を希望したのだ。


ペンタゴンのプロパガンダ担当

 この時期を通じて、情報戦は戦争への世論の支持を喚起する上で中心的な役割を果たした。そしてハイランズ・フォーラムがその先鞭をつけたのだ。

 2000年12月、9.11の1年弱前、ジョージ・W・ブッシュが選挙で勝利した直後、フォーラムの主要構成員はカーネギー国際平和財団で開催された催しに参加し、「情報革命、グローバリゼーション、冷戦の終焉が米国の外交政策決定過程に与える影響」を探った。この会合では、「漸進的な改革」を提案するのではなく、参加者が「新しいグローバル環境の特性に最適化された新しいモデルをゼロから構築する」ことが求められた。

 会議で指摘された問題の中に、「グローバル・コントロール革命」がある。つまり情報革命の「分散的」性質は、国家と国家間関係の優位性に挑戦することによって、「世界政治の重要な力学」を変化させていたのだ。これは、「国家安全保障に新たな課題を生み出し、主要国がグローバルな政策論争を統制する能力を低下させ、国家経済政策の有効性に課題を投げかけている、等々だ」。

 言い換えれば、ペンタゴンは情報革命を利用して「世界的な政策論争を統制」する方法をどのように見つけることができるのだろうか?、ということになる。

 この会合は、当時ビル・クリントンの国家安全保障会議に所属していたジェイミー・メッツル(Jamie Metzl)が共同主催したもので、彼はクリントンの大統領令68号「国際広報(IPI)」の起草を主導したばかりだった。メツルはその後、国務省でIPIの調整を行った。

 その前年、クリントン政権のある上級高官がワシントン・タイムズ紙に明かしたところによると、メッツのIPIの真の目的は「米国民を欺くこと」であり、「米国民がクリントン大統領の外交政策を支持しないことへの懸念から生まれた」ものだという。IPIは、アメリカのメディアで取り上げられることを期待して、海外に拠点を置くテレビや新聞、ラジオ、そしてその他のメディアを通じて、アメリカの利益に有利なニュース記事を仕込んでいた。その口実は、「国内では報道が歪曲されており、ニュースを回転させることを目的とした情報源を使うことで、なんとしてもそれに対抗する必要がある」というものだった。メツルは、イラクとコソボでIPIの海外宣伝活動を指揮した。

 2000年12月のカーネギー会議には、ハイランズ・フォーラムの創設者の一人であるリチャード・オニールとSAICのジェフ・クーパー、そしてラムズフェルド国防副長官として次期ブッシュ政権に参加しようとしていた、同じくアンドリュー・マーシャルの崇拝者であるポール・ウォルフォウィッツも参加していた。また、2003年のアフガニスタンとイラク戦争をめぐるプロパガンダで、特に悪名高い人物も同席していた:レンドン・グループ(TRG)の創設者であり、ペンタゴン・ハイランズ・フォーラムの長年の構成員でもあるジョン・W・レンドン・ジュニアである。

 TRGは、何十年もの間、アメリカ政府の請負業者として悪名高い通信会社である。レンドンは、クリントンとメツルの下で、イラクとコソボにおける国務省のプロパガンダ・キャンペーンの運営で極めて重要な役割を果たした。その中には、ペンタゴンの助成金を受けてニュースサイト「バルカン情報交換所(the Balkans Information Exchange)」を運営したり、米国際開発庁(USAID)と契約して 「民営化」を推進したりすることも含まれていた。

 アメリカの軍事侵攻を正当化するために、存在しない大量破壊兵器(WMD)の脅威を誇大宣伝するブッシュ政権を助けたレンドンの中心的な役割は、今では特によく知られている。ジェームズ・バンフォードがローリング・ストーン誌の重大な調査で暴露したように、レンドンはブッシュ政権に代わって、数百万ドル規模のCIAとペンタゴンとの契約のもと、「フセインを政権から排除する条件を作り出す」ための「認識管理」を展開する上で、重要な役割を果たした。

 レンドンの活動の中には、CIAに代わってアハメド・チャラビのイラク国民会議(INC)を創設したこともあった。この組織は、大量破壊兵器に関する偽情報の多くを含むプロパガンダを広めることを任務とするイラク亡命者の組織である。この過程は、ジョージ・W・H・ブッシュ・シニア政権下で協調的に開始され、クリントン政権下ではほとんど騒がれることなく進行し、ブッシュ政権下で9.11後に激化した。レンドンはこうして、CIAとペンタゴンの有利な契約のもとで、イラクに関連する不正確で虚偽のニュース記事を作成する上で大きな役割を果たした。彼は2003年の侵攻までの期間、ブッシュの国家安全保障会議の顧問としてその役割を果たした。

 しかし、それは氷山の一角である。機密解除された文書によれば、ハイランズ・フォーラムは、主要な政府高官たちが情報戦に基づくイラク戦争への道を画策する秘密の過程に深く関与していた。

 ペンタゴンの監察官が編集した2007年の報告書は、イラク戦争中および戦争後にペンタゴン・ハイランズ・フォーラムが多用した請負業者のひとつが、レンドン・グループであったことを明らかにしている。TRGは国防総省から、フォーラムの話し合いの企画、討論の主題の決定、フォーラム会議の招集と調整を請け負っていた。監察総監の調査は、2003年のイラク侵攻と占領を正当化するための情報操作におけるレンドンの役割について議会で提起された告発に端を発していた。監察総監の報告書によると:

