フィリピンが米国との軍事同盟を辞めると、ドミノ効果を引き起こすかもしれないし、きっとワシントンの反中国音頭は、台無しになる
<記事原文 寺島先生推薦>Philippines quitting military alliance with US may cause domino effect & is sure to spoil Washington’s anti-China drumbeat
RT Op-ed 2020年2月17日

Finian Cunningham
is an award-winning journalist. For over 25 years, he worked as a sub-editor and writer for The Mirror, Irish Times, Irish Independent and Britain's Independent, among others.
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ 2020年2月28日>

フィリピンが米国との軍事パートナーシップを破棄しようとしたタイミングは、米国をかなり狼狽させるものだった。同盟国に、中国に対抗する結集を呼びかけようとしていた時だったので。
東南アジアの一国(フィリピン)は、米国による軍事的「保護」を必要とせず、米国の仲介なしに、中国や近隣諸国と正常な関係を構築できると確信しているようだ。
米国の保護下にある、日本や韓国を含む他のアジア諸国が、フィリピンと同じ結論を下す可能性があり、そのため、「ドミノ効果」が、現状を変えることが起こるかもしれない。
米国防総省のマーク・エスパー長官は、週末にミュンヘン安全保障会議で、世界は、中国を安全保障上の脅威として「見つめ直す」必要があると語った。 しかし、それはフィリピンが中国を見る見方とは異なる。
毎年恒例のミュンヘン会議の数日前、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、1998年に結んだ訪問米軍地位協定(VFA)を終了することを発表した。 正式に協定を終了するには6か月かかる。 この動きは、ドゥテルテが、2016年の大統領選以来進めてきた「中国への接近」のひとつの動きだ。
Also On RT.COM‘It’s about time we rely on ourselves’: Philippines tears up key military treaty with US
この動きは、米国を驚かせたようだ。 しかし、それはドゥテルテが以前行った約束、すなわち、米国と「グッバイ」し、中国とより緊密な経済的および政治的関係を結ぼうという約束を果たしたまでだ。
フィリピンの動きと、ミュンヘンでの反中国の「お経」が、どれだけ食い違っているかを念頭に置き、エスパーは、フィリピンが軍事パートナーシップを廃棄するという決定に不快感を表明した。
「これは、間違った方向だと思います 。今、私たちはフィリピンと二国間で、また、この地域の他の多くの友好国や同盟国とともに、中国にこう伝えようとしています。「国際的なルールに従わなければなりません。 国際規範を遵守しなければなりません 」と」。エスパーは、ヨーロッパに向かう途中、記者団にこう語った。
対照的に、ドナルド・トランプ大統領はフィリピンの動きについてより楽観的な見方を示した。 彼は、フィリピンで毎年行われている多くの合同軍事演習をキャンセルすることで 「 米国は、多くのお金を節約できる」ので気にしないと言った。
トランプの強気な反応は、彼が、外交でいつも見せる、表面上の取引のような態度であることは疑いがない。しかし、国防総省の政策立案者たちが気づいていることだが、より戦略的に深く見ると、フィリピンの基地を失うことは、中国を抑制することを目的とした南シナ海でのパワーバランスにおいて、大きな打撃になる。
「仮想敵国を作る」という考え方は、近年、ペンタゴンの指針として再登場してきた。 いくつかの戦略計画文書は、中国とロシアを明白に地政学的な敵国とみなし、標的にし、これらテロやならず者国家からの脅迫に屈しないよう、説いている。これは、かつての冷戦時代のやり方と同じだ。
危機の原因は、経済的および軍事的に世界支配の野望を維持しようとする米国にある。 米国の一国集中的世界観は、中国とロシアが、米国、欧州、南北アメリカ、アジア、アフリカとのパートナーとして参加する多極的な国際協定とは相容れない。 そのため、両国より優位に立つために、米国は「我々」と「やつら 」を区別する敵対的条件を作り出さざるをえない。「親中」「親露」などとタグ付けをすることで。
Also On RT.COM Chinese FM after Pompeo & Esper speeches: Replace ‘China’ with ‘US’, and maybe lies become facts?。
この米国の動きは、ロシアが、ヨーロッパ向けに進めている、ノードストリーム2というガスパイプラインのプロジェクトに対抗した動きであるといえる。 米国は、絶えず、ヨーロッパ諸国に、そのプロジェクトをやめるよう、脅している。国家安全保障を盾にしてだ。これは、中国のファーウェイ社に対してやったのと同じ手口だ。
