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ゼレンスキーは終わったのか?タイム誌の特集記事が示した、ウクライナの指導者に対する米国の態度の変化

<記事原文 寺島先生推薦>
Is Zelensky done for? A new Time Magazine cover story indicates changing American attitudes to Ukrainian leader
役者から転身したこの政治家が感じているのは、これまで2年近く自身の身勝手さを拡張してくれた西側勢力が今度は自分を追い落とそうとしている状況だ。
筆者:タリク・クリル・アマル(Tarik Cyril Amar)


ドイツ出身の歴史家。イスタンブールのコチ大学でロシア、ウクライナ、東欧、第二次世界大戦の歴史や記憶の政治学を研究している。Xのアカウントはこちら @tarikcyrilamar
出典:RT   2023年11月2日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年11月10日


欧州政治共同体第3回会議でのウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領。2023年10月5日。スペインのグラナダにて© Thierry Monasse/Getty Images


 タイム誌が先日出した長い記事が明らかにしたのは、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領の世界と、同大統領の精神状況についての深い洞察だった。実際、その記事は同大統領に対する容赦ない激しい攻撃だった。

 読者が理解するのは、ゼレンスキーが力を失っていること、さらに悪いことに世界規模でそうなっていることを感じ取っている、という事実だ。この先これまでのような手厚い援護が得られるかどうかについては、彼自身が疑問に思っているだけではなく、外国の報道関係者たちにも伝えており、ゼレンスキーの役者じみた堂々した態度は姿を消し、かわりに鬱屈とした怒りの中、事実に向き合おうとしない態度が浮き彫りになり、ゼレンスキーには、交渉によりこの壊滅的な戦争から抜け出せる方向を見出そうとすることさえ考えられなくなっている。欠くことのできない米国からの支援も急激にしぼんでいる。先日のゼレンスキーによるワシントン訪問時の歓迎式典は、冷ややかな空気に包まれたが、ウクライナの永続する手の施しようがない腐敗問題についての話が新たな主張とともに切り出されている現状を考えれば、いたしかたない。現状、ウクライナ国内の軍当局は、大統領から受けた司令があまりに現実離れしているので、その司令の実行すらできない状況だ。

 端的にいえば、いま私たちの目にうつっているのは、自分が負けつつあることを受け入れられず、自分の国と国民を自らの権力の維持のためにさらに犠牲にし続けるつもりの孤独な指導者の姿だ。心理学的には、ゼレンスキーによる現実否定は、理解できる(許されることではないが)。ゼレンスキーには、ウクライナが極端な道を選んだことの大きな責任がある。つまりそれは、西側への一方的な依存という方向性だ。確かにこの代理戦争の失敗の責めを負うべき人々は、ウクライナ国内にも米国にもNATOにもEUにも存在することは事実だ。しかしウクライナ当局においては、ゼレンスキーこそ最も責められるべき人物である。というのも、ゼレンスキーにはこの国家的大失敗を防ぎ、終わらせる術があったのだから。


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 ゼレンスキーは自分が示した選挙公約を守ることができた(その公約は、歴史的な大勝を収めた2009年の選挙の前におこなったものだ)。それは当時ウクライナから離脱していたドネツク・ルガンスク両人民共和国と妥協し、平和を実現する、という公約だった。2015年のミンスク2合意を全面的に台無しにするのではなく、真剣に受けとることもできた。NATOに加盟するという考えを捨てることも。米国が主導する同盟がウクライナに思わせぶりな偽の期待をさせながら、実際は加盟国入りする具体的な見通しを差し出してこなかったことからすれば、ことさらそうだ。今年のリトアニアのビリュニスNATO首脳会談においてもウクライナの加盟については屈辱的な空約束に終わり、そのような状況が再度確認させられることになった。