「・・・国防次官補(ネットワーク・情報統合担当)/最高情報責任者(CIO)はTRGを起用し、全国的に評価の高いリーダーたちの学際的な一団に訴えかけるフォーラムを実施した。フォーラムは小集団で行われ、情報と技術、およびそれらが科学、組織、ビジネスの過程、国際関係、経済、国家安全保障に及ぼす影響について議論された。TRGはまた、ハイランド・フォーラムのフォーカス・グループの議題を策定・開発するための調査計画とインタビューも実施した。ネットワーク・情報統合担当国防次官補室が主題を承認し、TRGが会議を進行する」。



 ペンタゴンの民間宣伝部門であるTRGは、国防総省の情報戦争戦略を策定するために政府高官と業界幹部を集めたペンタゴン・ハイランズ・フォーラムの運営で、まさに中心的な役割を果たした。

 ペンタゴンの内部調査はレンドンの不正を放免した。しかし、これは利益相反が掛かっていることを考慮すれば、驚くべきことではない。当時の監察総監はクロード・M・キックライター(Claude M. Kicklighter)(ブッシュの推薦)で、ブッシュ政権の主要な軍事作戦を直接監督していた。2003年、彼は国防総省のイラク移行チームの責任者を務め、翌年には国務省のイラクとアフガニスタンにおける安定化・治安維持活動の特別顧問に任命された。


監視とプロパガンダとの結びつき

 さらに意味ありげなのは、バンフォードがローリング・ストーン誌の取材で入手したペンタゴンの文書は、レンドンが国防総省に代わって仕事を遂行するために、NSAの最高機密監視データへの接続権を与えられていたことを明らかにしたことだ。国防総省の文書によれば、TRGは 「最高機密/SCI/SI/TK/G/HCSに分類される情報を調査・分析する」権限を与えられている。

 「SCI」は機密情報(Sensitive Compartmented Information)を意味し、トップシークレット(Top Secret)より上位に分類されるデータであり、「SI」はスペシャルインテリジェンス(Special Intelligence)、つまりNSAが傍受した極秘通信を意味する。「TK」はタレント/キーホールを意味し、偵察機やスパイ衛星からの画像のコードネームである。「G」はガンマを意味し、極めて機密性の高い情報源からの通信傍受を包括し、「HCS」はヒューミント・コントロール・システムを意味する。バンフォードの言葉を借りれば

「この頭文字を合わせると、レンドンは、盗聴、画像衛星、人間スパイという3つの情報収集形態すべてから極秘情報へのアクセスを享受していることがわかる」。



それでペンタゴンは:

1. プロパンダ会社であるレンドンと契約していた;

2. レンドンに情報機関の最機密情報(NSA監視データも含む)に接続権を与えた;

3. レンドンにハイランズ・フォーラムを運営することで国防総省情報作戦促進の業務を与えた;

4. そしてさらには、レンドンの業務として、ハイランズ・フォーラムを通して開発されたこの戦略を具体的にイラクやアフガニスタン、そしてそれ以外の地域でも実際の情報作戦が実施されていることを監視させた。

 TRGのジョン・レンドン最高経営責任者(CEO)は、ペンタゴンのハイランズ・フォーラムやイスラム圏で進行中の国防総省の情報活動に密接に関わり続けている。2014年11月、ハーバード・ケネディスクールの「エマージング・リーダーズ」コースに参加した彼の経歴には、「ハイランズ・フォーラムのような先進的な組織への参加者」、「リアルタイムの情報管理を支援する新興技術の力を活用する最初の思想的リーダーの一人」、「新興情報技術が人々の考え方や行動に与える影響」の専門家、と記されている。レンドンのハーバード大学での経歴には、「オデッセイ・ドーン(リビア)、ユニファイド・プロテクター(リビア)、世界対テロ戦争(GWOT)、イラクの自由、不朽の自由(アフガニスタン)、アライド・フォースとジョイント・ガーディアン(コソボ)、デザート・シールド、デザート・ストーム(クウェート)、デザート・フォックス(イラク)、ジャスト・コーズ(パナマ)などの作戦に関連した戦略的コミュニケーション・イニシアチブと情報計画」の設計と実行も特筆されている。

 レンドンの認識管理と情報作戦に関する仕事は、アルゼンチン、コロンビア、ハイチ、ジンバブエなど(実際には全部で99カ国)、他の場所でも「多くの米軍の介入を支援」してきた。民主党の元常務理事兼国政部長として、ジョン・レンドンはオバマ政権下のワシントンでも依然として有力者である。

 ペンタゴンの記録によれば、TRGは2000年以降、国防総省から1億ドル以上を受け取っている。2009年、アフガニスタンで米軍に否定的な記事を書く可能性のある記者を排除し、米国の政策に好意的なジャーナリストだけを宣伝するためにTRGが使われていたことが明らかになり、米政府はTRGとの「戦略的コミュニケーション」契約を解除した。しかし2010年、オバマ政権はレンドンと再契約を結び、イラクにおける「軍事的欺瞞」のためのサービスを提供した。

 それ以来、TRGは米陸軍の訓練教練司令部や特殊作戦司令部に助言を提供し、現在も国防長官室や米陸軍の通信電子司令部と契約しているほか、ペンタゴンや米大使館に麻薬対策に関する「通信支援」を提供している。

