イランは謝罪した。しかしトランプや歴代のアメリカ大統領は中東での自国の振る舞いを謝罪することは絶対ないだろう
〈記事原文 寺島先生推薦 〉Iran apologized, but Trump & other US presidents will never say sorry for what they've done to Middle East
Finian Cunningham
RT Op-ed 2020年 1月11日
〈記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ 2020年2月11日 〉
非難してどうする。イランは旅客機を撃墜し、搭乗していた176人全員を殺害したことを謝罪したのだ。自らも立ち直れないほどの打撃を受け、今回の無惨な人命喪失への責任を表明したことは誠実な振る舞い以外の何物でもない。
ところで、イラン以外の国々も同じような謙虚な態度で、結果的に死が不可避となるような不安定な情況を作り出したことを認めるのだろうか?具体的には、米国のトランプ大統領は、自分の政権がイランに対して猛烈な敵意を持っていることが紛争を激化させ、最終的には罪のない人々の命を奪っていることを認識できるのだろうか。
752便の撃墜は、さまざまな国籍の数え切れない家族にとって悲痛な悲劇だった。死者のほとんどがイラン人だったことも、国の痛みを増している。しかし、少なくとも真実を明らかにすることで、イラン当局は、悲嘆にくれる犠牲者を、何が起こったのか分からないという長く続くかもしれなかった苦悩から救った。
敵の巡航ミサイルと誤認し、旅客機を撃墜したという重大なミスをイランが速やかに認めたことは、イランの批判者たちを驚かせた。飛行機が墜落した2日後、西側の指導者とメディアは、それを引き起こしたのはイランのミサイルだと主張した。イランの航空当局は当初、これはエンジン故障などの機上の技術的な問題だと考えていると述べ、否定していた。
イランの批判者たちは、「政権」は真実を覆い隠し、何が起こったのかについて曖昧にしてしまうだろうと言っていた。最初イランが関与を否定したのは悪意からではない。混乱と災難の中で何が起こったのか分からない事件だったのだ。イランがミサイルを発射したのは自国の防空部隊の一つであることを真っ先に自ら認めた時、イランには過ちを認める誠実さと謙虚さがあった。
https://www.rt.com/news/478031-rouhani-apologizes-plane-iran-ukraine/
今回の惨事に対するイランの成熟した対応は、1988年にペルシャ湾で起きたイラン航空655便撃墜事件とは対照的だ。乗員290人全員が死亡したのは、米ミサイル巡洋艦ヴィンセンネスが、敵の戦闘機と間違え、対空弾頭を発射したためだ。しかし、アメリカからは、全員死に至らしめたことについての公式な謝罪は何もなかった。
長年の論争の末、米国は1996年に国際司法裁判所の判決の下でイランに6000万ドル以上の賠償金を支払った。その時でさえ、ワシントンは責任を認めなかった。「私は決して謝りません」とブッシュ元大統領は述べた。
655便のケースでは、米ミサイル巡洋艦ヴィンセンネスの艦長が無謀で攻撃的であり、撃墜は偶然ではないという証拠もある。同艦長ウィリアム・C・ロジャース大尉と彼の乗組員は後に、軍の名誉勲章を授与された。
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今週の752便の場合、そのわずか数時間前にイランがイラクにある二つの米軍基地をミサイル攻撃した後のことであり、予想される米国の攻撃に備えてイランは厳戒態勢にあった。この攻撃は、1月3日にバグダッドで米軍無人機がイラン軍最高司令官カセム・ソレイマニ少将を暗殺したことに対する報復であり、イランは、米軍基地へのミサイル攻撃の後、イランの防空部隊の間で敵機の侵入が疑われるいくつかの報告があったと主張している。イランが旅客機を撃ち落とすという致命的なミスを犯したのは、この緊迫した、いつ戦争になるか分からない緊張の中でであった。
確かに、イランが通常の商業飛行の時間帯に領空を閉鎖する予防措置を取らなかったことはばかげているようだ。このようなやっかいな状況を考えると、イランがそういった措置を取らなかったことは非難されるべきだ。