 ゼレンスキーは西側の話に耳を傾けないという選択もできた。それは、2021年末にロシアが大きな譲歩を見せたことで戦争を回避するためにおこなった取り組みを西側がはねつけた時のことだった。ゼレンスキーは、2022年春、急いで和平を結ばないよう指示した米国に従うことも拒否できた。もちろん上記のどれひとつとっても、簡単なことではなかったし、危険なしには実現できなかったことばかりだ。しかし苦労したくないのなら大統領選に出馬しなければよかったのだ。あるいはいま退位してもいい。

 今でさえ、いつでもゼレンスキーは電話の受話器を取ってロシアのウラジーミル・プーチン大統領に、とはいわないまでも、例えばブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領に電話をかけ、きちんとした仲介を依頼し、実りある対話を始めることも可能だ。本当に、膨れ上がった自分勝手さを克服し、西側のためではなく、自国のために尽くすことこそ、ゼレンスキーが果たすべき義務である。

 良心の呵責をおこなうに多くの傷を脛にもつゼレンスキーは、決して変わらないだろう。自分の犯した失態を自己認識しないといけない状況というのはつらいだろう。そうはせずにゼレンスキーは、「世界全体の運命はウクライナにかかっていて(ゼレンスキーの台詞)」、「ウクライナが勝たなければ世界規模の戦争に発展する」という自己陶酔的なお題目を唱え続けている。たとえこの戦争に公式に敗れたとしても、ゼレンスキーは亡命先での余命において、他の人々を責め、自分は裏切られたという伝説を語り継ぐことだろう。

 本当に、タイム誌のこの記事によると、ゼレンスキーはすでに自分、しかも自分だけが、ウクライナの勝利を心の底から信じている人物であると考え、自分を失望させたとして西側を責め始めていることがわかる。このような状況を、ゼレンスキーは悲しげな比喩を使ってこう表現した。すなわち彼には、ウクライナ国外からゼレンスキーを見ている観客らが、何期にもわたって上演されてきた劇に対する興味を失いつつある状況を感じとれている、と。

 タイム誌が以前は個人崇拝の対象として崇め奉っていた人物を激しく否定する記事を出した背景に何があるのかを正確に知ることはできない。ただ、以下の二つの事実は明らかだ。①ゼレンスキーに対する論調や評論は劇的に変わった。②そのような報道機関はタイム誌だけではない、という2点だ。 西側から寵愛を受け、ハリウッドから喝采を浴び、チェ・ゲバラとウィンストン・チャーチル的要素を合体させて、ジュラシックパーク風に作り出された、空想の英雄を具現化しようという、ゼレンスキーの時代は終わった。

 このような変節が起きている理由も明白だ。それは、この代理戦争は失敗に終わりつつあることと、米国政府が、イスラエルがパレスチナの人々にジェノサイド的攻撃を加え、おそらくこの先中東でさらに大きな戦争をはじめる支援をすることを優先しているからだ。ゼレンスキーは事実上、「イスラエルに対する嫉妬」的な発言までしている。イスラエルを、米国お気に入り従属国が、軍事大国で 、国家主義的風潮が強く、事実上の専制国家になれるかのお手本にできると考えてきたゼレンスキーにとっては、このような状況に苦虫を噛み潰していることも、間違いないだろう。


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 要するに、タイム誌がゼレンスキーに対する評価を低下させたことは、ゼレンスキーに反対するような土壌作りの準備を始めている兆候なのだろう。元「奇跡の人」、(南)ベトナムのゴ・ディン・ジエムのような、ゼレンスキー以前の他の代理戦争の指導者たちと同様に、このウクライナ大統領は不必要とされ、処分される可能性があるのだ。そしてその手段としては、ある程度あからさまにおこなわれる武力政変や選挙操作(あるいはその余波)などが用いられるのだろう。

