ロシアにいる米国シンパ(第5列)といかに闘うか。
<記事原文 寺島先生推薦>
Russia: A New Purge of Fifth Columnists Approaches
ロシア:第5列の新たな粛清が始まる。
筆者:マシュー・エレット(Matthew Ehret)
出典:INTERNATIONALIST 360°
2022年3月26日
<記事翻訳グループ>
2023年3月21日
近年、多くの人が「ディープ・ステート(闇政府)」という言葉を、米国にのみ当てはまるものとして考えるようになった。確かに、アメリカの軍事、情報、官僚、企業、メディア、学術などあらゆるレベルで第5列が存在することは明らかだが、同じ構造がユーラシア大陸の国々でどのように姿を現しているかを明確に把握している西洋人はほとんどいない。
本報告の主題に最も関連した一例としては、(ロシアにおける)西側寄りの広大な巣を挙げることができる。その巣の住民は、1990年代のショック療法の暗黒時代に、CIAの指示のもとに台頭した、ヴァイパー(無料通信アプリ利用)、オリガルヒ(新興財閥)、リベラル・テクノクラート(技術官僚)である。もちろん、1999年にエリツィンから引き継いだウラジーミル・プーチン大統領は、ペレストロイカ時代にロシアを略奪した悪徳機関の多くを一掃し、重要な機関の統制を取り戻し、ロシアの軍事、科学、情報の力を国家の手に取り戻した。
2021年12月9日、市民社会・人権評議会でこの戦いについて語ったプーチンは、次のように述べた。
「2000年代初頭、私は彼らをすべて一掃しましたが、1990年代半ばには、CIAの職員が顧問として、それどころかロシア連邦政府の正式な職員として働くことさえありました。後でわかったことですが…。私たちの核兵器複合施設にアメリカの専門家が座り、彼らは朝から晩まで、そこに出勤していました。彼らはテーブルにはアメリカの旗がありました。彼らの住処はアメリカであり、アメリカのために働いていたのです。彼らには私たちの生活に干渉するための立派な道具は必要ありませんでした。なにしろ、彼らはすでにすべてを支配していたのですから」。
プーチンはさらに、CIAが主導する非対称戦争の新戦略について説明した。その手口は、自国ロシアに組み込まれた広大な「市民社会」機構の中で、外国のNGOや狂信的な代理人(ロシアの野党党首であったナワリヌイの例を見てほしい)を利用したものだった。
「ロシアが自国の利益を主張し始め、主権、経済、軍隊の能力を高め始めると同時に、(CIAは)ロシア国内政界に影響を与える新しい手段が必要となったのです。その手段の中には、様々な組織を装ったかなり巧妙な手段も含まれていて、そこは海外から資金提供を受けていました。
もちろん、これらの作戦は、かつて多くの弱小国家に火をつけることには成功してきたが、CIAが資金を提供するNED(全米民主主義基金)、あるいはオープン・ソサエティ財団が使うカラー革命的な手法は、ロシアでは非常に限られた成功に終わっていた。というのもロシアでは、より健全な指導者たちがこれらの作戦の多くの資金調達を断ち切り、2015年にはソロスの組織全体を「国家の安全に対する脅威」と宣言、非合法化していたからだ。ロシアはこの問題への着手に25年遅れてしまったが、ソロスを禁止したことで特別な国家連合に仲間入りすることになった。この組織は、中国の主導のもと行動を共にしていた連合であった。中国は機転を利かせて1989年にソロスを禁止しており、ソロスのオープン・ソサエティの活動を非合法化し、その工作員 (中国共産党総書記でソロスの工作員だった並外れた才能を持つ趙紫陽を含む) を逮捕していた。
プーチンは、政権初期に重要な戦略的権益を民間の手から奪還した後、リベラルな技術者やオリガルヒに遵守させるための新たな最後通牒を設定した。それは、プーチンが定めたルールに従うか、さもなければその通牒を受け入れるというものだった。ある者は刑務所に入り、ある者は聖域を求めてロンドンに向かった(その多くは、「テムズ川のモスクワ」と呼ばれるようになった地域に、不正に得た利益で邸宅を購入した)。また、ルールに則って行動するために残った者もいた。ある者はこの新しい現実に適応しただろうが、他の勢力は第5列として行動し続け、IMFの影響を受けたロシアの中央銀行や地方の権力中枢の金融を操作するレバー(梃子)にしっかりと爪を立てたままであった。
