心理作戦のマトリョーシカ(入子人形):「ハルマゲドン将軍」は生きている!
<記事原文 寺島先生推薦>
A Matryoshka of Psyops: And Why General Armageddon Is Not Going Anywhere
筆者:ペペ・エスコバル (Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture 2023年6月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月13日(8月11日改定)

ロシアが直面している主要な問題は、覇権国(アメリカ)とNATOではなく、国内の問題だとペペ・エスコバルは書いている。
完璧な心理作戦の秘訣は、実際、誰もそれが分かっていない、ということだ。
完璧な心理作戦は、次の2つの任務を達成する:① 敵を、ぼーっとさせ、混乱させる。そして、② 非常に重要な一連の目標を達成する。
言うまでもないが、私が「最も長い日」と形容したロシアの戦略的な動きから、意外に早く真の目標が浮かび上がってくるだろう。
「最も長い日」は、心理作戦以上のものだったのか、あるいはそんなことはなかったのか。
その霧を晴らすために、通常の「勝者」候補を挙げることから始めてみよう。
最初の勝者は間違いなくベラルーシだ。ルカシェンコ氏の貴重な仲介により、ミンスクには今や世界で最も経験豊富な軍隊が与えられた:ワグナー楽団(部隊)。彼らは通常戦(リビア、ウクライナ)と、非通常戦(シリア、中央アフリカ共和国)の名手だ。
それは既にNATOに地獄の恐怖をもたらしている。NATOは突然、東側の防衛線において非常に装備の整った、事実上制御不能の、それに加えて核兵器を保有するロシアという国家の後ろ盾がある超プロ級軍隊(ワグナー部隊)に直面している。
同時に、ロシアは西部戦線で抑止力を強化している。そのために、一貫してNATO諸国に膨張する軍事予算を投資させている(資金がないにも関わらず)。このプロセスは、少なくとも2018年3月以降、ロシアの戦略の重要な政策だ。
さらにボーナスとして、ロシアはキエフの北部戦線全体に対して年中無休の脅威を作り出している。 「(プリゴジン)反乱」の見返りとしては悪くない。
オリガルヒたちの踊り
ロシアの国内力学はさらに複雑だ。プーチンが下す現在およびその後の困難な決定によっては、民意喪失と国内の安定喪失を伴う可能性がある。それもクレムリンが定義した戦略的勝利がロシア世論にどのように提示されるかによる。
NATO諸国の主流メディアが、年中無休で、何を言おうとも、クレムリンの公式な説明によれば、6月24日の出来事は、結局はプリゴジンの示威活動なのだ。彼はただ揺さぶりをかけていただけだ。
事態はそれよりもはるかに複雑だ。もちろん、戦略的な利益(複数)はあった。そして、プリゴジンは、最終的にはモスクワに有利な結果となる、非常に危険な筋書きに従っていたようだ。しかし、まだ結論を出すには早すぎる。
重要な副次的筋書き(サブプロット)は、オリガルヒの踊りがどのように進行するか、だ。独立系ロシアメディアは、国家公務員を含む一部の「反逆的な」動きをする人間たちが、事態が困難になるときに片道切符を購入するか、自分たちが「病気である」と言ったり、重要な電話に応じなかったりすることを予想していた。ボルトニコフ*のFSB(連邦保安庁)によって飼われているロシア国会は、既にある膨大なリスト作成に取り組んでいる。
