ノルド・ストリームにおける環境的大惨事
<記事原文 寺島先生推薦>
Environmental Сatastrophe at Nord Stream
出典:INTERNATIONALIST 360°
2023年3月8日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年4月6日

バルト海のネズミイルカ
ヨーロッパの科学者によると、海底ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の損壊は、バルト海の生態系を破壊することにつながったという。この破壊工作の結果はさまざまだが、自然への累積ダメージは甚大である。
パイプラインの爆発がもたらした直接的な影響は、海洋動物の死であった。リサーチ・スクエアの調査によると、爆発は海洋環境に「連鎖反応」を引き起こし、タラやネズミイルカを含む特定の魚種や海洋動物の絶滅につながる可能性があるという。
ネズミイルカは、北半球の海域に広く生息する小型のクジラ類で、その数はおよそ70万頭だ。しかし、バルト海にいるその個体群は、遺伝子的にも外見的にも、他の代表種とは異なっている。その数は500頭強で、実は絶滅の危機に瀕している。
ネズミイルカは通常、5月と10月にスウェーデン領海のゴバーグズ(Goburgs)と、ミドスジェバンケン(Midsjöbanken)の周辺に集まってくる。これらは爆発地点から約40km東に位置する。この爆発により、半径4km以内の動物が死亡し、50km離れた動物が聴覚障害を負った可能性がある。科学者たちは、バルト海の亜種の動物が1匹でも死んだり怪我をしたりすると、その小さな集団全体に大きな影響を与えることを強調する。
デンマーク自然保護協会のマリア・ジェルディング(Maria Gjerding)会長は、この状況がバルト海の運命に深刻な懸念をもたらすと指摘した。報告書によると、爆発によって海水の状態が悪化した。この海域は、すでに非常に深刻で危機的な状態になっているのだ。
WWF(世界自然保護基金)のボー・オクスネビャーグ(Bo Øksnebjerg)デンマーク事務局長もこの考えに同意している。彼は、被害は水中に入り込んだ有害物質によって引き起こされたとも考えている。爆発とそれに伴う噴流によって、有毒物質を含む25万トン以上の汚染された海底がかき回された。ボーンホルム空洞の周辺にいる魚の内分泌系に有害物質が影響したため、タラはかなりの被害を受けたと考えられる。
有害物質の中には、船体や技術構造物(杭、柱など)の汚れを防ぐための塗料の成分として使われているトリブチル錫(TBT)がある。これも爆発でかき回された海底に長く蓄積されてきた。報告書の作成チームを率いたオーフス大学環境科学部のハンス・サンダーソン上級研究員によれば、TBTは海洋動物の繁殖能力を破壊する。
つまり、今、バルト海の海洋環境は、まさに生き残るために必死になっているのだ。
デンマークの社会民主党のマグナス・ホイニッケ環境相は、「一見、影響は局所的なものに見えるが、バルト海はすでに深刻な状況にあり、そのため、我々はもちろん、その影響を強く懸念している」と述べている。デンマーク政府は継続的に監視し、バルト海周辺の近隣諸国と情報を共有することで、影響の全体像を把握し、適切な対応ができるようにすると述べている。しかし、ドイツ、デンマーク、そしてスウェーデンの3カ国は、まだ爆発事故の調査を終えておらず、一般市民や他の国には一切情報を提供していない。したがって、バルト海の生物多様性保全の問題は未解決のままである。
以前は、ガスパイプラインの爆発が環境に与える影響について、メディアは主に水中や大気中への天然ガスの排出について書いていたことに留意する必要がある。特に水中では、その規模を評価するのは容易なことではない。
排他的経済水域で破壊工作が行われたデンマーク、スウェーデン、そしてドイツは、流出の規模について異なるデータを発表した。しかし、いずれも大気中への排出を強調している。
メタンの気候への影響を調べるには、二酸化炭素(CO2)換算するのが一般的だ。地球温暖化係数は、100年または20年の観点で計算さ れる。前者の場合、メタンの「温暖化」効果はCO2の28倍、後者の場合、84倍となる。
ドイツ連邦環境庁(UBA)は、バルト海の海底に敷設されたパイプラインの爆発により、100年間で750万トンのCO2に相当する30万トンのメタンが放出されたと推定した。これは、同庁の報告書によると、ドイツの年間排出量のおよそ1%に相当する。
デンマーク・エネルギー庁の数字は少し違う。4つの流出のうち2つは、デンマークのボーンホルム島付近だった。デンマークでは7億7800万立方メートルの天然ガスが計測され、これは1460万トンのCO2に相当し、2020年に同国が排出する全温室効果ガスの32パーセントに相当する。
スウェーデンは、大気中の二酸化炭素よりもメタンの方が早く減衰するため、20年という予測期間をより正確だと考えている。「この漏洩は、20年間で4000万トンの二酸化炭素に相当する。これは、昨年のスウェーデンの総排出量4,800万トンに匹敵する」とスウェーデン・テレビ・ニュース(Svt Nyheter)はスウェーデン環境保護庁の環境経済学者を引用して書いている。
ノルド・ストリームの破壊に関連して、もう一つ憂慮すべき事実がある。第二次世界大戦後、ドイツの非武装化に関するポツダム会議の決定により、ドイツの化学兵器はバルト海の底に埋められた。そのうちのかなりの部分が、ちょうど爆発が起こった近くのボーンホルム島の地域にある。3万2千トンの軍需品と1万1千トンの化学薬品が投棄されたのだ。70パーセントがマスタードガス、20パーセントがヒ素を含む物質である。今のところ、これらの危険な埋蔵地に重大な事態は起きていないが、科学者によると、海底が不安定になれば、深刻な事態につながる可能性があるという。