 TRGはまた、「作戦および計画支援」を含む「非正規戦支援」を提供し、「敵対勢力の力、影響力、意思に対抗し、侵食するための新たな方策を開発する上で、政府および軍の顧客を支援する」とウェブサイトで自負している。この支援の多くは、ペンタゴンのハイランズ・フォーラム内で過去10年以上にわたって微調整されてきた。


非正規戦争と疑似テロリズム

 ペンタゴン・ハイランズ・フォーラムが、レンドンを介して、ブッシュとオバマの下で「長期戦争」を支援するために追求されたプロパガンダ作戦と密接に関係していることは、非正規戦と「戦略的コミュニケーション」の両方において、大規模監視が不可欠な役割を担っていることを示している。

 この両者の主要な支持者の一人が、海軍大学院のジョン・アルキラ教授である。彼は「ネット戦争」の概念を開発したことで知られる著名な米国防分析家であり、今日、テロ計画を阻止するための先制攻撃作戦を支援するための大規模監視とビッグデータ・マイニングの必要性を公然と提唱している。偶然にもアルキラは、ペンタゴンのハイランズ・フォーラムの「創設者のひとり」でもある。

 「ネットワーク化された戦争」や「ネットワーク化された抑止力」、「情報戦」、そして「群飛」という考え方に関する彼の研究の多くは、その大部分がペンタゴンとの契約に基づいてランドのために作成された。それは、その初期の時期にフォーラムによって生み出され、その結果、ペンタゴンの戦略に不可欠なものとなった。例えば、アルキラの1999年のランド研究所での研究『ヌーポリティックの出現:アメリカの情報戦略に向けて』(The Emergence of Noopolitik:Toward an American Information Strategy)において 彼と共著者のデイヴィッド・ロンフェルトは、リチャード・オニールに「彼の関心、支援、指導への感謝」と、「ハイランズ・フォーラムのメンバー」にはこの研究に対する事前のコメントを寄せている。ランド研究所での研究の大半は、ハイランズ・フォーラムとオニールの支援によるものである。

 アルキラの研究は、2006年にアメリカ陸軍から委託されたネットワーク科学の将来に関する全米科学アカデミーの研究で引用された:「コンピューター・ベースのテクノロジーとテレコミュニケーションの進歩が、テロリスト・ネットワークを含むグループとの関係を促進するソーシャル・ネットワークを可能にしている」。この研究は、テロ集団と活動家集団の危険性をごちゃまぜにしている:「この事実が犯罪、テロ、抗議、反乱のネットワークに与える影響については、アルキラとロンフェルト(2001)が調査しており、ハイランズ・フォーラムのようなグループがよく議論するテーマである。軍事史家ベンジャミン・シアラーの伝記辞典『銃後の英雄たち(Home Front Heroes)』(2007年)によれば、アルキラはその後も「コソボやアフガニスタン、そしてイラクでの軍事作戦のための」情報戦戦略の開発に貢献した。

 ピューリッツァー賞を受賞したシーモア・ハーシュは、2005年のニューヨーカー誌の調査の中で、擬似テロで「テロに対抗する」という新戦略を詳述したアルキラの一連の記事に言及した。「ネットワークと戦うにはネットワークが必要だ」とアルキラは言い、ハイランズ・フォーラム設立以来、彼がペンタゴンで推進してきたテーゼを引き合いに出した。

「通常の軍事作戦や爆撃では1950年代のケニアのマウ・マウ反乱を打ち負かすことができなかったとき、イギリスは友好的なキクユ族からなる一団を結成し、テロリストになりすました。これらの「擬似ギャング」と呼ばれる集団は、戦闘員の一団と親しくなって待ち伏せしたり、テロリストのキャンプに爆撃機を誘導したりして、マウ・マウをあっという間に守勢に立たせた」。



 アルキラはさらに、西側の諜報機関は、「本物」のテロ・ネットワークを弱体化させる方法として、新たな「擬似ギャング」テロ集団を作るための凡例としてイギリスの事例を利用すべきだと主張した。

「半世紀前にケニアで成功したことは、今日のテロ・ネットワークの信頼と勧誘を弱める素晴らしいチャンスである。新たな疑似ギャングの結成は難しくないはずだ」。



 基本的に、ネットワークと戦えるのはネットワークだけであり、非正規戦を展開する敵を打ち負かすには、非正規戦の技を使うしかない、というのがアルキラの主張である。結局のところ、勝利を決定する要因は、通常の軍事的敗北そのものではなく、紛争の方向性を調整し、国民に影響を与え、敵対勢力への反対を結集させることができるかどうかである。アルキラの「疑似ギャング」戦略は、すでにペンタゴンによって実行されていたとハーシュは報告している:

 「ラムズフェルドの新しい方策では、米軍の工作員が海外で、核兵器システムに使われる可能性のある密輸品を買おうとする腐敗した外国人ビジネスマンを装うことが許可される、と私は聞いた。ペンタゴンの顧問たちによれば、場合によっては、現地の市民を勧誘し、ゲリラやテロリストに加わるよう要請することも可能だという・・・

 この新しいルールによって、特殊部隊は海外の対象国に「行動チーム」と呼ぶものを設置し、テロ組織の発見と排除に利用できるようになる。「エルサルバドルの右翼処刑部隊を覚えていますか」と元情報高官は私に尋ねた。「我々が創設し、資金を提供したのです。今の目的は、私たちが望む地域で地元の人間を勧誘することです。そして、そのことを議会に話すつもりはありません」。ペンタゴンのコマンド部隊の能力を知る元軍人は、「我々は悪党たち行動を共にするつもりです」と言った」。