*アレクサンドル・ヴァシリエヴィチ・ボルトニコフは、ロシアの政治家。ソ連国家保安委員会出身のシロヴィキ(大統領の側近)。2008年5月12日からロシア連邦保安庁長官。上級大将。(ウィキペディア)
ロシアの体制およびロシア社会は、こうした人々を極めて有害な存在と見なしている。実際には、「デムシーザdemshiza」(「民主主義democracy」と「統合失調症schizophrenia」を組み合わせた用語で、グローバリストの新自由主義者に適用される)よりもはるかに危険だと見なされている。
軍事面では、さらに複雑な状況になる。プーチンは、「最も長い日」の後に昇進させる将軍のリストを国防相ショイグに作成するよう指示した。控えめな言い方をしても、多くの人々にとって、異なる信念を持つ多くの人々から見て、ショイグはロシアの政治において毒薬になってしまった。
ワグナー部隊は、新体制の下で再ブランド化され、ミンスクを介して、アフリカだけでなく、ロシアの利益にも奉仕し続けるだろう。
ルカシェンコ氏は、ワグナー部隊を介したNATOへの挑発は行われないだろう、と既に明言している。ワグナー部隊の募集拠点はベラルーシには開設されないが、ベラルーシ人は直接ワグナー部隊に参加することができる。現時点では、ワグナー部隊の戦闘員の大部分はまだルガンスクにいる。

実際には、今後ロシア政府は、軍事的および財政的にワグナー部隊とは何の関係も持たないだろう。
さらに、押収されるべき重火器はない。既に、6月26日(月)、ワグナー部隊は重火器をベラルーシに移動させた。「最も長い日」の間に移動されなかったものは、国防省に返還された。
将軍たちの踊り
この全過程において明確な勝者はロシア世論だ。それはロストフで明確に示された。誰もが同時に、プーチンを、ロシア兵士を、ワグナー部隊を、そしてプリゴジンを支持していた。全体的な目標は、この戦争に勝つためにロシア軍を強化することだった。それは、はっきりしている。
国防省内の粛清は厳しいものになるだろう。弾圧や「反乱」という名目の下で、兵士を適切に訓練しなかった、適切に動員を組織しなかった、または戦闘で無能だった「オペレッタ将軍たち」(プーチン自身によって定義されたもの)は、確実に解任されるだろう。
問題は、彼ら全員がゲラシモフ*陣営の一員であることだ。そつなく言えば、彼は多くの重要な質問に答える必要がある。
そして、「ハルマゲドン将軍(スロビキン将軍)**が逮捕された」という虚偽の化け物ニュースが我々の元に届くことになる。このニュースを、NATO諸国の情報界全体が小躍りして繰り返し流している。
*/**今年1月、ゲラシモフが総司令官となり、スロビキンは副司令官となる。 「ハルマゲドン将軍をゲラシモフ将軍に交代させたロシア:戦いはもう終わった」(寺島メソッド翻訳NEWS)に詳しい。http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-1286.html
スロビキン将軍はプリゴジンをロストフで受け入れた。しかし、「反乱」の共犯者では決してなかった。国防次官のエフクロフもロストフの司令部におり、スロビキン将軍と一緒にプリゴジンを受け入れた。エフクロフは戦略的に配置された観察者の役割を果たした可能性がある。
プリゴジンの反乱劇は、実際には2月に始まったが、それを止めるために何も行われなかった。公式の説明を信じるかどうかに関わらず、そのような状況があった。
これは、ロシア国家が、それが起こることを予見していたことを意味する。それは、「最も長い日」がすべてのマスキロフカ(軍事的欺瞞作戦)を産んだ母ということなのか?