プーチンが今年(2022年)3月15日に発言したのは、これらの第5列に対してであった。
「もちろん、彼ら(西側諸国)は、いわゆる第5列に賭けるでしょう。わが国の裏切り者に。私たちと共にここロシアでお金を稼ぎながら、お金を稼ぎながら、彼(か)の地に住んでいる人たちに。彼らの住んでいるところは、地理的な意味ですらなくて、彼らの自身の考えによって決まるのです。隷属的な意識によって...このような人々の多くにとっての住処は、本質的に、精神的にはここロシアではないのです。私たちの同胞ではありません。ロシアと共にある人々ではないのです。このように考えることは、彼らの考えでは、より高い社会集団、より高い人種に属していることの証なのです。このような人々は、もし自分がこの非常に高い階層に繋がる通路に並ぶことを許されるなら、自分の母親を売る用意すらできています。...彼らが全く理解していないのは、もし自分がこのいわゆる「高い階層」に必要とされているならば、自分は自分の民族に最大の損害を与えるために使われる消耗品でしかないことです。」
ユーラシア大陸を無視して、過去数十年にわたって国家の主権を蝕んできたアメリカやヨーロッパの第5列にのみ目を向ける近視眼的な習慣が、多くの良識ある人々に、ロシアや中国のような国家を「良い」「悪い」のレッテルが貼られた一枚岩として扱うことができると誤解させている。このような単純化された考え方は、不幸にも多くの誤った情報に影響されることになる。
プーチンを取り巻く本物の愛国者と、欧米が主導するこの第5列との間で現在繰り広げられている戦いを無視すれば、致命的な判断ミスと現在の危機の誤診は避けられない。さらに悪いことに、主権国家に力を与えるために必要な、より広範な政策的解決策の重要な機会が失われ、この損失によって、出現しつつある全体主義的世界秩序と適切に戦う能力が破壊されることになるだろう。
チュバイスの船出
「この最高のカーストへの通路に並ぶために自分の母親を売る」第5列の代表格の最も露骨な例のひとつが、アナトリー・チュバイスである。彼は最近、トルコにより安全な場所を求めてロシアを離れる(できれば永久に)ことを表明した。より安全な聖域に飛び込むにあたり、チュバイスは国連での「持続可能な開発目標達成のための国際機関との関係特別代表」の役割を放棄した。

チュバイスは、現存する政治家の中で最も破壊的な役割を果たした。CIAが運営するエリツィン政権で「ソロスの若き改革者」として働いた。彼の側にはイエゴール・ガイダルや1990年代にロシアの略奪と崩壊を実行するために西側によって採用された他の西側の手先がいた。1992年から96年にかけて経済金融政策担当副首相を務めたチュバイスは、ハーバード大学のジェフリー・サックス、ローズ奨学生のストローブ・タルボットらの学者や、さらにはミハイル・ホドルコフシ、プラトン・レベデフ、ボリス・ベレゾフスキー(彼らの多くは1996年にチュバイスの「7人組」を結成した)などの(他者への共感が欠落している)社会病質者である新興財閥の仲間とともにロシア経済のすべての戦略部門の民営化を監督した。
チュバイスとガイダルは、悪名高い「バウチャー制度*」の開拓者である。この制度は1991年に始まったブッシュ(父)のCIAがハンマー作戦と呼ぶ多段階の略奪作戦を支えた。ウィリアム・エングダールはこの民営化の密集期を厳密に記録したが、その報告によれば、1992年から1994年の間に15,000社以上が民営化されている。ベレゾフスキーのような新しい新興財閥は、飢えたロシア人から購入したこれらのバウチャーを使って、石油大手のシブネット社(30億ドル相当)をわずか1億ドルで買い、ホドルコフスキーはユーコス社(50億ドル相当)の株式の78%をわずか3億1千万ドルで購入した。ソロス自身は、この略奪時代にロシアに20億ドル以上を投下したと自画自賛している。
*1992年の国営企業民営化のスタート時にとられた手法。政府が国営企業を株式会社に改組するとともに、国民に一定金額のバウチャー(民営化小切手)を無料配布、国民はバウチャーと民営化企業の株式との交換ができることとした。ところが、実際にはバウチャーは株式には交換されず、売買もできたことから市場経済化による経済的混乱の中で多少とも現金収入を得ようとする多くの国民によって、大量のバウチャーがそのまま金融業者、企業幹部、投機的資産家などへ売却された。(複数のサイトから)