 この戦略が現在運用されているという公式の裏付けは、2008年の米陸軍特殊作戦実戦手引書漏洩によってもたらされた。同手引書によれば、米軍は「準軍事組織や個人、企業、外国の政治組織、抵抗勢力や反乱組織、国外居住者、多国籍テロ敵対勢力、幻滅した多国籍テロメンバー、闇商人、その他の社会的・政治的『好ましくない者』」などの非国家集団を代理として利用することで、非正規・非従来型戦争を行うことができるという。衝撃的なことに、このマニュアルは、米国の特殊作戦がテロ対策と「テロリズム」の両方に関与する可能性があることを明確に認めている:「麻薬密売や不正武器取引、違法金融取引などの国際犯罪活動」である。このような秘密作戦の目的は、本質的には国民統制である。「特に、先住民の一部を活用して現状を受け入れさせること」、あるいは「どのような政治的結果であれ」押しつけられたり交渉されたりしているものを受け入れさせることに重点を置いている。

 このねじ曲がった論理により、テロリズムは場合によっては、特定の「政治的結果」を受け入れるよう国民に影響を与えるための、アメリカの国家戦略の正当な手段と定義することができる。すべて「テロとの戦い」という名目の下で。

 ペンタゴンは、湾岸諸国から反アサド反政府勢力への10億ドル近い資金提供を調整することで、このようなことをしていたのだろうか?CIA自身の機密査定によれば、そのほとんどはアルカイダにつながる暴力的なイスラム過激派の資金源となり、「イスラム国」を生み出すことになった。

 新戦略の根拠は、2002年8月にペンタゴンの国防科学委員会が行なった説明会で初めて公式に示されたもので、国家安全保障会議内に「積極的先制作戦グループ」(P2OG)の創設を提唱した。P2OGは、テロリストのネットワークに潜入して「反応を刺激」し、彼らの行動を誘発することで、彼らを標的にしやすくするための秘密作戦を実施しなければならない、と国防科学委員会は提案した。

 国防科学委員会は、ペンタゴンの他の機関と同様、ハイランズ・フォーラムと密接な関係にあり、その研究は国防科学委員会の研究に反映され、フォーラムで定期的に発表される。

 ハーシュに語ったアメリカの情報筋によれば、ラムズフェルドは、この新しい闇作戦を完全に国防総省の管轄下に置き、CIAや地域の米軍司令官から遮断し、独自の秘密特殊作戦司令部によって実行することを保証したという。その指揮系統には、ラムズフェルド国防長官自身のほかに、国防次官(情報担当)を含む2人の副官が含まれる。


戦略的コミュニケーション:国内外の戦争プロパガンダ

ハイランズ・フォーラム内では、アルキラが探求した特殊作戦の技は、プロパガンダにますます焦点を当てた方向で、他の何人かの人々によって取り上げられている。そのうちの一人が、先に見たようにロシャール博士であり、またエイミー・ザルマン博士である。ザルマン博士は特に世論に影響を与え、戦争に勝利することを目的とした「戦略的言説」を用いる米軍のアイデアに焦点を当てている。

 同僚のハイランズ・フォーラム創設者のひとり、ジェフ・クーパーと同様、ザルマンはSAIC/Leidosの下部組織で教育を受けた。2007年から2012年までSAICの上級戦略官を務めた後、米陸軍士官学校(National War College)で国防総省の情報統合講座に就任。そこでは基本的に、ターゲット組織を完全に理解した上で、その組織から望む的確な反応を引き出すためにプロパガンダを微調整する方法に焦点を当てていた。昨年夏からは、世界未来学会のCEOに就任した。

 2005年、ハーシュがテロリストを挑発することで「反応を刺激する」というペンタゴンの戦略が進行中であると報じたのと同じ年に、ザルマンはペンタゴンのハイランズ・フォーラムで「米国の戦略的コミュニケーションに対する言説理論的方策の支持」と題する説明をおこなった。それ以来、ザルマンはハイランズ・フォーラムの代表を長く務め、戦略的コミュニケーションに関する自身の研究を、さまざまな米政府機関やNATOのフォーラムで発表してきたほか、米統合特殊作戦大学で兵士に非正規戦のコースを教えている。

 彼女の2005年のハイランズ・フォーラムでの説明は公開されていないが、ペンタゴンの特殊作戦戦略の情報要素に対するザルマンのインプットの要点は、彼女の出版物のいくつかから読み取ることができる。彼女がまだSAICに所属していた2010年、彼女のNATO論文は、非正規戦争の重要な要素は「住民の主観的認識に影響を与えることによって、住民からある程度の感情的支持を勝ち取ること」だと指摘した。彼女は、そのような影響力を獲得する最善の方法は、従来のプロパガンダやメッセージング技術よりもはるかに進んだものであると提唱した。むしろ、アナリストは「観察下にある人々の皮膚に身を置く」必要がある。

 ザルマンは同じ年、自らをAssociation of Old Crows*の「特別利益団体」と称するInformation Operations Institute(情報作戦機関)が発行するIO Journalを通じて、別の論文を発表した。Association of Old Crowsは電子戦や情報作戦についての理論家や実践者たちのプロ集団であり、ロッキード・マーチン社のケネス・イスラエル副社長が会長を務め、昨年、米空軍研究所の電子戦上級顧問を退いたデービッド・ハイムズが副会長を務めている。
Association of Old Crows*・・・バージニア州アレクサンドリアに本部を置く、電子戦、戦術情報運用、および関連分野を専門とする国際的な非営利の専門組織。 その使命は、「政府、産業界、学界、および一般市民に対して、電子戦と情報運用を強調する強力な防衛能力の必要性を提唱すること」。
 