それにもかかわらず、この悲しい出来事を完全に理解するためには、客観的でより大きな全体像が必要である。過ちを犯すこととそれを非難することの間には決して無視できない区別がある。この恐ろしい悲劇を引き起こしたのはイラン側だ。
引き金を引いたのはイランだ。しかし、最終的に誰が悪いのかについてはほとんど疑いがない。
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トランプ大統領は、イランに対する敵意に満ちた「最大圧力」キャンペーンで中東に火種を作った。核合意を破棄し、壊滅的な経済制裁を復活させ、イランを「テロ国家」と非難する容赦ない好戦的な発言で、中東を全面戦争の瀬戸際に立たせた。トランプは何度もイランを完全に破壊すると脅してきたことを思い出してほしい。「完全に破壊する」というのは核兵器を使うということも躊躇しないということなのだ。
核搭載可能なB-52爆撃機を含む米軍のペルシャ湾への増強は、想定されるイランの攻撃から「米国の利益を守る」という根拠薄弱な主張の下で、この一年間行われてきた。こういった言い分を浮かれ調子で全面的に展開しながら、誰が本当の攻撃者なのかということに関して、現実を真逆にひっくり返している。
カセム・ソレイマニの殺害は、米国の挑発が激化する中で、イランの国家安全保障に対する最も重大な攻撃だった。ソレマニが中東の米軍や外交官に対して「差し迫った攻撃」を計画していたというトランプの主張を裏付ける証拠はない。アメリカは、イランが支援する民兵の仕業として、イラクの基地への攻撃で先月、米国の請負業者が死亡したことを指摘している。その攻撃を誰が実行したかはまったく明らかではない。一部の報道によると、それはイスラム国(IS=旧ISIS/ISIL)とつながりのあるジハード主義テロ組織だったという。いずれにせよ、アメリカの反応はバランスを欠いており、請負業者の死がイランへの攻撃を強化する口実として使われたことも臭わせている。
12月27日、米国の戦闘機がイラクとシリアで、イランが支援する民兵の少なくとも25人を殺害した。これを受けて、1月1日にはバグダッドのアメリカ大使館で激しい抗議行動が起こり、トランプらはすぐにソレイマニがこの抗議行動を組織したと非難した。そしてその2日後、イランでアヤトラ・ハメネイに次ぐ地位にある象徴的な軍事指導者ソレイマニが、トランプ自ら命じた米軍の空爆で粉砕された。
アメリカからの次のような中傷は不愉快で根拠のないものだった。トランプはソレイマニを「世界一のテロリスト」と呼び、「私たちは彼を止めた。完璧だ」と言って喜んだ。ソレイマニがISテロの組織網を壊滅させたイラクとシリアにおけるもっとも有能な軍事戦略家だと仮定すれば、トランプや国務長官マイク・ポンペオの胸が悪くなるような事実わい曲もその意図がはっきりする。実際、ソレイマニの死はイスラム国残党にとっては喜ばしいことだった。
今回の民間航空機の撃墜についてイランには重大な責任がある。イラン当局が表明した慚愧と悔恨の気持ちは明白である。彼ら自身の同胞たちと他の数カ国の人たちの死に対する心からの後悔がある。
READ MORE: Now Iran & Iraq BOTH want the US to leave the Middle East, but it never will
しかし、この恐ろしい出来事の責任は、ワシントン、そして特にトランプ政権にある。イランに対する容赦ない悪魔化と敵意、制裁から露骨な軍事的脅威に至るまで無数の形態の違法な侵略、そして国民的英雄ソレイマニを冷血に殺したことが、火薬庫を作った。752便の撃墜はその結果だ。驚くべきことだろうか?米国政府が引き起こした無謀で破壊的な力の行使を考えると、それはほぼ避けられないことだ。たとえ全面戦争が起こらなくても、このような悲劇や罪のない人々の死がさらに増えることを私たちは恐れることになるのかもしれない。
一つ確からしいことがある。米国が謝罪したり、和解したりすることはないだろうし、謙虚さと責任感は米国の傲慢さには受け入れられないものだ。
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