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パミール高原からヒンドゥークシュ山脈まで。ロシアと中国が見つめる中央アジアの全体像

<記事原文 寺島先生推薦>
Russia, China take holistic view of the Pamirs and Hindu Kush
筆者:M.K.バドラクマール (Bhadrakumar)
出典:INDIAN PUNCHLINE  2023年6月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年7月27日





 3カ国間の外相段階会合により、中国・パキスタン間の経済回廊がアフガニスタンまで延長されることが合意された。2023年5月5日。イスラマバードにて。

 5月18日・19日に開かれた、第1回中国・中央アジア首脳会議後に発表された西安宣言は、西側諸国によるこの地域への干渉に直撃弾を与えたが、また一方でロシアがウクライナ紛争で「手を伸ばしすぎている」ため、中央アジアのステップにおけるロシアと中国の支配は持続可能ではないという考えをワシントンとブリュッセルにばらまいた。

 様々な出来事が起こる中で明らかになってきたことは、ロシアはウクライナの戦争で「負けて」おらず、この代理戦争において事態を良い方向に変えることができている、ということだ。いま米国が欧州諸国に懇願していることは、ロシアが戦場で勝利を収めることがあってはならない、という点だ。なんと事態は急転したものだ。

 明らかに、ウクライナ危機の状況において、中央アジアで指導的役割を果たし、同地域の安全保障を確保しようという中国の決定は、劇的な変化をもたらすものであり、中国を孤立させ、抑え込もうという、米国によるインド・太平洋戦略を深く弱体化させるものだ。状況をよく見れば、中央アジアが射程外にある限り、西側のロシアと中国の包囲発言が夢物語のままである理由が分かるだろう。

 米国はまるでクモのように動き、東南アジアの国々の中に巣を作ろうと、ASEAN(東南アジア諸国連合)を分離・分散させようとしており、タイでの「政権転覆劇」を大メコン圏諸国でも繰り返させようとしている。中国の周りを不安定な国々で包囲することを狙ったこのような不安定な動きの中において、中央アジアは中・露両国の戦略にとって非常に重要な地域だ。というのも、この地域までは米国の影響力が届いていないからだ。

 西安宣言の中で、このような状況に関連した記述は以下のとおりだ。「参加国は異論なく、国家の安全保障や政治的安定や憲法に基づく秩序の確立が重要な点であることを確認する。さらに、正当な国家権力を貶め、「カラー革命」を起こそうという動きには断固として反対することも確認する。さらには、他国による内政への干渉は、どんな形態であれ、どんな口実であれ、反対することが確認する。参加国は、民主主義が、人類が共通の願望であり価値であることを強調する。また、発展に向けた道程や国家経営の型を独自に選択することは他国が干渉する対象にすべきではない」。

 見逃さずにおれないことは、西安首脳会議から一週間も経たぬうちに、ロシアが中国から安全保障関連の長を招いたことだ。そしてこの長は、一週間という前例のない長さでモスクワに滞在し、話し合いを持ったのだ。この人物は、陳文清(ちんぶんせい)。政府局の一員であり、中国共産党中央政法委員会書記をつとめている。この陳書記の交渉相手は、ロシアのニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記だった。同書記はクレムリンの安全保障面において最高位にいる人物だ。

 陳書記とその代表団をモスクワに迎えた際、パトルシェフ書記はこう語った。「中国との友好関係を拡大し、深めることは、ロシアの戦略に合致しています。我が国は、全ての面における中華人民共和国との互恵的な協力体制を最優先事項としています。この協力関係が見据えているのは、国際社会において、互いに支援し合い、対等の立場を強化することです。具体的には、ユーラシアにおいても、世界の他の地域においても、世界規模および地域規模での安全保障や安定、持続可能な発展を確実にすることです」と。

 陳書記のモスクワ訪問の最後の締めの発言でパトルシェフ書記はこう語った。「ロシアだけが、この多極化世界の中心にいるわけではありません。中国もそうです。彼ら(西側諸国)の考えでは、自分たちはロシアとの問題に対処でき、それが解決できれば、次の標的を中国にすることです。西側は、中国とロシアに平行して対応することは難しいと考えています。西側が中国の国境地域で、台湾とともにやってきたことについても、私たちはわかりすぎるほどわかっています。総じて、彼ら(中国側)の立場に賛同しないことは難しいことです」と。

 明らかに、モスクワで持たれた中露間の安全保障に関する最高位段階での話し合いにおいて期待されていることは、両者が連合して取り組めるための必要な土台を設置することで、両国共通の課題である当該地域での安全保障と安定を強化することだ。それは、ユーラシアで両国が直面している安全保障上の危険度が高まり、さらには中央アジアでテロが復興しつつあるという背景があるからだ。両国が同じようにもつ戦略上の課題は、アフガニスタンの安定に向けて、中露両国がとっている方策が非常に似通っていることからも明らかだ。そしてこの方策により、アフガニスタンは既に良い影響を受けている。タリバンがヒンドゥークシュ山脈の麓にあるこの国を不安定な内戦状態において以来、西側はずっと様々な目論見を企ててきたにもかかわらず、だ。

