コロナウイルスのパンデミックが教育の形を再構築する3つの方法
<記事原文> >3 ways the coronavirus pandemic could reshape education
World Economic Forum Global Agenda
2020年3月12日 グローリア・タム、ダイアナ・エルアザー
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2020年3月21日
註 この記事は、経済界が、この先公教育をどう変えようとしているかを考えるために翻訳しました。

• コロナウイルスのパンデミックは、世界中の何百万人もの人々の教育方法を変えた。
• 教育の新しい解決法は、多くの必要性がとても高い革新をもたらす可能性がある。
• デジタル格差がある中で、教育へのアプローチ方法における新しい変化は教育の平等の格差を拡大する可能性がある。
数週間のうちに、コロナウイルス(COVID-19)は世界中の生徒(訳注 本来studentsは、生徒・児童・学生すべてを指しているが、この記事ではstudents はすべて生徒と訳す)の教育方法を変えた。これらの変化から、長いスパンから見て、教育が今後どのように良い方向に、あるいは悪い方向に変わるかを垣間見ることができる。
コロナウイルスがアジア、ヨーロッパ、中東、米国に急速に広まったため、各国は本格的なパンデミックの発生を緩和するために、迅速かつ決定的な対応を行ってきた。ここ2週間で、多くの学校や大学で、出席を停止する発表があった。OECDは、3月13日現在、39か国で発表または実施されている学校閉鎖により、4億2100万人以上の子供が影響を受けていると推定している。
さらに、他の22か国は、部分的な「地方レベルでの」部分的な学校閉鎖を発表している。
これら危機管理に基づく決定により、特に中国、韓国、イタリア、イランなどの最も大きな影響を受けた一部の国では、数百万人の学生(児童・生徒)が一時的な「ホームスクーリング」状態に置かれることになった。こうなったことで、不便な状況になっていることは事実だが、逆に教育革新に向けての新しい例を示すチャンスにもなっている。
COVID-19への対応が世界中の教育システムに与える影響を判断するのは時期尚早だが、今回の対処法が、学習方法の変革とデジタル化にとっての一時的な影響ではないといえる兆候が見受けられる。以下、未来の教育革新がどう進んでいくかのヒントを3点示す。
1.それとなく変化の方向に促されてきた教育が-驚くべき革新につながる可能性がある
世界中の学術機関の変化のペースが遅いことは嘆かわしい。何世紀たっても同じやり方、講義式授業中心、規定の概念を植え付けるだけの教育、時代遅れの教室。
そんな中で、COVID-19は、世界中の教育機関が比較的短期間で革新的な解決法を見出すきっかけとなっている。
ウイルスの拡散を遅らせるために、香港の生徒は、2月、双方向アプリを使用した自宅学習を開始した。
中国では、1億2000万人の中国人がテレビの生放送を通じて教材にアクセスできるようになった。
他のよりシンプルではあるが、創造性という面では引けを取らないないやり方が世界中で導入されている。ナイジェリアのある学校では、これまで使用してきた非同期オンライン学習ツール(Google Classroomを使った教材の閲覧など)をレベルアップして、同期の対面ビデオ指導が追加された。これらは、学校閉鎖に対応したものだ。
同様に、レバノンのある学校の生徒は、体育などの科目であってもオンライン学習を活用し始めた。生徒は、自分の運動トレーニングやスポーツのビデオ撮影し、「宿題」として教師に送る。これは、生徒に新しいデジタルスキルを習得させることになっている。ある生徒の親は、こう述べている。「息子は、スポーツエクササイズには少ししか時間をかけませんでしたが、3時間かけて適切な形式のビデオを撮影・編集し、教師に送信しました」。
5Gテクノロジーが中国、米国、日本などの国で普及するにつれて、学習者や教育方法を提案する企業や個人は、さまざまな形式の「どこでも、いつでもできる学習」というデジタル教育の考え方を受け入れてきている。「教育的インフルエンサー」のライブ配信から、バーチャルリアリティ体験にまで至る新しい学習方法が従来の対面教室学習を補完することになるだろう。
この動きは、学びが、日常生活における一つの習慣になる可能性を示唆している。-これこそまさに「生涯学習」だ。
2.官民教育連携の重要性が高まる可能性がある
ここ数週間で、学習面での協同や連合が形作られてきた。それは、政府、出版社、教育専門家、技術プロバイダー、通信ネットワーク事業者などの多様な利害関係者が集まって、今回の危機に対する一時的な解決策としてデジタルプラットフォームを活用するという動きだ。政府主導で教育が提供されてきた新興国では、この流れが、公教育においてより普及し、定着する可能性がある。
中国では、教育省が多様な関係者を集めて、新しいクラウドベースのオンライン学習および放送プラットフォームを開発し、教育省と産業情報技術省が主導する一連の教育基盤
をアップグレードした 。
