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脱ドル化が本格始動

<記事原文 寺島先生推薦>
De-Dollarization Kicks into High Gear
筆者:ペペ・エスコバル (Pepe Escobar)
出典: INTERNATIONALIST 360°  2023年4月29日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年5月12日

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 米国が力によって世界中を統治する計画には、米ドルが欠かせない。しかし、2022年、基軸通貨に占めるドルの割合は、過去20年間の平均の10倍の速度で減少した。

 米ドルの世界的な基軸通貨としての地位が損なわれていることが確定した。欧米の企業メディアが、多極化世界の脱ドル化シナリオを本格的に攻撃し始めた時、ワシントンのパニックが完全に深まったことが分かるだろう。

 数字で見ると、世界の外貨準備高に占めるドルの割合は、2001年には73%、2021年には55%、2022年には47%であった。重要なのは、昨年、ドルの占有割合が過去20年間の平均の10倍の速さで減少したということである。

 そして、2024年末の米国大統領選の時期には、世界のドル占有率が30%になると予想することは、もはや奇想天外な話ではない。

 2022年2月、ロシアの外貨準備高3000億ドル以上が西側諸国によって「凍結」された時、地球上のすべての国が自国の外貨準備高を心配し始めたのである。しかし、この不合理な動きには、EUがロシアの外貨準備の大部分を「見つけることができない」という、笑い話もあった。

 さて、ここで貿易面における現在の重要な動きについて説明する。

 ロシアのアントン・シルアノフ財務大臣によると、ロシアと中国の貿易取引の70%以上がルーブルか人民元を使用しているという。

 ロシアとインドは石油をルピーで取引している。4週間も前に、Banco Bocom BBM*はラテンアメリカの銀行として初めて、欧米主導の金融メッセージシステムであるSWIFT**に代わる中国の決済システムCIPS(Cross-Border Interbank Payment System)***の直接参加者として登録した。
* ブラジル、リオデジャネイロにある銀行。
* Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication。銀行間の国際金融取引に係る事務処理の機械化、合理化および自動処理化を推進するため、参加銀行間の国際金融取引に関するメッセージをコンピュータと通信回線を利用して伝送するネットワークシステム。本部はベルギーのブリュッセル。
* 人民元国際決済システム。人民元建での外国送金と貿易参加者の清算、決済手段を提供する決済網。2015年に中国人民銀行によって導入された。


 中国のCNOOC*とフランスのトタルが、上海石油天然ガス取引所を通じて、人民元による初のLNG取引に調印した。
* 中国海洋石油集団有限公司。中華人民共和国の国有石油・天然ガス会社。英語名 China National Offshore Oil Corporation。略称 中国海油、CNOOC。

 ロシアとバングラデシュの間で行われたルププル原子力発電所建設のための取引も、米ドルを回避することになる。最初の3億ドルの支払いは人民元で行われるが、ロシアは次の支払いをルーブルに切り替えようとしている。

 ロシアとボリビアの二国間貿易は、現在ボリビアーノでの決済を受け入れている。ボリビアのリチウム鉱床開発の重要な一翼を担うロスアトム*の活動を考えれば、これは極めて適切なことだ。
* ロシアの国営原子力企業

 注目すべきは、これらの取引の多くがBRICS諸国と、そしてそれに加えた国々との取引であることである。ブラジル、ロシア、インド、中国、そして南アフリカを設立メンバーとする21世紀の主要な多極化機構の拡張版であるBRICS+には、少なくとも19カ国がすでに参加を要請している。6月にケープタウンで開催されるサミットでは、オリジナル5カ国の外相が新メンバーの加盟方法について議論を開始する予定である。

 BRICSは、現状では、すでにG7よりも世界経済との実際的な重要性を持っている。IMFの最新の数字では、G7の29.9%に対し、既存のBRICS5カ国は32.1%の世界成長率に貢献するとされている。

 イラン、サウジアラビア、UAE、トルコ、インドネシア、メキシコが新メンバーになる可能性があり、グローバルサウスの主要参加国が、欧米の覇権を打ち砕くことができる多国間機関の重要性に注目し始めていることは明らかである。

 ロシアのプーチン大統領とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MbS)は、OPECプラスにおけるリヤドとの協力関係がBRICSプラスに転化し、完全に連携している。それは、ロシアとイランの戦略的協力関係が深まるのと並行している。

 MbSは、サウジアラビアをユーラシアの新しい3大国であるロシア・イラン・中国(RIC)へと意図的に誘導し、米国から遠ざけているのである。西アジアにおける新しいゲームは、イランとサウジアラビアを中心とするBRIICSS*であり、その歴史的和解は、BRICSのもう一人の重鎮である中国によって仲介された。
*BRIICSSは、BRICS諸国にイランとサウジアラビアを加えた略称。

 重要なことは、イランとサウジアラビアの和解が進展することで、湾岸協力会議(GCC)全体と、ロシア・中国の戦略的協力との関係がより緊密になることである。

 このことは、ロシア-イラン-インドを結ぶ国際南北輸送回廊(INSTC)と、北京の野心的で数兆ドル規模の「一帯一路構想(BRI)」の主要な柱である中国-中央アジア-西アジア経済回廊が、貿易接続と決済システムという点で補完的な役割を果たすことを意味するものだろう。

 現在、ブラジルだけが、ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領が米国人と奇矯な外交政策にとらわれて、BRICSから二番手にされる危険性をはらんでいる。


