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ウクライナの「反攻」―神話か真実か?

<記事原文 寺島先生推薦>
Ukraine’s ‘Counteroffensive’ – Myth or Reality?
筆者:スコット・リッタ―(Scott Ritter)
出典:INTERNATIONALIST 360° 2023年5月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月20日





 5月中旬に近づくにつれて、皆が頭に抱える疑問は「大規模なウクライナの反攻はどこにあるのか?」だ。

 この大々的に宣伝されている出来事は、2022年の秋に始まり、ウクライナ軍の指導者であるヴァレリ・ザルージニーが、ドイツのラムシュタインで行われた米国とNATO主導のウクライナ防衛問題調整委員会の会議で、ウクライナがロシア軍をウクライナ領土から駆逐するために必要な軍事装備の一覧を伝えたことから、西側の主要報道機関やソーシャルメディアで広まっている。それ以来、西側諸国は時間をかけてこの物資支援の大部分を準備するだけではなく、ウクライナ軍が標準的なNATO合同兵器攻撃作戦および戦術教義を用いてこれらの軍事物資を使用できるための必要な訓練を提供してきた。

 NATOの事務総長であるイェンス・ストルテンベルグは、2023年4月末に、NATOが昨年の秋にウクライナに約束した装備のうち、98%以上を提供したことを発表した。これには1550台以上の装甲車、230両の戦車、そして「膨大な量」の弾薬が含まれている。また、議論の的となっているが、英国のチャレンジャー2主力戦車に使用される劣化ウラン弾薬や、英国供給の「ストーム・シャドウ」空中発射巡航ミサイルも含まれている。ストルテンベルグによれば、NATOはまた、3万人以上の兵士に対して訓練を行い、ウクライナがロシア軍に対して打撃を与える能力を持つ9つの新たな戦闘旅団を編成することが可能となった。

 ただしすぐにことは進まない。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領によると、ウクライナ軍はロシアに対する反攻を実施するために十分な訓練を受けた兵士を持っているが、これらの兵士が必要とする一部の装備はまだウクライナに到着していない。ゼレンスキー大統領は、大規模な攻撃作戦を実施するためにはウクライナにはもう少し時間が必要だと述べている。現在、ウクライナ大統領はヨーロッパを訪れており、NATOの同盟国に対してさらなる軍事支援を要請している。アメリカ、ドイツ、フランスはすべて、ウクライナへの軍事支援を増やすことを約束している。残る問題は、ウクライナが成功する攻撃作戦を実施するために十分な軍力を持つと考える時期はいつ来るか、ということだ。答えはおそらく、十中八九そんな時期は「絶対に来ない」だろう。

 ウクライナによる攻撃が成功するか失敗に終わるかを測るために使用される基準は非現実的に高い――たとえば、2022年9月のハルコフ攻勢。ここでは、ウクライナは不適切に配置され、十分に準備されず、意味のある防衛深度を持たないロシア軍の防御陣地を利用することができた。土地と引き換えに命を守る選択をしたロシア軍は撤退し、宣伝戦においてウクライナは大きな勝利を収めた一方で、軍事的な成果はなかった。ウクライナはヘルソンの右岸でも同様に成功した作戦を実施し、ロシアは防御が困難な領土を守ることを選択すれば、多数の戦死者が発生するため、約3万人の兵士を撤退させた。

 NATOが訓練と装備支援を行った9つのウクライナ旅団は、ハルコフやヘルソンで使用されたNATO訓練を受けた部隊よりも能力が高いと言える。しかし、これに対峙しているロシア軍も同様。ハルコフとヘルソンの作戦の成功後、ロシアは部分徴兵により約30万人の兵士を動員し、志願兵の動員とあわせて、ロシア軍の指揮下にある兵力を約70万人に増やした。これらの兵士は大部分が訓練を終え、すでに前線に投入されているか、将来の軍事作戦のために予備に保持されている。ロシアの防御陣地は、接触線の密度、十分な火力支援の提供、そして潜在的なウクライナの突破を阻止するための第2および第3戦線の防御の準備など、ロシアの方針に従って準備されている。要するに、ウクライナが攻撃を行った場合、ウクライナは2022年秋に直面したものとは大きく異なる鉄壁に突き当たることになるだろう。

 さらに、ロシアは現代の戦場の現実に適応している。ウクライナが使用するアメリカ提供の火砲システム、特にHIMARS(高機動火砲ロケットシステム)は、改善されたロシアの作戦戦術によってほとんど無力化されている。この戦術はHIMARSの潜在的な標的を減らすために設計されており、GPS信号を妨害するための電子戦能力の活用や、ウクライナが発射するHIMARSロケットの大部分を撃墜する改良された防空能力など、新たな戦術行動が含まれている。

 ロシアは同様に、「神風」ドローンの使用を改善しており、特に「ランセット」システムを使用してウクライナの重要な軍事機器や指揮統制能力を追跡し、破壊している。また、ロシアは自身の新技術も取り入れており、ウクライナの兵力集中地に対して壊滅的な効果を持つ精密誘導「滑空爆弾」を使用している。さらに、ロシア空軍と海軍は長距離ドローンと精密誘導ミサイルを使用して、ウクライナの後方にある兵器や物資の集積地に対して効果的な攻撃を行っており、ウクライナが意味のある、かつ持続的な軍事攻撃を実施するために必要な弾薬や燃料の蓄積を破壊している。これに加えて、ウクライナが火砲弾や防空システムの不足に直面している現状を考慮すると、現時点でウクライナがロシア軍に対して成功する攻撃を行うことは難しいだろう。

 ウクライナ紛争は、その激しさと死者数に関して、アメリカとNATOにとっては寝耳に水だった。結局のところは、これらは経済的、物質的、そして人命的にはこれまでのような近代戦を戦うのと同じ損害になっていた。損害は相互的である、つまりロシアもまた膨大な人的および経済的損失を被っていると言えるが、最終的な問題は西側全体の痛みの限界がどこにあるか、だ。1年前にアメリカの国防長官ロイド・オースティンは、アメリカのウクライナにおける目標はロシアに対して激しい苦痛を与え、将来のロシアの「侵略」行為を抑止するものであると述べたが、現在ではアメリカ自身が苦境に立たされつつあることが明らかになっている。それは、①ウクライナへの継続的な支援がアメリカの軍事準備に与える影響、そして②ウクライナの戦争継続能力を支えるための高い費用(現在は1300億ドル以上で増加傾向にある)という2点で、アメリカは苦境に立たされている。

 ジョー・バイデン大統領が再選を目指すにあたり、ウクライナで続く「凍結」した紛争がアメリカの軍事と経済資源を消耗し続けることで、国内政治的な結果が政治的な負債となるだろう。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は反攻の準備を完全に整えるためにさらなる時間を求めているが、ウクライナの最大の支援国であるアメリカにとって時間は味方となっていない。結局のところ、ウクライナはアメリカから決定的な打撃を与えるように圧力を受けているが、それはウクライナが達成できないものだ。ウクライナが慎重に集めた3万人の兵士は、何を送り込んでも十分に対処できる能力を持っているロシア軍との戦闘で失われるだろう。これは、ウクライナが一時的な戦術的優位性を一部の戦場で得ることができない、またはロシアが損失を被らないということを意味しない。そんなことではなく、結局のところ、ウクライナの反攻が起こるにしても、いつ起こるにしても、その結果に対処する準備は、ロシアの方がウクライナとNATOよりも、はるかに整っているということなのだ。
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