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米帝国に対する地政学的なチェス盤の変遷

<記事原文 寺島先生推薦>
Geopolitical Chessboard Shifts Against US Empire
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:Unz      2023年7月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年8月16日


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 地政学のチェス盤は永続的に移り変わっており、特に現在の白熱した局面においてはそれが顕著だ。

 中国の学者たち(アジアやアメリカの華僑を含む)の議論における魅力的な一致点は、ドイツやEUが、おそらく取り戻すことの難しいほどにロシアに敗北した一方で、中国がロシアを獲得したということだ。それは中国の経済と非常に相補的であり、またグローバルサウス/世界人口多数派(グローバル・マジョリティ)との強固な結びつきを持ち、北京に利益をもたらし支援する可能性がある。

 一方で、一部の大西洋主義者外交政策分析家たちの井戸端会議では、NATO対ロシアの物語を変えようとの話でかまびすしい。現実政治の初歩を適用しようとしているのだ。

 新しい言い回しは、ワシントンがモスクワを打倒しようと期待することは「戦略的狂気」であり、NATOがキエフのスウェットシャツを着た戦争主義者(ゼレンスキー)が「信用を失う」中で「援助疲れ」が出ている、というものだ。

 言い換えればこうなる:「ウクライナ戦場での屈辱が、今やすべての世界人口多数派にとって痛烈な映像として明らかになっているため、NATO全体が完全に信用を失っている」。

 (言い換えの)追加:さらに、「援助疲れ」とは、大規模な戦争に敗北することを指す。軍事分析家のアンドレイ・マルチャノフが情け容赦なく強調している。「NATO『計画』などは冗談話だ。NATOは妬んでいる、ひりひりするほど妬んで、羨ましいのだ」。

 確かな前進の道は、モスクワがNATO(単なるペンタゴンの付属物)と交渉するのではなく、個々のヨーロッパ諸国に対してロシアとの安全保障協定を提供し、彼らがNATOに所属する必要性を無意味にすることだ。これにより、参加国すべての安全が確保され、ワシントンからの圧力は軽減されることだろう。

 まず間違いないのは、このことを決して他人事と考えないヨーロッパの大国がそれを受け入れるだろう、ということ。しかし、ポーランド(ヨーロッパのハイエナ)とバルトのチワワ犬たちが受け入れないことは確実。

 同時に、中国は日本、韓国、フィリピンに平和条約を提案し、その後、米国の基地帝国の大部分が消失する可能性がある。

 繰り返しになるが、問題は、臣下国は平和へのいかなる合意にも応じる権限や力を持っていないことだ。非公式には、ドイツの実業家たちは、ゆくゆくはベルリンがワシントンに逆らい、ロシア・中国と戦略的同盟関係で取引を行う可能性があると確信している。それがドイツに利益をもたらすからだ。

 しかし、次の黄金律はまだ満たされていない:臣下国が主権国として扱われたいのであれば、まず最初に帝国基地の主要な拠点を閉鎖し、アメリカ軍を追放すること。

 イラクは何年も前からそれを試みているが、成功していない。シリアの三分の一は依然としてアメリカの占拠下にある。アメリカのダマスカスへの代理戦争はロシアの介入により敗北しているにもかかわらず、だ。


国の存亡がかかったウクライナ問題

 ロシアは、決して負けるわけにはゆかない隣国や同胞国との戦いを強いられてきた。そして、核と超音速技術の力を持つ国として、負けることはないだろう。

 たとえモスクワが戦略的に何らかの弱点を持ったとしても、結果がどうであれ、中国の学者たちの視点からは、アメリカが帝国成立以来の最大の戦略的な誤りを犯した可能性がある。①ウクライナ問題を(ロシアの)国の存亡をかけた紛争にしたこと、②帝国全体とその臣下国すべてをロシアに対する全面戦争に巻き込んだこと、だ。

 そのため、私たちには平和交渉の余地もなく、停戦すら拒否されている。アメリカの外交政策を主導するストラウス派ネオコンの、精神異常者たちが考案した唯一の可能な結末は、ロシアの無条件降伏だ。

 直近では、ワシントンはベトナムやアフガニスタンに対する、自ら選択した戦争に負けてもよかった。しかし、ロシアに対する戦争には負けるわけにはゆかない。負ければ、すでに地平線に見えている臣下国の反乱は、はるかかなたにまで広がるだろう。

