ボリビアでのクーデター:モラレス大統領はなぜ追放されたのか?
<記事原文>寺島先生推薦
Bolivia’s coup: Morales toppled not due to his failures, but due to his success
(翻訳:寺島メソッド翻訳グループo. 2019年12月16日)
https://www.rt.com/op-ed/473560-bolivia-coup-morales-resources/

© Global Look Press / Jair Cabrera Torres
モラレスの追放に至った状況、および外国政府がその追放に何らかの役割を果たしたかどうかについては疑問が残っている。 しかし、近年の歴史を見れば、「ボリビアには豊かな天然資源があるから」ということがその疑問への答えの一部になるかもしれない。
一人のボリビア軍将校が、ほとんど誰もいない部屋で、ベニ地区の上院議員ジャニーヌ・アネス・チャベスの肩に大統領サッシ(たすき)を掛けた。 彼女は最近の国政選挙には出馬していない。 熱心なキリスト教政治家として、彼女は聖書を式典に持ち込み、今回のボリビアにおけるクーデター体制を固めた。
一方、10月20日の投票の勝者であるエボ・モラレスは追放先のメキシコに到着するところだった。彼はジャニーヌ・アネス・チャベスを大統領に仕立て、クーデターは起きていないと主張する同じ軍将校達によって追放された。
不正選挙の申し立てに対する混乱を鎮めるために選挙のやり直しを呼びかけた後、モラレスは大統領を辞任した。 軍と警察のトップは彼に辞任を「持ちかけて」いた。もっともそれはモラレスの左翼「社会主義運動(MAS)」党の活動家と選挙管理人を保護できなかったあとのことだが。
確かに、モラレスの追放に至った状況については多くの疑問があるが、それがどのように起こったのか、なぜ起こったのかについては以前より明らかになってきている。
最初に見なければならないのは、彼が大統領職、そしてボリビアから追放された経緯だ。
エクアドルのレニン・モレノは、緊縮財政をめぐる大規模な抗議に直面したため、グアヤキルへの短い移動はあったが、カロンデレト宮殿に今でも居続けている。
一方、チリ大統領セバスチャン・ピネラは、3週間以上の大規模な連日の抗議で支持率が9%に下がったにも関わらず、権力にしがみついている。
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チリとエクアドルの最近の例でわかるのは、政府が転覆されるのは必ずしも街頭の群衆の数によるというわけではないことだ。 一方、米国の同盟者であるモレノとピネラは、それぞれ自国の軍隊の支援を受けたが、モラレスはそうではなかった。
モラレスの政府が倒れた理由は、失政があったからというのではなく、むしろその政策が成功したからだ。
モラレス執政下のボリビアは、格差の是正、女性の立場を向上させる重要な獲得物、などなど、実質的にすべての社会的指標における目を見張る実績のために、多数のオブザーバーや色々な組織から賞賛されていた。
元コカ栽培農夫だったエボ・モラレスのリーダーシップの下、ボリビアは何十年も達成できないでいた政治的安定のレベルについに到達した。 それにもかかわらず、モラレスは数日のうちに国外に追放された。
ボリビア経済は、その左翼的、民族主義的傾向に沿ってきちんと強化されてきた。
最初の任期の早い段階で、エボはボリビアの天然ガスを国有化した。 ボリビアの天然ガスの埋蔵量はベネズエラに次いで、南アメリカで2番目に多い。 これにより、政府はそのインフラストラクチャーだけでなく、ボリビア国民のための支出を開始することができた。
ALSO ON RT.COM Russia considers power shift in Bolivia a coup, but will work with Anez as interim president – Deputy FM
モラレスの社会主義政府は、国の資源の管理をめぐる企業との数多くの戦いに巻き込まれ、しばしば影響を受けた企業に何らかの形の補償をする必要は生じたが、ボリビアの経済に悪影響を与えなかったことは明白だった。
モラレスの政府は、その成功の大部分を天然ガス(繰り返しになるが、これは国有化されている)に負っているが、経済の多様化を目指しており、リチウムを国の経済の将来の鍵として注目していた。 リチウムは電気自動車に不可欠であり、ボリビアにはそれが大量にある。 (ボリビア人に言わせれば)世界の総埋蔵量の4分の3以上だ。
リチウムにはこういう価値があるにもかかわらず、投資家たちに課された条件は資源を確保するには厳しいものだった。 ただ、ドイツのACISAとTBEA GroupやChina Machinery Engineeringなどの中国企業はやがてボリビアの国営リチウム企業Yacimientos de Litio Bolivianos(YLB)と契約を結ぶことにはなったが。