 『情報作戦における影響要因としての言説』と題されたこの論文で、ザルマンは米軍が「戦略的な目的を表現するためにも、民間人の死亡のような個別的な状況でコミュニケーションをとるためにも、説得力のあるナラティブ(言説)を創り出すことが難しいことに気づいた」と嘆いている。最後に彼女は、「民間人の死という複雑な問題」には、「謝罪と補償」(それはいずれにせよほとんど起こらない)だけでなく、聴衆が心を通わせる人物(この場合、「聴衆」とは「紛争地域の住民」である)を描く言説を広めることによってアプローチすべきだと結論づける。これは聴衆が「肯定的な方法」で戦闘を解消するよう促すことだ。もちろんそれはアメリカの軍事的利益に沿ったものだ。米国の軍事行動によって「亡くなった人々の生存者」とこのように感情的に関わることは、「共感的な影響力の一形態であることを証明する」かもしれない。ザルマンは終始、アメリカの戦略的目的の正当性を疑うことも、民間人の死の蓄積におけるその目的の影響こそ変える必要があることを認めることもできない。それは、軍事行動に晒される人々の思想的な枠組みのあり方とは対照的だからだ。

 ここで言う「共感」とは単に操作の手段に過ぎない

 2012年、ザルマンはグローバリスト誌に寄稿し、「ハードパワー」と「ソフトパワー」の厳格な区分けをいかに克服し、武力行使を成功に導くには適切な象徴的・文化的効果が必要であることを認識する必要があるかを示した:

「国防や経済外交が「ハードパワー」と書かれた箱に収められたままである限り、その成功が物質的な効果だけでなく、象徴的な効果にどれほど依存しているかがわからない。外交的・文化的努力が「ソフトパワー」と書かれた箱に収納されている限り、それらが強制的に使用されたり、暴力によって生み出されるような効果を生み出すことができる方法は私たちには見えない」。

 SAICがペンタゴン・ハイランズ・フォーラムに深く関与し、それを通じて監視や非正規戦、そしてプロパガンダに関する情報戦略を策定していることを考えれば、SAICがTRGと並んで、2003年のイラク戦争に向けたプロパガンダの作成を請け負ったもう一つの重要な民間防衛企業であったことは驚くにはあたらない。

 「SAICの幹部は、イラク戦争のあらゆる段階で・・・関与してきた」とヴァニティ・フェア誌は報じているが、皮肉なことに、大量破壊兵器に関する偽りの主張を意図的に流布し、その後、偽りの大量破壊兵器に関する主張にまつわる「情報の失敗」を調査したという観点から、である。たとえば、2003年にイラク調査団の団長としてサダムの大量破壊兵器を捜すためにCIAに雇われたデビッド・ケイは、2002年10月まではSAICの上級副社長として、国防総省との契約に基づいて「イラクの脅威」を調査していた。大量破壊兵器が発見されなかったとき、ブッシュ大統領がこのアメリカの「情報の失敗」を調査する委員会には、SAICの幹部3人が含まれており、その中にはハイランズ・フォーラム創設メンバーのジェフリー・クーパーも含まれていた。ケイがイラク調査団に任命されたまさにその年、クリントンのウィリアム・ペリー国防長官(ペンタゴンのハイランズ・フォーラムがその設立を命じた人物)がSAICの役員に加わった。クーパーとその関係者による調査は、ブッシュ政権が戦争を正当化するためにプロパガンダを捏造していたことを見逃すものであり、クーパーがそのプロパガンダを捏造したペンタゴンのネットワークで重要な役割を担っていたことを考えれば、当然のことである。

 SAICもまた、イラク復興案件で大儲けした数多くの請負業者のひとつであり、戦後も親米的な言説を海外に広める再契約を結んでいた。レンドンの仕事と同じ流れで、海外で植え付けられた言説がアメリカのメディアに取り上げられ、国内で消費されることになった。

 しかし、ペンタゴン・ハイランズ・フォーラムが高度なプロパガンダ技術を推進するのは、レンドンやザルマンのような中核的で長年の代表者たちだけではない。2011年、同フォーラムはDARPA(国防高等研究計画局)の資金提供を受けた2人の科学者、アントニオ・ダマシオ(Antonio Damasio)とハンナ・ダマシオ(Hanna Damasio)を招いた。彼らは南カリフォルニア大学の「言説枠組み(フレーミング)の神経生物学」プロジェクトの主任研究者である。ペンタゴンの心理作戦が「共感的影響力」を行使する必要性を強調したザルマンの言葉を想起させるように、DARPAが支援するこの新しい計画は、言説がしばしば「感情的反応を呼び起こすために、強く神聖な価値観」に訴えかけるが、その方法が文化によって異なることを調査することを目的としている。この研究で最も懸念されるのは、道徳的に疑問のある行動の文脈において、従来の理屈を覆すような形で聞き手に影響を与える言説を展開するペンタゴンの能力を、どのように向上させることができるかを理解しようとすることに焦点が当てられていることだ。

