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地政学的に見て、サウジアラビア・イラン間の友好関係は実現する

<記事原文 寺島先生推薦>
Arab-Iran Amity is a Geopolitical Reality
筆者:M.K.バドラクマール(M. K. Bhadrakumar)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年11月11日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月23日



ガザ北部のジャバリア難民キャンプで、イスラエル軍の空爆の標的となった建物の残骸の中で作業するパレスチナ人(2023年11月1日)



 11月13日に予定されているイランのエブラーヒーム・ライースィー大統領のサウジアラビア初訪問は、3月に中国が仲介した両国間の和解の一里塚となる。両国関係は、パレスチナ・イスラエル紛争を背景に、急速に質的に新しい連帯の段階に入りつつある。

 このことは、この地域の政治に地盤が変化していることをあらわしている。これまでこの地域の政治は、長らく米国が支配してきたのだが、いまはそうはなっていない、ということだ。月曜日(11月6日)、ガザ停戦を推進するための中国とUAEが出した最新の提案が、ニューヨークの国連本部で、両国の特使が報道機関に向けて共同声明を読み上げるという、外交上異常な光景で締めくくられた。米国の姿はどこにもなかった。



 10月7日以降の出来事を見れば、イスラエルをイスラム近隣諸国に統合しようとする米国の試みが夢物語であることは明らかだ。イスラエルが剣を鍬に持ちかえないかぎりは。「人獣」であるガザの人々に対するイスラエルの復讐攻撃の獰猛さは、人種差別とジェノサイドの臭いがする。

 イランはシオニスト政権の獣性をずっと知っていた。サウジアラビアもまた、何よりもまずこの地域で生きることの意味を学ばなければならないという警鐘を受け、気を引き締めたに違いない。

 ライースィー大統領がサウジアラビアに近づこうとする背景には、勢力関係が歴史的に変化していることがある。サウジアラビアのサルマーン国王は、自身が主催したリヤドで開催されるアラブ諸国の特別首脳会議で、ガザのパレスチナ人に対するイスラエルの犯罪について話すようライースィー大統領を招待した。これは、サウジが米国の説得のもとでアブラハム合意*に関与しようとしたことでさえ、アラブの人々を疎外してきたことをサウジが深く認識したことを意味する。
*2020年8月13日にアラブ首長国連邦とイスラエルの間で締結された外交合意(Wikipediaより)

 西側諸国の言説における誤ちは、西アジアは、ロシア・中国・イランの枢軸関係で成り立っている、と認識している点だ。これは無意味な誤解だ。イランが1979年のイスラム革命以来一貫して追求してきた対外政策には3つの原則がある。①戦略的自主権は神聖なものであること、②この地域の国々は自分たちの手で運命を切り開き、域外の大国を巻き込むことなく地域の問題を自分たちで解決しなければならないこと、③その道のりがいかに長く曲がりくねったものであっても、イスラム教徒の団結を育むことである。

 この原則は、状況によって、つまり主として米国が追求した「分断して統治せよ」という植民地政策によってもたらされた状況によって、厳しい制約を受けることになった。例えばイラク・イラン戦争では、アメリカはイスラム革命の萌芽を阻止するため、イランへの侵略を開始するサダム・フセインと協力するよう地域諸国を奨励した。

 もうひとつの痛ましい歴史は、シリア紛争である。そこでもまた、米国はシリアの政権交代を地域諸国に対して積極的に働きかけ、その最終目的はイランを標的にすることであり、米国政府が占領下のイラクで育てたテロリスト集団を利用する、という手口だった。

 シリアでは、アメリカは見事に地域諸国を対立させることに成功し、その結果は、かつてイスラム文明の中心地であった場所の廃墟を見れば一目瞭然である。紛争の最盛期には、西側のいくつかの諜報機関がシリアで自由に活動し、テロ集団がシリアで暴虐の限りを尽くすのを支援したが、西側の最大の罪は、イランに対するのと同様に、自国の戦略的自律性と独立した外交政策を優先してきた点にある。これは冷戦時や冷戦後に取ってきた政策と似通ったものだった。

 敢えて言うなら、米国とイスラエルは、中東イスラム諸国を分断させることに大成功したのだ。その手口は、いくつかの湾岸諸国を怯えさせ、説得するというものだった。これらの諸国にイランの代理勢力から直接脅威を与えられる、あるいは攻撃されるという恐怖を感じさせたのだ。イランの息がかかったとされた反政府勢力も恐怖の対象とされることもあった。

 もちろん米国は資金を提供して、多数の武器を売ったのだが、さらに重要なことは、西側金融の柱としてペトロ・ダラーを上手く利用したことだった。イスラエルにとっては、イランを悪者扱いすることにより、直接に利をえることができた。というのも、パレスチナ問題からの目逸らしに使えたからだ。パレスチナ問題こそ、中東の中心課題であり続けていたからだ。