しかし、モラレスは、強制辞任のわずか1週間前に、いろいろな抗議があったためウユニ塩原でのACIとの取引をキャンセルした。 ACISAの社長は、11月6日のドイツ経済相への手紙で、驚いたが、「リチウムプロジェクトが再開されることを確信している」と述べた。
一部の人々にとって、中国資本の参入を含め、リチウムに対するエボの立ち位置が彼を追い出した理由になっている。
この時点では憶測以上には出ないかもしれないが、ボリビアにおける資源を支配するため、長期に亘る様々な介入が裏舞台で展開されていたことを指摘する人downloadもいる。
「ボリビアは非常に豊かで、新しい電池を作るために必要な材料の70パーセントを持っていると言われている。 世界におけるエネルギー事情の変化が起こっていることは、誰でも知っていることだ」とウルグアイの前大統領であるホセ・ムジカは述べた。
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「証拠がないからだれも非難はしないが、歴史があるから不信感を持ってしまうのだ。」
それほど遠くない歴史は、ムジカの疑惑の根拠を明確に裏付けている。
米国国際開発庁と民主主義国家基金(NED)は、ボリビアの野党グループとNGOに、サンタクルスでの暴力的な反政府抗議行動を含む不安定化の取り組みの一環として、何百万ドルもの資金を長い間投じてきた。 サンタクルスには市民委員会のリーダーであり、熱狂的クリスチャンであるルイス・フェルナンド・カマチョが拠点を置いている。
モラレスに辞任を「持ちかけた」ボリビア治安部隊の2人のトップ-警察署長のウラジミール・カルデロンとボリビア軍のウィリアムズ・カリマン司令官-もまた、悪名高い「アメリカンスクール」の卒業生であり、近年アメリカでそれぞれ大使館付き警部官そして武官として務めている。 米国は、中南米の軍人および警察官を資産として確保していることを何ら秘密にしなくなった。
現在、西半球の最も反動的なリーダー(訳注:トランプ大統領)と市場からの好意的な反応を考えると、モラレスを追い払う動きで外国政府と国際資本が果たした正確な役割をどうこう言っても意味がない。
ボリビアの社会主義指導者エボ・モラレスは、自分の国ボリビアをそれに服従させることを拒否したが故に、経済的および政治的利益グループの怒りを招いたのだ。 そしてそういう人間がどうなるか、のひとつの実例に、今彼はさせられている。
By Pablo Vivanco
Bolivia’s coup: Morales toppled not due to his failures, but due to his success
(翻訳:寺島メソッド翻訳グループo. 2019年12月16日)
https://www.rt.com/op-ed/473560-bolivia-coup-morales-resources/

© Global Look Press / Jair Cabrera Torres
モラレスの追放に至った状況、および外国政府がその追放に何らかの役割を果たしたかどうかについては疑問が残っている。 しかし、近年の歴史を見れば、「ボリビアには豊かな天然資源があるから」ということがその疑問への答えの一部になるかもしれない。
一人のボリビア軍将校が、ほとんど誰もいない部屋で、ベニ地区の上院議員ジャニーヌ・アネス・チャベスの肩に大統領サッシ(たすき)を掛けた。 彼女は最近の国政選挙には出馬していない。 熱心なキリスト教政治家として、彼女は聖書を式典に持ち込み、今回のボリビアにおけるクーデター体制を固めた。
一方、10月20日の投票の勝者であるエボ・モラレスは追放先のメキシコに到着するところだった。彼はジャニーヌ・アネス・チャベスを大統領に仕立て、クーデターは起きていないと主張する同じ軍将校達によって追放された。
不正選挙の申し立てに対する混乱を鎮めるために選挙のやり直しを呼びかけた後、モラレスは大統領を辞任した。 軍と警察のトップは彼に辞任を「持ちかけて」いた。もっともそれはモラレスの左翼「社会主義運動(MAS)」党の活動家と選挙管理人を保護できなかったあとのことだが。
確かに、モラレスの追放に至った状況については多くの疑問があるが、それがどのように起こったのか、なぜ起こったのかについては以前より明らかになってきている。
最初に見なければならないのは、彼が大統領職、そしてボリビアから追放された経緯だ。
エクアドルのレニン・モレノは、緊縮財政をめぐる大規模な抗議に直面したため、グアヤキルへの短い移動はあったが、カロンデレト宮殿に今でも居続けている。
一方、チリ大統領セバスチャン・ピネラは、3週間以上の大規模な連日の抗議で支持率が9%に下がったにも関わらず、権力にしがみついている。
ALSO ON RT.COM Post-coup Bolivia anarchy ‘resembles Libya’: Putin urges ‘common sense’ amid Latin American chaos
チリとエクアドルの最近の例でわかるのは、政府が転覆されるのは必ずしも街頭の群衆の数によるというわけではないことだ。 一方、米国の同盟者であるモレノとピネラは、それぞれ自国の軍隊の支援を受けたが、モラレスはそうではなかった。