再度言う:事態は単純ではない。ロシアは、西側集団とは異なり、キャンセル・カルチャー*を実践または施行することはない。ワグナー部隊は戒厳令によって保護された。ネオ・ナチのバンデラ主義者と戦っている「音楽家」(ワグナー部隊)に対する侮辱は、最大で15年の禁固刑となる。ワグナー戦闘員一人ひとりは正式にロシアの英雄とされている。プーチン自身が常に強調していたことだ。
*主にソーシャルメディアを利用して、社会的に不適切な人物を追放しようとすること。(英辞郎)
マスキロフカ(軍事的欺瞞)前線においては、「最も長い日」の前、ロシア軍陣営内の煮えたぎる緊張が、敵の目を眩ますために、戦争の形をとった靄の中で、巧妙に操作されたことに何の疑問もない。それは見事な効果を発揮した。運命の6月24日という日には、スロビキン将軍は戦争を指揮しており、プリゴジンとブランデーを飲んで過ごすような日ではなかった。
NATO属国枢軸国は本当に藁にもすがる思いだ。スロビキン(逮捕)関連の噂だけで彼らを有頂天にさせるのに十分だった。それは再び彼らがいかに「ハルマゲドン将軍(スロビキン)」を恐れているかを再び証明することになった。
重要な要素は、スロビキン将軍が、生き残った「オペレッタ将軍たち」と比較して、世論からどのように見られているかだ。
彼は現在伝説となっている三層防御を築き上げ、既に「反転攻勢」を打ち破っている。彼は戦場で非常に成功したイラン製のシャヘド-136ドローンを導入した。そして、彼はバフムート/アルテミウスクでの肉塊処理の破壊を組織し、それは既に軍事史に刻まれている。
2022年の秋、ハルマゲドン将軍がプーチンに対して、ロシア軍が大規模攻勢に対して準備ができていないと伝えたのだ。
だから、第五列がどんな陰謀をでっち上げようとも、ハルマゲドン将軍はどこにも行かない。行くとすれば勝利するためだ。ロシアはアフリカから「撤退」するわけではない。むしろ、再ブランド化されたワグナー部隊はそこにとどまり、さまざまな地域において短縮ダイヤルで活動を続けている。
短期的には、ロシアの軍事的な沼地が複雑に排水されつつあるという傾向が見られる。「最も長い日」は、あらゆる層のロシア人を奮起させ、真の敵を特定し、どんな手段を使ってでもそれを打ち破る方法を見つけることに取り組むことを促しているようだ。
「何一つ偶然では起きない」
歴史家のアンドレイ・フルソフは、ルーズベルトを引用して、「政治では偶然などありえない。何かが起こるなら、それは予見されていたのだ」と述べた。
さて、マスキロフカ(軍事的欺瞞)の日はまた昇る。
しかし、ロシアが直面している主要な問題は、覇権国とNATOではなく、国内問題だ。
ロシアの分析家との対話や、ロシア、ウクライナ、そして西側で暮らしていた非常に鋭い人々から受けた印象に基づいて、基本的には4つの主要なグループが自分なりのロシアのイメージを押し付けようとしていることを特定できる。
1. 「ソ連回帰」派。もちろん、元KGBの一部も含まれる。一般の人々からある程度の支持を得ている。多くの教養のある専門家(主に年金生活者の古株のプロたち)がいる。このプロジェクトは、ステロイド剤で強化した1917年革命を提案している。レーニンをどこに置くのだろうか?
2. 「ツァーリに戻ろう」派。それはロシアを「第三のローマ」と位置付け、正教会による重要な役割を意味する。多額の資金がその後ろにある。特に「深層」ロシアでどれだけの人々の支持を本当に持っているのかは大きな疑問だ。このグループは、バチカンとは無関係だ。バチカンはグレートリセットに売り渡されている。
3. 「略奪者たち」。ロシアを略奪し、覇権国の利益のために盲目的に行動する人々を指す。第五列(買弁勢力)や「全体主義的な新自由主義者」など、集団的な西側の「価値観」を崇拝するあらゆる種類の人々が集まっている。(ロシアに)残っている者たちの家の玄関にはまもなくFSB(連邦保安庁)が押し掛けるだろう。彼らの資金は既に凍結されている。