チュバイスはサンクトペテルブルクのペレストロイカ・クラブの初期創設者である。ガイダル(後の首相)、コーガン(後のサンクトペテルブルク銀行頭取)、クドリン(後の財務大臣)といった人物も一緒に創設に関わった。2009年にガイダルが亡くなると、チュバイスはガイダル・フォーラムの創設を主導した。それはダボスで開催される世界経済フォーラムの定年会の1週間前に開催され、シュワブ派の技術官僚(テクノクラート)とロシアにいる彼らの気の合った仲間との間のディープ・ステート(闇政府)の調整機関として機能した。
2013年、プーチンはチュバイスとCIAにいる彼の交渉人(ハンドラー)についてこう述べた。
「米国CIAの職員がアナトリー・チュバイスの相談役として活動していたことは、今では周知のことです。しかし、さらにおかしなことは、彼らが米国に戻った後、米国の法律に違反し、ロシア連邦の民営化の過程で違法に私腹を肥やしたとして訴追されたことです。」
プーチンがチュバイスをCIAの情報提供者であると明確に認識していたにもかかわらず、この金融業者チュバイスは非常に強力な力により守られているという証拠が見られた。具体的には、彼はプーチン在任中に他の多くの人々のように粛清されるのを逃れただけでなく、2008年から2020年までは国営技術企業ルスナノ社の執行委員会の会長として大きな影響力を回復していた。この間、チュバイスはJPモルガン・チェースの諮問委員を務め、世界経済フォーラムの「グレート・リセット(一斉刷新)」の主要な構成要素であるグリーンな代替エネルギーによるロシアの脱炭素化計画の主導権を握っていた。
12年間の在任中、チュバイスはルスナノ社を風車や太陽光発電の開発に資金を提供する手段として利用し、Hevek Solar(ロシア最大の太陽エネルギー企業)に4億ドルを提供、5億2000万ドルの風力エネルギー開発基金を創設した。
2021年11月16日、ロシア財務大臣(同じ穴のムジナであるアレクセイ・ウリョカエフ)が逮捕された翌日、ルスナノ社の事務所が家宅捜索されたのだが、チュバイスの保護者は、会社にはもういられないだろうが、逮捕はされないし、新しい破壊的な試みに進むことになるだろう、と彼に保証した。チュバイスの次なる仕事とは何だったのか? その次なる仕事とは・・・
2021年12月末までに彼は国連で持続可能な開発目標を調整するロシア大統領特使に任命されたことが発表されたのだ。この役職において、チュバイスは恥ずかしげもなく、ロシアの経済を国連の気候市場に適応させ、IMFと世界銀行の命令に完全に服従させることを求め、2022年1月8日に次のように述べていた。
「ロシアの気候変動市場は、国際的な投資にとって非常に魅力的なものになると確信しています。そこで、ロシアの起業家が代替事業のために海外から資金を受けることを容易にする必要があります。そのためには、世界銀行、国際通貨基金、経済協力開発機構といった主要な国際機関と、この分野で創設されるロシア市場の基本ルールの調和を図ることが必要です」。
チュバイスは、グレート・リセット行動計画(気候変動とコビド19という二重の危機をひとつにまとめたもの)にしたがって、「ロシアのエネルギーのグリーン化」の先頭に立っただけでなく、ロシアの中心部で外国資本の医薬品複合体の成長に資金提供するためにルスナノ社を利用した。最近、ロシアの巨大製薬会社でコビド19ワクチン製造社ナノレックが2020年と2021年にルスナノ社から数十億ルーブルを受け取り、タチアナ・ゴリコワとヴィクトル・フリステンコ(その息子が同社の主要株主)の夫婦コンビを豊かにしたという大きなスキャンダルも浮上した。
ロシアの公務員や民間企業には、この他にも第5列と呼ばれる人たちがいるが、新たな粛清のにおいが漂っているのは確かである。
今、進行中の大転換
