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「アメリカ経済は再生できるか?」

Can the American Economy Be Resurrected?

2019年8月26日 Paul Craig Roberts

(翻訳:寺島メソッド翻訳グループ: 2019年9月12日)

<記事原文>
http://www.informationclearinghouse.info/52170.htm

「レーニンは,『資本主義者たちは,共産主義者たちに自分自身の首をしめる縄を売るつもりだ』と言った。しかし実際起こったのは,資本主義者たちが中国の労働力を買って、アメリカの資本主義の首をしめたことだ」とマイケル・ハドソンは言った。

トランプが,かつて企業が見捨てたアメリカの労働者達のために,中国から仕事をアメリカにもどすようアメリカ企業に命令したことについて,読者から賞賛の声があがっていることに私はびっくりしている。アメリカの経済学者やメディアやワシントンの政策立案者達は,私の分析に見向きもしなかった。その分析とは,グローバリズムの名の下に,アメリカの仕事や技術を外国にもっていくことが,アメリカの経済力を低下させたという分析だ。読者も私の分析には関心をもっていないと思っていた。多くの読者は経済のことは分からないと言っている。経済についての記事が,私のブログで一番読まれていない。

もう一つ驚いたのは,外国のいくつかのメディアが,はるか遠くのイランのテレビ局までもが,私に連絡を取ってきて,私がホワイトハウスに何か影響を与えたのかと、インタビューを申し込んできたことだ。一体全体これはどういうことなのだろう?

まず,言いたいのは,誰かがトランプに私の最新の記事を見せて,彼のスイッチが入った可能性があるということだ。もう一つの可能性は,トランプが工場をアメリカに戻せと企業に命令したのは,ただの脅しであり,トランプが状況を分かっているからではなくて,今の関税のかけ方がおかしいので,アメリカからいい仕事がなくなって,収入が減ったとトランプが考えたからということだ。

しかし,ホワイトハウスで事が進み,トランプに,どうやって外国に出された本来ならアメリカにあるべき仕事をアメリカに戻すかを示す際に,私はこう言いたい。たぶん何の動きもないのであれば,この先,経済のことを書く未来の歴史家はポール・クレイグ・ロバーツとマイケル・ハドソンだけがアメリカの経済崩壊を立て直す方法が分かっていたと記すだろう、と。

議論を進める前に,簡単に振り返ろう。ソ連が突然,予期せぬ形で崩壊したとき,中国とインドは社会主義をあきらめて,自国の経済を西側資本に開放した。ソ連は,レーガンが冷戦に勝ったから崩壊したのではない,レーガンはそれを否定している。ゴルバチョフはアメリカ人を警戒心なしで信頼し,ソ連帝国を裏切っていると、ソ連共産党の強行論者の指導者達が考えていたからだ。ロシアが他国から領土を奪われるという崩壊をとめるため,共産党の強行論者たちはゴルバチョフを自宅監禁した。まさにこのことが,崩壊の始まりとなり,ワシントンの操り人形であったエリツィン大統領に権力をにぎらせ,アメリカがソ連を崩壊させ,イスラエルと一緒になってロシアの資源の摂取が始まったのだ。

世界で最大の国内人口をもつ,インドと中国が出した結論は,社会主義は崩壊を,資本主義は富を招くということだった。歴史上始めて,世界で国内人口1番と2番の国が,自国でまだ仕事に就いていない労働者たちを外国資本に差し出したのだ。その労働者達は,搾取される,言い換えれば,仕事をまっている労働者がたくさんいたため,働きにに見合わない少ない給料で働かせられるであろうと考えられた。労働者があまっているということは,企業に対して行った労働量よりもずっと安い値段で雇えるということだと。

