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イスラエル-パレスチナ問題でロシアは「中立」のバレエを踊る

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia’s Neutrality Ballet on Israel-Palestine
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典: INTERNATIONALIST 360°  2023年10月18日
<記事飜訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年10月29日


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イスラエルを敵対国家に仕立て直そうとするロシアの大物たちがいる一方で、クレムリンは立場を変えそうにない。むしろ、モスクワは西アジアへの影響力を最大化するために「中立」を維持し、アラブやイスラム世界との距離を縮めようとしている。

博愛主義者であるロシアのプーチン大統領は、イスラエルに対する地政学的評価をゆっくりと、しかし確実に見直しているのだろうか? これをモスクワの権力回廊における重要な謎と呼ぶのは、実は控えめな表現である。

少なくとも、難解なイスラエルとパレスチナのドラマに関して、公式には「中立」であるロシアの立場に関して言えば、そのような激変の表立った兆候はない。

先週の金曜日(10月13日)にビシュケク(キルギス首都)で開催された独立国家共同体(CIS)首脳会議で、プーチンがイスラエルのガザ封鎖の「残酷な方法」を非難し、それを「第二次世界大戦中のレニングラード包囲」になぞらえた。

「それは容認できない」とロシア大統領は宣言し、ガザの220万人の市民全員が「女性や子どもも含めて苦しまなければならないとき、誰もこれに同意することは難しい。」

プーチンのコメントは、苛立たしいほど不透明なロシアとイスラエルの関係において、進行中の変化を示すひとつのヒントだったのかもしれない。その次が、先週金曜日にクレムリンに近い安全保障戦略サイト『ブズグリャド(Vzglyad)』に掲載された非常に重要な記事である。

わずか6ヶ月前、ロシアの情報機関のほぼ一致するところを反映するように、『ブズグリャド(Vzglyad)』の編集者たちは、アラブ・イスラム世界にとっての第一の問題を支援することにモスクワの政治的比重を移すよう呼びかけていたことに注目する必要がある。

同記事は、プーチンがビシュケクで発言した重要な点に言及している:交渉に代わるものはない。テルアビブは残忍な攻撃を受けたので自衛する権利がある。真の和解は東エルサレムに首都を置くパレスチナの独立国家の建設を通じてのみ可能である、と。

ロシア大統領は、国連本来の「2国家」解決策を支持し、パレスチナ国家は「平和的手段によって」樹立されるべきだと考えている。しかし、今回の紛争が「中東におけるアメリカの失敗した政策の直接的な結果」であるのと同様に、プーチンはガザでの地上作戦を開始するというテルアビブの計画を拒絶している。

この的確な両賭けは、プーチンが参謀本部、いくつかの情報機関のシロビキ*、国防省がほぼ共通理解している方向性に振れている証拠ではないことは確かだ。 彼らは、イスラエルはウクライナ、アメリカ、NATOと同盟を結んだロシア連邦の事実上の敵かもしれないと考えている。
*シロビキは、ロシアの治安・国防関係省庁の職員とその出身者を指す。

お金を追って

テルアビブはウクライナでロシアと正面から敵対しないよう極めて慎重であり、これはプーチンとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との間の悪名高い友好関係の直接的な結果かもしれない。

しかし、地政学的なチェス盤においてイスラエルよりもはるかに重要なのは、モスクワとアラブ諸国、特にOPEC+に共に加盟しているサウジアラビアとの関係である。

また、シリアやコーカサスで利益を得ているイランとの戦略的友好関係も、ロシアの地域政策の中心的存在であり、米国の拡張主義を封じ込めるのに役立っている。最後に、ユーラシア大陸におけるロシアの経済的・地政学的野心にとって、モスクワとアンカラの複雑で多層的なやり取りは極めて重要である。

西アジアの3つの大国はいずれもイスラム教徒が多数を占める国家であり、自国にもかなりの数のイスラム教徒を抱える多民族国家ロシアにとって重要な関係である。

そして、これら3つの地域主体にとって、どの国にとっても、現在のガザへの集団的懲罰は、ありとあらゆるレッドラインを越えている。

イスラエルもまた、モスクワの経済的配慮からすれば、もはやそれほど重要な存在ではない。1990年代以降、膨大な量のロシア資金がイスラエルに流れていたが、今ではかなりの部分がロシアに戻っている。

億万長者ミハイル・フリードマンの悪名高い事例は、この新しい現実をよく物語っている。このオリガルヒは、アル・アクサ・フラッド作戦が開始される1週間前にイギリスの自宅を引き払ってイスラエルに移り住んだ。