 記述計画は、言説化された出来事に対する心理的反応は、「語り手が出来事をどのように誘導し、聞き手のさまざまな価値観や知識、そして経験に訴えかけるかによって影響を受ける」と説明する。「核となる個人的価値観や民族的価値観、ならびに宗教的価値観など、聞き手の神聖な価値観を標的にした」言説的誘導は、「言説化された出来事を聞き手がどう解釈するかに特に効果的な影響を与える」。なぜなら、そのような「神聖な価値観」は、「アイデンティティ(自分がだれであるかを知ること)や感情、道徳的意思決定、そして社会的認知の心理学」と密接に結びついているからである。神聖な誘導を日常的な問題にも適用することで、そのような問題は「神聖な価値の特性を獲得し、従来の推論を使って解釈することを強く嫌うようになる」。アントニオ&ハンナ・ダマシオとそのチームは、「神聖な価値を用いた言説誘導が、聞き手の出来事に関する解釈に影響を与える有効性」を決定する際に、「言語学的・神経心理学的機構」がどのような役割を果たすかを探っている。

 この研究は、何百万ものアメリカやイラン、そして中国のウェブログから言説を抽出し、それを自動談話分析にかけて、3つの言語間で定量的に比較することに基づいている。そして、研究者たちは異なる文化圏の読み手/聞き手を対象とした行動実験を行い、「それぞれの言説が、(言説の)作者の道徳的に疑問のある行動を説明したり正当化したりするために、神聖な価値観に訴えかけるものである」という異なる言説の反応を測定する。最後に、科学者たちは神経生物学的fMRIスキャンを適用し、被験者の反応や個人的特徴と脳の反応との相関を調べる。

 なぜペンタゴンは、人々の「神聖な価値観」を利用し、論理的な推論の能力を失わせ、「道徳的に疑問のある行動」に対する感情的な開放性を高める方法を調査する研究に資金を提供しているのか?

 英語やペルシャ語、そして中国語に重点を置いていることは、ペンタゴンの現在の関心が、イランと中国という2つの重要な敵対国に対する情報作戦の展開に圧倒的に集中していることも明らかにしているのかもしれない。同様に、英語、特にアメリカのウェブログに重点を置いていることは、ペンタゴンが自国の世論に影響を与えるプロパガンダの展開に関心を抱いていることを示唆している。

 DARPAが「言説誘導の神経生物学」研究の一環として何百万ものアメリカ人のウェブログを調査しようとするのは、単なる無作為抽出に過ぎないと思われないように、近年のペンタゴン・ハイランズ・フォーラムの共同議長には、国防長官府のサイバー能力・作戦支援担当部長だったローズマリー・ウェンチェル(Rosemary Wenchel)が加わった。2012年以降、ウェンチェルは国土安全保障省の戦略・政策担当副次官補を務めている。

 ペンタゴンがイラクとアフガニスタンに関するプロパガンダに巨額の資金を提供していることが示すように、住民の影響力とプロパガンダは、戦略的地域の遠く離れた海外だけでなく、国内においても、ペンタゴンの政策の正当性を損なう国内世論の危険性を鎮めるために極めて重要である。上の写真でウェンチェルが話しているのは、長年の米国防・情報相談役、ジェフ・バクスター(Jeff Baxter)である。2005年9月、バクスターは国土安全保障省が委託した「独立」とされる研究グループ(座長はNSAの請負業者であるブーズ・アレン・ハミルトン社)の一員であり、国内住民を監視する上でアメリカのスパイ衛星の役割を大きくするよう提言した。

 一方、ザルマンとレンドンは、ペンタゴン・ハイランズ・フォーラムに密接に関わりながら、情報作戦に関する専門知識で米軍から相変わらず熱い視線を送られている。2014年10月、二人は米国防総省と統合参謀本部が主催する『遺伝子から「ビッグデータ」、インスタグラムから永続的監視へ・・・国家安全保障への影響』と題された大規模な戦略的多層評価会議に参加した。他の参加者としては、米軍高官や防衛産業幹部、情報機関関係者、ワシントンのシンクタンク、そして大学関係者などがいた。

 レンドンとSAIC/Leidosは、ハイランズ・フォーラムへの極めて重要な関与を通じて、ペンタゴンの情報作戦戦略のまさに進化の中心的役割を担ってきた2社であり、オバマ政権下でも引き続き重要な業務を請け負っている。たとえば、米国一般調達庁の文書によれば、レンドンは2010年から2015年にかけて、連邦政府機関全体にメディアとコミュニケーション支援サービス全般を提供する大型契約を結んでいる。同様に、SAIC/Leidosは米陸軍研究所と「遠征戦や非正規戦、特殊作戦、安定化と復興作戦」に関して2010年から2015年にかけて4億ドルの契約を結んでいる。ただしこの契約は「現在見直し作業中」だ。


帝国の逆襲

 オバマの下で、ペンタゴン・ハイランズ・フォーラムに参加する利害関係者に代表される企業や産業、そして金融権力の結びつきは、かつてないほど強固なものとなった。

 奇しくも、オバマ大統領がヘーゲル長官の辞任を発表したまさにその日、国防総省は、2013年にオバマ大統領によって任命されたヘーゲル国防副長官ロバート・O・ワークが、その1週間前にヘーゲル長官が発表したばかりの国防革新構想をどのように進めるつもりなのかを強調するメディア情報を発表した。この新たな構想は、ペンタゴンが長期的な変革を遂げ、情報活動全般にわたって最先端の破壊的技術に遅れを取らないようにすることに焦点を当てたものだった。