モラレスの政府が倒れた理由は、失政があったからというのではなく、むしろその政策が成功したからだ。
モラレス執政下のボリビアは、格差の是正、女性の立場を向上させる重要な獲得物、などなど、実質的にすべての社会的指標における目を見張る実績のために、多数のオブザーバーや色々な組織から賞賛されていた。
元コカ栽培農夫だったエボ・モラレスのリーダーシップの下、ボリビアは何十年も達成できないでいた政治的安定のレベルについに到達した。 それにもかかわらず、モラレスは数日のうちに国外に追放された。
ボリビア経済は、その左翼的、民族主義的傾向に沿ってきちんと強化されてきた。
最初の任期の早い段階で、エボはボリビアの天然ガスを国有化した。 ボリビアの天然ガスの埋蔵量はベネズエラに次いで、南アメリカで2番目に多い。 これにより、政府はそのインフラストラクチャーだけでなく、ボリビア国民のための支出を開始することができた。
ALSO ON RT.COM Russia considers power shift in Bolivia a coup, but will work with Anez as interim president – Deputy FM
モラレスの社会主義政府は、国の資源の管理をめぐる企業との数多くの戦いに巻き込まれ、しばしば影響を受けた企業に何らかの形の補償をする必要は生じたが、ボリビアの経済に悪影響を与えなかったことは明白だった。
モラレスの政府は、その成功の大部分を天然ガス(繰り返しになるが、これは国有化されている)に負っているが、経済の多様化を目指しており、リチウムを国の経済の将来の鍵として注目していた。 リチウムは電気自動車に不可欠であり、ボリビアにはそれが大量にある。 (ボリビア人に言わせれば)世界の総埋蔵量の4分の3以上だ。
リチウムにはこういう価値があるにもかかわらず、投資家たちに課された条件は資源を確保するには厳しいものだった。 ただ、ドイツのACISAとTBEA GroupやChina Machinery Engineeringなどの中国企業はやがてボリビアの国営リチウム企業Yacimientos de Litio Bolivianos(YLB)と契約を結ぶことにはなったが。
しかし、モラレスは、強制辞任のわずか1週間前に、いろいろな抗議があったためウユニ塩原でのACIとの取引をキャンセルした。 ACISAの社長は、11月6日のドイツ経済相への手紙で、驚いたが、「リチウムプロジェクトが再開されることを確信している」と述べた。
一部の人々にとって、中国資本の参入を含め、リチウムに対するエボの立ち位置が彼を追い出した理由になっている。
この時点では憶測以上には出ないかもしれないが、ボリビアにおける資源を支配するため、長期に亘る様々な介入が裏舞台で展開されていたことを指摘する人downloadもいる。
「ボリビアは非常に豊かで、新しい電池を作るために必要な材料の70パーセントを持っていると言われている。 世界におけるエネルギー事情の変化が起こっていることは、誰でも知っていることだ」とウルグアイの前大統領であるホセ・ムジカは述べた。
ALSO ON RT.COM Post-coup Bolivia anarchy ‘resembles Libya’: Putin urges ‘common sense’ amid Latin American chaos
「証拠がないからだれも非難はしないが、歴史があるから不信感を持ってしまうのだ。」
それほど遠くない歴史は、ムジカの疑惑の根拠を明確に裏付けている。
米国国際開発庁と民主主義国家基金(NED)は、ボリビアの野党グループとNGOに、サンタクルスでの暴力的な反政府抗議行動を含む不安定化の取り組みの一環として、何百万ドルもの資金を長い間投じてきた。 サンタクルスには市民委員会のリーダーであり、熱狂的クリスチャンであるルイス・フェルナンド・カマチョが拠点を置いている。
モラレスに辞任を「持ちかけた」ボリビア治安部隊の2人のトップ-警察署長のウラジミール・カルデロンとボリビア軍のウィリアムズ・カリマン司令官-もまた、悪名高い「アメリカンスクール」の卒業生であり、近年アメリカでそれぞれ大使館付き警部官そして武官として務めている。 米国は、中南米の軍人および警察官を資産として確保していることを何ら秘密にしなくなった。
現在、西半球の最も反動的なリーダー(訳注:トランプ大統領)と市場からの好意的な反応を考えると、モラレスを追い払う動きで外国政府と国際資本が果たした正確な役割をどうこう言っても意味がない。
ボリビアの社会主義指導者エボ・モラレスは、自分の国ボリビアをそれに服従させることを拒否したが故に、経済的および政治的利益グループの怒りを招いたのだ。 そしてそういう人間がどうなるか、のひとつの実例に、今彼はさせられている。
By Pablo Vivanco
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