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中国、中央アジアで主導的役割を果たす

<記事原文 寺島先生推薦>
China takes leadership role in Central Asia
筆者:M.K.バドラクマール (Bhadrakumar)
出典:INDIAN PUNCHLINE 2023年5月31日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月17日





第1回中国・中央アジアサミットは、2023年5月18日-19日。中国の西安市で開催され、習近平国家主席がホスト役。


 冷戦後の戦略的な論議の中での喜びの一つは、地政学が再び活発になったことだ。以前、旧ソビエト連邦と共産主義中国は、相手を否定する雰囲気だった。地政学が彼らのマルクス・レーニン主義の視点に合わなかったのだ。しかし、議論の余地は少しあるものの、マルクスは実際にはかなり前から柔軟な姿勢を取っていたのかもしれない。

 5月18日から19日にかけて西安で開催された中国・中央アジアサミットは、あらゆる点において地政学的な催しだった。それは、重なる形で行われた広島G7サミットも同様だった。その象徴性は深いものだった。中国とロシアは両サミットで「部屋の中の象(訳注:いるのは分かっているのに無視される存在)」だったが、西安サミットは包括的な催しとして特徴づけられた。一方、G7の催しは遺憾ながら、冷戦時代の敵意を抱えた西側の富裕国の排他的な集まりであり、その「特別招待国」を選択も、その意図を隠さず、旧植民地主義の昔ながらの「分割統治」的考えから行われた。1つのASEAN諸国、2つのBRICS諸国、1つの小さなアフリカ諸国、太平洋の島国などが選ばれた。

 最大の違いは、西安サミットが具体的で、数値化可能な積極的な計画に焦点を当てていたのに対し、広島サミットは主に指示的であり、一部は宣言的であり、具体的なものはわずかだった。これは、中国・中央アジアサミットが母国の土地で行われたのに対し、G7は(どの参加国も)アジアには居住地も名前もなく、メンバーの一つだけがアジア出身(日本)だったし、サミット自体が西側の計画をアジアの舞台に挿入するためのうわべだけの試みであったからだ。実際、特別招待国を選ぶ基準自体は、選ばれたわずかな国が「アジアの世紀」において西側の利益のための第五列として機能する可能性があるかどうか、だった。

 中国・中央アジアサミットは、ユーラシア地域の国々が、G7を主導するアメリカは中央アジアにおけるロシアと中国の共通の隣人地域を不安定化させようとしていると認識していることから、積極的な役割を果たさなければならないという認識が高まったことによって推進された。言い換えれば、西安サミットはロシアと中国が共通の目的のために「幌馬車を円形に配置する」(団結して身を守る)という意思を暗に示していた。これは、19世紀にアメリカ人が防御的な行動を表現するために使用した成句を借用したものだ。

 歴史的な観点から見ると、ロシアと中国が中央アジア地域を安定させるために明示的に手を結ぶのは初めてのことであり、それ自体が重大な出来事だ。ロシアがウクライナで手一杯になっていることを考慮し、北京が主導的な役割を果たしている。このパラダイム・シフト*は、ロシアと中国の利益が中央アジア地域で衝突しているという西側のプロパガンダとは矛盾する。モスクワと北京の間には次のような戦略的収束がある:両首都にとって重要な中央アジア地域の安定は、安全保障の確保、経済開発の促進、あるいは国際的政治的後ろ盾を通じて最もよく達成される。
*クーン(Thomas Kuhn)が提唱した概念で、ある科学分野の中で、支配的な理論の基礎となる前提(パラダイム)が劇的に変化すること。その後、科学界にとどまらず、さまざまな分野で使われるようになった。(英辞郎)

 モスクワのクレムリン出資のヴァルダイクラブの有名なロシアのシンクタンクであるティモフェイ・ボルダチョフは、西安サミットに先立ち、Global Times(環球時報*)に次のように書いている:「中国とロシアは、ユーラシアのこの地域に位置するほとんどの国と直接隣接しているため、中央アジアの安定に同様の関心を持っている。それは単純な事実だ。隣人の家を火に付けて別の隣人に害を与えることはしないだろう。しかし、もしある強国がロシアと中国の共通の中央アジアの隣人地域から数千マイル離れていた場合、その強国が中央アジア地域の不安定化を図ろうとするのはあるかもしれない。
*中国共産党中央委員会の官営機関紙『人民日報』の姉妹紙。Global Timesはその国際版(英字紙)。(ウィキペディア)