 敢えて言うなら、イラン・サウジ・中国間の合意は、サウジアラビア政府とイラン政府の間にここ数十年間存在した敵対関係を縮小させた、ということだ。両国は、不干渉の約束に関して、北京での秘密会談の成功によって生み出された勢いに乗ろうとした。しかし、湾岸アラブ諸国とイランの関係は、この2年間ですでに大きく改善していたことに留意しなければならない。

 欧米の専門家たちが見落としているのは、湾岸諸国の富裕層が、米国の片棒を担ぐような従属的な生活にうんざりしているということだ。これらの国がいま自国の国民生活において優先させたいことは、自分たちや自分たちに敬意を払ってくれる友好諸国とで方向性を決める、ということだ。双方の損得が相殺するというやり方は避けたいのだ。そんな冷戦時代のような、各国の政治色や力関係で決まるやり方は避けたいのだ。

 だからこそ、バイデン政権が受け入れようとしていないのは、サウジアラビアがOPECプラスの枠組みでロシアと協力し、自主的な原油供給削減の約束を交わすことなのだ。そのいっぽうで、サウジアラビアは米国と核技術について交渉し、同時に中国との外交関係を駆使して、1カ月前にレバント(東部地中海沿岸地域)で燃え上がった火を消し、他の西アジアの地域に戦火が拡大しないように手を打っている。

 明らかに、サウジはもはや米国とイランの対立を喜んだりはしていない。他方、サウジとイランは、地域の安定と安全が確保されない限り、開発優先の新しい考え方は消滅してしまうという共通の懸念を抱いている。

 したがって、米国側がヒズボラ・ハマス・イランを同一集団と捉えるのは児戯に等しい。ブリンケン国務長官は、月曜日(11月6日)にテルアビブに訪問した際、そのような発言をしたのだが・・・。 さらに、この地域の残りの国々を十把一絡げに捉えることも、そうだ。ヒズボラやハマスが「テロ」活動組織的であるという虚言は崩れつつある。真実があきらかにされれば、ハマスやヒズボラは、歴史的に見ればIRA(アイルランド共和軍)と関連のあるシン・フェイン党とそれほど変わらない組織であることが分かるだろう。

 このような子どもじみた考えのもとで創設された、米・イスラエル・インド(・UAE)連合による西アジアでのクアッド2(I2U2)など、いまでは笑止千万だし、先日のG20首脳会議においてニュー・デリーで発案された奇妙な取り決めによる、サウジアラビアをインド・中東・欧州回廊の中継地にしようという妄想もあり、その虫のいい見通しでは、イスラエルを「組み込ん」で、イスラエルのハイファ港での事業を生み出し、イランやトルコを孤立させ、ロシアが主導する国際南北輸送回廊を台無しにし、中国の一帯一路構想に挑戦状を送り付けるつもりだったようだが、現実は厳しい。

 すべてを考慮に入れれば、先週末にアントニー・ブリンケン米国務大臣がイスラエルを訪問し、アンマンでアラブ諸国の限られた首脳陣と話し合いをもったことは、今回のガザ危機における決定的瞬間になった、といえる。

 アラブ諸国の外相たちは、ユダヤ人の権益を守ろうとする悪意あるブリンケンの提案には一切耳を貸さなかった。その提案とは、①停戦ではなく「人道的休戦」、②イスラエルによる残忍で恐ろしい攻撃から逃れてきたガザの人々のための難民キャンプの費用はアラブ諸国が出すことになるが、その資金は最終的にはガザのユダヤ人居住者に回される、③戦後の取り決めの輪郭として、ガザの瓦礫はパレスチナ自治政府が処理し、再建費用はアラブ諸国が捻出するが、イスラエルは重要な安全保障分野で優位を保つ、④米国がきっかけを作ったイスラエル激戦区にいるヒズボラやハマスにイランが救いの手を差し伸べるのを阻止する、というものだった。

 偽善もいいところだ。アラブの外相たちは声をそろえて、ブリンケンの提案に対する対抗案、すなわち即時停戦を明言した。バイデン大統領は、ただならぬ前兆を理解したようだ。しかし、本質的には、かつて誰かが呼んだように、バイデン大統領は世界一のシオニストであり続けている。そして彼の動機は主に、2024年に迫った大統領選で自分が政治的に生き残れるかどうか、から来ている。

 それはともかく、国際社会がイスラエルのアパルトヘイト国家を阻止しようと主張するのは、もはや時間の問題だろう。イスラム諸国が団結すれば、多極化しつつある世界秩序の中で主導権を握ることができるからだ。パレスチナ問題の解決にこれ以上の遅れは許されないという彼らの要求は、西半球も含めて共鳴を得ている。
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