 ヘーゲルが排除された本当の理由が何であれ、これはマーシャルとハイランズ・フォーラムのビジョンにとって象徴的かつ具体的な勝利であった。ハイランズ・フォーラム共同議長のアンドリュー・マーシャルONA代表は、実際、引退するかもしれない。しかし、ヘーゲル後のペンタゴンは、彼の信奉者で占められている。

 現在、国防総省の新たな変革計画を指揮しているロバート・ワークは、マーシャルの忠実な従者であり、以前はネットアセスメント局(ONA)で戦争ゲームの指揮と分析を行なっていた。マーシャルやウェルズ、オニール、その他のハイランズ・フォーラムの構成員と同様、ワークもまたロボット空想家であり、『ロボット時代の戦争準備』(新アメリカ安全保障センターCNASが昨年初めに発表した研究)の主筆である。

 また、ONAの将来を決定するための作業も進められており、彼の戦略家トム・エラード(Tom Ehrhard)と、現在ハイランズ・フォーラムがその権限で運営されているマイケル・G・ヴィッカーズ(Michael G. Vickers)国防総省情報次官が補佐している。破壊的技術の国防総省への統合」を提唱するエラードは、以前はONAでマーシャルの軍事補佐官を務めていた。NSAのような監視機関を監督するマイク・ヴィッカーズもまた、以前はペンタゴンのコンサルタントとしてマーシャルに雇われていた。

 ヴィッカーズはまた、非正規戦の主要な推進者でもある。ブッシュ、オバマの両政権において、ロバート・ゲイツ前国防長官のもとで特殊作戦と低強度紛争を担当する国防次官補を務めたヴィッカーズは、「ネットワークと戦うためのネットワーク」を利用した「対ネットワーク戦争」プログラムの一環として、「米国が戦争状態にない数多くの国々」を含む「世界中での分散作戦」を推進した。ヴィッカーズはゲイツの部下として、心理作戦やステルス輸送、無人偵察機プレデターの配備、そして「テロリストや反乱軍を追跡し標的にするためのハイテク監視と偵察」を含む特殊作戦の予算を増やした。

 オバマ大統領はヘーゲルの後任として、2009年から2013年まで国防副長官を務めたアシュトン・カーターを指名した。彼は予算と調達の専門家であり、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、「戦場におけるアメリカの優位性を維持するための新たな戦略と技術を開発する努力など、現在のペンタゴン副長官であるロバート・ワークが提唱する構想のいくつかを後押しすると期待されている」。

 1999年、クリントンの国防次官補を3年間務めたカーターは、ウィリアム・J・ペリー元国防長官と共著で、「デジタル技術と絶え間ない情報の流れ」によって促進される新しい形の「遠隔操作による戦争」を提唱した。ペンタゴン在任中のカーターの同僚にハイランズ・フォーラム共同議長のリントン・ウェルズがおり、1994年に当時の国防長官としてリチャード・オニールをペンタゴンのIOシンクタンクとしてハイランズ・フォーラムの設立に任命したのも、もちろんペリーであった。

 ハイランズ・フォーラムの重鎮であるペリーは、SAICの役員に就任した後、最終的にはもうひとつの巨大防衛請負企業、グローバル・テクノロジー・パートナーズ(GTP)の会長に就任した。そしてアシュトン・カーターは、オバマによって国防長官に指名される前は、ペリーの下でGTPの役員を務めていた。カーターはオバマ政権下で国防総省に勤務していたとき、ワークやフランク・ケンドール現国防次官と密接に仕事をしていた。国防業界の情報筋は、ペンタゴンの新しい一団は、この好機を「劇的に向上させ」、ペンタゴンの「主要改革計画」に関して「一気にゴールラインを突破させた」と喜んでいる。

 実際、国防長官候補としてのカーターの優先事項は、米国の軍事戦略を強化するための新しい商業的「破壊的技術」を特定し、獲得することである。言い換えれば国防総省スカイネット計画を達成することである。

 このように、ペンタゴンの新たな革新構想の起源は、数十年前にペンタゴン内部で広く流布されながら、現在まで十分に根付かなかった構想にまで遡ることができる。2006年から2010年にかけて、ロシャールやザルマン、そしてレンドンといったハイランズ・フォーラムの専門家たちによってこのような構想が練られていたのと同じ時期に、ネットアセスメント局は、4年ごとの国防レビューを通じて、これらの構想を具体的な戦略や政策開発に反映させる直接的なメカニズムを提供した。ここで「特殊作戦」や「電子戦」、そして「情報作戦」といった「黒」の世界を拡大させたのは、主にマーシャルの助言があったからだ。

 完全にネットワーク化され自動化された軍事システムというマーシャルの9.11以前の視座は、2014年9月に国防大学が発表したペンタゴンのスカイネット研究において結実した。ウェルズの提言の多くは現在、ONAとハイランズ・フォーラムの退役軍人や関連団体による新しい国防革新構想を通じて実行に移されている。

 ウェルズの白書が、自律型ネットワークロボット戦争を独占するためにAI研究を独占しようとするペンタゴンの強い関心を浮き彫りにしたことを考えれば、フォーラムの出資先であるSAIC/Leidosという提携先が「スカイネット」という言葉を公に使うことに異様な敏感さを示すのも、まったく不思議なことではない。

 「スカイネット(架空)」と題されたウィキペディアの項目で、SAICのコンピュータを使用している人々は、「豆知識」の分野で、イギリスの軍事衛星システムやさまざまな情報技術計画など、現実世界の「スカイネット」を指摘するいくつか段落を削除した。