会社のCEOや取締役は,さらにはウオール街は,利益を増やすいいチャンスだと考えた。中国に始めて入り込んだ会社は落胆した。そして「思ったほどいい話じゃないぞ」と言い出した。しかし,中国は外国から製造業を呼び込むのは儲かる話だと考えて働きかけたので,製造業が群れをなしてアメリカから出て行った。その結果,中流階級が没落し,それとともに,市や州の税基盤も減った。アメリカは繁栄することを止めたが,見せかけのインフレや雇用率やGDPの上昇や連邦準備銀行が大量の紙幣を印刷することで,金融資産や不動産の価格がひきあげられ,経済損失はごまかされてきた。

経済の損失が隠せないくらい厳しくなると,アメリカへの輸出過多が,アメリカの労働者を苦しめていると,中国が非難された。中国を非難する人は,中国からの輸入の中で,アップルのコンピューターやiPhoneやナイキのシューズやリーバイスのジーンズなどがどれだけの割合を占めているかわざわざ見ようとはしなかった。アメリカ企業の外国の工場で作られた製品が,輸入品の多くをしめているのだ。アメリカの企業が外国で製造した物やサービスが、アメリカ国内に持ち込まれて売られるときは,輸入品としてカウントされる。

言い換えれば,中国からの輸入問題は,実は,アメリカの企業が外国で製造した物が,アメリカに戻ってきた海外での製造品のことなのだ。そして,その商品を買うアメリカ人たちは,その商品やサービスの生産活動には携わっていない。つまり,自分たちが商品を買っても何も収入を得られてないということだ。一方,外国工場の株主にはたくさんお金が転がり込むということだ。

どこでも仕事ができて,ネット上で生産物を送ることができるアメリカのITやソフトウエア技術の仕事を引き受けることで,インドは利益を得てきた。インドは教育制度も整っていて,英語が話せる人が多いので,アメリカのテクノロジー産業は,アメリカの大学の卒業生をわざわざ雇わなくても,ワークビザをつかってインド人を簡単にやとうようになった。

その結果,この4半世紀でアメリカの製造業や産業を支えてきた供給プロセスと労働力が取り壊された。かつて好景気時の工場や産業地域は封鎖され,荒廃し,マンションやアパートに姿を変えた。もし,トランプがアメリカ企業を自国に戻せたとしても,どこにおけばいいというのか?

海外に工場を出していた時代は,ただの6ヶ月間の不景気どころではない。技術も経験もある労働者が年を取り,亡くなり,新入社員が技術や労働秩序を学べなくなってもう何年にもなる。中国は,いまや,完全に発達した製造業と産業の経済構造を持っている。今のアメリカはそうではない。

アメリカ企業が工場をアメリカに戻すためには,準発展状態、あるいは発展途上状態にあるアメリカ経済のために,十分発達した中国経済を手放さないといけない。もし,アメリカ企業がこれをすぐにやり遂げないといけないとしたら,中国での生産を失う前に,アメリカの製造力や生産力を再生するのに必要な工場や施設や労働力や供給プロセスや通商システムを作り直さないといけない。雇用統計報告を見れば,アメリカはもう何年も製造業や産業の仕事を作り出せていないことが分かる。

ここ四半世紀,アメリカから働き場所を外国に出してきたことで,アメリカは半世紀前のインドのようになってしまった。それは,国民の仕事のほとんどが,低賃金の召使いの仕事で占められている国だ。生きていくのに必要な給料がもらえる仕事がなくなったので,多くのアメリカの24才から34才にかけての年代の人たちが,自分の稼ぎで生活できなくて親や祖父母の家で暮らしている。さらに,大学の卒業生達が教育ローンを返せずに借金地獄に苦しんでいる。

アメリカの会社を中国からアメリカに戻すためには,トランプは以下のようなことをしないといけない。戻すのは,徐々にでないといけない。アメリカ企業が,アメリカ本国で生産活動ができるのに十分な状態が整って始めて,中国での生産拠点を閉じることができる。発展途上な経済を発展させるのと同じやり方をするのが効果的だ。

