AUKUS(オーカス)の原子力潜水艦協定は帝国による対中戦争の一環
<記事原文 寺島先生推薦>
The AUKUS nuclear submarine deal is part of an imperialist crusade against China
Beijing is right to condemn the pact as spurring an arms race and undermining Asia-Pacific stability.
「この協定は軍拡競争を招き、アジア太平洋地域の安定を損なう」という中国側の非難は至極もっとも。
筆者:Timur Fomenko(ティムール・フォメンコ) *政治分析家
出典:RT
2023年3月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年4月3日

© Global Look Press/Keystone Press Agency
今週はじめ、豪・米・英の指導者による3カ国首脳会談がサンディアゴで開かれ、AUKUSの協定に関する具体的な話合いが持たれた。それは豪州当局に原子力潜水艦を供給するということについてであり、その意図はインド洋と太平洋において中国を封じ込めることにある。
さらにこの協定により、英・米の原子力潜水艦による豪州西部のパースの近くの周航が2027年から認められた。その目的は、米英の原子力潜水艦隊を統合し、豪州は自力で「必要な軍事行動が取れる能力」を打ち立てることにある。
この協定の発表が、コモンウェルス・デーに行われたのはただの偶然ではない。この日は、大英帝国のかつての覇権を祝う例祭の日だ。その同じ日に、英国政府は「総括的方針」を発表し、防衛費の増額を誓約した。その際リシ・スナク首相は、中国を「重要な脅威である」とし、いっぽう英国やAUKUS同盟は、開かれた自由なインド・太平洋地域を維持するために力を注ぐ善意の勢力であるとしていた。中国側の反応は、この3カ国首脳会談を厳しく非難するものであり、この首脳会談は、「典型的な冷戦時代期の考え方」であり、「軍拡競争に拍車をかけ、世界の核不拡散協定を覆し、この地域の平和と安定を損なうことにしかならない」とした。

関連記事:AUKUSの原子力潜水艦協定の詳細
AUKUSの原子力潜水艦協定の中国による解釈は正しい。バイデン政権は、積極的に同盟体制を拡大し、中国を軍事的に封じ込めようとしている。AUKUS同盟とともに、バイデン政権は、韓国・日本との3カ国協力体制を推し進めており、韓国のユン・ソクヨル大統領は、フィリピンへの軍の駐留や、Quad(米・印・豪・日)などの他の地域同盟に参加することに前向きな姿勢を示している。ただし、AUKUSが独特なのは、この同盟の加盟国は、英語圏の国だけであるという点だ。すなわち、英語圏の例外主義という新帝国主義の風情を具現化する同盟なのだ。
英国がますます反中政策を強める決意を示している背景には、無論米国の影響を受けていることや、中国が英国にとって最大の利益を得る障害になっていることがある。しかし、英国の外交政策の言い分には、特にブレグジットの観点から言えることだが、帝国主義への懐古が纏(まと)われている。つまり、大英帝国時代を振り返って、「善を促進する力」を有していた時代だとする考え方だ。奴隷制度や搾取や他国に対する侵略行為などの記憶はなかったことにしようという触れ込みなのだ。英国を「慈善国家」であるととらえ、「世界の規律」を取りしきる、「世界の警察」の役目を果たした国だったと見ているのだ。当時の英国は他に比類なき海軍力により、 侵略者たちを撃退し、自国の善き意思を遂行しようとしていた、というのだ。
歴史についてのひとつかふたつの真実をご存知の方であれば誰でもお気づきになるだろうが、こんな考え方は理想主義であり、歴史修正主義によるものだ。さらに中国が酷い侵略に曝(さら)されていたのは、英国が中国を強制的に開国させ、中国の諸港を占拠し、香港という地域を占領することを求める中でのことであった、ということもご存知のはずだ。そのため中国は当時のことを「屈辱の世紀」であるとしている。大英帝国はもはや存在しないとはいえ、英国の指導者層は未だに過去に生きていて、英国の帝国主義の遺産は、米国や、大英帝国が生み出した国々(例えば豪州)の覇権主義の中に生きながらえている。これら大英帝国の末裔が、「バトンを繋ぎ」続けていており、今の彼らの掛け声は、「規則に基づく秩序」だ。その結果、中国に対する軍事拡張主義を維持していることを、道義的観念的に正しいことであると主張しているのだ。