4. 「ユーラシア主義者」。これは最も実現可能な事業計画であり、中国との緊密な協力を通じて多極的な世界を目指している。ここにロシア・オリガルヒたちの居場所はない。ただし、中国との協力をどの程度にするかは、依然として議論の余地が大きく残されている。真の焦点となる問題は、一帯一路構想を大ユーラシア友好関係に実際にどのように統合するか、だ。
以上は単なる素描だ。ぜひ、自由に議論をしてほしい。最初の3つの目論見は、ほとんど機能することはないだろう。一筋縄ではいかない理由が延々とある。そして、第4の目論見もまだロシアで十分な勢いを得ていない。
確かなことは、この4つの集団は全てが互いに闘っているということだ。現在進行中の軍事的沼地の排水が、政治の空を晴れ渡らせるためにも役立つことを願う。
A Matryoshka of Psyops: And Why General Armageddon Is Not Going Anywhere
筆者:ペペ・エスコバル (Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture 2023年6月30日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年7月13日(8月11日改定)

ロシアが直面している主要な問題は、覇権国(アメリカ)とNATOではなく、国内の問題だとペペ・エスコバルは書いている。
完璧な心理作戦の秘訣は、実際、誰もそれが分かっていない、ということだ。
完璧な心理作戦は、次の2つの任務を達成する:① 敵を、ぼーっとさせ、混乱させる。そして、② 非常に重要な一連の目標を達成する。
言うまでもないが、私が「最も長い日」と形容したロシアの戦略的な動きから、意外に早く真の目標が浮かび上がってくるだろう。
「最も長い日」は、心理作戦以上のものだったのか、あるいはそんなことはなかったのか。
その霧を晴らすために、通常の「勝者」候補を挙げることから始めてみよう。
最初の勝者は間違いなくベラルーシだ。ルカシェンコ氏の貴重な仲介により、ミンスクには今や世界で最も経験豊富な軍隊が与えられた:ワグナー楽団(部隊)。彼らは通常戦(リビア、ウクライナ)と、非通常戦(シリア、中央アフリカ共和国)の名手だ。
それは既にNATOに地獄の恐怖をもたらしている。NATOは突然、東側の防衛線において非常に装備の整った、事実上制御不能の、それに加えて核兵器を保有するロシアという国家の後ろ盾がある超プロ級軍隊(ワグナー部隊)に直面している。
同時に、ロシアは西部戦線で抑止力を強化している。そのために、一貫してNATO諸国に膨張する軍事予算を投資させている(資金がないにも関わらず)。このプロセスは、少なくとも2018年3月以降、ロシアの戦略の重要な政策だ。
さらにボーナスとして、ロシアはキエフの北部戦線全体に対して年中無休の脅威を作り出している。 「(プリゴジン)反乱」の見返りとしては悪くない。
オリガルヒたちの踊り
ロシアの国内力学はさらに複雑だ。プーチンが下す現在およびその後の困難な決定によっては、民意喪失と国内の安定喪失を伴う可能性がある。それもクレムリンが定義した戦略的勝利がロシア世論にどのように提示されるかによる。
NATO諸国の主流メディアが、年中無休で、何を言おうとも、クレムリンの公式な説明によれば、6月24日の出来事は、結局はプリゴジンの示威活動なのだ。彼はただ揺さぶりをかけていただけだ。
事態はそれよりもはるかに複雑だ。もちろん、戦略的な利益(複数)はあった。そして、プリゴジンは、最終的にはモスクワに有利な結果となる、非常に危険な筋書きに従っていたようだ。しかし、まだ結論を出すには早すぎる。