「高位カースト」を代表する西側の強力な勢力は、ロシアとの関係を断ち、その関係喪失によって、裏切り者の心を持っているのにぐっすり眠っていた多くの人物は守られなくなってしまった。世界経済フォーラムは3月8日、ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行、アマゾン、ビザ、ペイパル、マスターカード、アップル、IBM、ユニリーバ、ペプシコ(まだある)といった多数の外国WEFパートナー企業とともに関係を断絶した。
ロシア経済をよりしっかりと統制できるようにするために国家主義勢力を強化する動きが急速に進んでいる。これはセルゲイ・グラジエフ大統領顧問が主導する、金融と長期計画に対する国家統制を強化して「中国-EAEU代替金融/通貨システム」を構築しようとする新たな事業である。長年欧米の寡頭支配層の強い影響下にあった金融部門を支配することは極めて重要である。つまり、もしロシアが来るべき嵐を乗り切るだけでなく、それから抜け出すためには、プーチンが願望する「極東と北極の文明成長の枠組み(パラダイム)」に必要な大規模事業を建設する経済主権と力を持つことが必要なのだ。
チュバイスは、今この瞬間を選んで船から逃げ出した一匹の大ネズミに過ぎないが、他にも必ずや続く者があるだろう。しかし彼らとは違い、この危機においてロシア愛国者として歩く道を選んだ人々の心の中では、新たに神を恐れる気持ちが目覚めているのかもしれない。世界がより多極化した新しい未来に向かいつつあるからだ。
本論の最後はプーチン大統領の言葉で締めくくるのがふさわしいだろう。「ロシア国民は、真の愛国者とクズや裏切り者を見分け、それが誤って口に入ったら、虫のように吐き出すことができるようになるでしょう。私は、このような自然で必要な社会の自浄作用こそが、私たちの国、私たちの連帯感、団結力、あらゆる課題に対応する態勢を強化する唯一のものだと確信しています」。
マシュー・エレットは、Canadian Patriot Reviewの編集長であり、モスクワのアメリカン大学のシニアフェローである。「Untold History of Canadaブックシリーズ」や「Clash of the Two Americas」の著者である。2019年、彼はモントリオールを拠点とするライジングタイド財団を共同設立した 。
Russia: A New Purge of Fifth Columnists Approaches
ロシア:第5列の新たな粛清が始まる。
筆者:マシュー・エレット(Matthew Ehret)
出典:INTERNATIONALIST 360°
2022年3月26日
<記事翻訳グループ>
2023年3月21日
近年、多くの人が「ディープ・ステート(闇政府)」という言葉を、米国にのみ当てはまるものとして考えるようになった。確かに、アメリカの軍事、情報、官僚、企業、メディア、学術などあらゆるレベルで第5列が存在することは明らかだが、同じ構造がユーラシア大陸の国々でどのように姿を現しているかを明確に把握している西洋人はほとんどいない。
本報告の主題に最も関連した一例としては、(ロシアにおける)西側寄りの広大な巣を挙げることができる。その巣の住民は、1990年代のショック療法の暗黒時代に、CIAの指示のもとに台頭した、ヴァイパー(無料通信アプリ利用)、オリガルヒ(新興財閥)、リベラル・テクノクラート(技術官僚)である。もちろん、1999年にエリツィンから引き継いだウラジーミル・プーチン大統領は、ペレストロイカ時代にロシアを略奪した悪徳機関の多くを一掃し、重要な機関の統制を取り戻し、ロシアの軍事、科学、情報の力を国家の手に取り戻した。
2021年12月9日、市民社会・人権評議会でこの戦いについて語ったプーチンは、次のように述べた。
「2000年代初頭、私は彼らをすべて一掃しましたが、1990年代半ばには、CIAの職員が顧問として、それどころかロシア連邦政府の正式な職員として働くことさえありました。後でわかったことですが…。私たちの核兵器複合施設にアメリカの専門家が座り、彼らは朝から晩まで、そこに出勤していました。彼らはテーブルにはアメリカの旗がありました。彼らの住処はアメリカであり、アメリカのために働いていたのです。彼らには私たちの生活に干渉するための立派な道具は必要ありませんでした。なにしろ、彼らはすでにすべてを支配していたのですから」。