関連記事:中国は米国が「最大の核脅威」であると主張
実際、AUKUSはアジア・太平洋地域を不安定化させる要因となっており、軍拡競争や緊張の高まりを引き起こす原因となっている。インドネシアのような中立的立場にある国々については、西側が同盟に引き込みたがっているのだが、これらの国々はAUKUSを警戒している。その理由は、AUKUSにより、この地域の戦略的抑制が危うくなるからだ。さらに、戦争を回避したいと主張しているAUKUSが、実のところは戦争を奨励していることもある。学者であるアダム・ニー氏が上手く言い当てているとおり、「最高額の保険金を払っているのに、車の衝突事故が起こる可能性を高めようとしているようなもの」だ。中国は、AUKUSへの対応策として、防衛費や軍の駐留を拡大し、ロシアなどの国々との同盟関係を強化せざるを得なくなっている。このような状況は米国にとって思う壷であり、悪循環を生みだし、戦争が起きる可能性を高めることになる。
AUKUSは、脱帝国主義後の新しい戦いの象徴であり、アジアの平和を終焉させ、この地域を戦場と化してしまおうというバイデン政権による多面的な戦略の一環である。 この動きは、太平洋地域にNATOのような同盟体制を生み出そうとするものであり、この先この動きは拡大する可能性がある。このような動きは平和を導くものではなく、戦争や不安定化に繋がるものだ。そしてその標的は明らかに中国だ。このAUKUS同盟に漂う香りは、大英帝国への帰属意識であり、基底概念であり、懐古主義だ。そこには、この地域や歴史やここに住む人々への敬意は感じられない。平和を愛する国々から拒絶されても仕方のないような同盟だ。この同盟から 何か実態のある結果が出るのは数年後のことになりそうだが、緊張や政治感情は、直ぐにしかも唐突に高まりそうだ。
The AUKUS nuclear submarine deal is part of an imperialist crusade against China
Beijing is right to condemn the pact as spurring an arms race and undermining Asia-Pacific stability.
「この協定は軍拡競争を招き、アジア太平洋地域の安定を損なう」という中国側の非難は至極もっとも。
筆者:Timur Fomenko(ティムール・フォメンコ) *政治分析家
出典:RT
2023年3月17日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年4月3日

© Global Look Press/Keystone Press Agency
今週はじめ、豪・米・英の指導者による3カ国首脳会談がサンディアゴで開かれ、AUKUSの協定に関する具体的な話合いが持たれた。それは豪州当局に原子力潜水艦を供給するということについてであり、その意図はインド洋と太平洋において中国を封じ込めることにある。
さらにこの協定により、英・米の原子力潜水艦による豪州西部のパースの近くの周航が2027年から認められた。その目的は、米英の原子力潜水艦隊を統合し、豪州は自力で「必要な軍事行動が取れる能力」を打ち立てることにある。
この協定の発表が、コモンウェルス・デーに行われたのはただの偶然ではない。この日は、大英帝国のかつての覇権を祝う例祭の日だ。その同じ日に、英国政府は「総括的方針」を発表し、防衛費の増額を誓約した。その際リシ・スナク首相は、中国を「重要な脅威である」とし、いっぽう英国やAUKUS同盟は、開かれた自由なインド・太平洋地域を維持するために力を注ぐ善意の勢力であるとしていた。中国側の反応は、この3カ国首脳会談を厳しく非難するものであり、この首脳会談は、「典型的な冷戦時代期の考え方」であり、「軍拡競争に拍車をかけ、世界の核不拡散協定を覆し、この地域の平和と安定を損なうことにしかならない」とした。

