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米国のMQ-9ドローンを攻撃目標にするのは合法だった。

<記事原文 寺島先生推薦>

The US MQ-9 Drone Was a Legitimate Target

筆者:スコット・リッター(Scott Ritter)

出典:INTERNATIONALIST 360°

2023年3月17日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2023年4月2日


MQ-9 リーパー無人航空機


MQ-9ドローン事件:バイデンによる危険な戦闘行為拡大

 米国の偵察機ドローンが、ロシアの戦闘機と遭遇してクリミア沖に墜落した。この事件から、ウクライナ戦争の現状と、ロシアとアメリカの今後について何が言えるだろうか。

 2015年、米国はウクライナ西部のヤボリブに、対ロシア戦闘のためのウクライナ兵を訓練することを明確な目的とした常設訓練施設を設立した。

 当時、ウクライナの紛争は、ウクライナ軍と、米国の支援を受けたクーデターに反発したロシア系民族のウクライナ人とが対立する内戦だった。このクーデターは2014年2月、憲法で選ばれたヤヌコビッチ大統領政権を親米政権に置き換えたのだ。

 米国が選んだこのウクライナ新政府は、ステパン・バンデラや、第二次世界大戦中にナチス・ドイツと戦い、その組織員が数十万人の市民を殺害したウクライナ民族主義組織(OUN)の思想につながる過激な超民族主義が、根本まで吹き込まれていた。

 米軍によって訓練されるウクライナ人の多くはネオナチの「アゾフ大隊」に所属していた。この組織は、当時の米国議会の多くの議員が非常に嫌悪感を抱いていたため、「アゾフ大隊」の隊員の訓練に米国の税金を使うことを禁止する国防権限法の修正案が可決された。

 こうした議会の制約を別にしても、米国のウクライナでの訓練任務の目的が、ウクライナ軍がロシアと戦争するための準備であったことに疑いの余地はないだろう。米国の訓練は、ウクライナ軍に近代的な複合兵器による機動戦を指導するだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)の軍隊の訓練に用いられるのと同じ水準にウクライナ軍を引き上げようとするものだ。これはウクライナとその権利を奪われたロシア民族(ロシアも入る)の間の将来の紛争が、2地域の隣国同士の単なる対立ではなく、ロシアと米国およびNATO、いわゆる「西側集団」の間の大きな戦争になり、ウクライナを代理として使うことになる最初の兆候となっていた。

 この現実は、米国とNATOによる先進的な対戦車ミサイルシステムなどの殺傷力の高い軍事支援によって、さらに増幅された。

 ロシアが特別軍事作戦を開始する以前から、2022年2月、米国、英国、そしてNATOは、最高段階でのウクライナ軍との情報共有作戦を開始した。ロシア軍が国境を越えて移動すると、この情報関係の性質は、差し迫った攻撃の兆候や警告の提供から、ロシア軍の配置、能力、意図に関する作戦・戦術情報の提供へと変化し、ウクライナがロシア軍を標的とするために利用された。

 米国とそのNATO同盟国は、このような情報の性質やその情報源について当然ながら口を閉ざしているが、時間の経過とともに、あらゆる情報収集手段が、特別軍事作戦を支援するロシアの軍事行動に関する関連データを収集するために使用されていることが明らかになっている。

 また、これらの情報は、米軍/NATO軍/ウクライナ軍で構成される統合作戦計画室で即時に目標を策定し、ウクライナ軍に伝達されていることもはっきりしている。

 ウクライナを支援するために米国が採用した、より広範囲に及ぶ情報資源の1つがMQ-9リーパーである。MQ-9は、空軍が運用する大型の無人航空機(UAV)である。MQ-9と衛星回線で結ばれた地上管制局から、2人1組のチームで遠隔操作する。このチームには、機体の操縦を担当する有資格のパイロットと、MQ-9が搭載するセンサーや武器の操作を担当する下士官の隊員がいる。

 MQ-9は翼幅66フィート、長さ36フィート、高さ12フィート、重量約4,900ポンドとなっている。高度50,000フィートまで飛行可能で、航続距離は約1,400マイルだ。さまざまな武器や情報収集ポッドを搭載することができる。MQ-9の価格は1機あたり約3200万ドル。黒海上空を飛行するMQ-9リーパーは、カンピア・トゥルジイのルーマニア空軍基地から、米空軍の第31遠征作戦群第1分隊の隊員によって操縦される。

 2023年3月14日、カンピア・トゥルジイを拠点とするMQ-9リーパーが、クリミア西方の黒海上空で国際空域を飛行していた。これはMQ-9リーパーの標準的な飛行形態であり、ロシアの機密軍事施設に近いことから、ロシア側が懸念していたものである。