プーチンはさらに、CIAが主導する非対称戦争の新戦略について説明した。その手口は、自国ロシアに組み込まれた広大な「市民社会」機構の中で、外国のNGOや狂信的な代理人(ロシアの野党党首であったナワリヌイの例を見てほしい)を利用したものだった。
「ロシアが自国の利益を主張し始め、主権、経済、軍隊の能力を高め始めると同時に、(CIAは)ロシア国内政界に影響を与える新しい手段が必要となったのです。その手段の中には、様々な組織を装ったかなり巧妙な手段も含まれていて、そこは海外から資金提供を受けていました。
もちろん、これらの作戦は、かつて多くの弱小国家に火をつけることには成功してきたが、CIAが資金を提供するNED(全米民主主義基金)、あるいはオープン・ソサエティ財団が使うカラー革命的な手法は、ロシアでは非常に限られた成功に終わっていた。というのもロシアでは、より健全な指導者たちがこれらの作戦の多くの資金調達を断ち切り、2015年にはソロスの組織全体を「国家の安全に対する脅威」と宣言、非合法化していたからだ。ロシアはこの問題への着手に25年遅れてしまったが、ソロスを禁止したことで特別な国家連合に仲間入りすることになった。この組織は、中国の主導のもと行動を共にしていた連合であった。中国は機転を利かせて1989年にソロスを禁止しており、ソロスのオープン・ソサエティの活動を非合法化し、その工作員 (中国共産党総書記でソロスの工作員だった並外れた才能を持つ趙紫陽を含む) を逮捕していた。
プーチンは、政権初期に重要な戦略的権益を民間の手から奪還した後、リベラルな技術者やオリガルヒに遵守させるための新たな最後通牒を設定した。それは、プーチンが定めたルールに従うか、さもなければその通牒を受け入れるというものだった。ある者は刑務所に入り、ある者は聖域を求めてロンドンに向かった(その多くは、「テムズ川のモスクワ」と呼ばれるようになった地域に、不正に得た利益で邸宅を購入した)。また、ルールに則って行動するために残った者もいた。ある者はこの新しい現実に適応しただろうが、他の勢力は第5列として行動し続け、IMFの影響を受けたロシアの中央銀行や地方の権力中枢の金融を操作するレバー(梃子)にしっかりと爪を立てたままであった。
プーチンが今年(2022年)3月15日に発言したのは、これらの第5列に対してであった。
「もちろん、彼ら(西側諸国)は、いわゆる第5列に賭けるでしょう。わが国の裏切り者に。私たちと共にここロシアでお金を稼ぎながら、お金を稼ぎながら、彼(か)の地に住んでいる人たちに。彼らの住んでいるところは、地理的な意味ですらなくて、彼らの自身の考えによって決まるのです。隷属的な意識によって...このような人々の多くにとっての住処は、本質的に、精神的にはここロシアではないのです。私たちの同胞ではありません。ロシアと共にある人々ではないのです。このように考えることは、彼らの考えでは、より高い社会集団、より高い人種に属していることの証なのです。このような人々は、もし自分がこの非常に高い階層に繋がる通路に並ぶことを許されるなら、自分の母親を売る用意すらできています。...彼らが全く理解していないのは、もし自分がこのいわゆる「高い階層」に必要とされているならば、自分は自分の民族に最大の損害を与えるために使われる消耗品でしかないことです。」
ユーラシア大陸を無視して、過去数十年にわたって国家の主権を蝕んできたアメリカやヨーロッパの第5列にのみ目を向ける近視眼的な習慣が、多くの良識ある人々に、ロシアや中国のような国家を「良い」「悪い」のレッテルが貼られた一枚岩として扱うことができると誤解させている。このような単純化された考え方は、不幸にも多くの誤った情報に影響されることになる。
プーチンを取り巻く本物の愛国者と、欧米が主導するこの第5列との間で現在繰り広げられている戦いを無視すれば、致命的な判断ミスと現在の危機の誤診は避けられない。さらに悪いことに、主権国家に力を与えるために必要な、より広範な政策的解決策の重要な機会が失われ、この損失によって、出現しつつある全体主義的世界秩序と適切に戦う能力が破壊されることになるだろう。
チュバイスの船出
「この最高のカーストへの通路に並ぶために自分の母親を売る」第5列の代表格の最も露骨な例のひとつが、アナトリー・チュバイスである。彼は最近、トルコにより安全な場所を求めてロシアを離れる(できれば永久に)ことを表明した。より安全な聖域に飛び込むにあたり、チュバイスは国連での「持続可能な開発目標達成のための国際機関との関係特別代表」の役割を放棄した。