トランプ,つまりアメリカ議会は,企業に対して,アメリカ国内の労働者が国内の生産を生み出すシステムを再度作り上げることに関わって,人件費(負債コスト,調整費なども)が増えることに対しては,税金のかけ方を変えることで,利益の埋め合わせをしないといけない。国内の労働者で国内市場を作ろうとする企業への税金は下げる。外国の労働者を使って外国で生産する企業に対しては高い税金を課す。税金のかけ方をかえれば,人件費をどうすれば埋め合わせできるか計算できる。海外で生産したものを海外で売る企業は何も影響を受けない。

もしアメリカの製造業や産業の状態を再建する前に,トランプがアメリカ企業に中国から出て行くように命令したならば,会社は売り上げやもうけがなくなってつぶれてしまう。

トランプがアメリカの会社に中国を出てアメリカに帰れという命令を下せるかどうかが問題だ。トランプの命令が口だけになるかも知れない理由は二つある。一つ目の理由は,会社が安い人件費での今の利益に満足していて,コストの節約をなくすことに興味がないということだ。アメリカのグローバル企業はアメリカの選挙やその企業が拠点を持っているすべての国の選挙に介入できる十分な富を持っている。トランプがグローバル企業に反する行為を行えば,選挙資金がもらえなくなる。逆にそのお金は,対抗馬の候補者に行く

トランプが海外に生産拠点を移すことは,企業のためだけになることであって国民のためにはならないと主張することができる。いわゆる自由市場論者は,自信を持ってこう言った。「海外に製造業をもっていくことで,国内ではもっといい仕事ができるはずだ。さらに,海外で生産すると,人件費が安くすむので価格が安くなる。そうなると,国内の仕事がなくなって給料が減る以上に,元が取れる」と。そんなことはなかった。ナイキのシューズやリーバイスのジーンズやアップルのコンピューターやiPhoneが安くなったことがあったか?企業は自由市場で利益があがるという約束を果たさなかった。いい仕事なんて一つもできていない。トランプは,この議論をして,企業を守勢に追い込むべきだ。

トランプの命令が口先だけになるかもしれない二つ目の理由は,トランプにはアメリカ企業に中国を捨ててアメリカでの労働を戻す命令ができる権限がないと,最高裁から主張されることだ。これが実際に起こったことが一度ある。1952年,トルーマン大統領は,朝鮮戦争の際アメリカの鉄鋼産業を操業停止されるかもしれないストライキを止めるため,鉄鋼産業を国有化した。最高裁はトルーマンの施策を禁じた。しかし,クリントン,ジョージブッシュ,オバマにより,大統領の持つ権限は非常に高くなり,さらに,「テロとの戦い」に対応すべく,議会から行政権を与えられているため,今の大統領は,大統領命令によって,支配できる。

トランプは,中国から撤退させアメリカに戻させる法的よりどころとして,1977年の国際非常時経済権限法を引き合いに出した。それによると,トランプにはいろいろな権限がある。例えば,法廷に証拠を示さなくても,人身保護礼状に反してアメリカ市民を永久に拘束できる。法的に必要な手続きを踏まなくても,疑惑だけでアメリカ市民の処刑を命じることができる。したいことは何でも命令できるのだ。

ジョージ・ブッシュ時代の共和党とオバマ時代の民主党が創り出してきた権力のおかげで,トランプ大統領は,国内の生産を海外に出し,中国と共謀してアメリカの仕事を盗み,アメリカを第3世界ランクの国に引き落としたことを理由にCEOや取締役会を逮捕する力を持っている。ロシアとの関係を改善しようとしたトランプを止めるためにでっち上げられたあのばかげたロシアゲートよりも,こっちの方がよっぽどいい。