関連記事:AUKUSの原子力潜水艦協定の詳細
AUKUSの原子力潜水艦協定の中国による解釈は正しい。バイデン政権は、積極的に同盟体制を拡大し、中国を軍事的に封じ込めようとしている。AUKUS同盟とともに、バイデン政権は、韓国・日本との3カ国協力体制を推し進めており、韓国のユン・ソクヨル大統領は、フィリピンへの軍の駐留や、Quad(米・印・豪・日)などの他の地域同盟に参加することに前向きな姿勢を示している。ただし、AUKUSが独特なのは、この同盟の加盟国は、英語圏の国だけであるという点だ。すなわち、英語圏の例外主義という新帝国主義の風情を具現化する同盟なのだ。
英国がますます反中政策を強める決意を示している背景には、無論米国の影響を受けていることや、中国が英国にとって最大の利益を得る障害になっていることがある。しかし、英国の外交政策の言い分には、特にブレグジットの観点から言えることだが、帝国主義への懐古が纏(まと)われている。つまり、大英帝国時代を振り返って、「善を促進する力」を有していた時代だとする考え方だ。奴隷制度や搾取や他国に対する侵略行為などの記憶はなかったことにしようという触れ込みなのだ。英国を「慈善国家」であるととらえ、「世界の規律」を取りしきる、「世界の警察」の役目を果たした国だったと見ているのだ。当時の英国は他に比類なき海軍力により、 侵略者たちを撃退し、自国の善き意思を遂行しようとしていた、というのだ。
歴史についてのひとつかふたつの真実をご存知の方であれば誰でもお気づきになるだろうが、こんな考え方は理想主義であり、歴史修正主義によるものだ。さらに中国が酷い侵略に曝(さら)されていたのは、英国が中国を強制的に開国させ、中国の諸港を占拠し、香港という地域を占領することを求める中でのことであった、ということもご存知のはずだ。そのため中国は当時のことを「屈辱の世紀」であるとしている。大英帝国はもはや存在しないとはいえ、英国の指導者層は未だに過去に生きていて、英国の帝国主義の遺産は、米国や、大英帝国が生み出した国々(例えば豪州)の覇権主義の中に生きながらえている。これら大英帝国の末裔が、「バトンを繋ぎ」続けていており、今の彼らの掛け声は、「規則に基づく秩序」だ。その結果、中国に対する軍事拡張主義を維持していることを、道義的観念的に正しいことであると主張しているのだ。

関連記事:中国は米国が「最大の核脅威」であると主張
実際、AUKUSはアジア・太平洋地域を不安定化させる要因となっており、軍拡競争や緊張の高まりを引き起こす原因となっている。インドネシアのような中立的立場にある国々については、西側が同盟に引き込みたがっているのだが、これらの国々はAUKUSを警戒している。その理由は、AUKUSにより、この地域の戦略的抑制が危うくなるからだ。さらに、戦争を回避したいと主張しているAUKUSが、実のところは戦争を奨励していることもある。学者であるアダム・ニー氏が上手く言い当てているとおり、「最高額の保険金を払っているのに、車の衝突事故が起こる可能性を高めようとしているようなもの」だ。中国は、AUKUSへの対応策として、防衛費や軍の駐留を拡大し、ロシアなどの国々との同盟関係を強化せざるを得なくなっている。このような状況は米国にとって思う壷であり、悪循環を生みだし、戦争が起きる可能性を高めることになる。
AUKUSは、脱帝国主義後の新しい戦いの象徴であり、アジアの平和を終焉させ、この地域を戦場と化してしまおうというバイデン政権による多面的な戦略の一環である。 この動きは、太平洋地域にNATOのような同盟体制を生み出そうとするものであり、この先この動きは拡大する可能性がある。このような動きは平和を導くものではなく、戦争や不安定化に繋がるものだ。そしてその標的は明らかに中国だ。このAUKUS同盟に漂う香りは、大英帝国への帰属意識であり、基底概念であり、懐古主義だ。そこには、この地域や歴史やここに住む人々への敬意は感じられない。平和を愛する国々から拒絶されても仕方のないような同盟だ。この同盟から 何か実態のある結果が出るのは数年後のことになりそうだが、緊張や政治感情は、直ぐにしかも唐突に高まりそうだ。
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