 5月5日、イスラマバードでのパキスタン・アフガニスタン・中国の三カ国会議に出席していた中国の秦剛(しんごう)国務委員および外相は、パキスタンの主催者らに対して3つの伝言を残した。具体的には、①中国はパキスタンの経済再建を喜んで支援する。②中国政府は、喜んでパキスタンと共同して、高い質の一帯一路協力体制を前進させ、CPEC(中国・パキスタン経済回廊)の発展を促進し、協力を深めることも行う。③何より、中国は喜んでパキスタンと協働し、「アフガニスタン問題に関する意思疎通と共同作業を強化し、アフガニスタンの平和と再建を促進し、この地域の安定と発展の維持を支援する、いう3点だ。

 重要なことは、秦剛外相が中国・パキスタン間の経済回廊をアフガニスタンにまで広げることを求め、その目的は、「互いへの敬意、率直な気持ちと友情、双方向にとって利益がある関係作りを模索するなかで、3カ国間の良好な近隣関係や相互信頼を促進すること」にあるとしたことだ。秦剛外相がパキスタンとアフガニスタンの交渉相手に伝えた内容は、中国は対テロリズムや安全保障上の協力体制を強化する準備がいつでもできており、「ともに協力して、東トルキスタンイスラム運動やパキスタンタリバン運動などのテロリスト勢力に断固として対抗し、この地域の安全保障と安定を守る準備もできています」というものだった。

 興味深いことに、秦剛外相が二国間協議において、アフガニスタン暫定政権のアミール・ハーン・ムッタキー 外務代理大臣に対して、中国政府は、「中国とアフガニスタン間の協力関係を様々な分野において強化し、この先早い時期に、アフガニスタンが自治、平和、安定、発展、および繁栄を成し遂げる支援を行う」意図があることを伝えた点だ。

 中国周辺地域に関する有数の専門家である朱永彪(しゅうえいひょう)蘭州大学アフガニスタン研究センター長が、環球時報紙に、「ここ数年、パキスタンとアフガニスタンは、国境問題を巡って激しく対立と論争を繰り広げてきたため、この3カ国間協議は平和や対話を促進する希有な機会となった」と述べた。

 朱センター長によると、アフガニスタン政府とパキスタン政府の間にはテロリズムについての捉え方に違いがあり、「特に、外国による干渉についてはそうだ。米国やインドなどの国々がこの問題に関して二重基準を用いるからだ」とし、そのため、中国が発した信号は、「パキスタンとアフガニスタン間の立ち位置を調整するきっかけのひとつ」になる可能性がある、とした。

 加えて、この中国専門家の発言によると、中国の近隣諸国であり、中国と政治上良好な関係をともに築いているアフガニスタン・パキスタン両国は、中国が、サウジアラビアとイラン間の関係緩和だけではなく、ウクライナ危機に関しても役割を果たしていることを認識しているので、両国は中国に対して期待しており、イスラマバードで開かれたこの三カ国協議が、「中国が、外交的な役割で果たしている自信を強化する証しとなっている」とのことだ。

 明らかに、タリバン政権に対する一般的な認識からは離れて、ロシア政府も中国政府もアフガニスタン政権と話を進めてきた。両国のこの姿勢のおかげで、中央アジア諸国の政府に安堵の色が広がっている。ロシア、中央アジア諸国、中国は、テロ勢力と宗教上の過激派により存続の危機をともに感じている。これらの勢力は、米国が手下として長年利用してきた勢力だ。したがって、これらの国々の間の共通理解として許せないことは、米軍がこの地域の軍事基地に駐留することや、パンジシール州の「アフガニスタン民族抵抗戦線」が、中央アジアを別の内戦をたきつけるための聖地にすることなのだ。

 中国とロシアは、アフガニスタンでタリバンが果たす役割の安定化に関して大きく貢献してきた。基本的に両国は、タリバンの支配者層が非常に難しい局面下でも比較的上手に国家運営していることを認めている。このことについては、中央アジア諸国政府も同様の認識を共有している。

 したがって、この地域の観点からすれば、CPECのアフガニスタンへの延長や中央アジアが一帯一路構想への統合に向かっていることが避けられない状況にあることは、中国と中央アジアとの関係において、必ず得られるであろう副産物だと見なされている。これらの過程はSCO(上海協力機構)の強化につながるだろう。さらに望まれるのは、この先のどこかで、インドもこの流れに乗ることだ。
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