 ウクライナは、クリミアのロシア軍に対して空中・水中ドローンを使った作戦を展開した経緯があり、MQ-9リーパーが収集した情報がこうした攻撃の支援に使われる可能性は非常に高かった。そのため、ロシア軍はクリミア沿岸の特定地域を立ち入り禁止と宣言していた。

 しかし、米国は、クリミアや、2022年9月の住民投票によって連邦に加わったへルソン、ザポリージェ、ドネツク、そしてルガンスクの4つの新領土に対するロシアの主張を認めず、そのため、ロシアによるウクライナへの軍事作戦を支援する飛行禁止区域の設定に関する主張も認めないとしている。MQ-9リーパーの飛行を決定したのは、ロシアが反対すること、あるいはそれ以上のことを承知で行われた。

 実際、ロシアはMQ-9リーパーを迎撃するためにSu-27戦闘機の2機を派遣した。Su-27はリーパーに19回接近した後、MQ-9リーパーを退去させるか、あるいは墜落させるために、攻撃的としか思えない操縦を行った。ひとつの注目すべき出来事(1機または複数のSu-27がリーパーに燃料を投棄した、あるいはそうでないかもしれない)の後、MQ-9は制止できなくなり、クリミア沿岸の国際水域に墜落した。

 クリミアから派遣されたロシア軍は、機体の左翼下に搭載されていた極秘情報収集ポッド(壷状の容器)を含む残骸を、すべてではないにせよ、ほとんど回収したと考えられている。もしこれが事実なら、米国の重要な情報収集能力が損なわれ、ロシアは墜落したMQ-9リーパーに搭載されていたようなセンサーから自らを守ることができるようになったことになる。

 米国国務省は、米国が国際空域での飛行を継続すると宣言したが、在欧米軍司令官クリストファー・カボリ将軍は、事件の検証および最善の方法の決定まで、すべてのMQ-9リーパーの飛行を停止するよう命じた。

 米国がMQ-9リーパーを使用してウクライナ軍を直接支援していることから、同機は紛争に直接参加しており、ロシアにとって合法的に攻撃できる標的である。ロシアがMQ-9を撃墜せず、むしろ米軍機が離脱して紛争空域から離れる機会を何度も提供したのは、紛争の不必要な激化、特に米軍とロシア軍が直接戦闘を行う可能性を避けたいというロシアの意思を示すものである。

 米国が考えられる選択肢の1つは、米国の戦闘機を護衛につけてMQ-9を飛行させることである。しかし、これにはロシアが対抗し、双方に死傷者が出るような空中戦が発生する可能性があり、戦争が激化する可能性がある。結局、米国はMQ-9リーパーを、ロシアが宣言した飛行禁止区域に近づきつつも違反しない行程で飛行させることを目指すと思われ、その後、クリミア沿岸でのMQ-9リーパーの飛行は中止されると考えられる。

 MQ-9リーパーが収集する情報は、米軍の軍事資産を危険にさらすことなく、米露間の軍事的な激化の可能性を与えない他の方法がある 。

 このような決定は、ロシアを対象とした情報収集に関して、米国がこれまでとってきた対決姿勢とは大きく異なるものである。しかし、ウクライナの軍事情勢が悪化し、ウクライナ軍がバフムートでの決定的な敗北に直面し、一般的に、MQ-9機墜落のような任務を遂行する決断に伴う危険性と利益の分析は変化している。ウクライナ軍の勝利の可能性がほとんど見えない中、米国はウクライナ紛争への関与を拡大させるのではなく、縮小させる方法を模索することになるであろう。

 MQ9リーパー事件がこの種の事件について、上からの見直しになるのかどうか。例えば、バイデン政権が、中国の気球の「脅威」に対応する米国のやり方、すなわち気球を撃ち落としておいて、他方では、国境にある本物の軍事脅威に対応するロシアの、より抑制されたやり方を非難するという偽善を反省することになるかどうかは、まだわからない。ロシア嫌いが蔓延している現在の政治情勢を考えると、このような180°方向転換する対応はありえないだろう。

 米国がロシアの戦略的敗北を目指す戦時政策を実施している限り、米国側で合理的で論理的な政策立案・実施の可能性はほとんどないというのが現実である。

 米露関係正常化の最短距離は、ロシアがウクライナと西側諸国に対して、可能な限り短期間で決定的な勝利を収めることにある。そうなれば、米国とNATOの同盟国は、そのような結果から生じる新たな現実を踏まえて、ロシアに対する姿勢を見直す必要に迫られるだろう。
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