 しかしおおかたの西側社会の目から逸らされている事実は、このタイム誌の記事に対するウクライナ国内の反応だ。実はこの記事はウクライナ国内の報道機関や政治的指導者層から反響を呼んでいる。強権を持つ国家安全保障・国防会議のアレクセイ・ダニロフ書記は、この記事を説得力のないことばで否定した上で、警察当局に求めたのは、そのことに関する情報を漏らした人々を特定することだった。こんな被害対策が取られたことは、驚くに値しない。

 ウクライナのソーシャル・メディア上では、ロシアを非難する声が一定数上がっている。一例をあげると、政治評論家のコスチアンティン・マトヴィエンコ氏の推測によると、タイム誌のこの記事は「西側の敵陣営(同氏の米国ネオコン風ことばを借りれば「悪の枢軸」)」が、ゼレンスキーを追い落とそうとする意図をもつ理由は、これらの陣営がゼレンスキーのもつ道徳的権威を恐れている(マトヴィエンコ氏はそう信じたがっているのだが)からだ、という。これらの敵陣営がどうやってタイム誌にたれ込んだのかについては、マトヴィエンコ氏は明らかにしていない。こんな反応は全く理解に苦しむものだが、このような主張は、作り上げられたゼレンスキーの虚像がしつこく、少なくともウクライナのある程度の知識階級に残っているという事実を反映するものだ。さらにはウクライナの国際的な影響力についての虚像についても、そうだ。国家安全保障の重要性は、ウクライナだけの独自問題では全くない。しかしウクライナの場合、このような幻想のせいで、戦争を終わらせることを難しくしている。

 それと同時に、ウクライナを観察している人々は、タイム誌が発した兆候により風向きが変化したことを指摘している。ある一人の報道関係者によると、従前のゼレンスキーの虚像というのは、タロットを使った魔術師のようであり、そのタロットカードは、強力な策略と宇宙の力を操る能力の両方に関連するカードであったが、いまやゼレンスキーは世捨て人のような雰囲気が漂う孤独でしおれた人物に成り下がってしまった、という。「救世主的」存在から、「社会に恐怖を与える存在」に変節してしまった、というのだ。架空の話のように聞こえるが、その姿は衝撃的だ。つまり、少なくとも、今回のタイム誌の記事による、ゼレンスキーという偶像が崩壊したという指摘に頷くウクライナの人々も一定数いるのだ。

 このような事例がさらに多くなる可能性がある。これらの事例も、まだ逸話的なものであることも避けられないだろう。ただし、重要なのは以下の点だ。すなわち、タイム誌によるゼレンスキーに対する攻撃が1年前に起こっていたとしたら、ウクライナは少なくとも団結し、怒りを持ってこの記事を拒絶していた、という点だ。しかし、今ならそうはならない。疑念や鬱憤が外国だけではなく、国内でもますます増大しているからだ。


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 すぐに結論に飛びついてはいけない。米国が本当にいま、ゼレンスキーの勢力を弱めようとしているのなら、その策略の目的は何だろう?ゼレンスキーを脅すことで柔軟な姿勢を取らせようとするためなのか?ゼレンスキーから、妥協的な和平を受け入れる指導者に取り替えることで、米政府が中東とアジアに集中できるようにするため(そうすればウクライナとEUは放ったらかしになるが)か?それとも、この戦争を別の運営方針でさらに遂行し続けるためなのか?

 ゼレンスキーが、自分が窮地に立たされた怒りを感じているのなら、それは一人の政治家が自らの失政の結果を恐れて鬱屈した気持ちや妄想に苦しめられていることの反映であると言ってしまっていい、ということなのだろうか?それともゼレンスキーは国内からや国外の「同盟者たち」から得た十分な証拠に基づく真の危険を察知した上での振る舞いを見せているのだろうか?

 確かなことがひとつある。それは、これまで「西側の価値観」のために奮闘する広告塔だった人物が、霊気をなくしてしまったことだ。このことは、ゼレンスキーにとっては本質的に悪いニュースである。なぜなら、彼の台頭と支配においては、イメージの管理が現代の基準から見ても大きな役割を果たしてきたからだ。
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