同様に、香港に本拠を置くリードトゥゲザー・香港フォーラム( チャイナ・ディリー紙のビデオはこちら)は、60を超える教ら 育機関、出版社、メディア、エンターテイメント業界の専門家の共同組織であり、ビデオ、書籍、評価方法を含む900以上の教育素材を無料で提供している。この共同組織は、COVID-19がおさまった後でもプラットフォームの使用と保守を継続する方向だ。
これらの例を見ると、政府による資金提供によるプロジェクトや、営利を目的としないプロジェクトという従来の枠を超えて、教育革新に注目が集まっていることは明らかだ。
ここ10年を見ても、民間セクターが、教育問題解決や教育革新に大きな関心を払っており、大きな投資も行ってきたことがわかる。米国のマイクロソフトとグーグルから韓国のサムスン、中国のテンセント、ピンアン、アリババに至るまで、企業は、大衆教育に対する戦略の重要性に気付きつつある。教育界を主導しようという動きは、範囲が限られており、孤立したものであったが、パンデミックのおかげで、より大規模で、他業界との共同も実現できる共同組織が、共通の教育目標の周りで構築できる道がついた。
3.デジタル格差は拡大する可能性がある
影響を受けた地域のほとんどの学校は、教育を継続するための一時的な解決策を見出しているが、その学習の質はデジタルアクセスのレベルと質に大きく依存している。結局のところ、 世界中の人口の約60%だけが、インターネットに繋がっている。たとえば、香港では個人用タブレットを使った仮想授業が当たり前だが、発展途上国の多くの学生は、WhatsAppやメールで送信されたレッスンや課題に依存している。
個々の家庭の裕福度やデジタル精通度が劣るにつれ、その家庭の生徒たちが取り残される割合は高くなる。オンライン授業に移行すると、こんな家庭の子供たちはデジタル格差と、データプランにかかるコストのせいで、途方に暮れてしまう。
すべての国でアクセスコストが低下し、アクセスの質が向上しない限り、教育の質の差、したがって社会経済的不平等はさらに悪化するだろう。教育へのアクセスが最新のテクノロジーへのアクセスによって決まるのであれば、デジタル格差はより極端になる可能性がある。
「教育システムに回復力を組み込む必要があります」
—ミネルヴァプロジェクト、グロリアタム&ダイアナエルアザール
COVID-19の急速な広がりは、パンデミック疾患から過激派の暴力、気候の不安定、さらには急速な技術変化に至るまで、さまざまな脅威に直面する回復力を構築することの重要性を実証している。
このパンデミックは、情報に基づいた意思決定、創造的な問題解決能力、そしてとりわけ適応性など、この予測不可能な世界で生徒に必要とされる能力を思い起こす機会にもなっている。このような能力がすべての生徒にとって優先されるようにするには、教育システムにも回復力を組み込む必要がある。
World Economic Forum Global Agenda
2020年3月12日 グローリア・タム、ダイアナ・エルアザー
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2020年3月21日
註 この記事は、経済界が、この先公教育をどう変えようとしているかを考えるために翻訳しました。

• コロナウイルスのパンデミックは、世界中の何百万人もの人々の教育方法を変えた。
• 教育の新しい解決法は、多くの必要性がとても高い革新をもたらす可能性がある。
• デジタル格差がある中で、教育へのアプローチ方法における新しい変化は教育の平等の格差を拡大する可能性がある。
数週間のうちに、コロナウイルス(COVID-19)は世界中の生徒(訳注 本来studentsは、生徒・児童・学生すべてを指しているが、この記事ではstudents はすべて生徒と訳す)の教育方法を変えた。これらの変化から、長いスパンから見て、教育が今後どのように良い方向に、あるいは悪い方向に変わるかを垣間見ることができる。
コロナウイルスがアジア、ヨーロッパ、中東、米国に急速に広まったため、各国は本格的なパンデミックの発生を緩和するために、迅速かつ決定的な対応を行ってきた。ここ2週間で、多くの学校や大学で、出席を停止する発表があった。OECDは、3月13日現在、39か国で発表または実施されている学校閉鎖により、4億2100万人以上の子供が影響を受けていると推定している。
さらに、他の22か国は、部分的な「地方レベルでの」部分的な学校閉鎖を発表している。
これら危機管理に基づく決定により、特に中国、韓国、イタリア、イランなどの最も大きな影響を受けた一部の国では、数百万人の学生(児童・生徒)が一時的な「ホームスクーリング」状態に置かれることになった。こうなったことで、不便な状況になっていることは事実だが、逆に教育革新に向けての新しい例を示すチャンスにもなっている。
COVID-19への対応が世界中の教育システムに与える影響を判断するのは時期尚早だが、今回の対処法が、学習方法の変革とデジタル化にとっての一時的な影響ではないといえる兆候が見受けられる。以下、未来の教育革新がどう進んでいくかのヒントを3点示す。
1.それとなく変化の方向に促されてきた教育が-驚くべき革新につながる可能性がある
世界中の学術機関の変化のペースが遅いことは嘆かわしい。何世紀たっても同じやり方、講義式授業中心、規定の概念を植え付けるだけの教育、時代遅れの教室。
そんな中で、COVID-19は、世界中の教育機関が比較的短期間で革新的な解決法を見出すきっかけとなっている。