 「中国とロシアの共通の課題は、今日の動乱の時代において、中央アジアの友人や隣人を安定させ、相対的に繁栄させることだ。・・・中国やロシア、またはその地域の国々の友人ではない人が、中国とロシアの中央アジアにおける利益が互いに衝突する可能性があると言うならば、それは誤りだ」。
 
 同様に、中央アジア5カ国間で「5+1」の形式で協力することについては合意があり、重要な決定と取り組みはすべての中央アジア諸国と同時に調整されることになる。中央アジアの友好国は、自身の地域の総合的な経済発展が中国との協力強化によって向上する可能性を認識している。ロシアは、中央アジア諸国がこのような方向に進むことを奨励し、積極的な役割を果たすために重要な役割を担ってきた。これ自体が注目に値する変化だ。これまで「スタンズ(スタン諸国)」*は常に協力できたわけではなく、代わりに、国ごとに、最も重要な国際プレーヤーと関わることを選んできた。
*カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン

 西安サミットの参加者は、中国の習近平国家主席が主催者として「中国と中央アジア地域との関係における新たな時代」と呼んだこの催しで、中央アジアと中国の元ソ連諸国の首脳間の連絡機能の創設に同意した。会議は中央アジア―中国の形で2年ごとに交互に開催される。次回の6カ国首脳会議の予定は、2025年、カザフスタン。西安宣言は、サミット後に発表されたもので、次を含む15の重点目標に分かれている:安全保障、物流、貿易・経済協力、人道協力、そして環境。

 浮かび上がってきているのは、北京の関心は、アフガニスタンを拠点とするイスラム国(米国からの裏支援を依然として受けている)などの過激派勢力の活動を背景にした安全保障への配慮が最初にあるということ。中国の主張は、安全保障は経済の発展を通じて最も強化されるのであり、そのため、経済協力と地域の発展の観点からこの地域が重要であるとされる。ただし、総合的な観点では、中央アジアの経済資源は中国の需要を満たすには十分ではない。

 言うまでもなく、中央アジア地域からのテロリストの脅威は、新疆に対する中国の主要な懸念であり、北京はこの地域の安全保障に積極的に資源を投入し、中央アジア諸国の対テロ部隊の訓練に参加する意欲がある。地理的には、中央アジアの5カ国のうち、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの3カ国が中国と国境を接している。ロシアにとっても、この地域は伝統的な影響力の範囲であり、戦略的な緩衝地帯と見なされており、そのため南部国境の安全保障を優先している。したがって、安全で安定した中央アジアは、中国とロシア双方の国益と一致している。

 ウクライナ危機の文脈において、中央アジアはロシアを封じ込めて弱体化させるというアメリカの戦略の最前線として浮上している。しかし、中央アジア諸国はウクライナ情勢に中立の立場を取っているが、ロシアの地域への影響力は強く、大幅に混乱することはないだろう。ここで重要な要素は3つある。まず、ロシアは安全保障の提供者と見なされており、ロシアの防衛能力は地域の安定を維持する上で重要な役割を果たしている。第二に、中央アジア諸国は労働力の移動、市場への経路、交通、エネルギー資源においてロシアに大きく依存しており、他の外部大国がその費用を負担することはない。第三に、ロシア主導のユーラシア経済連合は地域経済統合を組織的に構築し続けている点を過小評価してはならない。

 西安宣言では、宗教的過激主義に対抗し、外部勢力が地域に自らの規則を押し付ける試みに抵抗することに言及している。習近平主席は、サミットで述べたところによれば、北京は地域の法執行機関や武装部隊の能力強化を支援する準備があり、地域の安全保障とテロ対策を確保するための独自の取り組みを支持し、サイバー面の安全性の強化に取り組むと約束した。さらに、中国では中央アジアの共和国の治安部隊の訓練を行うための地域対テロセンターの創設に取り組んでいると述べた。

(二部に続く)
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