重要な副次的筋書き(サブプロット)は、オリガルヒの踊りがどのように進行するか、だ。独立系ロシアメディアは、国家公務員を含む一部の「反逆的な」動きをする人間たちが、事態が困難になるときに片道切符を購入するか、自分たちが「病気である」と言ったり、重要な電話に応じなかったりすることを予想していた。ボルトニコフ*のFSB(連邦保安庁)によって飼われているロシア国会は、既にある膨大なリスト作成に取り組んでいる。
*アレクサンドル・ヴァシリエヴィチ・ボルトニコフは、ロシアの政治家。ソ連国家保安委員会出身のシロヴィキ(大統領の側近)。2008年5月12日からロシア連邦保安庁長官。上級大将。(ウィキペディア)
ロシアの体制およびロシア社会は、こうした人々を極めて有害な存在と見なしている。実際には、「デムシーザdemshiza」(「民主主義democracy」と「統合失調症schizophrenia」を組み合わせた用語で、グローバリストの新自由主義者に適用される)よりもはるかに危険だと見なされている。
軍事面では、さらに複雑な状況になる。プーチンは、「最も長い日」の後に昇進させる将軍のリストを国防相ショイグに作成するよう指示した。控えめな言い方をしても、多くの人々にとって、異なる信念を持つ多くの人々から見て、ショイグはロシアの政治において毒薬になってしまった。
ワグナー部隊は、新体制の下で再ブランド化され、ミンスクを介して、アフリカだけでなく、ロシアの利益にも奉仕し続けるだろう。
ルカシェンコ氏は、ワグナー部隊を介したNATOへの挑発は行われないだろう、と既に明言している。ワグナー部隊の募集拠点はベラルーシには開設されないが、ベラルーシ人は直接ワグナー部隊に参加することができる。現時点では、ワグナー部隊の戦闘員の大部分はまだルガンスクにいる。

実際には、今後ロシア政府は、軍事的および財政的にワグナー部隊とは何の関係も持たないだろう。
さらに、押収されるべき重火器はない。既に、6月26日(月)、ワグナー部隊は重火器をベラルーシに移動させた。「最も長い日」の間に移動されなかったものは、国防省に返還された。
将軍たちの踊り
この全過程において明確な勝者はロシア世論だ。それはロストフで明確に示された。誰もが同時に、プーチンを、ロシア兵士を、ワグナー部隊を、そしてプリゴジンを支持していた。全体的な目標は、この戦争に勝つためにロシア軍を強化することだった。それは、はっきりしている。
国防省内の粛清は厳しいものになるだろう。弾圧や「反乱」という名目の下で、兵士を適切に訓練しなかった、適切に動員を組織しなかった、または戦闘で無能だった「オペレッタ将軍たち」(プーチン自身によって定義されたもの)は、確実に解任されるだろう。
問題は、彼ら全員がゲラシモフ*陣営の一員であることだ。そつなく言えば、彼は多くの重要な質問に答える必要がある。
そして、「ハルマゲドン将軍(スロビキン将軍)**が逮捕された」という虚偽の化け物ニュースが我々の元に届くことになる。このニュースを、NATO諸国の情報界全体が小躍りして繰り返し流している。
*/**今年1月、ゲラシモフが総司令官となり、スロビキンは副司令官となる。 「ハルマゲドン将軍をゲラシモフ将軍に交代させたロシア:戦いはもう終わった」(寺島メソッド翻訳NEWS)に詳しい。http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-1286.html
スロビキン将軍はプリゴジンをロストフで受け入れた。しかし、「反乱」の共犯者では決してなかった。国防次官のエフクロフもロストフの司令部におり、スロビキン将軍と一緒にプリゴジンを受け入れた。エフクロフは戦略的に配置された観察者の役割を果たした可能性がある。
プリゴジンの反乱劇は、実際には2月に始まったが、それを止めるために何も行われなかった。公式の説明を信じるかどうかに関わらず、そのような状況があった。
これは、ロシア国家が、それが起こることを予見していたことを意味する。それは、「最も長い日」がすべてのマスキロフカ(軍事的欺瞞作戦)を産んだ母ということなのか?