ウイルスの拡散を遅らせるために、香港の生徒は、2月、双方向アプリを使用した自宅学習を開始した。
中国では、1億2000万人の中国人がテレビの生放送を通じて教材にアクセスできるようになった。
他のよりシンプルではあるが、創造性という面では引けを取らないないやり方が世界中で導入されている。ナイジェリアのある学校では、これまで使用してきた非同期オンライン学習ツール(Google Classroomを使った教材の閲覧など)をレベルアップして、同期の対面ビデオ指導が追加された。これらは、学校閉鎖に対応したものだ。
同様に、レバノンのある学校の生徒は、体育などの科目であってもオンライン学習を活用し始めた。生徒は、自分の運動トレーニングやスポーツのビデオ撮影し、「宿題」として教師に送る。これは、生徒に新しいデジタルスキルを習得させることになっている。ある生徒の親は、こう述べている。「息子は、スポーツエクササイズには少ししか時間をかけませんでしたが、3時間かけて適切な形式のビデオを撮影・編集し、教師に送信しました」。
5Gテクノロジーが中国、米国、日本などの国で普及するにつれて、学習者や教育方法を提案する企業や個人は、さまざまな形式の「どこでも、いつでもできる学習」というデジタル教育の考え方を受け入れてきている。「教育的インフルエンサー」のライブ配信から、バーチャルリアリティ体験にまで至る新しい学習方法が従来の対面教室学習を補完することになるだろう。
この動きは、学びが、日常生活における一つの習慣になる可能性を示唆している。-これこそまさに「生涯学習」だ。
2.官民教育連携の重要性が高まる可能性がある
ここ数週間で、学習面での協同や連合が形作られてきた。それは、政府、出版社、教育専門家、技術プロバイダー、通信ネットワーク事業者などの多様な利害関係者が集まって、今回の危機に対する一時的な解決策としてデジタルプラットフォームを活用するという動きだ。政府主導で教育が提供されてきた新興国では、この流れが、公教育においてより普及し、定着する可能性がある。
中国では、教育省が多様な関係者を集めて、新しいクラウドベースのオンライン学習および放送プラットフォームを開発し、教育省と産業情報技術省が主導する一連の教育基盤
をアップグレードした 。
同様に、香港に本拠を置くリードトゥゲザー・香港フォーラム( チャイナ・ディリー紙のビデオはこちら)は、60を超える教ら 育機関、出版社、メディア、エンターテイメント業界の専門家の共同組織であり、ビデオ、書籍、評価方法を含む900以上の教育素材を無料で提供している。この共同組織は、COVID-19がおさまった後でもプラットフォームの使用と保守を継続する方向だ。
これらの例を見ると、政府による資金提供によるプロジェクトや、営利を目的としないプロジェクトという従来の枠を超えて、教育革新に注目が集まっていることは明らかだ。
ここ10年を見ても、民間セクターが、教育問題解決や教育革新に大きな関心を払っており、大きな投資も行ってきたことがわかる。米国のマイクロソフトとグーグルから韓国のサムスン、中国のテンセント、ピンアン、アリババに至るまで、企業は、大衆教育に対する戦略の重要性に気付きつつある。教育界を主導しようという動きは、範囲が限られており、孤立したものであったが、パンデミックのおかげで、より大規模で、他業界との共同も実現できる共同組織が、共通の教育目標の周りで構築できる道がついた。
3.デジタル格差は拡大する可能性がある
影響を受けた地域のほとんどの学校は、教育を継続するための一時的な解決策を見出しているが、その学習の質はデジタルアクセスのレベルと質に大きく依存している。結局のところ、 世界中の人口の約60%だけが、インターネットに繋がっている。たとえば、香港では個人用タブレットを使った仮想授業が当たり前だが、発展途上国の多くの学生は、WhatsAppやメールで送信されたレッスンや課題に依存している。
個々の家庭の裕福度やデジタル精通度が劣るにつれ、その家庭の生徒たちが取り残される割合は高くなる。オンライン授業に移行すると、こんな家庭の子供たちはデジタル格差と、データプランにかかるコストのせいで、途方に暮れてしまう。
すべての国でアクセスコストが低下し、アクセスの質が向上しない限り、教育の質の差、したがって社会経済的不平等はさらに悪化するだろう。教育へのアクセスが最新のテクノロジーへのアクセスによって決まるのであれば、デジタル格差はより極端になる可能性がある。
「教育システムに回復力を組み込む必要があります」
—ミネルヴァプロジェクト、グロリアタム&ダイアナエルアザール
COVID-19の急速な広がりは、パンデミック疾患から過激派の暴力、気候の不安定、さらには急速な技術変化に至るまで、さまざまな脅威に直面する回復力を構築することの重要性を実証している。
このパンデミックは、情報に基づいた意思決定、創造的な問題解決能力、そしてとりわけ適応性など、この予測不可能な世界で生徒に必要とされる能力を思い起こす機会にもなっている。このような能力がすべての生徒にとって優先されるようにするには、教育システムにも回復力を組み込む必要がある。
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