 明々白々なことは、今後、中国とBRICS+(来月8月に始まる南アフリカのサミットから参加国は増える)が、アメリカドル基盤の崩壊を加速させることだ。インドの参加、不参加は関係ない。

 BRICS通貨はすぐには出てこないだろう。この議論でいくつかの優れた論点が指摘されている。その範囲は広大で、裏方たちはまだ初期の議論段階にあり、広い輪郭はまだ定義されていない。

 BRICS+としては、改善された国境を越えた決済機構から進化することになろう。これは、プーチンから同国中央銀行総裁エルビラ・ナビウリナまで、誰もが力説しているものだ。結局、新しい通貨が出てくるのはこの非常に長い道のりを辿った先ということになるだろう。

 これはおそらく、ユーロのような主権通貨ではなく、貿易の手段となるだろう。それは、米ドルとの貿易競争(最初はBRICS+諸国間)をするために設計されるだろう。それから覇権的な米ドル生態系を迂回することができるだろう。

 重要な問題は、(米)帝国の偽物経済が、マイケル・ハドソン(Michael Hudson)によって臨床的に解体されたにもかかわらず、この地政学的経済戦争の広範な見通しの中で、どれだけ持ちこたえることができるかだ。


あらゆるものが「国の安全にとって脅威」

 電子技術の一線では、(米)帝国は何の制約もなく、世界的な経済的依存を強制し、知的財産権を独占し、Michael Hudsonが指摘するように、「高技術コンピュータチップ、通信、兵器生産に高価格を請求することで賃貸料を手にしている」。

 実際には、台湾が貴重なチップを中国に供給することを禁止され、TSMC(台湾半導体会社)に対してアリゾナ州にできるだけ早くチップ製造施設を建設するよう要請するということ以外は、ほとんど何も進展していない。

 しかし、TSMCの会長であるMark Liuは、その工場が「半導体級の施設設置に必要な専門的知識を持つ労働者の不足に直面している」と述べ、評判の高いアリゾナ州TSMCチップ工場は2025年以前に生産を開始することはないだろうと述べた。

 帝国/その臣下NATOの一番の要求は、ドイツとEUがロシア・中国の戦略的連携とそれらの同盟国に対して貿易の鉄のカーテンを課さなければならない(そうすれば、「危険のない」貿易が確保される)ということだ。

 予想どおり、アメリカの頭脳集団界隈は狂気に陥り、アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートの専門家たちは、経済的な危機軽減だけでは十分ではないと熱弁している。アメリカが必要とするのは中国との徹底的な断絶だ、と主張している。

 実際、これはワシントンが国際自由貿易規則や国際法を無視し、あらゆる形態の貿易やSWIFT、金融取引を米国の経済と軍事の支配に対する「国家安全保障上の脅威」として扱うことと寸部違わない。

 したがって、今後は、中国が依然として北京にとって主要な貿易相手国であるEU(欧州連合)に対して貿易制裁を課すのではなく、アメリカが自国が主導する貿易禁止破りをする国々に対して制裁の津波を課す、という展開になる。


ロシア‐北朝鮮関係は、ロシア‐アフリカ関係と対応

 今週のことだが、チェス盤上で対戦の流れを変える2つの動きがあった:ロシアの国防大臣セルゲイ・ショイグの北朝鮮訪問と、サンクトペテルブルクで行われたロシア・アフリカサミットだ。

 ショイグはロックスターのようにピョンヤンで歓迎された。彼は金正恩との個人的な会談を持った。相互親善から始まり、北朝鮮が多極性への道を切り開く多国間の組織の一つに最終的に参加する可能性が高まっている。

 それは、ほぼ間違いなく、広範なユーラシア経済連合(EAEU)になるだろう。これは、ベトナムやキューバと結ばれたようなEAEUと北朝鮮の自由貿易協定から始まる可能性がある。

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 ロシアはEAEUで最大の力を持ち、北朝鮮に対しておこなわれているいろいろな制裁を無視することがでる。一方、BRICS+、SCO、またはASEANは有り余るほどの選択肢がある。モスクワの主要な優先事項は極東の開発、両朝鮮とのさらなる統合、そして北極海回廊(つまり北極シルクロード)の展開だ。そのため、北朝鮮は、自然の地形から見ても、連携することになる。

 北朝鮮をユーラシア経済連合(EAEU)に加えることは、一帯一路(BRI)への投資に素晴らしい効果をもたらすだろう。北京が北朝鮮への投資をおこなう際、当面そのような効果はもたらさない。これは、もっと深いBRI-EAEU統合の古典的な事例となる可能性がある。