南シナ海では、ワシントンはしばしば、分断させるというやり方で、中国と他の国々との間の領土紛争に介入してきた。 米国のねらいは、中国をその地域における有害な脅威のように見せ、米国が、友好国を「守る」という名目で、軍事力を配置することだ。 しかし、米国が実施するこれらの「航海の自由 」演習の真の目的は、軍事力で中国を包囲することだ。
中国の経済は、年間5兆ドルの商品が出荷される海上貿易ルートである南シナ海に依存している。 東南アジアにおけるアメリカの軍艦と基地は、中国に暗黙の脅威を与え、経済的封鎖を起こすこともできる。米国は、この条件を使い、貿易交渉や政治交渉を優位に進めることができる。
米国の中国を敵視する世界観からすれば、フィリピンが米国との軍事同盟に参加したくないと発表したことは、鼻でわらうような話だ。その同盟は、約70年前、太平洋戦争が終わった1945年にまでさかのぼるのだから。
ドゥテルテ大統領は、長い間、中国を経済的パートナーとして受け入れたいという願望を表明してきた。 彼は、南シナ海をめぐる両国間の領土紛争は交渉を通じて解決できると言っている。
中国は、ドゥテルテの方向転換を歓迎している。 中国はすでに、一連の主要なインフラ整備プロジェクトへの投資で数十億ドルを提供している。 ドゥテルテを批判する人達は、約束された投資が遅れていることを指摘し、ドゥテルテが領土の主張に関して中国にあまりにも多くの譲歩を与えていると警告した。
米国の戦略立案者をさらに悩ませるのは、軍事力を見せつける基地としてフィリピンを失うという兵站面での後退に加えて、「ドミノ効果」 によって、現状に大きなうねりをおこすかもしれないことだ。
Also On RT.COM ‘End that son of a b*tch’: Duterte confirms US-Philippines military collaboration agreement is toast
冷戦時代、ワシントンはドミノ効果による共産主義の広がりを恐れていた。共産主義が広がって、ソ連や中国に触発され、アメリカへの忠誠を捨てることになることを恐れていた。 10年に及ぶベトナム戦争は、米国のそんな不安が引き起こしたのだ。アメリカの影響力が低下するという不安だ。
フィリピンが米国の軍事パートナーシップを拒否することは、アメリカの世界的地位に深刻な打撃を与える。 それは、「我々は保護者である」という米国の自負を大きく損なうものだ。
ドゥテルテ大統領は、国家が真の友好国との対話を通じて協力することが唯一の実行可能な方法であることを正しく理解している。 分断や敵対心を使ったアメリカのやり方には、先がない。
アジア太平洋地域の他のいくつかの国々が、フィリピンが示した新しい方向に注目していることは間違いない。フィリピンの動きが、米国がいう「 間違った方向 」であるわけがない。各国は、フィリピンと同じ道をたどるべきだという答えを出すかもしれない。
- 関連記事
-
- プーチン大統領と金委員長の会談:これまでに判明したこと (2023/09/19)
- アジア太平洋NATO:戦火をあおる (2023/08/13)
- タリバンは米国ができなかった麻薬対策を一年で実現 (2023/07/19)
- イムラン・カーンの逮捕: パキスタンのファシズムの素顔とは (2023/05/23)
- AUKUS(オーカス)の原子力潜水艦協定は帝国による対中戦争の一環 (2023/04/03)
- 米帝国は世界を灰にしてから支配する (2022/03/04)
- インドで巻き起こる農民の抗議活動「農作物の抜本的改革」案の代償は計り知れないものとなる (2021/03/05)
- フィリピンが米国との軍事同盟を辞めると、ドミノ効果を引き起こすかもしれないし、きっとワシントンの反中国音頭は、台無しになる (2020/02/28)
- スペイン・カタロニア州の「分離主義者」は非難されるべきだが、香港の「民主化運動家」は称賛されるべきだ!?---- オーウェルの小説『1984年』はついに 自由メディアの指南書になってしまった (2020/01/11)
- 香港問題とアメリカの大胆さ: それは中国への「不安定化工作」の一部だ (2019/09/08)
- 「紛争を望んでいるのか?お前がやってみろ!」フィリピンのドテルテは、アメリカに挑む。「艦隊を連れてきて、中国との戦争を宣言してみろ!」 (2019/07/30)
- トランプー金(キム)会談:大統領が平壌に向けて20歩北朝鮮に入ったことは、劇的で歴史的な出来事である。しかし「どこまで行けるのか?」 (2019/07/14)
- 米軍アフガニスタンへ増強は、中国を閉め出すためか? リチウムや豊富なアフガニスタン鉱物資源のための戦い (2018/12/03)
- 「私たちはモルモットだった」:アメリカ在住広島原爆被爆者の証言 (2018/08/22)
- 通貨戦争はエスカレートする: 「オイル元」が、米軍が支援する「オイル・ダラー」に挑戦するとき (2018/07/17)
スポンサーサイト