影の政府からの支持を確実にするためにトランプがすべきことは,アメリカの軍産複合体に,アメリカの製造業と産業を再興しない限りは,世界で支配権を維持するのに必要なだけの武器システムをアメリカが生産し続けることはできないと気付かせることだ。「軍事における真の改革」は,武器システムや軍の統合面においては,アメリカは,ロシア,そしてある部分では中国に決定的に遅れをとっていることを明らかにした。実際,イランで戦争が起こっても,通常戦争であればアメリカがイランに勝てるかはわからない。アメリカの武器システムの多くが海外で生産されている。もし戦争になれば,武器の供給がまかなえるか疑問である。

影の政府を味方に付けることで,トランプは企業にアメリカに戻ることを命令できる。

ここ何年も,私とジョン・ホワイトヘッドはワシントンが独裁主義を生み出していると強調してきた。もし,影の政府がバックについたならば,トランプは選挙や対抗馬を気にしなくていい独裁者になれる。もっとはっきり言えば,トランプだけではなくて,この先の将来のどの大統領もそうだ。残された唯一の問いは,「誰がターゲットになるか」だ。白人か?自分たちの利益のためにアメリカをだめにした企業か?ロシアか?中国か?イランか?

別に,キレているわけではない。みなさんに,いま我々が目撃し,生きている世界の見取り図を提示しているだけだ。アメリカ国民に選ばれたのに,欲にほだされたアメリカ企業によって,アメリカ国民の仕事と生活を奪われた大統領。無制限の不法な移民のせいで,まだ残っている仕事の給料を低く下げられる事に直面させられている大統領。今,攻撃を受けているのは,ドナルド・レーガンのようにロシアとの平和的な関係を築き,地球上のすべての生命を破壊する核戦争の可能性を減らすことを宣言した大統領なのだ。

なぜ,アメリカに仕事を戻し,核戦争の脅威を減らそうとする大統領が,アメリカの売女メディアや軍産複合体やリベラル・進歩・左翼,民主党,そしてそのほか何百万人もの絶望的なアメリカ国民に,こんなにも激しく攻撃されているのか?トランプに対するばかげた攻撃のたった一つの理由は,後ろに影の政府がついていることだった。そうでなかったら,この4半世紀で蓄積されてきた権限をもつ大統領なら,敵を逮捕し終身刑に処すこともできたはずだ。リンカーン大統領でさえ,北部拡張戦争(南北戦争)の間に300人の北部の新聞記者に対してそうすることができた。リンカーンは,南部連合国に対する侵略を批判した国会議員を追放することさえした。

トランプは正しい。もしアメリカを世界で力を持つ国のままにしたかったら製造業と産業の力を再建することは必要だ。もし,アメリカが第3世界の多くの人々の流入を受け入れるのであれば,中流階級の仕事や地位を向上させるはしごを元に戻さないといけない。

トランプが進むべき方向を企業に説明することだ。短期間で利益を向上させようとすることは,長いスパンで考えれば,国民の購買力をさげ,ひいては販売力を破壊することになると。実際のところは給料があがっていないアメリカ人は,自分で自由に使えるお金がなくて,アメリカ企業に収入をあたえるような商品やサービスを買うことができない。もちろん,CEOや取締役は長い目で物事を考えようとはしないだろうし,気にもとめないだろう。だが,大統領なら愛国心に訴えかけて,すぐに話を進めることができる。

次にトランプがすべきことは,税金のかけ方を変えることでアメリカの製造業を再建するよう企業に働きかけることだ。これは簡単なことではない。対立ではなく協力が求められる

当面は,移民は保留しないといけない。移民を受け入れる経済力はない。さらに,ワシントンは戦争もやめるべきだ。これらに関する費用,借金やリスクは,利益よりも膨大だ。もしアメリカが進むべき道を変えないのなら,発展途上国に落ち込むだろう。こっちの方がよっぽど我々には脅威だ。中東のいわゆる独裁国家のいわゆるテロ支援国家よりも。

これは、私のプレスTVとのインタビューです(8分44分)。
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