ヘーゲルが去ったことで、ハイランズ・フォーラムの影の連携網につながるペンタゴンの高官たちが政府の影響力を強化する道が開かれた。これらの高官たちは、政界や産業界、メディア、そして企業関係者からなる長年の影の連携網に組み込まれており、政府の背後で、その姿が見えないように座っているが、政権が民主党であろうと共和党であろうと、文字通り外交と国内の国家安全保障政策を決定している。

 この連携網こそが、アメリカの投票を無意味なものにしているのだ。電子通信の包括的な監視は、公共の利益を守ったり、テロとの闘いに役立ったりするどころか、エネルギーや防衛、そしてIT業界の強力な既得権益を強化するために組織的に悪用されてきた。

 その結果もたらされた永続的な世界規模の戦争状態は、誰の安全も確保することなく、いわゆる『イスラム国』の新世代のテロリストを生み出した。これ自体アサドの残虐行為と長期にわたる中東でのアメリカの秘密作戦の腐臭を放つ組み合わせから生まれた副産物としてのフランケンシュタインだ。このフランケンシュタインの存在は、現在、経済の不安定さが政府に対して国防予算を削減するよう圧力をかけている時期に、国家安全保障機構を拡大し巨額の利益を得ようとする私設軍事請負業者によって冷酷に悪用されている。

 証券取引委員会によると、2008年から2013年にかけて、アメリカの5大防衛関連企業は、イラクとアフガニスタンでの戦争が終結したことで事業が立ち行かなくなり、収益が圧迫されたため、従業員の14%を失った。ISISが引き起こした「長期戦争」の継続は、今のところ、彼らの運命を逆転させている。新たな戦争から利益を得ている企業には、レイドス社やロッキード・マーチン社、ノースラップ・グラマン社、そしてボーイング社など、ハイランズ・フォーラムと関係のある企業が多い。戦争は、まさに「金のなる木」だ。


陰の存在はなくなる

 しかし、結局、情報帝国主義者たちは既に破綻している。この調査は完全にオープンソース*の手法に基づいており、主にグーグルを可能にした同じ情報革命の文脈で実現できた。この調査は完全に一般の人々によってクラウドファンディングを通じて資金提供されている。そして、この調査は従来のメディア回路の外で公開および配布されており、まさにこの新しいデジタル時代において、中央集権的な上意下達の権力が人々の真実と正義への愛、そして共有の欲望には勝てないことを示している。
オープンソース*・・・ソフトウェアのソフトコードを公開することにより、ソフトウェアの改良や機能追加などを誰もが自由におこなえる体系のこと

 この皮肉な事態の教訓は何か:非常に単純明快だ。「情報革命は本質的に分散化され、分権化されている。それをビッグ・ブラザーが制御および利用することはできない。そうした試みは最終的に自己破壊的な方法で必ず失敗する」。

 ペンタゴンの、情報と情報技術の制御を通じて世界を支配しようとする最新の狂気じみた試みは陰の連携網が無敵の力を持つ兆候ではなく、むしろその覇権の衰退の加速を阻止しようとしても、それが裏切られる絶望の兆候になっている。

 しかし、覇権の衰退はすでに止めようもない。そして、今回の話は、以前の多くの言説と同様、権力が影に隠れようとも、情報革命をすべての人々の利益のために動員する機会がこれまで以上に強力であることを示すひとつの小さな兆候になっている。


Dr Nafeez Ahmed
調査報道ジャーナリスト、ベストセラー作家、国際安全保障学者。元ガーディアンのライターで、VICEの『マザーボード』で「システム・シフト」コラムを執筆するほか、『ミドルイースト・アイ』のコラムニストも務める。Guardian』での執筆で、2015年Project Censored Award for Outstanding Investigative Journalismを受賞。
インディペンデント紙、シドニー・モーニング・ヘラルド紙、エイジ紙、スコットランド紙、フォーリン・ポリシー紙、アトランティック紙、クオーツ紙、プロスペクト紙、ニュー・ステーツマン紙、ル・モンド・ディプロマティーク紙、ニュー・インターナショナリスト紙、カウンターパンチ紙、トゥルースアウト紙などにも寄稿。著書に『A User's Guide to the Crisis of Civilization:And How to Save It』(2010年)、SFスリラー小説『ZERO POINT』などの著書がある。国際テロの根本原因や秘密工作に関する彼の研究は、9.11委員会や7.7検視にも公式に貢献した。
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 チョムスキーが”政府などが発表した公文書、公開情報を真面目に読むだけで、米国の権力者が実に悪辣ないことを考え悪辣なことを実行してきたならず者国家であることは明白です”旨を言っていたけれども、この論文もその系譜だね。
 これを読むと、中国政府が自前のネット生態系を組んで”集団的西側”の”ワールワイドウェブ”との直接接続を阻んだのはまさに自衛で当然ですわ。また、米帝とその属国が対米バックドアを持たないファーウェイ製ネットシステムを目の敵にするのも当然ですな。ファーウェイの機器は安いだけでなくバックドア自体がないので有色人種世界では普及が進んでるけれど、米帝側はこれを政治と経済で激しく攻撃している由。そういうのはかつて日本他に対して「不当貿易だ」とか言って無茶苦茶攻撃し「自由貿易だ!」「グローバリズムに倣え!」と喚いていたわけで、実にジャイアニズム。そりゃあ、力をつけてきた地球人の85%が「もうたくさんだ」として米帝側から離れていくよね。

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