再度言う:事態は単純ではない。ロシアは、西側集団とは異なり、キャンセル・カルチャー*を実践または施行することはない。ワグナー部隊は戒厳令によって保護された。ネオ・ナチのバンデラ主義者と戦っている「音楽家」(ワグナー部隊)に対する侮辱は、最大で15年の禁固刑となる。ワグナー戦闘員一人ひとりは正式にロシアの英雄とされている。プーチン自身が常に強調していたことだ。
*主にソーシャルメディアを利用して、社会的に不適切な人物を追放しようとすること。(英辞郎)
マスキロフカ(軍事的欺瞞)前線においては、「最も長い日」の前、ロシア軍陣営内の煮えたぎる緊張が、敵の目を眩ますために、戦争の形をとった靄の中で、巧妙に操作されたことに何の疑問もない。それは見事な効果を発揮した。運命の6月24日という日には、スロビキン将軍は戦争を指揮しており、プリゴジンとブランデーを飲んで過ごすような日ではなかった。
NATO属国枢軸国は本当に藁にもすがる思いだ。スロビキン(逮捕)関連の噂だけで彼らを有頂天にさせるのに十分だった。それは再び彼らがいかに「ハルマゲドン将軍(スロビキン)」を恐れているかを再び証明することになった。
重要な要素は、スロビキン将軍が、生き残った「オペレッタ将軍たち」と比較して、世論からどのように見られているかだ。
彼は現在伝説となっている三層防御を築き上げ、既に「反転攻勢」を打ち破っている。彼は戦場で非常に成功したイラン製のシャヘド-136ドローンを導入した。そして、彼はバフムート/アルテミウスクでの肉塊処理の破壊を組織し、それは既に軍事史に刻まれている。
2022年の秋、ハルマゲドン将軍がプーチンに対して、ロシア軍が大規模攻勢に対して準備ができていないと伝えたのだ。
だから、第五列がどんな陰謀をでっち上げようとも、ハルマゲドン将軍はどこにも行かない。行くとすれば勝利するためだ。ロシアはアフリカから「撤退」するわけではない。むしろ、再ブランド化されたワグナー部隊はそこにとどまり、さまざまな地域において短縮ダイヤルで活動を続けている。
短期的には、ロシアの軍事的な沼地が複雑に排水されつつあるという傾向が見られる。「最も長い日」は、あらゆる層のロシア人を奮起させ、真の敵を特定し、どんな手段を使ってでもそれを打ち破る方法を見つけることに取り組むことを促しているようだ。
「何一つ偶然では起きない」
歴史家のアンドレイ・フルソフは、ルーズベルトを引用して、「政治では偶然などありえない。何かが起こるなら、それは予見されていたのだ」と述べた。
さて、マスキロフカ(軍事的欺瞞)の日はまた昇る。
しかし、ロシアが直面している主要な問題は、覇権国とNATOではなく、国内問題だ。
ロシアの分析家との対話や、ロシア、ウクライナ、そして西側で暮らしていた非常に鋭い人々から受けた印象に基づいて、基本的には4つの主要なグループが自分なりのロシアのイメージを押し付けようとしていることを特定できる。
1. 「ソ連回帰」派。もちろん、元KGBの一部も含まれる。一般の人々からある程度の支持を得ている。多くの教養のある専門家(主に年金生活者の古株のプロたち)がいる。このプロジェクトは、ステロイド剤で強化した1917年革命を提案している。レーニンをどこに置くのだろうか?
2. 「ツァーリに戻ろう」派。それはロシアを「第三のローマ」と位置付け、正教会による重要な役割を意味する。多額の資金がその後ろにある。特に「深層」ロシアでどれだけの人々の支持を本当に持っているのかは大きな疑問だ。このグループは、バチカンとは無関係だ。バチカンはグレートリセットに売り渡されている。
3. 「略奪者たち」。ロシアを略奪し、覇権国の利益のために盲目的に行動する人々を指す。第五列(買弁勢力)や「全体主義的な新自由主義者」など、集団的な西側の「価値観」を崇拝するあらゆる種類の人々が集まっている。(ロシアに)残っている者たちの家の玄関にはまもなくFSB(連邦保安庁)が押し掛けるだろう。彼らの資金は既に凍結されている。
4. 「ユーラシア主義者」。これは最も実現可能な事業計画であり、中国との緊密な協力を通じて多極的な世界を目指している。ここにロシア・オリガルヒたちの居場所はない。ただし、中国との協力をどの程度にするかは、依然として議論の余地が大きく残されている。真の焦点となる問題は、一帯一路構想を大ユーラシア友好関係に実際にどのように統合するか、だ。
以上は単なる素描だ。ぜひ、自由に議論をしてほしい。最初の3つの目論見は、ほとんど機能することはないだろう。一筋縄ではいかない理由が延々とある。そして、第4の目論見もまだロシアで十分な勢いを得ていない。
確かなことは、この4つの集団は全てが互いに闘っているということだ。現在進行中の軍事的沼地の排水が、政治の空を晴れ渡らせるためにも役立つことを願う。
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