BRIICSSの彼方に

 コロナに連なる供給網の混乱と、欧米の集団的な対ロシア制裁の累積的影響によって、脱ドル化列車は急速度に推進されたのである。

 本質的なポイントはこうだ。BRICSは商品を持ち、G7は金融を支配している。G7は商品を育てることはできないが、BRICSは通貨を作ることができ、特に金、石油、鉱物、その他の天然資源のような有形資産に価値が連動する場合はそうである。

 恐らく鍵となる変動要因は、石油や金の価格決定が既にロシア、中国、西アジアに移っていることである。

 その結果、ドル建て債券の需要はゆっくりと、しかし確実に崩壊しつつある。何兆ドルもの米ドルが、必然的に本国に戻っていて、ドルの購買力やその交換レートを損なっている。

 兵器化された通貨の崩壊は、800以上の軍事基地とその運用予算という米国の世界的なネットワークの背後にある威力をすべて粉砕することになる。

 3月中旬、モスクワで開催された独立国家共同体(CSI)経済フォーラム(ソ連崩壊後に結成されたユーラシアの主要な政府間組織の一つ)では、CSI、ユーラシア経済連合(EAEU)、上海協力機構(SCO)、BRICSの間でさらなる統合について活発に議論されている。

 国際法を踏みにじる西側主導の現行システムに対する反撃をユーラシア組織が調整することは、今週初めの国連でのロシアのセルゲイ・ラブロフ外相の演説の主要テーマの一つであったことは、偶然ではない。また、2001年6月にロシアと中央アジアの3つの「スタン」であるCISの4つの加盟国が、中国とともにSCOを設立したのも偶然ではないだろう。

 ダボス会議/グレート・リセットというグローバリストの楽団は、現実的には、ロシアによるウクライナでの特別軍事作戦(SMO)の開始直後に石油に対する戦争を宣言した。彼らはOPEC+ に対して、ロシアを孤立させよ、さもなくば、屈辱的なまでに失敗するだろうと脅した。しかし、モスクワとリヤドによって実質的に運営されているOPEC+ が、今や世界の石油市場を支配している。

 欧米のエリートはパニックに陥っている。特に、ルーラが習近平と中国を訪問した際に、国際貿易において米ドルを自国通貨に置き換えるよう、グローバルサウス全体に呼びかけた爆弾発言をしたからだ。

 欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は最近、ニューヨークを拠点とする外交問題評議会(米国の体制基盤の中心)で、「米・中国間の地政学的緊張はインフレ率を5%引き上げ、ドルやユーロの優位性を脅かす可能性がある」と述べた。

 西側の主流メディアでは、BRICSの経済圏がロシアと普通に取引していると、「世界の他の地域に新たな問題を引き起こす」という一枚岩の報道がなされている。それは全くナンセンスだ。ドルやユーロに問題が生じるだけだ。

 西側諸国は、2024年にバイデン-ハリス組が再出馬するという驚くべき発表と時を同じくして、絶望の淵に立たされている。つまり、米政権のネオコン操縦者は、2025年までにロシアと中国の両方に対して産業戦争を仕掛けるという計画をさらに強化することになる。


ペトロ人民元がやってくる

 そして、脱ドル化、そして世界の覇権を握る基軸通貨に代わるものは何かという話に戻ってくる。現在、GCC(湾岸協力理事会)は世界の石油輸出の25%以上を占めている(サウジアラビアは17%である)。中国の石油輸入の25%以上はリヤドからである。そして、中国は予想通り、GCCにとって最大の貿易相手国である。

 上海石油天然ガス取引所は、2018年3月に営業を開始した。どこの国のどんな石油生産者でも、今日から人民元で上海で売ることができる。つまり、石油市場の力関係は、すでに米ドルから人民元へと移行しつつあるのだ。

 しかし、問題点は、ほとんどの石油生産者が、人民元を大量に蓄えておくことを好まないことである。結局、みんなペトロダラーにまだ慣れている。北京は、上海の原油先物取引と人民元と金の交換を連動させることが鍵になる。しかも、中国の膨大な金準備に手をつけることなく。

 この簡単な実行過程は、上海と香港に設置された金取引所を通じて行われる。そしてそれは、偶然ではなく、EAEU(ユーラシア経済連合)で議論されているドルを回避する新しい通貨の中心に位置している。

 脱ドル化は既に構造的に始まっている。上海エネルギー取引所の人民元建て原油先物予約をフル活用するのだ。それが、ペトロダラーの終焉に向けた望ましい道である。

 米国が力によって世界を支配する計画は、基本的に世界の通貨を牛耳ることに基づいている。経済的な支配は、国防総省の「全領域支配」方針の根幹をなすものである。しかし現在、ロシアは極超音速ミサイルで到達不可能な前進を続け、ロシア、中国、イランは空母破壊能力のあるミサイルを配備できるようになり、米国の軍事的計画さえ混乱している。

 新自由主義、制裁的認知症、広範な脅威という有害なカクテル混合物にしがみつく覇権国は、内部から出血している。脱ドル化は、システム崩壊に対する必然的な対応である。孫子2.0*の環境では、ロシアと中国の戦略的友好関係は、敵が自らを打ち負かすのに精一杯で、その邪魔をする気がないのは不思議ではない。
* 孫子の兵法バージョン2.0。21世紀の兵法のこと。
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