Environmental Сatastrophe at Nord Stream
出典:INTERNATIONALIST 360°
2023年3月8日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年4月6日

バルト海のネズミイルカ
ヨーロッパの科学者によると、海底ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の損壊は、バルト海の生態系を破壊することにつながったという。この破壊工作の結果はさまざまだが、自然への累積ダメージは甚大である。
パイプラインの爆発がもたらした直接的な影響は、海洋動物の死であった。リサーチ・スクエアの調査によると、爆発は海洋環境に「連鎖反応」を引き起こし、タラやネズミイルカを含む特定の魚種や海洋動物の絶滅につながる可能性があるという。
ネズミイルカは、北半球の海域に広く生息する小型のクジラ類で、その数はおよそ70万頭だ。しかし、バルト海にいるその個体群は、遺伝子的にも外見的にも、他の代表種とは異なっている。その数は500頭強で、実は絶滅の危機に瀕している。
ネズミイルカは通常、5月と10月にスウェーデン領海のゴバーグズ(Goburgs)と、ミドスジェバンケン(Midsjöbanken)の周辺に集まってくる。これらは爆発地点から約40km東に位置する。この爆発により、半径4km以内の動物が死亡し、50km離れた動物が聴覚障害を負った可能性がある。科学者たちは、バルト海の亜種の動物が1匹でも死んだり怪我をしたりすると、その小さな集団全体に大きな影響を与えることを強調する。
デンマーク自然保護協会のマリア・ジェルディング(Maria Gjerding)会長は、この状況がバルト海の運命に深刻な懸念をもたらすと指摘した。報告書によると、爆発によって海水の状態が悪化した。この海域は、すでに非常に深刻で危機的な状態になっているのだ。
WWF(世界自然保護基金)のボー・オクスネビャーグ(Bo Øksnebjerg)デンマーク事務局長もこの考えに同意している。彼は、被害は水中に入り込んだ有害物質によって引き起こされたとも考えている。爆発とそれに伴う噴流によって、有毒物質を含む25万トン以上の汚染された海底がかき回された。ボーンホルム空洞の周辺にいる魚の内分泌系に有害物質が影響したため、タラはかなりの被害を受けたと考えられる。
有害物質の中には、船体や技術構造物(杭、柱など)の汚れを防ぐための塗料の成分として使われているトリブチル錫(TBT)がある。これも爆発でかき回された海底に長く蓄積されてきた。報告書の作成チームを率いたオーフス大学環境科学部のハンス・サンダーソン上級研究員によれば、TBTは海洋動物の繁殖能力を破壊する。
つまり、今、バルト海の海洋環境は、まさに生き残るために必死になっているのだ。
デンマークの社会民主党のマグナス・ホイニッケ環境相は、「一見、影響は局所的なものに見えるが、バルト海はすでに深刻な状況にあり、そのため、我々はもちろん、その影響を強く懸念している」と述べている。デンマーク政府は継続的に監視し、バルト海周辺の近隣諸国と情報を共有することで、影響の全体像を把握し、適切な対応ができるようにすると述べている。しかし、ドイツ、デンマーク、そしてスウェーデンの3カ国は、まだ爆発事故の調査を終えておらず、一般市民や他の国には一切情報を提供していない。したがって、バルト海の生物多様性保全の問題は未解決のままである。
以前は、ガスパイプラインの爆発が環境に与える影響について、メディアは主に水中や大気中への天然ガスの排出について書いていたことに留意する必要がある。特に水中では、その規模を評価するのは容易なことではない。
排他的経済水域で破壊工作が行われたデンマーク、スウェーデン、そしてドイツは、流出の規模について異なるデータを発表した。しかし、いずれも大気中への排出を強調している。
メタンの気候への影響を調べるには、二酸化炭素(CO2)換算するのが一般的だ。地球温暖化係数は、100年または20年の観点で計算さ れる。前者の場合、メタンの「温暖化」効果はCO2の28倍、後者の場合、84倍となる。
ドイツ連邦環境庁(UBA)は、バルト海の海底に敷設されたパイプラインの爆発により、100年間で750万トンのCO2に相当する30万トンのメタンが放出されたと推定した。これは、同庁の報告書によると、ドイツの年間排出量のおよそ1%に相当する。
デンマーク・エネルギー庁の数字は少し違う。4つの流出のうち2つは、デンマークのボーンホルム島付近だった。デンマークでは7億7800万立方メートルの天然ガスが計測され、これは1460万トンのCO2に相当し、2020年に同国が排出する全温室効果ガスの32パーセントに相当する。
スウェーデンは、大気中の二酸化炭素よりもメタンの方が早く減衰するため、20年という予測期間をより正確だと考えている。「この漏洩は、20年間で4000万トンの二酸化炭素に相当する。これは、昨年のスウェーデンの総排出量4,800万トンに匹敵する」とスウェーデン・テレビ・ニュース(Svt Nyheter)はスウェーデン環境保護庁の環境経済学者を引用して書いている。
ノルド・ストリームの破壊に関連して、もう一つ憂慮すべき事実がある。第二次世界大戦後、ドイツの非武装化に関するポツダム会議の決定により、ドイツの化学兵器はバルト海の底に埋められた。そのうちのかなりの部分が、ちょうど爆発が起こった近くのボーンホルム島の地域にある。3万2千トンの軍需品と1万1千トンの化学薬品が投棄されたのだ。70パーセントがマスタードガス、20パーセントがヒ素を含む物質である。今のところ、これらの危険な埋蔵地に重大な事態は起きていないが、科学者によると、海底が不安定になれば、深刻な事態につながる可能性があるという。
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