チュバイスは、現存する政治家の中で最も破壊的な役割を果たした。CIAが運営するエリツィン政権で「ソロスの若き改革者」として働いた。彼の側にはイエゴール・ガイダルや1990年代にロシアの略奪と崩壊を実行するために西側によって採用された他の西側の手先がいた。1992年から96年にかけて経済金融政策担当副首相を務めたチュバイスは、ハーバード大学のジェフリー・サックス、ローズ奨学生のストローブ・タルボットらの学者や、さらにはミハイル・ホドルコフシ、プラトン・レベデフ、ボリス・ベレゾフスキー(彼らの多くは1996年にチュバイスの「7人組」を結成した)などの(他者への共感が欠落している)社会病質者である新興財閥の仲間とともにロシア経済のすべての戦略部門の民営化を監督した。
チュバイスとガイダルは、悪名高い「バウチャー制度*」の開拓者である。この制度は1991年に始まったブッシュ(父)のCIAがハンマー作戦と呼ぶ多段階の略奪作戦を支えた。ウィリアム・エングダールはこの民営化の密集期を厳密に記録したが、その報告によれば、1992年から1994年の間に15,000社以上が民営化されている。ベレゾフスキーのような新しい新興財閥は、飢えたロシア人から購入したこれらのバウチャーを使って、石油大手のシブネット社(30億ドル相当)をわずか1億ドルで買い、ホドルコフスキーはユーコス社(50億ドル相当)の株式の78%をわずか3億1千万ドルで購入した。ソロス自身は、この略奪時代にロシアに20億ドル以上を投下したと自画自賛している。
*1992年の国営企業民営化のスタート時にとられた手法。政府が国営企業を株式会社に改組するとともに、国民に一定金額のバウチャー(民営化小切手)を無料配布、国民はバウチャーと民営化企業の株式との交換ができることとした。ところが、実際にはバウチャーは株式には交換されず、売買もできたことから市場経済化による経済的混乱の中で多少とも現金収入を得ようとする多くの国民によって、大量のバウチャーがそのまま金融業者、企業幹部、投機的資産家などへ売却された。(複数のサイトから)

チュバイスはサンクトペテルブルクのペレストロイカ・クラブの初期創設者である。ガイダル(後の首相)、コーガン(後のサンクトペテルブルク銀行頭取)、クドリン(後の財務大臣)といった人物も一緒に創設に関わった。2009年にガイダルが亡くなると、チュバイスはガイダル・フォーラムの創設を主導した。それはダボスで開催される世界経済フォーラムの定年会の1週間前に開催され、シュワブ派の技術官僚(テクノクラート)とロシアにいる彼らの気の合った仲間との間のディープ・ステート(闇政府)の調整機関として機能した。
2013年、プーチンはチュバイスとCIAにいる彼の交渉人(ハンドラー)についてこう述べた。
「米国CIAの職員がアナトリー・チュバイスの相談役として活動していたことは、今では周知のことです。しかし、さらにおかしなことは、彼らが米国に戻った後、米国の法律に違反し、ロシア連邦の民営化の過程で違法に私腹を肥やしたとして訴追されたことです。」
プーチンがチュバイスをCIAの情報提供者であると明確に認識していたにもかかわらず、この金融業者チュバイスは非常に強力な力により守られているという証拠が見られた。具体的には、彼はプーチン在任中に他の多くの人々のように粛清されるのを逃れただけでなく、2008年から2020年までは国営技術企業ルスナノ社の執行委員会の会長として大きな影響力を回復していた。この間、チュバイスはJPモルガン・チェースの諮問委員を務め、世界経済フォーラムの「グレート・リセット(一斉刷新)」の主要な構成要素であるグリーンな代替エネルギーによるロシアの脱炭素化計画の主導権を握っていた。
12年間の在任中、チュバイスはルスナノ社を風車や太陽光発電の開発に資金を提供する手段として利用し、Hevek Solar(ロシア最大の太陽エネルギー企業)に4億ドルを提供、5億2000万ドルの風力エネルギー開発基金を創設した。