フリードマンは、電気通信、銀行、小売、保険で大きな権益を持つアルファ・グループを率い、1998年の金融危機を生き延びた大富豪である。彼は、キエフの敵対政権に1億5000万ドルもの「献金」をしている疑いをロシア側からかけられている。

ヴャチェスラフ・ヴォロディン下院議長の反応は極めて激しく、この件に関するイスラエルの心情を少しも憂慮していない。

「国を離れ、ロシア領内での銃撃を祝ったり、ナチス・キエフ政権への勝利を願ったりと、非難されるべき行為に及んだ者は、ここで歓迎されないだけでなく、もし戻ってきたとしても、マガダン(スターリン時代の収容所への悪名高い中継港)が彼らを待っていることを理解すべきである」、と。

ロシア恐怖症と集団処罰

西側諸国集団が「今や我々はみなイスラエル人だ」という偏執狂に走ったので、クレムリンの戦略は、アラブ・イスラム世界だけでなく、グローバル・サウス/グローバル多数派のためにも、この紛争の仲介役として自らを目に見える形で位置づけることである。

今週、国連安保理でロシアが提出したガザ停戦を求める決議案の目的はそこにあった。

安保理の常任理事国であるアメリカ、イギリス、フランスの3カ国と、その新植民地である日本が反対票を投じたのだ。世界の他の国々には、この反対票を投じた三国はまさに理不尽な西側のロシア恐怖症と、イスラエルの民間人密集地ガザへの大量虐殺的砲撃を正当化するアメリカの傀儡国家のように映った。

オフレコだが、情報アナリストたちは、ロシア参謀本部、情報機関、国防省が、イスラエルの行き過ぎた侵略に対する世界的な感情にいかに組織的に同調しているかを指摘している。

問題は、ネタニヤフが右派のイタマール・ベン=グビル国家安全保障相やベザレル・スモトリッチ財務相とともに、精神病的な暴力の扇動を繰り返していることに対するロシアの公式・公的な批判が存在しないことである。

モスクワの内部関係者が主張するところでは、クレムリンの公式な「中立」の立場は、イスラエルがシリアでのロシア人殺害に直接関与したことを決して忘れない防衛・安全保障機関(特にロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)とロシア対外情報庁(SVR))と正面から衝突しているという。

2018年9月、イスラエル空軍が、イリューシン20M電子偵察機をシリアのミサイルに対する援護機として使用し、シリアの防空ミサイルに誤って撃墜させ、搭乗していた15人のロシア人全員が殺害されて以来、その見方は強まっている。

権力の中枢におけるこの沈黙は、公共空間における沈黙と鏡のように同じである。イスラエルとパレスチナに関するロシアの立場について、議会で議論されたことはない。安全保障理事会での議論も10月初旬以来ない。

しかし、ロシア正教会の指導者であるキリル総主教は、「平和的共存」には「宗教的次元」があり、「公正な平和」が必要だと強調した。これは、ガザで発表された「人獣」(イスラエル国防省の言葉)の民族浄化とは全く一致しない。

ロシアがウクライナと取引する代わりに、アメリカがイスラエルと取引するという、モスクワとワシントンの複雑な影絵芝居の噂が、権力周辺の一部で憂慮されている。

これは、西側諸国がキエフの汗臭いスウェットシャツの俳優(ゼレンスキー)を降板させるという、すでに進行中の過程を封印することになるだろうが、クレムリンはアメリカのいかなる取引も信用しそうになく、戦略的な西アジアにおけるロシアの影響力を疎外するような取引は絶対に信用しないだろう。

この2国家解決策は死んだ

ロシアの「中立」のバレエは続くだろう。モスクワはテルアビブに対し、イランとの戦略的友好関係の枠内であっても、イスラエルを脅かす可能性のある武器、つまりヒズボラやハマスに行き着くような武器は輸出されないという考えを強調している。この取り決めの見返りは、イスラエルもキエフにロシアの脅威となるものを売らないことだ。

しかし、アメリカやイギリスとは異なり、ロシアはハマスにテロ組織としての指定はしない。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、この問題について非常に率直に語っている。 モスクワはパレスチナ側ともイスラエル側とも接触を保ち、「最優先事項」は「パレスチナとイスラエルの両方に住むロシア国民の利益」であり、ロシアは「和解プロセスに参加する可能性のある当事者」であり続ける。

もちろん、中立は行き詰まるかもしれない。クレムリンが積極的に働きかけているアラブ諸国やイスラム諸国にとっては、シオニスト主導の入植者植民地主義の解体が「最優先事項」であるべきだからだ。

これは、2国家による解決は、現実的な目的から言えば、完全に死んで葬り去られたことを意味する。しかし、誰も、少なくともモスクワは、それを認める準備ができている証拠はない。
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