 ロシアの最高位外交は、北朝鮮に対する圧力を軽減するために全力を尽くしている。戦略的には、それは本当に対戦の流れを変える動きだ。ロシア・中国の戦略的連携に巨大でかなり洗練された北朝鮮の産業軍事複合体が加わり、アジア太平洋の枠組みを逆転させることを想像してほしい。

 サンクトペテルブルクでのロシア・アフリカサミット自体が、また別の対戦の流れを変える動きで、西側主要報道機関はそれに怒り心頭だった。それはまさにロシアがアフリカ全体と包括的な戦略的連携を公言し、敵対的な西側諸国がアフロユーラシアに対して非正規戦争と正規戦争を組みあわせた戦争やその他を展開している中でのことだった。

 プーチンは、ロシアが世界の小麦市場で20%の割り当てを持っていることを示した。2023年の最初の6ヶ月間で、既にアフリカへ1000万トンの穀物を輸出している。今後3〜4ヶ月間で、ロシアはジンバブエ、ブルキナファソ、ソマリア、そしてエリトリアにそれぞれ2.5〜5万トンの穀物を無償で提供する。

 プーチンは、アフリカ全域にわたる約30のエネルギー計画から、石油およびガスの輸出の拡大、そして「医療を含む核技術の独自の非エネルギー応用」に至るまで、すべての詳細を説明した。スエズ運河近くにロシアの産業地帯を設立し、アフリカ全域に輸出する商品を生産する計画や、アフリカの金融基盤の開発、ロシアの支払い体系との連携も含まれている。

 決定的に重要なのは、彼はまた、EAEUとアフリカとのより緊密な関係を称賛したことだ。サンクトペテルブルクサミットの小委員会「EAEU-Africa: 協力の展望」では、BRICSとアジアとのより緊密な大陸的な接続を含む可能性が検討された。自由貿易協定の洪水が進行中かもしれない。

 この小委員会が提出した見通しは非常に印象的だった。「新植民地主義からの脱却」を掲げる(複数の)小委員会があった。具体的には、「産業協力を通じた技術的主権の達成」、あるいは「新しい世界秩序:植民地主義の遺産から主権と発展へ」などだ。

 もちろん、国際的な北南輸送回廊(INSTC)も議論された。その主要な担当国であるロシア、イラン、インドは、NATO沿岸国を回避し、アフリカへの重要な延伸を推進することになっている。

 非常に急速な出来事がサンクトペテルブルクで起こっている一方で、ニジェールでも軍事クーデターが発生した。結果はまだ見えていないが、ニジェールはおそらく隣国のマリとともに、パリからの外交政策の独立を再確認する道を選ぶだろう。フランスの影響力は、中央アフリカ共和国(CAR)とブルキナファソでも少なくとも「再設定」されつつある。要するに、フランスと西側諸国はサヘル地域全体で段階的に立ち退きつつあり、逆転できない形で非植民地化の過程が進行しているのだ。


破壊の「蒼ざめた馬」に注意せよ

 チェス盤上のこれらの動き(北朝鮮からアフリカへの動き、中国へのチップ戦争)は、ウクライナでNATOの前に訪れるであろう破壊的な屈辱と同様に重要だ。しかし、ロシアと中国の戦略的連携だけでなく、グローバルサウス/世界人口多数派の主要な国々も、ワシントンがロシアを戦術的な敵と見なして、中国に対する全面戦争で優位に立つ準備をしていることを十分に認識している。

 現状では、未だ解決されていないドンバス地域の悲劇が(米)帝国を忙しくさせ、アジア太平洋から遠ざけている。しかし、ストラウス派の新保守派の精神異常者の指導下でのワシントンはますます「絶望の行列」に足を囚われ、ますます危険な状況になっている。

 その一方で、BRICS+「ジャングル諸国」は必要な機能を活性化させており、一極的な西側の「庭」を脇に追いやる能力を強化している。無力なヨーロッパは深淵に追い込まれつつあり、中国、BRICS+、そして事実上の世界多数派から自らを分断せざるを得なくなっている。

 経験豊富な気象予報士でなくても、どの方向にステップ地帯の風が吹いているかは分かる。「破壊の蒼ざめた馬たち」はチェス盤を踏みにじるための陰謀を巡らし、風がうなり声を上げ始めている。
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