2021年11月16日、ロシア財務大臣(同じ穴のムジナであるアレクセイ・ウリョカエフ)が逮捕された翌日、ルスナノ社の事務所が家宅捜索されたのだが、チュバイスの保護者は、会社にはもういられないだろうが、逮捕はされないし、新しい破壊的な試みに進むことになるだろう、と彼に保証した。チュバイスの次なる仕事とは何だったのか? その次なる仕事とは・・・
2021年12月末までに彼は国連で持続可能な開発目標を調整するロシア大統領特使に任命されたことが発表されたのだ。この役職において、チュバイスは恥ずかしげもなく、ロシアの経済を国連の気候市場に適応させ、IMFと世界銀行の命令に完全に服従させることを求め、2022年1月8日に次のように述べていた。
「ロシアの気候変動市場は、国際的な投資にとって非常に魅力的なものになると確信しています。そこで、ロシアの起業家が代替事業のために海外から資金を受けることを容易にする必要があります。そのためには、世界銀行、国際通貨基金、経済協力開発機構といった主要な国際機関と、この分野で創設されるロシア市場の基本ルールの調和を図ることが必要です」。
チュバイスは、グレート・リセット行動計画(気候変動とコビド19という二重の危機をひとつにまとめたもの)にしたがって、「ロシアのエネルギーのグリーン化」の先頭に立っただけでなく、ロシアの中心部で外国資本の医薬品複合体の成長に資金提供するためにルスナノ社を利用した。最近、ロシアの巨大製薬会社でコビド19ワクチン製造社ナノレックが2020年と2021年にルスナノ社から数十億ルーブルを受け取り、タチアナ・ゴリコワとヴィクトル・フリステンコ(その息子が同社の主要株主)の夫婦コンビを豊かにしたという大きなスキャンダルも浮上した。
ロシアの公務員や民間企業には、この他にも第5列と呼ばれる人たちがいるが、新たな粛清のにおいが漂っているのは確かである。
今、進行中の大転換
「高位カースト」を代表する西側の強力な勢力は、ロシアとの関係を断ち、その関係喪失によって、裏切り者の心を持っているのにぐっすり眠っていた多くの人物は守られなくなってしまった。世界経済フォーラムは3月8日、ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行、アマゾン、ビザ、ペイパル、マスターカード、アップル、IBM、ユニリーバ、ペプシコ(まだある)といった多数の外国WEFパートナー企業とともに関係を断絶した。
ロシア経済をよりしっかりと統制できるようにするために国家主義勢力を強化する動きが急速に進んでいる。これはセルゲイ・グラジエフ大統領顧問が主導する、金融と長期計画に対する国家統制を強化して「中国-EAEU代替金融/通貨システム」を構築しようとする新たな事業である。長年欧米の寡頭支配層の強い影響下にあった金融部門を支配することは極めて重要である。つまり、もしロシアが来るべき嵐を乗り切るだけでなく、それから抜け出すためには、プーチンが願望する「極東と北極の文明成長の枠組み(パラダイム)」に必要な大規模事業を建設する経済主権と力を持つことが必要なのだ。
チュバイスは、今この瞬間を選んで船から逃げ出した一匹の大ネズミに過ぎないが、他にも必ずや続く者があるだろう。しかし彼らとは違い、この危機においてロシア愛国者として歩く道を選んだ人々の心の中では、新たに神を恐れる気持ちが目覚めているのかもしれない。世界がより多極化した新しい未来に向かいつつあるからだ。
本論の最後はプーチン大統領の言葉で締めくくるのがふさわしいだろう。「ロシア国民は、真の愛国者とクズや裏切り者を見分け、それが誤って口に入ったら、虫のように吐き出すことができるようになるでしょう。私は、このような自然で必要な社会の自浄作用こそが、私たちの国、私たちの連帯感、団結力、あらゆる課題に対応する態勢を強化する唯一のものだと確信しています」。
マシュー・エレットは、Canadian Patriot Reviewの編集長であり、モスクワのアメリカン大学のシニアフェローである。「Untold History of Canadaブックシリーズ」や「Clash of the Two Americas」の著者である。2019年、彼はモントリオールを拠点とするライジングタイド財団を共同設立した 。
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